物流業界にはトラック運転手の他にも、倉庫で在庫管理をしたり、荷物のデータ入力をしたりする『物流事務』の仕事があります。
他の事務職と比べ時給が高い傾向にあり、挑戦したいと思ったものの、具体的な仕事内容や志望動機の書き方が分からないという方もいるのではないでしょうか。
今回は物流事務の志望動機の書き方や仕事内容、どのような人が向いているのかについてわかりやすく解説していきます。
事務職で働いている人はもちろん、これから物流事務に転職を考えている人は是非参考にしてみてください。
物流事務の志望動機:書く上で把握しておく3つのこと
物流事務は、物流センターや運送会社、その他倉庫業で事務処理を行うのが仕事であり、他業種の事務作業と比べると業務内容が幅広いと言えます。
物流事務に従事する上で必須となる資格はないので、誰でも挑戦できる人気の職種となっています。
つまり競争率が高いということでもあるので、採用されるためには履歴書の志望動機や面接で他の応募者との差別化を図ることが重要です。
ここでは、物流事務の志望動機を書く上で把握しておくべき、物流業界の現状について解説していきます。
物流業界の景気
物流業界の景気や今後の動向を知っておくと、会社が社員に対し求めていることを把握しやすくなり、面接で質問された時にも答えやすくなります。
現在の物流業界を語る上で欠かせないことは2つあります。
・EC産業の急成長や生活スタイルの変化に伴う通販貨物の増加
・運転手の高齢化と2024年問題
近年、コロナウイルスの流行によって生活スタイルが大きく変化し、在宅ワークやリモートワークを会社が取り入れたり、感染対策として家で過ごしたりすることが多くなりました。
それに伴い通販を利用する人が増えて、個人でも商品を出品できるEC事業が急成長したため、通販関連の荷物が増加しています。
個別配送の荷物が増えたことにより、運送業界の需要はこれまで以上に高くなっています。
その一方で運送業界の課題となっているのが、トラック運転手の高齢化と2024年問題による収益の減少と運転手不足への懸念です。
国土交通省が公表している資料によると、平成28年時点での全職業の平均年齢は42.2歳となっています。
それに対し、大型トラック運転手の平均年齢は47.5歳で約5歳ほど高く、中小型トラック運転手も45.4歳と約3歳高い数字となっています。
今後も運送業界の需要が高まる中で、トラック運転手は高齢化が進み人手不足になると予想されており、早急な対策を行わなければいけない状態です。
そしてもう一つ、運送業界で大きな問題となっているのが『2024年問題』です。
長距離運送を中心に拘束時間が長い特徴がある運送業界は、働き方改革関連各法律の施行期日に5年の猶予が与えられていました。
働き方改革関連各法律の猶予期間は2024年3月31日までとなっており、それ以降は時間外労働の上限規制が年960時間以内となります。
2023年時点で、この年960時間の時間外労働を超えて働くトラック運転手はかなり多いとされており、規制が厳しくなれは運送会社はもちろん、トラック運転手の収入は大きく下がる可能性があります。
物流業界が抱える問題
物流業界が抱えている問題としては主に4つあると言われています。
・トラック運転手を含めた業界全体の高齢化
・長時間労働
・個別配送増加による再配達の業務効率化
・IT化の推進が遅れている
・配送スピード向上に対する現場の対応
この中でも特に問題と言えるのが、運送業界の高齢化と若手人材の参入が少ないことによる人手不足です。
これからも運送業界の需要は高い状態が続くと予想されている中で、トラック運転手は高齢化が進んでおり、近い将来トラック運転手不足がより深刻化すると予想されています。
この具体的な要因となっているのが『長時間労働』です。
厚生労働省が公表したデータによると、令和2年における年間労働時間は全産業平均が2,100時間となっているのに対し、中小型トラック運転手の平均は2,484時間、大型トラック運転手の平均は2,532時間となっています。
月に換算すると大型トラック運転手は36時間、中小型トラック運転手は32時間も長く働いていることが分かります。
参照元:厚生労働省 参考資料2 改善基準告示見直しについて(参考資料)
上記で解説した2024年問題に関しても、時間外労働が年に960時間を超えている運転手がいると答えた運送会社は全体で27.1%となっています。
参考元:公益社団法人 全日本トラック協会 第4回 働き方改革モニタリング調査について
このように長時間労働が当たり前であることは『トラック運転手=拘束時間が長くてきつい』といったイメージに繋がり、若い世代の労働者参入が少ない原因となっています。
物流事務に求められるスキル
