1級自動車整備士の資格取得を検討するにあたって、受験資格や給与事情について気になっている人もいるでしょう。
実際に、1級の受験要件は、一種養成施設で所定の課程を修了するか、2級を取得した後、3年の実務を経験しなければなりません。
しかし、その分、職務の幅が広がり、給与水準が高くなると言われています。
この記事では、1級の受験資格について解説します。また、試験の難易度・受験の流れ・仕事内容・給料事情についても詳しく解説するので、1級を目指したり転職を検討していたりする人は参考にしてください。
1級自動車整備士の受験資格
1級自動車整備士の受験要件は、受験者によって異なります。
次の3つの視点で1級の受験要件について解説します。
- 専門学校に通う場合
- 独学で受験する場合
専門学校に通う場合
1級の試験は学科と実技の2種類です。専門学校に通う場合は実技が免除される場合もあります。
専門学校は大きく分けて2種類です。
- 一種養成施設(整備専門学校・高校・職業能力開発校など)
- 二種養成施設(各都道府県自動車整備振興会の自動車整備振興会技術講習所)
一種養成施設で養成課程を修了した場合、実務経験がなくても1級の受験資格を得られます。
二種養成施設での学習の場合は、2級を取得後、3年の実務経験が必要です。
参考:受験資格について|国土交通省
参考:自動車整備士養成施設について|国土交通省
独学で受験する場合
独学で1級を受験する場合、3級の取得から始める必要があります。
3級を取得後、2級を目指します。そして、2級の取得後、3年の実務を経験しなければなりません。
独学の場合、費用負担は基本的にありませんが、1級の受験要件の獲得に時間を要します。
1級自動車整備士:受験資格以外の知るべきこと
1級を目指すにあたって、受験要件以外にも知っておきたいことがあります。ポイントは次の4つです。
- 1級自動車整備士の試験の難易度
- 1級自動車整備士を受験する流れ
- 1級自動車整備士の仕事内容
- 1級自動車整備士の給料事情
それぞれについて解説します。
1級自動車整備士の試験の難易度
1級は、自動車整備関連の中で最も難易度の高い国家資格です。1級の試験は学科と実技の2種類あります。また、学科は筆記と口述の2つに分かれています。
1級の学科・実技の合格率は、次の通りです。
年度 | 種類 | 受験者数 | 合格率 |
平成30年度 | 筆記 | 3,403人 | 49.3% |
口述 | 1,682人 | 95.2% | |
実技 | 277人 | 19.9% | |
令和元年度 | 筆記 | 2,825人 | 52.7% |
口述 | 1,554人 | 96.4% | |
実技 | 370人 | 73.8% | |
令和2年度 | 筆記 | 2,529人 | 61.1% |
口述 | 1,592人 | 99.2% | |
実技 | 372人 | 35.5% | |
令和3年度 | 筆記 | 2,341人 | 59.0% |
口述 | 1,397人 | 95.1% | |
実技 | 367人 | 56.1% | |
令和4年度 | 筆記 | 2,456人 | 53.0% |
口述 | 1,364人 | 97.6% | |
実技 | 294人 | 64.3% |
一方で、令和4年度第2回の2級の合格率は、ガソリン88.3%・ジーゼル(ディーゼル)96.3%・シャシ73.7%でした。
2級の合格率と比較すると、1級の難易度の高さが見て取れるでしょう。
出典:試験結果(受験者及び合格者数等) | 一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会(JASPA)
1級自動車整備士を受験する流れ
1級を受験するにあたっての流れは次の通りです。
- 技能検定申請
- 技能検定の受験
- (必要に応じて)免除申請
- 合格証書の交付
それぞれについて解説します。
技能検定申請
1級の試験は、一般社団法人日本自動車整備振興会連合会が主催する「登録試験」と国土交通省が主催する「検定試験」の2種類あります。登録試験の運営は、各地域ブロックの自動車整備振興会が担当しています。
国土交通省の検定試験も用意されていますが、登録試験を受験するケースが一般的です。
登録試験の申請に必要な書類は次の通りです。
- 登録試験受験申請書
- 受験資格を証明する証明書
- 写真1枚(申請前6か月以内に脱帽し正面撮影で、縦4.5cm・横3.5cm)
