建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)の難易度と合格率|受験資格や過去問について
建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)の受験を考えるにあたって、試験の難易度や合格率が気になっている人は多いのではないでしょうか。
また、「勉強時間を作れるだろうか」「勉強が仕事のパフォーマンスに影響しないだろうか」といった学習面での不安を抱えている人もいるでしょう。
本記事では、建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)の難易度や合格率、受験資格、試験概要について解説します。
あわせて、仕事内容や今後のキャリアパスも解説していきます。
建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)の資格を取得してキャリアアップを図りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の合格率と難易度
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の合格率と難易度について、過去の数字をもとに解説していきます。
難易度
建築物環境衛生管理技術者の試験は、一般的に難易度が高いとされています。
難易度の高さには以下のような理由が挙げられます。
- 試験範囲が広い
- 問題数が多い
- 各科目の正答率が40%に満たないと不合格になる
- 試験が年に1度しかない
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の問題数は180問とボリュームが多く、試験範囲は7科目あります。
正解率は全体で65%以上かつ各科目で40%以上を満たす必要があり、1科目でも下回ると不合格のため、すべての科目を網羅しなくてはなりません。
また、働きながら挑戦する人が多いため、試験が年に1度しかないと勉強のモチベーションが保ちにくいことも理由の1つです。
このように比較的難易度が高い試験ではありますが、過去問を中心にしっかりと学べば合格の可能性を高められます。
出典:合格率はどのくらいですか?|公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター
合格率
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の合格率は、例年10%~20%程度です。
2021年、2020年、2019年の合格率の推移を以下の表でまとめました。
実施年度 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 |
2021年 | 17.7% | 9,651人 | 1,707人 |
2020年 | 19.5% | 9,924人 | 1,933人 |
2019年 | 12.3% | 10,146人 | 1,245人 |
年度によって変動はありますが、おおよそ20%以下の合格率となっており、過去52回の合格率の平均は18.4%です。
また、合格率が高い年度の次の年度は合格率が低くなっていることがわかります。
この傾向は2016年以前の推移でもみられるため、建築物環境衛生管理技術者(ビル管)試験の特徴の1つと言えるでしょう。
受験者数は例年1万人前後で推移しています。
近年受験者数の大きな変動はありませんが、2020年までは8000人未満であったことから、建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の需要は増加していると考えられます。
出典:「第52回建築物環境衛生管理技術者試験」の合格発表|厚生労働省
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の受験資格
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の受験資格は、建築物における環境衛生上の維持管理に関する実務経験を2年以上有する人です。
具体的には、以下の建物での実務経験が対象となります。
- 興行場(映画館、劇場など)
- 百貨店等
- 集会場(公民館、結婚式場など)
- 図書館、博物館、美術館
- 遊技場(ボーリング場、ダンス場など)
- 店舗、事務所
- 学校(研修所を含む)
- 旅館、ホテル
- その他上記の用途に類する用途の建物
また、経験年数や学歴などの条件を満たせば、講習受講で資格取得する方法も選択可能です。
講習の場合は受講を修了することで資格取得できますが、対象者が限られることや費用が高額なことからハードルが高い方法となっています。
出典:国家試験情報|公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の試験概要
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の試験概要について解説します。
試験の内容と範囲
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)試験は、公益財団法人日本建築衛生管理教育センターによって1年に1度実施されます。
出題科目は7科目で合計180問です。
試験科目とそれぞれの出題数は以下のとおりです。
試験科目 | 出題数 |
