「タクシー運転手の隔日勤務はつらいのかな...」「タクシー運転手の隔日勤務に関する労働時間はどうなっているのかな...」
タクシー運転手の転職を考えているけど、隔日勤務について理解できないと不安になりますよね。
簡潔に説明すると、タクシー運転手の隔日勤務は、2日間を1つのサイクルとして働く勤務形態です。
とはいえ、隔日勤務について理解できないと思うので、本記事では、タクシー運転手の隔日勤務に関する労働時間の実態について検証していきます。
タクシー運転手を目指している、隔日勤務について詳しく知りたい人は、最後まで読んでみてください。
タクシー運転手の労働時間:隔日勤務・昼日勤・夜日勤の違い
タクシー運転手の労働時間はシフトによって変わります。
多くのタクシー会社は24時間営業であり、運転手はシフト制で働くのが一般的です。
主なシフトには「昼日勤・夜日勤・隔日勤務」の3種類があり、最近では隔日勤務が主流の働き方となっています。
ここでは、各勤務の労働時間やシフト例について解説していきます。
隔日勤務
隔日勤務は昼日勤と夜日勤を合わせたような働き方が特徴で、1回の勤務で2日分働くようなイメージです。
勤務時間は途中休憩の3時間を含め、20時間前後となります。
「タクシー運転手は労働時間が長い」と言われる理由は、一般的に隔日勤務で働くタクシー運転手が多いためです。
隔日勤務のあとは、次の出勤日まで連続して20時間以上の休息が必要であるため、公休も含めた場合の月の出勤日数は11~13日となります。
1回の勤務の拘束期間が長い代わりに、月間の出勤日数が少ないのが特徴と言えます。
関連記事:タクシー業界の隔日勤務とは?働き方の特徴とメリット・デメリット
昼日勤
昼日勤の勤務開始時間は7〜8時で、16〜17時が退勤時間となります。
休憩は約1時間、月の勤務日数は22~24日なので、労働時間は一般的な会社員と大きく変わりません。
ただし、平日出勤が固定となっているわけではなく、土日出勤も発生する点は一般的な会社員と異なります。
なお、昼日勤の時間帯の客層は、早朝出勤のビジネスマンや住宅街から病院へと通う高齢者の方が中心となっています。
夜日勤
夜日勤は、18〜19時に働き始めて翌3〜4時に勤務が終わります。
働く時間帯が夜になるだけで、休憩時間や労働時間は昼日勤とほぼ変わりません。
月に22~24日勤務で、曜日関係なく出勤日が振り分けられる点も同様です。
なお、この時間帯の客層は、仕事終わりに飲みに出かける方や、終電を逃してしまった方が多いです。
終電後の時間帯は、遠方の目的地まで運転するケースが増えるため、昼日勤よりも運転距離が長くなる傾向にあります。
関連記事:タクシー運転手の休憩の取り方や内容、ルールを解説!
タクシー運転手の隔日勤務:労働時間の実態
一般的に長時間労働のイメージが強いタクシー運転手ですが、全国ハイヤー・タクシー連合会の調査結果を見る限り、実態はイメージと異なることがわかります。
ここ5年のタクシー運転手の年間労働時間の推移は以下の通りです。
調査年 | 年間労働時間 | ||
タクシー運転手(男) | 全産業労働者(男) | 格差 | |
平成30年 | 2,328時間 | 2,172時間 | 156 |
令和元年 | 2,340時間 | 2,136時間 | 204 |
令和2年 | 2,196時間 | 2,136時間 | 60 |
令和3年 | 2,112時間 | 2,172時間 | -60 |
令和4年 | 2,232時間 | 2,172時間 | 60 |
参考:令和4年タクシー運転者の賃金・労働時間の現況|一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会
平成から令和にかけて、タクシー運転手の年間労働時間は徐々に減少してきており、令和3年には初めて全産業平均を下回っています。
このように、一見労働時間が長いと思われがちなタクシー運転手の労働環境は、実際はかなり健全であることがわかります。
隔日勤務は1回の勤務で20時間近く働くため「長時間労働で大変なのでは?」と不安に感じる人も少なくありません。
しかし、月間の労働時間には大きな差がないため、慣れればそこまで負担ではなくなるでしょう。
実際に、シフトごとの月間労働時間を比較したものが以下の通りです。
夜日勤・昼日勤で1日8時間勤務の場合 | 隔日勤務で1回17時間勤務の場合 |
・23日勤務:184時間 ・24日勤務:192時間 ・25日勤務:200時間 |
・11日勤務:187時間 ・12日勤務:204時間 ・13日勤務:221時間 |
このように、夜日勤や昼日勤で毎日8時間労働をしたシフトと、隔日勤務のシフトで、月間労働時間に大きな違いはありません。
タクシー運転手の業務は極端に体力を使う作業もないため、長時間の労働でもそこまで大きな負担にはならないでしょう。
