バス運転手として身に付けた運転スキルは、生涯活かし続けられるものです。仕事に関しても身体的な負担が低く、トラック運転手と比べて仕事を続けやすいと言えます。
しかしながら、乗客の命を預かる仕事である以上、無理して乗務することはできません。今後バス運転手への転職を検討しており、何歳くらいまで働けるのか気になる方もいるのではないでしょうか。
今回は、バス運転手の定年事情について分かりやすく解説していきますので、参考にしてみてください。
【種類別】バス運転手の定年事情
バス運転手の定年に大きく関係しているのが「運行内容」です。
一口にバス運転手といっても「路線バス・観光バス・高速バス・送迎バス」といった運行があり、具体的な業務内容に違いがあります。
- 路線バスの運転手の場合
- 観光バスの運転手の場合
- 高速バス・夜行バスの運転手の場合
- 送迎バスの運転手の場合
ここでは、上記4つのバス運転手の定年事情について、解説していきます。
路線バスの運転手の場合
路線バス運転手は、通勤通学などでの利用者が多く、早朝から夜遅くまで運行ダイヤが組まれています。そのため、労働時間が長くなりやすい特徴があり、体力的な衰えが定年に大きく影響します。
運転能力の低下よりも、体力面の低下で定年を決めている運転手が多いと言えるでしょう。
観光バスの運転手の場合
観光バスに関しても、路線バスと同様に、体力面が重視される傾向があります。
特に貸し切りバスや泊りがけのツアーといった運行は、遠方の目的地が多く長距離運転が多いと言えます。中には、泊りがけの勤務もあり、心身ともに負担の大きい運行です。
比較的、近い観光地を巡る運行であれば、高齢でも続けやすいと言えます。
高速バス・夜行バスの運転手の場合
高速バスは、主に都市間を行き来する運行が多く、4種類の中で最も走行距離が長いという特徴があります。
また、夜間運行もあり視野が狭くなる中での運転となるため、体力面よりも運転能力が重視される傾向です。
乗務自体は、深夜帯に働く「特定業務従事者」のみに義務化されている半年に1回の健康診断に異常がなければ問題ありません。
高速で運転することもあり、ちょっとしたミスが大事故につながるため、限界を感じた時点で自主的に引退を決意する人も少なくありません。
送迎バスの運転手の場合
送迎バスは、4種類の中で最も運転距離が短く負担が少ない運行です。
連絡バスなど、1日中運転する仕事もありますが、高齢になっても続けやすいと言えるでしょう。
車両のサイズも中型バスが多く、他の運行を引退した後に送迎バス運転手として働く人も少なくありません。
バス運転手の年齢制限についての傾向|3選
バス運転手として乗務するうえで、体力面や運転能力が重要であると解説してきましたが、これは入社時にも関係してきます。
体力面は問題なかったとしても、最低限の運転能力がないと判断された場合は、入社できません。
明確な線引きはないものの、バス業界では入社時の年齢制限に関して、以下のような傾向があります。
- 40歳以上でも応募できる
- 21歳以上であれば応募できる
- 一般的には35歳未満の募集が多い
ここでは、入社時の年齢制限について、上記3項目ごとに分かりやすく解説していきます。
40歳以上でも応募できる
バス運転手の求人には、年齢制限の指定がないものがほとんどです。
近年は、バス運転手不足が各地で深刻化していることもあり、体力に問題がなければ採用している会社が増えてきています。
未経験からの転職である場合、年齢が上がるほど採用確率は下がる傾向ではあるものの、40歳以上でもバス運転手への転職は可能です。
21歳以上であれば応募できる
バス運転手として乗務する場合「大型自動車第二種免許」を取得しなければなりません。
求人に応募できる年齢は、大型二種免許が取得できる21歳に設定しているバス会社がほとんどです。
ただし、2022年5月に改正道路交通法が施行され「特別教習」を受講すれば、19歳からでも二種免許の取得が可能となりました。
改正されて間もないため、特別教習を受けられる教習所は少ないものの、今後は19歳以上を条件とする求人が各地で増えていくと予想されています。
一般的には35歳未満の募集が多い