物流事務に従事する上で必須となる資格はないものの、事務職である以上は最低限のパソコンスキルは必要と言えます。
高度である必要はありませんが、WordやExcelの基本的な操作ができると作業を進めやすくなります。
物流事務は業務の範囲が広く、急な変更やトラブルが発生することもあるため、スピーディーな作業や臨機応変な対応が必要です。
物流事務の志望動機を考える前に理解しておくべき仕事内容
物流事務の業務範囲は広く、会社や現場によって任される業務は異なります。
一般的な物流事務の仕事内容は下記の通りです。
・入庫商品データの入力や伝票の作成
・出荷商品のデータ処理や伝票の作成
・当日の入庫・出荷予定のリスト確認
・顧客からの電話対応や運転手への対応
・管理データの処理や修正
・翌日の準備等
業務形態にもよりますが、倉庫では、出荷予約に応じて帳票の作成や、出庫依頼(ピッキング)をかける作業があります。
新たに入庫した荷物に関しても、どこに蔵置したのかなどをデータ入力し管理を行います。
総務部がないことが多い運送会社や物流センターでは、荷物に関する問い合わせや集荷依頼などの電話対応も行わなければいけません。
荷主からの依頼変更があった場合には、ドライバーに連絡しルートの変更を伝えるなどして、業務が円滑に回るように対応します。
志望動機を作成する前に理解すべき物流事務のメリットとデメリット
業務範囲の広い物流事務は、他業種の事務職と比べてメリット・デメリットもあります。
物流事務として働くメリット
物流事務で働くメリットは主に3つあります。
一つ目が『時給が高い』ということです。
求人にもよりますが、業務範囲が広い物流事務は他業種の事務職と比べ、時給が高い傾向にあります。正社員として勤務する場合も同様です。
現在人手不足が続いている物流業界では、「時給や給与を高く設定し、優秀な人材を確保したい」というのが企業側の本音でしょう。
二つ目は『事務関連の作業でスキルアップができる』ということです。
業務範囲が広いため、あらゆる業務を経験できます。
パソコン入力が苦手な人でも、作業をしているうちにタイピング能力が身に付き、経理を兼任すれば簿記の知識も身に付けられます。
企業によっては資格取得支援制度を設けている会社もあり、資格取得に挑戦するなど、スキルアップしながら働くことが可能です。
三つ目が『物流事務の求人が豊富』ということです。
物流企業は日本全国にあり、人手不足であることから地域を選ばず求人が豊富にあります。
たとえ途中で辞めたとしても、働きたいと思った時には過去の経験やスキルを活かして再就職することも十分に可能でしょう。
物流事務として働くデメリット
次に物流事務として働くデメリットについて解説していきます。
まず一つ目のデメリットは『担当業務が幅広く忙しい』ということです。
受付担当や総務担当がいないことが多く、事務関連の作業を幅広くこなさなければなりません。
データ入力はもちろん、お客様からの電話対応も行い、トラック運転手と連携を取りながら業務を円滑に回していきます。
会社によっては経理も担当することもあり、少人数の職場だとかなり忙しいと言えます。
二つ目のデメリットは『対応しなければならないトラブルが多い』ということです。
ドライバーは運転に集中しなければならず、運行中に発生した遅延や強風などによる被害、車両の故障で連絡を受けた際にはお客様へ連絡しなければなりません。
全ての責任を負い矢面に立って対処するというわけではないのですが、臨機応変に対応する必要があります。
物流事務の志望動機:書き方のコツ
物流事務の志望動機を考える上で知っておくべき物流業界の動向や、物流事務のメリット・デメリットについて解説してきました。
ここでは志望動機の書き方について、ポイントを紹介していきます。
志望動機の書き方のコツ
採用担当者に刺さる志望動機を書くためには、2つのポイントを意識する必要があります。
一つ目は結論から述べるPREP法の活用、二つ目は会社が求めるニーズとの共通点を探し自己アピールしやすくすることです。
PREP法を活用する
PREP(プレップ)法とは、結論から伝えることで相手に自分の意見を簡潔に伝えられる方法です。
話す順番は下記の通りとなります。
・P:Point(結論)
・R:Reason(理由)
・E:Example(事例や具体例)
・P:Point(結論を繰り返す)
この順番で話せば、聞き手は内容に納得しながら聞くことができて、最後にもう一度結論を伝えるため、伝えたいポイントを印象付ける効果もあります。
また、結論から伝えると『結局何を伝えたいのかわからない』といった状態になりにくく、内容も簡潔になるので相手に理解してもらいやすくなります。