- はがき(学科:4枚・実技:2枚)
- 受験料(学科:9,300円・実技:14,000円)
参考:自動車整備士を希望されるみなさんへ | 一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会(JASPA)
技能検定の受験
試験は、学科の筆記が最初に開催されます。筆記に合格すれば口述に進めます。
口述も合格できれば、実技です。ただし、一種養成施設で所定の課程を修了した場合、2年間は実技が免除されます。
免除申請(必要に応じて)
登録試験に合格した場合、検定試験の受験が免除されます。ただし、登録試験を受験した場合、検定試験の免除申請が必要です。免除申請は、登録試験の申請と同様の各地域ブロックの自動車整備振興会に提出しましょう。
静岡県自動車整備振興会の情報をもとに必要書類を紹介します。
- 検定試験申請書
- 収入印紙(1科目につき2,450円)
- 印鑑(認印可・シャチハタ不可)
- 実務経験証明書
- 整備士合格証書の写し(1級申請者は2級合格証書の写し)
- 卒業証書の写しまたは卒業証明書
- 学科合格証書(原本)(検定試験または登録試験合格証書:有効期間2年)
- 二種養成施設講習修了証または証明書(振興会技術講習所発行の修了証書:有効期間2年)
- 連絡用はがき1枚
検定試験を受験した場合、免除申請は不要です。
参考:自動車整備士試験全部免除申請について | 一般社団法人静岡県自動車整備振興会 アーカイブ
合格証書の交付
1級の合格証書が交付され、晴れて資格保持者と認められます。
1級自動車整備士の仕事内容
1級は、自動車整備関連のほとんどの業務を担当できます。たとえば、点検・修理・整備などです。
点検、分解整備、板金・塗装業務の具体例は次の通りです。
業務区分 | 業務内容 |
点検 | エンジン・ブレーキ・サスペンション・電気系統などの部分をチェックし、異常があれば修理や調整ができます。 |
分解整備 | 故障した部品を取り外し、修理または交換ができます。たとえば、エンジンのオーバーホール、トランスミッションの修理、ブレーキの整備などです。 |
板金・塗装 | 車体の修理や塗装ができます。具体的には、事故で損傷を受けた車両の修復や、塗装の仕上げ作業です。 |
また、2級では、エンジンの種類によって取り扱えない車両が出てくる可能性もあります。しかし、1級であれば、エンジンの種類にかかわらず取り扱えます。
1級を取得していれば、ほとんどの業務を担当できますが、検査員の検査業務だけは担当できません。
1級自動車整備士の給料事情
厚生労働省が公開している令和4年賃金構造基本統計調査の結果を踏まえた自動車整備士の平均年収は次の通りです。
年代 | 平均年収 |
~19歳 | 249.28万円 |
20歳~24歳 | 325.84万円 |
25歳~29歳 | 385.58万円 |
30歳~34歳 | 457.55万円 |
35歳~39歳 | 511.19万円 |
40歳~44歳 | 527.98万円 |
45歳~49歳 | 541.09万円 |
50歳~54歳 | 529.13万円 |
55歳~59歳 | 516.32万円 |
60歳~64歳 | 399.21万円 |
65歳~69歳 | 347.54万円 |
70歳~ | 305.63万円 |
しかし、自動車整備士の平均年収には、1級以外の資格保持者も含まれています。実際、自動車整備士として働く人のうち、8割程度が2級と言われています。
したがって、1級に限定すると、もう少し平均年収は高くなるでしょう。
参考:自動車整備士 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET)
1級自動車整備士の受験資格についてのまとめ
今回は、1級の受験要件を中心に、難易度・受験の流れ・仕事内容・給料事情などについて解説しました。
1級の受験要件は、一種養成施設で所定の課程を修了するか、2級を取得した後、3年の実務を経験するかです。
また、1級の難易度は、自動車整備関連の資格で最も高いと言われています。
その分、1級を取得できれば、職務内容の幅が広がったり給与水準が高くなったりする可能性が大いにあります。
今後、1級の取得を検討しているのであれば、挑戦してはいかがでしょうか。
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