バス運転手の求人は、年齢に関係なく体力があれば40歳以上でも応募できると解説しましたが、年齢制限を設けているバス会社もあります。
年齢制限はバス会社によるものの、一般的に35歳未満としている会社が多い印象です。
今後、バス運転手への転職を検討している場合は、35歳を目処にしておきましょう。
参考元:運輸事業の安全に関するシンポジウム2018~定年再雇用と女性活躍推進~|神姫バスグループ 株式会社ウエスト神姫
バス運転手を定年後も続ける3つのポイント
バス運転手の定年退職年齢に明確なルールはなく、乗務する運行を安全にこなせる運転能力と体力があるかどうかで定年を検討します。
そのため、高齢になってもバス運転手として現役で活躍している人も中にはいます。
バス運転手を長く続けるには、以下のポイントを意識するようにしましょう。
- 健康を維持する
- 安全運転を心がける
- 道路交通法を厳守する
ここでは、3つの項目について解説していきます。
健康を維持する
バス運転手を長く続けるうえで、最も重要と言えるのが「健康」です。
健康かつ元気であることは、安心安全な運行に欠かせません。
バス運転手は、年に1回の健康診断が義務付けられていますが、それとは別に日頃から健康を意識した生活を心掛けましょう。
特に注意が必要なのが食生活で、バス運転手は不規則な生活リズムになりやすく激しく動くことがないため、肥満になりやすいと言えます。
なるべく外食やコンビニのお弁当を避けるなどして、生活習慣病を引き起こさないように注意しましょう。
安全運転を心がける
安全運転を心がけることも、バス運転手を長く続けるうえでとても大切です。
たとえ健康で運転能力があったとしても、安全運転ができていなければ、乗客からのクレームが入りやすくなります。
万が一事故を起こしてしまった場合は、それがきっかけとなり定年となる可能性もゼロではありません。
日頃から安全第一で丁寧な運転を心がけましょう。
道路交通法を厳守する
交通違反も、運転能力や集中力が落ちていると思われてしまうため、注意が必要です。
ちょっとした焦りが道路交通法違反となるため、平常心を保ちながら運転するようにしましょう。
また、プライベートでの交通違反や事故も、運転免許の点数を引かれるため、注意が必要です。
バス運転手65歳以上の定年後にできる仕事|3選
バス運転手の定年事情について解説してきましたが、定年退職した後に運転の仕事ができなくなるわけではありません。
長年の乗務で身に付けた運転スキルや経験は、さまざまな仕事に活かせます。
65歳以上の人でも応募できる仕事をリサーチした結果、以下のような求人がありました。
- 事例①:タクシードライバー
- 事例②:キッズドライバー
- 事例③:幼稚園の送迎バス運転手
ここでは、各事例の具体的な仕事内容や待遇の詳細を紹介していきます。
事例①:タクシードライバー
タクシー運転手は、運転する車両が乗用車で、力仕事もないため高齢でも働きやすいおすすめの転職先です。
隔日勤務という働き方が主流であるものの、日勤や夜勤もあり勤務時間の指定も可能な会社が多くあります。
【実際にあったタクシードライバーの求人】
雇用形態 | 正社員 |
月給 | 固定給190,323円+歩合給 |
福利厚生 | 賞与年3回、仮眠室完備、生活支援制度、各種保険加入 |
勤務時間 | 隔日勤務で15時勤務開始、出勤は月に12回 |
定年の年齢 | 75歳まで再雇用制度あり |
仕事内容 | 東京都内でのタクシー業務 |
タクシー運転手は、歩合給を導入している会社が多く、高収入を目指せることも魅力と言えるでしょう。
事例②:キッズドライバー
キッズドライバーは、タクシー会社が始めたサービスで、子供の習い事の送迎や妊婦のお出かけの付き添いや通院などを行います。
働き方はタクシードライバーと同じで、子供が好きな方におすすめです。
【実際にあったキッズドライバーの求人】
雇用形態 | 正社員 |
月給 | 固定給188,660円+歩合給 |
福利厚生 | 賞与年3回、残業手当、深夜手当、社員紹介手当 |
勤務時間 | 隔日勤務で月に11~12回勤務 |
定年の年齢 | 65歳 |
仕事内容 | 子供の習い事の送迎や病院への付き添いなど |
