近年問題視されているバス運転手の離職率の高さや、長距離バスなどの過酷な労働下での大きな事故で、これまで日本という国を支えてきた公共交通機関の安全な運行が危ぶまれています。
そこで、働き方改革の一環としてバス運転手の労働状況改善のために、2024年度から改善基準告示が改正されることとなりました。
本記事では、バス運転手の残業時間の実態と、2024年4月から施行された改善基準告示とその残業時間の上限規制などについて解説します。
バス運転手への転職を検討中の方は参考にしてください。
バス運転手の残業時間の実態
まずは、バス運転手の残業時間の実態について解説していきます。
バス運転手に限らず、トラックやタクシー、配達などの運送の仕事は残業が多いイメージがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。
バス運転手の残業時間は平均の3倍だった
バス運転手の残業時間は平均の3倍だったというデータがあります。
路線バスを含むバス運転手は、年平均労働時間が2520時間と国の調査でわかりました。これは、他の全業種の労働時間より396時間も長いという結果です。
また、バス運転手の年平均残業時間は492時間で、他の業種の平均の3倍の残業時間にもなります。
勤務時間ではなく拘束時間が長かった
このような長時間労働が長年問題になっていなかった背景としては、バス運転手は勤務時間ではなく拘束時間が長かった点が挙げられます。
このバス運転手の“拘束時間“は勤務時間には当たらないため、法的には問題ないという部分がポイントです。
例えば、路線バスでは朝と夕方のラッシュ時に多くの運転手を確保しなければなりません。したがって、朝夕に配置した運転手を、昼間などのピーク時以外の時間帯には“中休み“という形で休憩を取らせる会社が多くあります。
しかし、中休み中は勤務時間とはみなされず、賃金も発生しないことがほとんどで、ただ単に拘束されている時間となるのです。
関連記事:バス運転手はやめとけと言われる7つの理由|やりがいとメリット
2024年4月から変わったバス運転手の残業時間
2024年4月から時間外労働の上限規制の制度が適用されたため、バス運転手の残業時間も2024年4月から変わりました。
この上限は、バス運転手を含む自動車運転業務のほかに、建設事業や医師などにも適用されます。
ここでは、2024年4月から変わった残業時間などの上限を詳しく解説します。
残業時間は年960時間までに
バス運転手やタクシー、トラックなどの自動車運転業務の残業時間は、年960時間までになりました。
これは、一般的に適用されている年720時間までの残業時間よりは、やや多めに設定されています。
また、他業種に原則的な上限として適用される下記の条項は、自動車運転業務に対しては適用されません。
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計が2~6ヶ月の平均がすべて1ヶ月当たり80時間以内
- 時間外労働が1ヶ月45時間を超えることができるのは年間6ヶ月以内
あくまで、年間トータルの残業時間の上限が960時間までということです。
出典:ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示|自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト
拘束時間上限は年3,300時間・月281時間に
バス運転手の拘束時間上限は年3,300時間・月281時間になります。
バス運転手などの自動車運転業務では、その特殊な事情から、残業時間だけでなく拘束時間についても上限が設けられました。
ただし、貸切バスなどの運転業務においては、年3,400時間を超えない範囲ならば、月の拘束時間が294時間まで延長できることが労使協定で決まっています。
また、1日の休息時間は、勤務が終わってから継続して9時間以上、基本的には11時間の休息時間を取らなければならないとしています。
出典:バス運転者の改善基準告示|自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト
バス運転手の残業時間に関連してよくある質問
それでは、ここからはバス運転手の残業時間に関連してよくある質問を紹介していきます。
改善基準告示とは何ですか?
改善基準告示とは、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(厚生労働大臣告示)のことを言います。
まだ、自動車運転の業務についての法整備が不十分であったとき、貸切バスや長距離バスでは、運転手の過酷な長時間労働が黙認されていました。
しかし、2010年代にバス運転手の長時間労働が原因で、多数の死傷者を出す大事故が発生しました。その事故を受けて、自動車運転者の健康と国の安全確保の面から、長時間労働を防ぐための明確な基準が設けられたのです。
今回の改善基準告示には、バスやトラック、タクシー、ハイヤーなどの自動車運転者の労働環境を向上させるため、拘束時間の上限や休息時間などが示されています。
バス運転手に該当するのはバス会社の運転手だけですか?
今回の改善基準告示に記された「バス運転手」に該当するのは、バス会社に所属する運転手だけではありません。
バス運転手は、自動車運転者の中で主に人を輸送する業務に従事する者を指します。
したがって、路線バスや長距離バス、貸切バスのみならず、施設の利用者や企業の従業員、幼稚園など生徒を送迎するバスや、旅館などの客を送迎するバスの運転手なども該当します。
バス運転手の1日の拘束時間は?
バス運転手の1日の拘束時間は13時間となります。
拘束時間とは、勤務時間+休憩時間のことで、出社(始業)して退社(終業)するまでの時間のことを言います。
したがって、休憩時間は個人の私用で使える自由な時間とはなりません。
もし、何かの事情で拘束時間を延長しなければならない場合でも、1日15時間が拘束時間の上限です。
また、1日13時間を超えて14時間となる拘束時間が発生するのは、週3回までを目安として、可能な限りそれを抑える努力が必要となります。
バス運転手の1日の休息期間は?
バス運転手の1日の休息期間は、勤務終了後11時間が原則となります。
休息期間とは、バス会社などの使用者の拘束を受けない時間のことで、業務が終了してから次の業務が始業するまでの時間を指します。
「休憩時間」とは異なり、個人が私用で自由に使える時間のことです。
なお、バス運転手の1日の休息期間は、最低でも9時間は確保しなければならないと改善基準告示には明記されています。
関連記事:バス運転手の休日は32時間以上と決められている理由
バス運転手の運転時間の限度は?
バス運転手の運転時間の限度は、2日間を平均した1日当たりの運転時間が9時間までと定められました。
加えて、4週間を平均して1週当たり40時間を超えてはいけません。
また、貸切バス等運転手の場合は、52週のうち16週は、4週を平均して1週当たり44時間まで勤務することが可能と労使協定で決められています。
ただし、52週間の総運転時間が2,080時間を超えないという条件を守らなければなりません。
バス運転手は連続して何時間運転していいのですか?
バス運転手は連続して4時間運転していいと設定されています。
ただし、高速バス、貸切バスの高速道路での連続運転は、おおむね2時間までとなるよう努力しなければなりません。
また、貸切バスで夜間運行する場合は、高速道路以外の連続運転時間も2時間が限度という努力義務が課せられています。
出典:バス運転者の改善基準告示|自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト
バス運転手の残業時間についてのまとめ
今回は、改善基準告示によって2024年4月から変わったバス運転手の残業時間についてまとめてきました。
本記事を参考にして、バス運転手への就職・再就職などを検討してみてください。
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