10tトラックや大型バスなど、大型車両を運転するには、高度な運転技術と経験が必須となります。
そのため、大型免許の取得にはさまざまな条件が定められており、取得できる年齢も普通運転免許と比べると高めに設定してあります。
しかしながら、近年は国内のドライバー不足が深刻化していることもあり、大型免許の取得条件が改正されました。
これにより、21歳であった年齢制限が19歳に引き下げられ、10代の人でも取得を目指せるようになっています。
ただし、19歳で大型免許を取得するには、複数の条件も定められています。
今回は大型免許の取得条件について分かりやすく解説していきます。
この記事でわかること ・大型免許の取得条件 ・19歳で大型免許を取得する場合の条件 ・大型免許の取得方法や取得費用 ・大型免許取得時の給付金制度利用について |
大型免許の取得条件
冒頭でお伝えした通り、2020年の道路交通法改正によって、大型免許と中型免許が19歳から取得できる特例が設けられました。
ただし、この特例に当てはまらない人の取得条件は変わっておらず、以下の3つの条件を満たす必要があります。
・年齢条件
・免許や運転歴
・身体条件
ここでは、この3つの条件について詳しく解説していきます。
3つの条件全てを満たしていなければ、運転スキルがあったとしても大型免許は取得できないため、受験前に理解しておくようにしましょう。
年齢
大型免許を取得するための年齢条件は「満21歳以上」となります。
満年齢であるため、その年に21歳になる人であっても、誕生日を迎えていなければ受験できませんので注意しましょう。
後ほど詳しく解説しますが、この年齢制限が一定の教習を修了することにより、19歳以上でも受験できるようになりました。
※教習の修了以外に運転歴の条件も満たしている必要があります。
免許や運転歴
免許や運転歴に関しての条件としては、以下の運転免許のいずれかを取得し、免許停止期間を除いた通算の運転経歴が3年以上でなければいけません。
・普通自動車免許
・準中型免許
・中型免許
・大型特殊免許
そのため、20歳で普通運転免許を取得した人の場合、大型免許にチャレンジできるのは23歳からとなります。
ただし、この運転歴に関しても、2020年の道路交通法改正によって一定の教習を修了すれば引き下げることも可能です。
身体条件
車両を安全に運転できるように、他の運転免許と同様に以下のような身体条件が定められています。
・視力が裸眼かコンタクトレンズ・メガネの使用で両眼0.8以上、片眼で0.5以上 ・三桿法の奥行知覚検査機で2.5mの距離で3回検査を行い、誤差の平均が2センチメートル以下であること ・信号機の色(青・赤・黄)が識別できること ・10メートルの距離で90デシベルの警報機の音が聞こえること ・自動車の運転に支障をきたすような身体障害がないこと |
ちなみに、普通運転免許の視力条件は両眼で0.7以上、片眼で0.3以上となります。
大型免許の方が厳しく設定されていますので、普通免許取得時に視力がギリギリであった人は注意が必要です。
19歳での大型免許の取得条件
ここまで従来の大型免許の取得条件を解説してきましたが、道路交通法の改正により「受験資格特例教習」を受ければ、以下の通り取得条件が引き下げられます。
・年齢:19歳以上
・運転経歴:普通免許等の保有歴が1年以上
ちなみに、この改正内容は大型免許だけでなく、中型免許も適用となります。
受験資格特例教習は3種類に分けられており、受講した課程により引き下げられる条件が異なります。
・年齢課程:大型免許の取得年齢を19歳以上に引き下げられる
・経験課程:運転経験年数の要件を1年以上に引き下げられる
・年齢、経験課程:年齢と運転経験年数のいずれも引き下げられる
各課程の教習内容と時間は以下の通りです。
【年齢課程の場合】 ・技能教習の第1段階:2時間 ・技能教習の第2段階:2時間・学科教習の第1段階:2時間 ・学科教習の第2段階:1時間教習の合計7時間 |
【経験課程の場合】 ・技能教習の第1段階:9時間 ・技能教習の第2段階:18時間・学科教習の第1段階:0時間 ・学科教習の第2段階:2時間教習の合計29時間 |
【年齢・経験課程の場合】 ・技能教習の第1段階:11時間 ・技能教習の第2段階:20時間・学科教習の第1段階:2時間 ・学科教習の第2段階:3時間教習の合計36時間 |
ちなみに、道路交通法改正の施行は2022年5月13日と始まって間もないため、どの自動車教習所でも受験資格特例教習を受けられるわけではありません。
免許センターに問い合わせれば、受験資格特例教習を受けられる近くの自動車教習を教えてもらえます。
そもそも大型免許とは
大型トラックや大型バスを運転するために必要な大型免許ですが、取得することで運転できる車両のサイズや種類は細かく定められています。
また、仕事内容によって第一種大型免許と第二種大型免許に分かれています。
将来的に目指すドライバー職によって必要な免許が異なるため、注意が必要です。
ここでは、大型免許とは具体的にどのような免許なのか、運転できる車種はどれなのかなどを分かりやすく解説していきます。
大型免許とは
大型免許で運転できる車両にはトラックやバス、トレーラーなどがあり、具体的なサイズに関しては以下の通り定められています。
・最大積載量:6.5t以上
・車両総重量:11t以上
・乗車定員:30人以上
