バスやタクシー、トラックの安全運行を確保する上で欠かせない存在と言えるのが「運行管理者」です。
ドライバーが安全で確実な輸送ができるための管理業務を行います。
運転手経験を経て、運行管理者を目指す人も多くいます。
今回は運行管理者として就職する上で、事前に知っておくべき内容を中心に解説していきます。
既に運送業界で働いている方はもちろん、異業種からの転職を考えている方も、ぜひ参考にしてみてください。
この記事でわかること
・運行管理者の年収や仕事内容
・運行管理者になるメリットや将来性
・運行管理者の試験や合格率について
運行管理者として就職する前の注意点
運行管理者は需要が安定しており、仕事にやりがいを感じられる一方で、辛く感じることもあります。
運行管理者の辛さに関しては主に3つあります。
- 責任が思い
- 生活が不規則になりがち
- 業務範囲が広い
具体的な辛さを知っておくことで、就職前とのギャップを無くせます。
運行管理者の業務内容を基に解説していきますので、参考にしてみてください。
責任が重い
運行管理者は、事業全体で安全な運行ができるように管理しなければなりません。
管理内容が不十分で事故が発生した場合は、運行管理者が責任を問われる可能性があります。
バスやタクシーが絡む事故の中には死亡事故も多く、事故を未然に防がなければいけないというプレッシャーや責任は、非常に重いと言えるでしょう。
生活が不規則になりがち
運送業界は業種にもよりますが、深夜帯の運行も当たり前のようにあります。
ドライバーの安全管理を行う運行管理者は、必然的に同じ時間に働くこととなり、夜勤や早朝勤務もあります。
また、運送業界は荷主の都合によって運送時間が異なりますので、急な出勤時間の変更も珍しくありません。
道路状況や急な天候悪化により残業となるケースもあります。
業務範囲が広い
運行管理者は、安全な運行を維持する上で以下のような業務を行います。
- ドライバーの乗務割作成
- 睡眠、休憩施設の保守管理
- 業務前後の点呼
- 乗務記録の管理
- ドライバーの安全教育や指導
- ドライバーの健康状態の確認
この他にも、事務所にいる間は顧客からの電話対応や、来客対応もこなさなければなりません。
車両を運転したり、動き回ったりする作業はありませんが、心身ともに疲れる仕事と言えるでしょう。
運行管理者として就職する前に押さえたい年収事情
転職サイト「求人ボックス」が2023年6月の求人情報から算出した情報によると、運行管理者の平均年収は約384万円でした。
月給では32万円、初任給は19万円となります。
参照元:求人ボックス給料ナビ|運行管理者の仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)
また、国税庁が公表している「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、日本人の平均給与は男性で545万円、女性で302万円となっています。
参考元:国税庁|令和3年分 民間給与実態統計調査
この結果から、運行管理者の年収は全産業の平均年収を下回っていることが分かります。
ただし、運行管理者の年収は経験年数だけではなく、企業の規模によっても大きく異なりますので、高収入も目指せます。
関連記事:運行管理者の給料相場は?年収や求人例について詳しく解説
運行管理者として就職する前に押さえたい仕事内容
運行管理者は、ドライバーの安全運行を維持するために、さまざまな管理を行わなければなりません。
ここでは管理業務ごとに、具体的な業務内容について解説していきます。
車両管理
運送会社では、運送中のトラブルを防止するために、必ず車両点検を実施します。
車両点検自体はドライバーが行い、その内容を運行管理者が保管する流れです。
運行中に関しても、車両トラブルが発生したり何か異変を感じたりした場合は、すぐに運行管理者へと連絡が来ます。
運行管理者は、異変の原因を調査しながら、運行スケジュールに支障が出ないように調整を行います。
配送ルートの管理
運送業の場合、配送を効率良く行うために、最適な配送ルートを選定するのも運行管理者の仕事です。
ある程度配送のルートは決まっていますが、その日の天候や道路情報によって、安全面を考慮したルートに変更することもあります。
スケジュール管理
スケジュール管理では、配送納期とドライバーの能力を照らし合わせて、運行スケジュールを決定していきます。
運行にかかる配送時間の計算は、ドライバーの休憩時間も考慮しなければならないため、運行に関する規則を熟知していなければいけません。
また、積み込む荷物の内容や量、積み込み先によっても積み込みにかかる時間が異なり、全てを考慮したスケジュールを立てる必要があります。
労務管理
多くの運送会社では点呼記録簿が用意されており、ドライバーの出退勤時間が記録されます。
点呼の際には運行管理者が同席していなければいけません。
対面でドライバーの健康状態や睡眠状態、アルコールチェックを行います。
直接確認する中で、ドライバーの顔色や声のトーンなどを確認して些細な異変も見逃さないようにします。
安全管理
実際に車両を運転するのはドライバーであるため、運行管理者の仕事では、いかにドライバーに安全意識を持ってもらえるようにするかも重要です。
定期的な安全講習やトレーニングを行い、普段の業務で起こりうる状況を全員でシミュレーションします。
運転中はもちろん、荷物の積み込み時や駐車時にも危険は潜んでいるため、しっかり安全教育の中で対処策を共有していきます。
関連記事:運行管理者の仕事内容とは?資格の取得方法やメリット、平均年収なども解説します!
