大工は設計図を元に、家や建物などを作ったり、修繕したりする職業です。
この記事では、そんな大工の年収を年齢別、地域別、経験年数別に解説します。
大工が年収を増やす方法や、現役大工のリアルな声も紹介するので参考にして下さい。
大工の年収はどれくらい?
厚生労働省が毎年発表している「令和3年度賃金構造基本統計調査」によると、大工の平均年収は384万円でした。
次に年齢別や地域別、地域別など細かく分類した年収を紹介していきましょう。
年齢別
大工の平均年収を年齢別にまとめました。
年代 | 平均年収 |
~19歳 | 192万円 |
20~24歳 | 221万円 |
25~29歳 | 255万円 |
30~34歳 | 292万円 |
35~39歳 | 315万円 |
40~44歳 | 355万円 |
45~49歳 | 371万円 |
50~54歳 | 409万円 |
55~59歳 | 406万円 |
60~64歳 | 347万円 |
大工は見習い期間の年収は低く、20代のうちは200万円前半から中盤と低い水準です。
技術を磨いていくことで徐々に年収が上がっていき、親方や棟梁になる50代が最も高い400万円弱という結果になりました。
地域別
大工の平均年収は地域によって異なります。地域別にして表にまとめました。
地域 | 平均年収 |
北海道・東北 | 371万円 |
甲信越・北陸 | 390万円 |
関東 | 432万円 |
東海 | 406万円 |
関西 | 407万円 |
中国 | 366万円 |
四国 | 386万円 |
九州・沖縄 | 368万円 |
地域別に見ると、首都圏の関東が最も高い金額となりました。その中で東京都は462万円と全国1位の金額でした。
首都圏ほど報酬単価が高いことや、大規模な工事が行われているためと考えられます。
男女別
大工の平均年収は男女別でどれくらい離れているのか見ていきましょう。
年代 | 平均年収【男性】 | 平均年収【女性】 |
~19歳 | 194万円 | 174万円 |
20~24歳 | 223万円 | 213万円 |
25~29歳 | 260万円 | 236万円 |
30~34歳 | 300万円 | 244万円 |
35~39歳 | 326万円 | 246万円 |
40~44歳 | 372万円 | 261万円 |
45~49歳 | 388万円 | 268万円 |
50~54歳 | 429万円 | 285万円 |
55~59歳 | 423万円 | 282万円 |
60~64歳 | 355万円 | 245万円 |
年齢計 | 345万円 | 253万円 |
男女別で見た場合、平均では100万円近く差が離れた結果となりました。
大工は依然として男性社会であることが見受けられます。
役職別
大工の平均年収を主任、係長、課長、部長と役職別に分けた金額を紹介していきましょう。
こちらの金額は厚生労働省の令和3年度賃金構造基本統計調査と国税庁の民間給与実態統計調査を元に算出した結果となります。
役職 | 平均年収 |
主任 | 391万円 |
係長 | 487万円 |
課長 | 644万円 |
部長 | 711万円 |
役職で大きく年収が上がることが分かります。
大工の平均年収は一般企業と比較すると低い水準ですが、経験を重ね、知識や技術を磨き、昇給していけば高収入を得ることが可能です。
経験年数別
大工は経験を重ねることでどれくらい給与が変化していくのでしょうか。
経験年数ごとの平均月収をまとめました。
経験年数 | 平均月収 |
1~4年 | 39万円 |
5~9年 | 45万円 |
10~14年 | 51万円 |
15~19年 | 55万円 |
20~24年 | 60万円 |
25~29年 | 66万円 |
30~34年 | 61万円 |
35年以上 | 56万円 |
経験年数を重ねるごとに給与は着実に上がっていきます。25年以上になるとスキルだけでなく、役職もついてくるため、それが給与にも反映されていると考えられます。
企業規模別
最後に企業規模(社員人数)でどれくらい年収が異なるのか見ていきましょう。
こちらの金額は厚生労働省の令和3年度賃金構造基本統計調査と国税庁の民間給与実態統計調査を元に算出した結果となります。
企業規模 | 平均年収 |
10~99人 | 350万円 |
100~999人 | 299万円 |
1000人以上 | 240万円 |
一般的に大企業ほど給与が高い傾向がありますが、大工の場合は少人数の企業の方が高水準です。
必ずしも大企業に行けば高収入を稼げるわけではありません。技術やスキルを着実に磨いていくことで年収がアップしていくので、地道に努力を続けていきましょう。
大工の生涯年収
大工として一生働き続けた場合、生涯年収がどの程度になるか計算してみましょう。
計算条件は以下の通りです。
勤務期間:高校を卒業する18歳から定年の65歳まで38年間
年収:平均年収である384万円
35年×384万円=1億4592万円
約1億4500万円が大工の生涯年収です。
一般企業に勤める人が約2億と言われているので、大工は比較的低い水準となりました。
関連記事:大工の給料は安い?年齢別・地域別・経験年数別に徹底解説
大工の年収は種類で変わる
ひとくちに大工と言っても担当する仕事によって、様々な種類に分かれています。
大工の種類や仕事内容について紹介していきましょう。
建築大工
建築大工とは、家を建てるのが仕事です。その中でも木造の家を建造する大工を指します。
家と言っても木造や鉄筋、鉄骨など様々な種類がありますが、建築大工は木造建築のスペシャリストです。
住宅の大量製品化を進めていく中で鉄筋鉄骨住宅が増えてきましたが、木のぬくもりや質感は今でも人気のため、建築大工は需要があります。
宮大工
宮大工とは、古来からある日本の寺院や神社などの建築物を修繕・建築する大工を指します。
宮大工は伝統的な木造建築の造りを守り続けながら修繕・建築するだけでなく、長い年月をかけて培われた技術を後世に伝えることも重要な仕事です。
現代では宮大工の技術は日本の伝統的な建築物以外に、現代建築でも活かされています。寺社仏閣の耐震性はビルや公共施設に応用されています。
関連記事:宮大工って何?仕事内容やなり方、収入などをわかりやすく解説!