また、隔日勤務が終わった翌日は「明番」となり出勤ができないので、きちんと体を休められます。
そのため、隔日勤務をうまく活用すれば、プライベートの時間も確保しつつ効率的に働きやすいでしょう。
タクシー運転手の隔日勤務:労働時間に関する3つのルール
タクシー運転手の隔日勤務は労働時間が長いことから、体調管理がしっかりできるように独自の労働ルールが定められています。
「忙しいから」「少し休んだら元気になったから」といった理由で、自由に働くことはできません。
タクシー運転手の労働時間は、細かく分けると以下の3つの時間に分けられます。
- 労働時間
- 拘束時間
- 休息時間
労働時間とは実際に働いている時間で、休憩時間は途中で取る休憩中の時間です。
拘束時間とは、労働時間と休憩時間を合わせた、出勤から退勤までの時間を言います。
タクシー運転手の労働時間に関するルールは、以上の3つの時間ごとに細かく定められており、すべてのタクシー会社で守らなければなりません。
タクシー運転手の働き方に関する法律
タクシー運転手の働き方は、労働時間、拘束時間、休息時間の3つの時間ごとに、以下のような法律規制が存在します。
労働時間に関する法律規制
隔日勤務・日勤で共通 |
1日8時間・週40時間 ※隔日勤務のような変形労働時間制の場合は、1ヶ月単位または年単位で計算し、週40時間を超えていなければ問題なし |
タクシー運転手の労働時間は1日8時間、週40時間までが基本です。
ただし、隔日勤務の場合は月や年単位で労働時間を計算する「1ヶ月単位の変形労働時間制」が用いられることもあります。
この制度では1日に8時間以上働く日があっても、月間または年間単位で計算したとき、平均して週40時間を超えていなければ残業とは認められません。
拘束時間に関する法律規制
隔日勤務の場合 | 日勤の場合 |
・1ヶ月に262時間 |
・1ヶ月299時間 |
日勤の場合、1ヶ月の拘束時間は299時間以内、1日の拘束時間は原則13時間までが基本です。
一方で隔日勤務の場合、1ヶ月の拘束時間は262時間まで、労使協定がある場合は270時間まで延長可能です(1年で6ヶ月まで)。
なお、地方のタクシー会社では「車庫待ち」という勤務形態があります。
お客様からの依頼があるまで事務所で待機する働き方で、肉体的な負担が少ないことから以下のような特別ルールがあります。
<車庫待ちの場合の特別ルール>
日勤で労使協定がある場合は1ヶ月322時間まで拘束時間を延長できます。その場合の一日の最大拘束時間は、一定の条件を満たせば24時間まで延長可能です。
隔日勤務の場合、夜間に4時間以上の仮眠時間があれば、2暦日の拘束時間を最長21時間から24時間にまで延長可能です。
休息時間に関する法律規制
隔日勤務の場合 | 日勤の場合 |
・継続20時間以上 | ・継続8時間以上 |
改善基準告示において、タクシー運転手の休日の定義は「休息期間+24時間の連続した時間」とされています。
日勤の場合、休息期間は継続8時間以上必要ですので、休日には8時間の休息期間に加え、24時間の連続した労働義務のない時間が必要です。
合計で最低32時間の連続した休息時間が必要となります。
一方で隔日勤務の場合、休息期間は継続20時間以上必要であるため、休日には20時間の休息期間に加え、24時間の連続した労働義務のない時間が必要です。
つまり、合計で最低44時間の連続した休息時間が必要となります。
このように、休息期間に加えて24時間の連続した時間が確保されていない場合、その日は休日として認められません。
参考:タクシー・ハイヤー運転者の労働時間等の改善のための基準|厚生労働省
関連記事:タクシードライバーの勤務時間は長い?勤務形態に関する4つの時間区分
タクシー運転手の隔日勤務:違法な労働時間になる3つのケース
タクシー運転手の隔日勤務は労働時間が長い一方で、しっかり休めるように法律によってルールが定められています。
しかしながら、実際に働いているタクシー運転手の中には、労働時間に関して不信を抱いている人も少なからずいます。
そこで、隔日勤務で働く場合にどのようなケースまでが問題なく、どこからが違法になるのかを解説します。
変形労働時間制の条件を満たしていないケース
隔日勤務は変形労働時間制に該当します。労働時間は1ヶ月や1年単位の平均で計算されるため、1週間あたり40時間以内であれば残業代は発生しません。
変形労働時間に基づいた1ヶ月の労働時間は以下の通りです。
- 1ヶ月が28日間の月:160時間
- 1ヶ月が30日間の月:171.4時
- 1ヶ月が31日間の月:177.1時間
つまり、隔日勤務だとしても上記の制限を超える場合は、残業代が発生します。