運行管理者として就職するメリット
運行管理者は、仕事の内容が幅広く大変な仕事である一方で、以下のようなメリットもあります。
- 需要が安定している
- 職場の選択肢が多い
- やりがいを感じやすい
- 力仕事をしなくていい
ここでは各メリットについて、仕事内容を基に解説していきます。
需要が安定している
運送業は我々の生活に欠かせない存在であり、今後も需要が下がることはないでしょう。
最近では通販などのEC事業が急成長しており、より運送業の需要が高まっています。
運行管理者は1つの企業につき、最低でも1人はいなくてはいけません。
また、企業は車両数に応じて運行管理者を増やさなければならないため、運行管理者は運送企業にとって必要不可欠な存在と言えるでしょう。
職場の選択肢が多い
運行管理者は、運送業全ての業種で配置しなければなりません。
そのため、運行管理者の資格を取得すれば、別の運送会社であっても働けます。
運行管理者は需要が高く、求人数も非常に多いためキャリアアップのための転職も比較的容易と言えるでしょう。
やりがいを感じやすい
運行管理者は、安全管理はもちろん運行スケジュールや配送管理なども行うため、会社運営に大きく影響します。
大きな責任は伴いますが、事故も起きることなく無事に全ての配送が終わった際には、大きな達成感を感じられるでしょう。
ドライバーにも感謝される存在であり、やりがいを持って働ける仕事です。
力仕事をしなくていい
ベテランドライバーのほとんどが抱いている悩みの1つに「体力の問題」があります。
職種によって業務内容は異なりますが、荷物の積み下ろしがあったり、深夜帯の残業があったりと、どの職種のドライバーも体力を必要とします。
中には将来的な体力の不安を感じて別の職種に転職するドライバーもいるほどです。
運行管理者は体力が必要であるものの、力仕事はないため高齢になっても活躍できます。
関連記事:運行管理者になるデメリットとメリットは?年収や取得方法も紹介
運行管理者の将来性
運行管理者は前述した通り、運送業者ごとに必ず1人以上はいなければいけません。
業種に関してもトラック運送・バス運送・タクシー運送全てが含まれます。
業種によって将来性は上下したとしても、運行管理者の需要は高い状態で推移すると予想されます。
「多くの人が資格取得を目指しているので、今から目指すのは遅いのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、その心配もいりません。
運行管理者は国家資格であり、受験条件には実務経験も定められているので、飽和状態になることは考えにくいでしょう。
運行管理者の種別と合格率
運行管理者の将来性やメリットについて解説してきましたが、従事するためには「運行管理者資格試験」に合格しなければなりません。
ここでは、運行管理者の種別や試験の合格率について、解説していきます。
試験は2種類ある
運行管理者資格試験には「旅客」と「貨物」の2種類があります。
それぞれで試験の内容は異なり、貨物の場合は「貨物自動車運送事業法」を、旅客の場合は「道路運送法」を基に出題されます。
従事できる事業所の種類は以下の通りです。
- 旅客:タクシー、乗合バス、貸切バス
- 貨物:トラック
旅客の方が多くの事業所で活躍できそうですが、事業所の数や求人数では貨物の方が多く、需要も高いと言えるでしょう。
貨物の合格率
運行管理者の試験は年に2回行われています。令和4年の第2回運行管理者試験の結果は以下の通りでした。
各年度の合格率に大きな違いはなく、30~40%ほどで推移しています。
旅客の合格率
次に令和4年の第2回運行管理者試験・旅客の結果は以下の通りでした。
旅客の合格率も貨物と同じくらいであり、毎年30~40%で推移しています。
合格基準
運行管理者試験の合格基準は、原則として総得点が満点の60%以上となります。
また、出題分野ごとに1問以上正解している必要があり、「その他運行管理者業務に関し必要な実務上の知識及び能力」については最低2問以上正解しなければいけません。
出題分野と問題数は以下の通りです。
- 労働基準法:6問
- 道路交通法:5問