リフォーム大工
リフォーム大工とは、家のリフォームを手がける大工を指します。大工の中にはリフォームを行わず、新築だけを行う会社、リフォームも新築も行う会社もあるため、明確にリフォーム大工という名称を使わない会社もあります。
リフォーム大工の難しいところは創意工夫が必要なところです。
リフォームの場合、ゼロの状態からではなく、今ある状態からお客様の要望になるべく沿うようにしなければいけません。
リフォーム後はスッキリと簡単に出来上がっているように見えますが、そこには大工の熟練した経験や知識が詰まっているのです。
造作大工
造作大工とは、建築大工が建築物の外側を作り上げた後に、内側を作っていく大工を指します。
一般的に大工さんと呼ばれるのはこの造作大工です。
昔は建築大工から造作大工まで一貫して担当するのが大工と呼ばれていましたが、最近は分業化が進んでおり、外側専門の建築大工、内側専門の造作大工と分けられるようになりました。
造作大工は主に戸や障子、壁や天井など様々な建具の取付や工事を行っています。基本的には木材を加工して行うので、木材に対する深い知識を持ち合わせていないといけません。
型枠大工
型枠大工とは、コンクリート 工事を行う大工を指します。大工と言えば木を削ったり、木材を組み立てたりして家を建てていくイメージがありますが、型枠大工は家を建てる土台となるコンクリートの基礎を作るのが仕事です。
一般住宅やマンション、ビルといった建物だけでなく、高速道路や橋、トンネル、ダムなど様々な建築物に関わっています。
船大工
船大工とは、名前の通り船を造る大工を指します。屋形船や和船といった木造船を造るのが仕事です。
船を作ったり、修繕したりするだけでなく、設計から携わっています。
船というのは大きく分けると「和船」と「洋船」の2種類があります。和船とは漁船や屋形船といった日本古来からある船、洋船とはヨットやボートなどです。
どちらも受け継がれてきた技術や道具を用いて船を作っています。
墨出し大工
墨出し大工とは、建物の位置や大きさを測り、正確に建てるための作業を行う大工を指します。具体的には、建物の基礎や柱、天井の高さなどを測定し、水平位置や中心位置となる基準線を書き出すのが仕事です。
糸と墨を使って、建物の外周や内部に線を引くため墨出し大工という名前がついています。
今はレーザーの光に沿って線を引く「レーザー墨出し器」という新しい道具も使われています。
関連記事:大工ってどんな職業?なり方や仕事内容などを詳しく解説!