建築物衛生行政概論 | 20問 |
建築物構造概要 | 15問 |
室内環境衛生 | 25問 |
空気環境の調整 | 45問 |
給水及び排水の管理 | 35問 |
清掃 | 25問 |
ねずみ、昆虫等の防除 | 15問 |
試験問題の約半分はテキストの知識を暗記していれば対応できる内容です。
残りの半分は、基本的な知識を前提として応用的な考えが試される問題構成になっていることが多いです。
出典:国家試験情報|公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター
問題の形式
試験は5択のマークシート方式です。
マークシートの筆記試験のみで実技試験や実地試験はありません。
出典:国家試験情報|公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター
試験にかかる時間
試験時間は午前3時間と午後3時間で合計6時間です。
午後と午前に実施される試験科目はそれぞれ以下のとおりです。
午前の部 | 午後の部 |
建築物衛生行政概論 | 建築物の構造概論 |
建築物の環境衛生 | 給水および排水の管理 |
空気環境の調整 | 清掃 |
ねずみ、昆虫等の排除 |
午前の部は3科目、午後の部は4科目と午後の方が1科目多いものの、問題数はどちらも90問ずつです。
時間配分を考えると1問あたり約2分となりますが、科目の得意・不得意に合わせて時間の調整が重要です。
なお、試験開始から1時間ほど経過すると途中退室が可能になります。
午前の部で問題を解き終わって見直しが十分であれば、早めに退室して午後の学習に時間を充てる方法もあるでしょう。
出典:国家試験情報|公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター
合格のボーダーライン
科目ごとの得点率が40%以上、かつ全体の得点率が65%が合格のボーダーラインです。
そのため、1科目でも得点率が40%を下回ると、たとえ全体の得点率が70%の場合でも不合格になってしまいます。
苦手科目は得意科目である程度カバーできますが、ボーダーラインを突破するための最低限の得点力は必要になります。
出典:国家試験情報|公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター
受験費用
受験費用は13,900円(非課税)です。
郵便局の窓口で支払う必要があるため、仕事をしている人は余裕を持って手続きするようにしましょう。
出典:国家試験情報|公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター
試験場所
試験場所は札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、福岡市の6か所です。
全国各地で実施しており、最寄りの試験会場で受験が可能です。
出典:国家試験情報|公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の勉強方法
難易度が高い建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の試験を突破するためには、正しい勉強方法を知ることが重要です。
ここでは、建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の勉強方法について6つ解説します。
まずは過去問で自分のレベルを知る
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の勉強方法の1つ目は、まずは過去問で自分のレベルを知ることです。
過去問はインターネットで検索すると数年分が見られます。
試しに過去問を解いてみて、現状の理解度を確認してみましょう。
自分のレベルを知ることで今後の計画が立てやすくなり、試験勉強を始めるための足掛かりになります。
講習を受ける
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の勉強方法の2つ目は、講習を受けることです。
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)試験の受験希望者は、講習を有料で受講できます。
講習の正式名は「建築物環境衛生管理技術者講習会」で、公益財団法人日本建築衛生管理教育センターが全国各地で開催しています。
講習内容 | 試験範囲の7科目、計101時間 |
受講料 | 108,800円(テキスト等教材費含む) |
開催日数 | 18日前後 |
受講対象者には規定があり、学歴や実務経験年数、所持免許などによって細かく定められています。
詳細を知りたい場合は開催団体に問い合わせてみてください。
過去問をくり返し解く
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の勉強方法の3つ目は、過去問をくり返し解くことです。
例年出題される問題の多くは過去の試験の問題と類似しています。
そのため、過去問をくり返し解くことで、問題のパターンに慣れながら理解を深められます。
また、効率的に知識を定着させるためには、間違えた問題だけを正解できるまで解くことが大切です。
何度くり返しても正解できない場合は、参考書やノートを確認して知識を整理しましょう。
ただ問題数をこなすのではなく、理解が不足している部分を重点的に反復することが大切です。