自分の中で考えがあるものの、どう伝えたらいいのかわからないといった場合にも、PREP法を使用すると情報を整理することが可能です。
会社が求めるニーズとの接点を探す
応募数する企業がどのような人を求めているのかをリサーチして、自分との接点を探すことも非常に大切です。
どのような人を求めているのかは求人詳細を見るといいでしょう。
・基本的なパソコン操作ができる方
・テンキー入力ができる方
・輸出入に関する知識をお持ちの方
・配車の実務経験がある方
・未経験でもOKですが長く働ける方
上記項目は、全て実際の物流事務求人の内容に記載されていたものです。
このように会社側が求める人材は違います。
『未経験でもOK』といった記載しかないような場合には、会社のホームページを確認して何を取り扱っているのかのリサーチを行い、自分との接点を見つけてみるといいでしょう。
必ず接点や活かせる経験が必要というわけではありませんが、アピールしやすくなるので、なるべく探してみましょう。
関連記事:物流業界の志望動機の書き方とは?良い例と悪い例も紹介
物流事務の志望動機:盛り込みたい3つの内容
志望動機をわかりやすく説明する方法について解説してきましたが、その中に盛り込んでおくべき内容があります。
盛り込むべき内容は3つです。
・物流業界を選ぶ理由
・志望した会社を選んだ理由
・将来のビジョン
この3つの項目について詳しく解説していきます。
物流業界を選ぶ理由
事務職はあらゆる業界にありますが、その中でもなぜ物流業界の事務職を選んだのかを記入していきます。
物流事務をしたいと思ったきっかけなど、些細なことでもいいので正直に記入しましょう。
志望した会社を選んだ理由
志望した会社を選んだ理由についても記入していきます。
給与が高いことや、条件が自分に合っているからといった理由はなるべく控え、企業理念などを参照にするといいでしょう。
どうしても見つからない場合は、会社のホームページで社風や理念を調べてみると考えやすくなります。
将来のビジョン
最後は採用された後の目標やビジョンです。
物流事務を通して将来はどんなことをしたいのか、どのように役立てられるのかを記入しましょう。
担当者は、採用することで今後どのように活躍してくれるのかも含めて判断するため、とても重要なポイントと言えます。
物流事務の志望動機:4つの例文
ここまで物流事務の志望動機の考え方や、伝え方について解説してきました。
次に志望動機の例文を紹介していきます。
志望時の状況によって例文の内容が違うため、参考にしてみてください。
中途経験者向けの良い例文
過去に物流事務の経験がある場合は『前職での経験や身に付けたスキルの活かし方』を意識した内容にします。
【例文】
更に大きな規模で、前職の経験やスキルを活かしながら物流事務として働きたいと思い、貴社を志望しました。前職では運送会社で物流事務をメインに行いながらフォークリフト操作による貨物の蔵置なども行っておりました。
蔵置場所のデータ入力や検索の知識、フォークリフト操作経験があります。このような経験とスキルを活かし、更に大きな規模での倉庫管理に挑戦したいと考え転職を決意いたしました。
貴社は様々な品目の荷物を取り扱っており、蔵置システムも複数採用していることから、これまでの経験を活かし、より成長できればと考えています。スキルを身に付けながら他のスタッフと協力しより働きやすくなるような取り組みを実施していきたいと思っております。
前職での実績や経験を伝えどのような知識があるのか、どう活かせるのかをアピールするようにします。
また『○○に向けた取り組みをしていきたい』といったような経験者目線での意見もあれば積極的にアピールしましょう。
中途未経験者向けの良い例文
次は中途で物流事務の経験がない場合の志望動機例文を紹介します。
【例文】
私たちの生活に欠かせない存在であり、大きな支えとなっている物流業界に関わる仕事がしたいと思い、貴社を志望いたしました。前職ではコンビニの店員として商品の陳列やレジ打ちをしておりました。
ある日、台風の被害により道路が寸断されたため商品が届かなくなったことがありました。その時にこれまで当たり前であった生活は、物流業界の人たちの支えがあったからということに気づき、私もその一員となり世の中に貢献したいと考え転職を決意いたしました。
貴社はコンビニのルート配送に特化しており、前職で得たコンビニ商品の配達に関する知識や経験が活かせるのではと考え志望いたしました。事務作業は未経験ですが、一つ一つ作業を覚えドライバーと連携しながら貴社の業務を支えられるようになりたいと考えております。
直接的なスキルや経験がなかったとしても、これまでの体験で何かしらの接点があれば積極的に活かし方についてアピールしましょう。