近年、利用者が増加しているサービスであり、万が一の際に駆け付ける「陣痛タクシー」といったサービスを行っている会社もあります。
事例③:幼稚園の送迎バス運転手
幼稚園や老人ホームなどの利用者を送迎する運転手も、バス運転手の定年後におすすめです。
中型バスやハイエースといった小さめの車両が多く、夜勤がないため生活リズムも保ちやすいと言えます。
求人にもよりますが、フルタイムではなく、午前中か午後の送迎のみといった仕事もあります。
【実際にあった幼稚園の送迎バス運転手の求人】
雇用形態 | 正社員 |
月給 | 180,000円~ |
福利厚生 | 各種保険加入、交通費支給 |
勤務時間 | 7:00~16:00(シフト制) |
定年の年齢 | 73歳3ヶ月 |
仕事内容 | 幼稚園バスでの送迎、車内の清掃や給油作業 |
送迎の際には、幼稚園の先生も同乗するため、運転だけに集中できます。
バス運転手の定年に関するよくある質問
最後は、バス運転手の定年に関する、4つのよくある質問に答えていきます。
- バス運転手の定年延長はどのようになっていますか?
- バスドライバーの年齢分布はどのようになっていますか?
- バス運転手の年収はいくらですか?
- バス運転手として70歳以上でも働けますか?
バス運転手の再雇用や、現役運転手の年齢分布など業界の現状について解説していきますので、転職を検討するうえで参考にしてみてください。
バス運転手の定年延長はどのようになっていますか?
バス運転手の一般的な定年の年齢は60〜65歳ですが、再雇用としてその後も雇用を継続するバス会社が増えてきています。
愛知県内で路線バス事業を運行している「名鉄バス」では、再雇用の年齢を69歳から72歳に引き上げています。
運転手不足に対応するためのもので、全国で同様の取り組みが広がっている状況です。
ちなみに、69歳以降は健康診断に「脳ドック」の受診を加えています。
バス運転手の年齢分布はどのようになっていますか?
バス業界では、現役運転手の高齢化と、担い手不足が大きな問題となっています。
国土交通省が平成29年に実施したアンケート結果によると、バス運転手の年齢分布は以下のような内容となりました。
20代 | 3.3% |
30代 | 19.2% |
40代 | 42.3% |
50代 | 31.5% |
60代 | 3.6% |
70代 | 0.07% |
40~50代が全体の約74%を占めており、若手と言える20~30代は約22%しかいない状況です。
これを受けて、人材確保を目的とした取り組みが各社で行われており、その一環として再雇用年齢の引き上げなどを実施しています。
参考元:バス運転者の労働時間等についてのアンケート結果|国土交通省自動車局安全政策課
バス運転手の年収はいくらですか?
厚生労働省が運営する、職業情報提供サイト「jobtag」によると、令和4年のバス運転手の平均年収は398万7,000円です。
国内の全産業における平均年収の中央値が423万円であるため、平均よりも約24万円低い水準です。
参照元:職業情報提供サイトjobtag|路線バス運転手|厚生労働省
バス運転手として70歳以上でも働けますか?
近年は、バス運転手の再雇用年齢を引き上げるバス会社が増えてきており、70歳以上でも働けるようになってきています。
ただし、健康状態が良好であり、運行に支障がないことを条件としている会社がほとんどです。
そのため、バス運転手として70歳以上まで働くには、普段から健康状態に気を付けておく必要があります。
バス運転手の定年についてのまとめ
バス運転手の定年に明確なルールはなく、安全な運行が難しいと判断した場合に現役運転手を引退するのが一般的です。
そのため、普段から健康維持を心がけながら、安全な運行を続けられれば、65歳を過ぎてもバス運転手として働くことができます。
バス運転手には、さまざまな運行があるため、引退を機に別の運転職へ転職する人も少なくありません。
今回紹介した求人も参考にしながら、引退後のプランについても考えておくようにしましょう。
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