オンライン学習で知識を広げる
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の勉強方法の4つ目は、オンライン学習で知識を広げることです。
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)試験は、独学で最低200時間程度は必要と言われています。
効率的に学習を進めるためには、過去問とあわせてオンライン学習を利用するべきでしょう。
オンラインの動画教材は、音声と映像を交えて分かりやすく解説してくれるので、大事なポイントを整理しながら効率よく知識を広げられます。
スマートフォンやタブレットを利用すれば移動中の隙間時間で勉強できるため、なかなか時間が確保できない社会人に有効です。
将来をイメージしてモチベーションを維持する
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の勉強方法の5つ目は、将来をイメージしてモチベーションを維持することです。
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の試験は1年に1度しかありません。
そのため、受験までの間にやる気が下がってしまうこともあるでしょう。
勉強のモチベーションを維持するためには、「合格後の自分」を具体的にイメージすることが効果的です。
例えば、「資格手当がついて以前よりお金を使えるようになった」「仕事の幅が増えて上司に認められた」「好待遇の職場に転職が決まった」といったイメージです。
将来をイメージする時間を定期的に作り、自分の目的を再確認してモチベーションの維持に繋げましょう。
否定的な意見に惑わされない
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の勉強方法の6つ目は、否定的な意見に惑わされないことです。
勉強中であることが周囲に知られると、「資格を取る意味はない」などの否定的な意見を言われる場合もあります。
また、ブログやSNSで、資格についての否定的な意見が目に入ることもあるでしょう。
不安になる気持ちはもっともですが、そのような意見は完全に無視してください。
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)は、特定建築物に必要不可欠な業務独占資格です。
周囲やインターネットの否定的な意見には惑わされず、自信を持って資格取得に挑戦しましょう。
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の仕事内容
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)は、さまざまな建物の管理に携わる仕事です。
正式名称は「建築物環境衛生管理技術者」で、ビルの管理業務を行うことが多いため「ビル管」「ビル管理士」とも呼ばれています。
3000㎡以上の特定建築物(学校は8000㎡以上)には建築物環境衛生管理技術者(ビル管)を1名以上専任することが定められています。
具体的には以下のような仕事内容が挙げられます。
- 管理業務の計画立案、指揮監督
- 建物の各種調査の実施
- 建築物環境衛生管理基準に関する測定や改善提案
- 電気や空調などの設備点検
- 害虫・害獣駆除
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)は建物に常駐する義務はありません。
そのため、1つの建物に常駐して働くこともあれば、複数物件を取り扱う人が特定の建物に名義を出しているケースもみられます。
関連記事:設備管理がきつい?激務と言われる理由や目指すメリット、応募人の注意点
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)とビル経営管理士の違い
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)と似た名称で、「ビル経営管理士」という資格があります。
ビル経営管理士とは、ビル経営管理のスペシャリストとして必要な知識と経験を有する者に与えられる資格です。
2つの資格の違いを以下にまとめました。
建築物環境衛生管理技術者(ビル管) | ビル経営管理士 | |
資格の扱い | 国家資格 | 公的資格 |
試験実施団体 | 公益財団法人日本建築衛生管理教育センター | 日本ビルヂング経営センター |
仕事内容 | ビルの管理 | ビルの経営 |
大きな違いは、建築物環境衛生管理技術者(ビル管)が国家資格でビル経営管理士が公的資格である点です。
国が直接認定する国家資格は、特定の分野で働くための能力が公的に認められる信憑性の高い資格です。
一方で、公的資格とは公的機関が認めた民間団体が運営する資格で、取得すると特定の職種でのスキルを示せます。
また、仕事内容にも明確な違いがあります。
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の主な仕事は、建物の保守点検や安全対策の策定、清掃などの「ビルの管理」です。
対してビル経営管理士は、リース契約の管理やテナント募集などの「ビルの経営」が主な仕事です。
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)は建物管理の専門的な技術、ビル経営管理士は経営や財務といったように、求められる知識がそれぞれ異なります。