- 貨物自動車は貨物自動車運送事業法、旅客自動車は道路運送法:8問
- 道路運送車両法:4問
- その他運行管理者業務に関し必要な実務上の知識及び能力:7問
各分野に関する知識が求められるため、幅広い範囲を勉強する必要があります。
運行管理者の試験概要
ここでは運行管理者の試験概要について解説していきます。
受験資格には実務経験も含まれているため、これから受験する人は条件を満たしているか事前に確認しておくようにしましょう。
受験資格
運行管理者の受験資格は、旅客と貨物で別々に定められています。
「実務経験1年以上」か「基礎講習修了者」であるかによって、以下の通り受験資格が異なります。
【実務経験1年以上の場合】
以下のどちらかの運行管理に関して、試験日の前日までに1年以上の実務経験を有する方
・⾃動⾞運送事業(貨物軽⾃動⾞運送事業を除く)の⽤に供する事業⽤⾃動⾞
・特定第⼆種貨物利⽤運送事業者の事業⽤⾃動⾞(緑⾊のナンバーの⾞)
【基礎講習修了者の場合】
国土交通大臣が認定する講習実施機関において、貨物、旅客の試験に応じた基礎講習を修了した方、または指定の期日までに基礎講習修了予定の方
※講習の種類と試験の種類が同じでなければなりません。
引用元:公益財団法人 運行管理者試験センター|新規受験概要
受験料
運行管理者試験の受験料は6,800円(税込)となり、内訳は以下の通りです。
- 受験手数料:6,000円(非課税)
- システム利用料:660円(税込)
- 試験結果レポート:140円(税込)※希望者のみ[/st-mybox]
再受験の場合は別途、事務手数料として200円(税込)が必要です。
試験内容
試験の内容は貨物と旅客で異なります。
・労働基準法:6問
・道路交通法:5問
・貨物自動車は貨物自動車運送事業法:8問
・道路運送車両法
・その他運行管理者業務に関し必要な実務上の知識及び能力:7問
・労働基準法:6問
・道路交通法:5問
・道路運送法:8問
・道路運送車両法:4問
・その他運行管理者業務に関し必要な実務上の知識及び能力:7問
運行管理者として就職するなら使いたいテキスト・過去問
運行管理者試験の勉強に関するテキストは多く販売されており、過去問に関しては「公益財団法人 運行管理者試験センター」でも公開されています。
今回は市販のテキストの中でも特におすすめのものを2つ紹介します。
【令和4年3月受験版 運行管理者試験 問題と解説 貨物偏】
画像引用元:公論出版オンラインショップ
テキストと過去問題は1項目ごとに記載されており、実際の試験と同じ順番で収録されています。
内容がややこしく、文章だけでは理解が難しい「改善基準」の問題に関してはテキストに加えてイラストでも解説されています。
各省の最後には試験に出やすい重要ポイントもまとめてあり、効率よく試験勉強ができるでしょう。
【いちばんわかりやすい!運行管理者<旅客>合格テキスト】
画像引用元:成美堂出版|いちばんわかりやすい!運行管理者〈旅客〉合格テキスト
難しい法律などの説明が非常にシンプルにまとめられており、効率良く資格の勉強ができます。
穴埋め問題を隠す赤シートもついており、試験感覚で知識を身に付けられるテキストです。
関連記事:タクシー運行管理者の仕事内容とは?向いている人や年収、資格取得方法など詳しく解説します!
関連記事:バス運行管理者の仕事内容や必要資格、給料などを一挙解説!
運行管理者としての就職についてのまとめ
今回は運行管理者の就職について解説してきました。
運行管理者は、事業全体で安全運行を維持する役割があり、大きな責任が伴います。
業務範囲が広く、生活が不規則になりやすいため大変ですが、メリットも多くあります。
運行管理者は各事業所に必ず1名以上配置しなければならず、需要の高い将来性のある仕事と言えるでしょう。
力仕事もないため、ドライバーからのキャリアアップする上でおすすめの職種となります。
運行管理者は国家資格であり、取得するには実務経験1年以上か基礎講習を修了している必要があります。
決して簡単な試験ではありませんが、興味がある方は挑戦してみるといいでしょう。
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