新卒向けの良い例文
最後に新卒向けの物流事務の志望動機例文を紹介します。
【例文】
学生時代から物流に関する関心があり、貴社の取り組みに興味を持ち志望いたしました。
大学ではロジスティクス関連分野について学んでおり、貴社の独自のシステムによって実現したスピーディーな配送を知りました。このようなシステムは今後さらに増えると予想される、災害や環境問題に必要不可欠だと考えております。
生産から流通、消費までの流れを効果的に管理する知識があり、貴社のさらなる発展にお力添えできればと思っております。
新卒の場合は、志望した企業についてどれほど理解できているかが大切です。
それを踏まえて、これまでに学んできたことや経験をもとにアピールを行い、入社後のビジョンを説明できればより良いでしょう。
悪い例文
最後に志望動機の悪い例について紹介します。
【例文】
近年、生活リズムは大きく変化し、通販貨物の取扱量が増加したことで物流会社の方たちも忙しくなっています。そのような中でも笑顔で毎日配送してくれるトラック運転手の方に感銘を受けて、私も物流業界で社会に貢献したいと思い貴社を志望いたしました。
志望した理由は悪くないのですが、求人の中から志望先の会社を選んだ理由がなく、自分がどのように今後活躍できるのかも記入されていないため、採用後のイメージが浮かびにくいと言えます。
物流事務の志望動機を書くには向いている人の特徴を理解する
ここまで物流事務の志望動機の書き方について解説してきました。
企業が求める人材と自分の接点を見つけるのはとても大切なのですが、物流事務が向いている人について知っておくことも重要です。
どのような人が向いているのかについて解説していきます。
コミュニケーション能力が高い人
物流業界では悪天候による遅延やトラックの故障、荷物の破損など急なトラブル発生は珍しくはありません。
このような時に被害を最小限に抑えるためには、トラック運転手との連携や普段からの密なコミュニケーションが必要です。
積極的に自分からいろんな運転手と話せる人は物流事務に向いていると言えます。
普通の事務職では物足りない人
事務職は決まった作業を覚えさえすれば、淡々とこなしていくだけとなります。
入力ミスなどに気を付ける必要はありますが、大きな変化やイレギュラーはほとんど発生しません。
このような一般事務の仕事に飽きて、物足りなさを感じている人には物流事務が最適と言えます。
常に臨機応変な対応が求められ、担当する業務も幅広いことから忙しく、イレギュラーも発生しやすいため刺激を感じながら働けます。
その分時給も高い傾向にあるので、やりがいをもって働けます。
物流事務の志望動機に関するよくある質問
ここでは物流事務に関するよくある質問について解説していきます。
物流事務の強みは?
物流事務の強みは経験できる業務の幅広さにあります。
一般的な事務職の作業はもちろん、物流に関する様々な業務に携わることが可能です。
職場によっては事務作業をメインとしながらも、検品作業やフォークリフトを運転するような方もいます。
PCスキルもWordやExcelを用いたデータ入力などを行うため、他の事務職へ転職した場合でも経験やスキルを十分に活かすことが可能です。
物流事務はきつい?
物流事務は突発的なトラブルに対応することが多く、担当する業務も幅広いため忙しくなりがちです。
複数のトラック運転手とコミュニケーションを取る必要もあり、トラブルが起きた際には代わりに荷主へ連絡して謝罪することもあります。
初めて経験するような場合には、辛く感じることも多くあります。
一方で仕事に飽きにくく、様々なスキルを身に付けることも可能です。
一般事務と比べ時給も高い傾向にあり、スキルを身に付けられればキャリアアップもできます。
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物流事務の志望動機に関するまとめ
今回は物流事務について解説してきました。
現在物流業界は人手不足が深刻化しており、2024年問題などもあることから働き方が大きく変わりつつあります。
そのような中で物流事務の仕事は需要が高まりつつあり、担当する業務の範囲はとても広くなります。
様々なスキルを身に付けられ、他の事務職よりも時給が高いので、今以上に収入を上げることも可能です。
未経験であっても物流事務への挑戦は十分可能であり、志望動機はこれまでの経験をもとに自分に合ったものを考えることで採用されやすくなります。
物流事務での経験は、別の事務職に活かせるため、興味がある場合は積極的に挑戦してみることをおすすめします。
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