建築工事には多くの種類があり、様々な職人が活躍しています。
そんな工事現場に常駐する一人に主任技術者がいます。
他の職人と一緒に現場で作業を行うわけではなく、工事全体を管理することが業務となります。
今回は主任技術者の具体的な仕事内容や、なり方、必要な資格などについて詳しく解説してきます。
建設業界への就職を検討している方はもちろん、現在従事している方も将来のキャリアアップにつなげることが可能なので是非参考にしてみてください。
主任技術者とは:現場技術者に指導する監督業務が主な役割
施工主から工事を請負場合、建設業許可の他にも工事現場で円滑で安全に作業を進めるために、管理者を選任しなければなりません。
その管理者が主任技術者であり、工事の作業ではなく監視と指示がメイン業務となるため作業技術や知識はもちろん、豊富な工事経験が必要となります。
また、作業の観点だけで考えるのではなく、原価管理や全体の工程管理、それに関する書類の作成など現場の職人とは違う仕事内容であり役割なのが主任技術者です。
全体に指示を行うポジションであるため、大きな責任が伴います。
主任技術者になる方法
工事全体を管理する主任技術者になるためには、2つの方法があります。
その一つ目が各学校で指定学科を学び、卒業後に実務経験を積む方法であり、具体的な主任技術者の条件は以下の通りです。
- 大学の指定学科を卒業し、3年以上の実務経験を積んでいる
- 高等専門学校の指定学科を卒業し、3年以上の実務経験を積んでいる
- 高等学校の指定学科を卒業し5年以上の実務経験を積んでいる
- 上記条件に該当しない学歴で卒業し10年以上の実務経験を積んでいる
指定学科とは建設業の業種によって異なり、その内容は以下の通りです。
建設業 | 指定学科 |
舗装・土木工事業 | 都市工学、衛生工学または交通工学に関する学科、土木工学(鉱山土木、森林土木、農業土木、治山、緑地、砂防、造園に関する学科も含む) |
建築・大工・ガラス・内装仕上工事業 | 建築学か都市工学に関する学科 |
左官・石・屋根・とび・タイル、レンガ、ブロック・塗装・解体工事業 | 土木工学か建築学に関する学科 |
電気通信・電気工事業 | 電気工学か電気通信工学に関する学科 |
水道施設・清掃施設・管工事業 | 土木工学、機械工学、建築学、都市工学または衛生工学に関する学科 |
鉄筋・鋼構造物工事業 | 建築学または機械工学、土木工学に関する学科 |
しゅんせつ工事業 | 機械工学または土木工学に関する学科 |
防水工事業 | 建築学または土木工学に関する学科 |
板金工事業 | 機械工学または建築学に関する学科 |
消防施設工事業 | 機械工学、建築学または電気工事に関する学科 |
機械器具設置工事業 | 機械工学、建築学または電気工事に関する学科 |
造園工事業 | 建築学、土木工学、都市工学または林学に関する学科 |
熱絶縁工事業 | 建築学、土木工学または機械工学に関する学科 |
さく井工事業 | 鉱山学、土木工学、機械工学または衛生工学に関する学科 |
建具工事業 | 機械工学または建築学に関する学科 |
工事内容ごとに高度な専門知識が必要となるため、細かい指定学科の指定がありますが、中には複数の業種を足して実務経験にできる業種もあります。
主任技術者になる2つ目の方法が、専門の国家資格を取得することです。
資格の中には取得後に実務経験が必要なものもあり、その詳細は以下の通りです。
業種 | 主任技術者に必要な国家資格内容 |
土木一式工事 | 建設機械施工管理技士・2級土木施工管理技士 |
建築一式工事 | 建築士・2級建築施工管理技士 |
とび・土木工事業 | 2級土木施工管理技士・建設機械施工管理技士・2級建築施工管理技士 |
左官工事業 | 2級建築施工管理技士(区分:仕上げ) |
大工工事業 | 2級建築施工管理技士(区分:躯体) |
石工事業 | 2級土木施工管理技士(土木)・建設機械施工管理技士 |
電気工事業 | 電気工事施工管理技士・第二種電気工事士(実務経験3年)・電気主任技術者(実務経験5年) |
屋根工事業 | 建築士・2級建設機械施工管理技士(区分:仕上げ) |
タイル、レンガ、ブロック工事業 | 建築士・2級建築施工管理技士(区分:躯体) |
管工事業 | 管工事施工管理技士・給水装置工事主任技術者(実務経験1年) |
鋼構造物工事業 | 2級建築施工管理技士・2級土木施工管理技士(区分:土木) |
舗装工事業 | 2級土木施工管理技士(区分:土木)・建設機械施工管理技士 |
鉄筋工事業 | 2級建築施工管理技士(区分:躯体) |
しゅんせつ工事業 | 2級土木施工管理技士(区分:土木) |
ガラス工事 | 2級建築施工管理技士(仕上げ) |
板金工事業 | 2級建築施工管理技士(仕上げ) |
防水工事業 | 2級建築施工管理技士(仕上げ |
塗装工事業 | 2級建築施工管理技士(仕上げ)・建設機械施工管理技士 |
内装仕上工事業 | 2級建築施工管理技士(仕上げ)・建築士 |
機械器具設置工事業 | 技術士試験 |
熱絶縁工事業 | 2級建築施工管理技士(仕上げ) |
電気通信工事業 | 電気通信工事施工管理技士・電気通信主任技術者(実務経験5年) |