関連記事:設備管理とは?仕事内容や施設管理との違い、役立つ資格
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)のキャリアパス
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)を取得すると、活躍できる場は大幅に広がります。
資格取得後のキャリアパスを4つ解説しますので、今後の参考にしてみてください。
ビル管理会社への就職
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)のキャリアパスの1つ目はビル管理会社への就職です。
実務経験と専門知識を兼ね備えた建築物環境衛生管理技術者(ビル管)は、ビル管理会社にとって貴重な人材です。
建物管理のプロとしてビル全体の環境衛生管理を1人で担えるため、裁量を持って働けるでしょう。
企業の施設管理部門への就職
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)のキャリアパスの2つ目は企業の施設管理部門への就職です。
ビル管理会社への就職の他に、企業の施設管理部門へ就職して自社ビルの管理に携わることも可能です。
同じ会社の従業員が快適に働くためのサポートができる施設管理部門は、直接的なやりがいを感じやすい職場と言えます。
特化分野での専門家になる
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)のキャリアパスの3つ目は特化分野での専門家になることです。
建物を数多く所有する企業では、1つ1つの分野に特化した人材が必要となる場合があります。
そのようなとき、総合的な知識を網羅した建築物環境衛生管理技術者(ビル管)であれば、特化分野の専門家として活躍することも可能です。
特定の専門的知識や技術を深めていくことで、企業から代えがたい人材として重宝されるでしょう。
独立起業する
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)の建築物環境衛生管理技術者(ビル管)のキャリアパスの4つ目は独立起業することです。
資格を活かして事業を立ち上げ、ビル管理会社や不動産オーナー向けのコンサルティングや管理代行などを行う道もあります。
積極性とチャレンジ精神を持つ人にとって、大きな可能性を秘めた選択肢と言えるでしょう。
建築物環境衛生管理技術者(ビル管)に関するよくある質問
ここからは、建築物環境衛生管理技術者(ビル管)に関するよくある質問を3つ紹介します。
建物環境衛生管理技術者になるにはどのくらい勉強すればいい?
建物環境衛生管理技術者になるために必要な勉強時間は、最低200時間程度です。
建物環境衛生管理技術者の試験問題は合計180問あり、過去問を1周するだけでも多くの時間が必要です。
そのため、過去問を3周から5周することを前提に考えた場合、少なくとも200時間は確保するとよさそうです。
自分の性格やライフスタイルに合わせて、無理なく進められる期間で計画を立てましょう。
建築物環境衛生管理技術者の講習は受けたほうがいい?
受講のハードルは高いですが、条件が合えば受けても良いでしょう。
講習を受けた場合、修了者には「修了証書」が交付され、その後申請することで「建築物環境衛生管理技術者免状」が交付されます。
そのため、講習のみで資格取得できる点が最大のメリットです。
一方で、講習時間が合計101時間あり約18日間必要なことや、費用が108,800円と高額なことから、仕事や家庭の状況によっては難しい手段です。
また、講習は実務経験年数や学歴、特定免許の所持などによって対象者が規定されており、誰でも受けられるわけではありません。
受講資格を満たさない人やまとまった日数の確保が難しい人は、通常の受験でチャレンジしましょう。
建築物環境衛生管理技術者の年収はどのくらいの水準?
建築物環境衛生管理技術者の年収水準は350~450万円程度です。
ビル管理業界全体の平均年収は371万円なので、資格取得者の年収は業界内で比較的高いと言えるでしょう。
上記の水準は正社員以外のアルバイトなどの雇用形態を含むため、正社員に限定した場合はさらに高い数字になると考えられます。
また、大都市になるほど年収は高くなり、都内であれば450万円以上の年収がある場合も珍しくありません。
年収は地域や雇用形態、経験年数などで大きく変動するため、あくまで参考程度にとらえておきましょう。
出典:ビル管理士の年収は高い?仕事でできることや将来性、年収アップの方法まで徹底解説!|CIC日本建設情報センター
出典:ビルメンテナンスの仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)|求人ボックス給料ナビ
建築物環境衛生管理技術者の受験条件や勉強方法をしっかりと把握して試験に挑戦しよう
今回は建築物環境衛生管理技術者(ビル管理士)の難易度や合格率について解説しました。
建築物環境衛生管理技術者の合格率は10%~20%と低めですが、計画を立てて効率的に勉強すれば合格できる資格です。
まずは過去問を解いて自分のレベルを把握するところから始めてみてください。
受験条件や勉強方法をしっかりと把握して、建築物環境衛生管理技術者の試験に挑戦しましょう。
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