大工の年収は日当で変わる
大工の給料はサラリーマンのように月々の給料が固定されているのではなく、「日当×出勤日数」で計算されることが一般的です。
それぞれの能力や経験に応じた日当に、1か月間働いた勤務日数をかけた金額が毎月給料として支払われます。
日当は大工の実力によって異なりますが、おおよその相場は以下の通りです。
見習い:日当8,000円~10,000円
一人前:日当15,000円~25,000円
経験と技術を磨いていくほど日当は増え続け、ベテランになれば見習いの3倍以上稼げることもあります。
大工が年収1000万を超えるには
大工の平均年収は日本人の平均年収と比べると低い水準です。
そんな大工でも年収1000万円を稼ぐ方法を紹介します。
特殊な資格やスキルを身に付ける
大工になるためには特に資格は必要ありません。しかし、特殊な資格を取得することで希少性が生まれ、年収アップが期待できます。
例えば建築大工をしている人なら建築大工技能士という資格がおすすめです。
建築大工技能士とは、木造建築の大工工事に必要な技術を証明する資格を指します。1級から3級まであり、1級を取得するには大工として7年の実務経験が必要ですが、持っていると会社や取引先から信頼を得ることができます。
他には、宮大工は特殊なスキルが求められるため、大工の中でも年収が高いと言われています。
寺社仏閣という歴史のある建築物を、木組み工法という釘を使わず木を組み合わせて建てる技法を使っているので、専門的な知識や技術が必要です。
上述した建築大工技能士の資格を取得していれば宮大工に転職しやすいので、高年収を目指したいのであれば取得を目指しましょう。
施工管理への転職
大工から施工管理へ転職する方法があります。施工管理は平均年収が約550万円と、大工よりも200万円近く年収が高いです。
また、福利厚生が充実している企業が多く、労働環境が大工よりも整っているところが多い傾向にあります。
大手であれば年収1000万円稼ぐのも不可能ではありません。
施工管理は大工を管理する立場であるため、大工の経験が活かせる職業です。
独立開業する
実際サラリーマン大工として年収1000万円を稼いでいる人はほとんどいません。1000万円以上稼ぐ大工の多くは独立開業した人です。
独立して仕事の単価を上げる、従業員を採用して仕事の量を増やすなど行えば、年収1000万円以上を稼ぐことも十分に可能です。
独立にはリスクがつきものですが、やればやるほど収入も増えていくので、たくさん稼ぎたい人は独立を検討してはどうでしょうか。
年収に関する現役大工の本音
大工として働いている人が実際年収についてどう思っているのか、いくつかの声をまとめました。
収入は少ないけど、納得はしている
大工見習い時の給料はサラリーマンと比べると、かなり低い傾向がありました。ただし、それに対する不満が少なかったそうです。
まだ技術も何もなく、出勤しても掃除か簡単な作業しかできず、会社に貢献していないため、給料が低くても納得していた方が多くいたようです。
技術が身についていけば給料も上がっていく
初めは給料が低いけども、技術が磨かれれば任される仕事も増え、同時に給料も上がっていったそうです。
最初の3年は給料も低く、我慢が必要だったが4年目から一気に給料が上がり、仕事も楽しくなっていったという声が見受けられました。
親方になれば単価は上がるけども…
一人前となり、親方になれば給料もこれまでの数倍もらえるようになるが、道具や車など様々なものにお金がかかるといった問題があるようです。
お弟子さんにご飯をおごることもあるので、支出も増えていくのは仕方ないかもしれません。
また、弟子に古くなった道具をあげることもあるため、弟子は道具には困らないといった声がたくさんありました。
大工の将来性
大工が今後も安定して働き続けられるか気になりますよね。
結論から言えば、大工の将来性はあります。その理由を解説していきましょう。
建物がある限りは需要がある
大工は建物を造る職人です。建物がある限り、大工の需要はあります。建物を造るだけでなく、修繕やリフォームも大工の仕事です。
人がいる限り、大工は必要でしょう。
新築は減少傾向だがリフォームが増加傾向
新築の仕事は年々減少傾向にありますが、リフォームの仕事は増え続けています。
最近は居住空間への関心が高まっており、人々はこれまで旅行や娯楽に費やしていたお金を住宅に回すようになりました。
DIYがブームとなったように自宅を自分で改装し、自分ではできない部分をプロの大工に依頼するケースもあります。
3Dプリンターが大工の仕事を奪う?
3Dプリンターの普及で大工の仕事がなくなると聞いたことはありませんか?
結論から言えば大工の仕事はなくなりません。
なぜなら建築基準法によって、3Dプリンターで建物を造ってはいけないと定められているからです。
建築基準法が改正され、3Dプリンターを使用してもいいようになっても、細かい部分は大工の仕事であるため、今後も大工の需要はなくならないでしょう。
大工に関してよくある質問
大工に関するよくある質問をまとめました。
大工の初任給はいくら?
大工の初任給は16~17万円が相場とされています。
厚生労働省の令和元年度賃金構造基本統計調査によると、大卒の初任給が約21万円、高卒が約16万円と、大工の初任給は高卒と同じくらいの水準です。
参考:厚生労働省「令和元年度賃金構造基本統計調査(初任給)の概況」
大工の福利厚生ってどんな感じ?
大工の福利厚生は会社によって差があります。しかし、近年は人手不足により、福利厚生を充実させて人材を集める会社が増加傾向です。
会社選びの際、給料以外に手厚い福利厚生があるかどうかが重要視されるようになったためです。
社会保険はもちろん、資格手当や技能手当、住宅補助や社員寮がついている会社もあります。
昔と比較すると非常に恵まれた環境になっているのは間違いないでしょう。
関連記事:建設業で働く個人事業主の給料ランキングを職種別に紹介
関連記事:鳶職の給料は高い?平均年収や収入アップに役立つ資格を紹介
大工の年収についてのまとめ
大工の平均年収は決して高くないですが、経験やスキルを磨けば高収入を得ることは可能です。
また、大工の経験を活かし、施工管理へ転職するほか、独立すれば年収1000万円以上を狙える可能性は高いでしょう。
人間がいる限り、建物は必要なので、今後も需要があり、将来性の高い職種と言えます。
何かを作りたい、安定した仕事に就きたいという人には大工は魅力的な仕事です。
興味のある人はぜひ大工を目指してはどうでしょうか。
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