たとえば、1勤務17時間働いており、月に12日出勤していた場合の労働時間は204時間です。28日の月に204時間働いた場合は、44時間の残業代が発生します。
「変形労働時間制だから残業はでない」と言っているタクシー会社もありますが、このように、本当は残業代を支払わなければならないケースも少なくありません。
もちろん、1回の勤務時間を調整するなどして、週に40時間を超えないようにしている会社が大半ですが、十分に注意が必要です。
毎回16〜17時間の拘束時間で月に12〜13日働いているにもかかわらず、別途残業代が支給されていなければ、違法の可能性が高いと言えます。
休息時間が守られていないケース
休息時間に関しては、日勤で継続8時間以上であり、隔日勤務では継続20時間以上です。
また隔日勤務の場合の拘束時間は、2暦日で21時間以内と定められています。
例えば20時間働いた後の帰庫中に、長距離のお客様を見つけ乗せてしまったような場合、確実に21時間以上の拘束となります。
たとえタクシー運転手の判断であったとしても、このようなケースは拘束時間で違法となるため注意が必要です。
休息時間に関しても、他の社員の体調不良などにより早出となり、勤務終了時間から次の出勤までに20時間経っていない場合も違法となります。
日勤に関しても同様で、長時間の残業があったにも関わらず、次の日に通常通り出勤し、休息時間が8時間取れていないケースもあります。
特に隔日勤務は勤務時間が変則的になりやすいため、このようなケースに当てはまっていないか注意しなければなりません。
帰庫後に作業をしているケース
タクシー運転手は乗客を見つけて目的地まで運ぶ以外にも、車両点検や洗車、報告書の作成もおこないます。
出庫前後のちょっとした作業ではあるかもしれませんが、仕事の1つであることには間違いありません。
「1時間もかからないし自分のミスで帰庫が遅れたから」といった理由で、21時間を超えて何らかの作業をするのは違法です。
会社側はたとえ運転手のミスであったとしても、拘束時間が21時間を超えそうな場合には作業をさせないようにする配慮が求められます。
関連記事:タクシー運転手の隔日勤務がきつい理由と続けられる4つのメリット
タクシー運転手の隔日勤務や労働時間に関してよくある質問
最後にタクシー運転手の隔日勤務や労働時間に関してよくある質問に回答します。
タクシーの隔日勤務はきついと聞きますが本当ですか?
隔日勤務がきついと言われる主な理由は、1勤務の拘束時間が約20時間と長いためです。
途中で3時間以上の休憩があるもののペース配分が難しかったり、生活リズムの調整が必要だったりします。
しかし、勤務中は常に運転しているわけではなく、比較的自由に過ごせる時間もあるため、慣れればそれほどきつく感じないという運転手もいます。
16時間の隔日勤務は労働基準法違反ではないのですか?
16時間の隔日勤務は「変形労働時間制」で運用されているのであれば、労働基準法違反にはなりません。
本来、法定労働時間は1日8時間、週に40時間と定められていますが、変形労働時間制の場合、平均して週に40時間を超えなければ法定内の労働となります。
そのため、1回の勤務が16時間であったとしても、乗務回数や勤務時間を都度調整し、週の平均労働時間が40時間を超えなければ問題ありません。
なお、週の労働時間の平均が40時間以内であったとしても、1回の乗務で21時間を超える拘束は禁止されています。昼日勤や夜日勤の場合も、最大で16時間が限度です。
タクシー運転手は2024年問題の影響を受けますか?
2024年4月1日からの働き方改革関連法により、タクシー運転手の働き方にも大きな影響を受けています。
特に注目されているのは「勤務間インターバル制度」で、勤務終了後から次の勤務までの休息時間が日勤で8時間以上から9時間以上に変更され、努力義務として11時間以上の休息が推奨されます。
隔日勤務の場合、休息時間が20時間から最低22時間以上に変更され、24時間以上の努力義務も設定されました。
これにより、タクシー運転手の安全性は向上する一方で、事業所全体の売上が減少し、収入が減る可能性があります。
関連記事:タクシー運転手のメリット・デメリットとは?年収事情も解説
タクシーの隔日勤務における労働時間についてのまとめ
タクシー運転手の労働時間はシフトによって異なります。昼日勤・夜日勤は1回の出勤で8時間前後、隔日勤務は20時間前後です。
ただし、それらはあくまで1回の労働時間の話であり、月間または年間の労働時間を基準にすると、どのシフトでも労働時間に差はありません。
2024年からの働き方改革によって勤務間インターバルが延長されたため、より働きやすい環境が整ってきていると言えるでしょう。
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