さく井工事業 | 技術士試験 |
造園工事業 | 造園施工管理技士 |
水道施設工 | 2級土木施工管理技士(区分:土木) |
建具工事業 | 2級建築施工管理技士(区分:仕上げ) |
清掃施設工事業 | 技術士試験 |
消防施設工事業 | 乙種消防設備士・甲種消防設備士 |
解体工事業 | 2級土木施工管理技師(土木)・建築施工管理技士 |
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主任技術者の仕事内容
工事での作業ではなく、工事全体を管理する主任技術者ですが、具体的な管理内容として「4大管理」と呼ばれるものがあります。
この4大管理とは「工程管理」「原価管理」「安全管理」「品質管理」のことで工事の内容やジャンル関係なくどの建築現場にも当てはまる管理の基礎となります。
工程管理
工程管理とは名前の通り、工事の作業工程を管理し納期に間に合うように管理する作業です。
どの工事も作業工程は毎回同じなのですが、建築工事の場合は野外で行われるため天候の影響を受けやすく、他にも機材の故障や建材の納期おくれなども珍しくはありません。
そのような事態となった場合でも予定納期をずらすことなく日程を組み直すのが工程管理の重要な作業であり腕の見せどころでもあります。
原価管理
原価管理とは工事に必要な人件費や材料費などを原価計算した上で、工事に利益が出るように管理する作業となります。
こちらも建材の破損や不備による作業のやり直しなど、予定通りに行かないこともあり、常に管理しておく必要があります。
品質管理
工事は設計図を元に工程が組まれ、作業を進めていくのですが、その箇所ごとに強度や寸法、使用する建材に指定があったりします。
作業が完了したのちにそのチェックや試験を行い、必要に応じて写真を撮り書類を作成する作業です。
安全管理
建設現場では高所で作業となっり、足場が狭かったりする箇所があります。
そのような箇所で事故が起きないように手すりなどを設置したり、機材や建材を管理する場所を決めて仕事が安全に進むように管理、指示を行います。
また、工事中も作業の中で起きたヒヤリハットなどを聞いた上で全体に共有して未然に事故を防ぐのも大事な安全管理の作業です。
工事の規模が大きくなるほど専門性が高い作業が多くなるため、施工管理技士などと連携して工事全体を安心安全に進めていきます。
主任技術者は、このように項目ごとで工事に不備が起きないよう、現場でチェックを行います。
監理技術者と主任技術者の違い
主任技術者とは別に、建設現場によっては監理技術者が工事現場にいることがあります。
どちらも工事の管理を行うため、似たような仕事内容となるのですが明確な違いがあります。
主任技術者は工事の請負金額など関係なく、必ず選任しなければならないのですが、全ての工事を管理できるわけではありません。
依頼者からの請負代金が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)となる場合は特定建設業となり、更に上位の資格となる監理技術者の選任が必要となります。
この時に注意が必要なのが、下請工事ではなく元請け工事にのみ監理技術者が必要ということです。
ちなみに監理技術者を選任した現場では主任技術者は選任する必要がありません。
主任技術者になるメリット
必ず工事現場で選任しなければならない主任技術者は、現場での作業から工事全体の管理に仕事が変わりその仕事量も増えます。
そんな主任技術者になる一番のメリットは「キャリアアップ」です。
知識や技術があり経験豊富である主任技術者は会社の中でも重要なポジションであり必要とされています。
そのため作業員と比べ資格手当がついたり、将来的な出世も視野に入れることが可能です。
手に職をつけられる資格でもあり、転職や独立を考える場合においてもかなり有利になると言えます。
主任技術者になる2つ目のメリットが、自分の仕事を更に実感しやすくなるということです。
工事全体に関わり着工から完成まで、全てを統括するため完成後も「あの建物は昔に携わったもの」と大きな達成感を得ることが可能です。
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主任技術者に関するまとめ
今回は主任技術者について解説してきました。
主任技術者とは、工事現場において作業を行うのではなく、各作業を管理するのが役割となります。
主な管理内容としてあるのが4大管理で「品質管理」「安全管理」「原価管理」「工程管理」を元に工事現場をチェックし指示を行います。
主任技術者になるためには、専門の学校などで指定学科を学んだ上で実務経験を積む方法と、専門の国家資格を取得する方法があります。
豊富な工事経験と専門知識や技術が必要となり、仕事量も多くなる一方でキャリアアップを視野に入れることが可能で、工事が完成した際にはより大きな達成感を味わうことが可能です。
主任技術者は将来的にも需要があるポジションであり、建設業界には欠かせない存在と言えるでしょう
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