いずれかに該当する車両を運転する場合に、大型免許が必要となります。
ちなみに大型免許を取得すれば、以下のような他のサイズの車両も運転可能です。
自動車の種類 | 大型免許取得者 |
大型自動車 | 〇 |
中型自動車 | 〇 |
準中型自動車 | 〇 |
普通自動車 | 〇 |
小型特殊自動車 | 〇 |
原動機付自転車 | 〇 |
大型特殊自動車 | × |
大型自動二輪車 | × |
普通自動二輪車 | × |
このように中型・準中型車両の運転も可能となります。
ちなみに、大型特殊自動車免許とは、ブルドーザーやフォークリフトなどの大型特殊車両を公道で運転するための免許です。
大型免許で運転できる車種
大型免許を取得することにより、中型・準中型車両の運転もできるようになりますが、仕事内容によって第一種と第二種に分けられています。
・大型自動車第一種免許:大型トラックやトレーラー、ダンプカーの運転ができる
・大型自動車第二種免許:大型観光バスや路線バスといった旅客運送ができる
将来、旅客運送のドライバーを目指したい人は第二種免許が必要ですので、注意が必要です。
ちなみに第一種・第二種免許は大型免許以外の運転免許にもあります。
タクシードライバーとして働くには普通自動車第二種免許が必要です。
関連記事:大型トラックとは?初心者から大型免許をとってドライバーになる方法
大型免許の取得方法
大型免許を取得する方法は主に2つあります。
・自動車教習所に通う
・一発試験に合格する
それぞれで免許取得までの流れや期間が異なり、どのような人がおすすめなのかも変わってきます。
ここでは、各取得方法について解説していきます。
教習所に通う
大型免許を取得する最も一般的な方法と言えるのが「自動車教習所に通う方法」です。
校内にある練習コースで技能教習を受けたり、学科教習を受けたりしながら運転スキルを身に付け、卒業検定に挑戦します。
卒業検定に合格すれば、運転免許試験場での技能試験は免除となり、適性検査に合格すれば免許証交付となります。
自分のペースで教習所に通うこととなり、取得にかかる期間は20〜40日が一般的です。
「もっと集中して取得期間を早めたい」という人は合宿免許がおすすめです。
合宿免許とは、泊まり込みで教習を受けられる方法であり、取得済みの免許にも寄りますが、約2週間で大型免許を取得できます。
これまでにドライバー経験がなく、しっかり運転スキルを身に付けたい人におすすめの取得方法です。
関連記事:自動車学校で大型免許を取得しよう!取得にかかる費用や条件とは?
一発試験を受ける
一発試験とは文字通り、試験にだけ合格できれば大型免許を取得できる方法であり、教習を受ける必要がありません。
一発試験による大型免許取得の具体的な流れは、以下の通りです。
ステップ1.適性検査と仮免許試験に合格し、路上練習を10時間以上行う ステップ2.運転免許試験場で適性検査と技能試験を受けて合格する ステップ3.取得時講習と応急救護講習を受ける |
一発試験では、必要最低限の路上練習のみを行い試験を受けるため、教習所に通った場合と比べて合格率がかなり低くなります。
短時間で合格できる一方で、路上練習時には大型免許保有者の同乗も定められており、大型車両の練習環境が整っている人向けと言えます。
取得費用も抑えられますが、試験に落ちるたびに都度試験費用がかかるため、注意が必要です。
関連記事:大型免許の一発試験で取るのは難しい?合格率や運転のコツ教習所に通った場合の比較などを紹介
関連記事:大型免許の取得は難しい?難易度・費用 ・取得方法・期間について【保存版】
大型免許の取得費用
大型免許の取得方法について解説してきましたが、各方法で取得費用も異なります。
ここでは、自動車教習所に通う方法と一発試験を受ける方法で、大型免許の取得に必要な費用を解説していきます。
教習所に通う場合
大型免許の取得費用は、既に取得している運転免許によって料金が異なります。
自動車教習所によっても若干料金は異なるのですが、一般的な相場は以下の通りです。
・普通自動車免許(AT限定):35~45万円 ・普通自動車免許(MT):30~40万円 ・準中型免許5t限定(AT限定):30~40万円 ・準中型免許5t限定(MT):25~35万円 ・中型免許:20~25万円 ・8t限定中型免許(AT限定):30~40万円 ・8t限定中型免許(MT):25~30万円 |
ちなみに、通学ではなく合宿免許に通う場合、免許取得にかかる費用は数万円ほど安くなる傾向にあります。
ただし、交通費が別途かかることもあり、試験に落ちた場合には宿泊費が追加で必要です。
一発試験を受ける場合
一発試験で大型免許を取得するのにかかる費用は以下の通りです。
【仮免許試験】 ・受験料:2,900円 ・試験車使用量:1,450円 ・仮免許証交付手数料:1,150円 |
【本試験】 ・受験料:4,100円 ・試験車使用量:2,500円 ・仮免許証交付手数料:2,050円 |
これとは別に、本試験の合格後に受ける取得時講習受験料として、別途17,800円必要です。
全ての試験を一発で合格できた場合の取得費用は、31,950円となります。
ちなみに、本試験に落ちた場合は都度受験料と試験車使用量が必要です。
関連記事:大型免許の費用はいくら?お得に大型免許を取得する方法も解説!
大型免許の取得で教育訓練給付制度を利用する条件
大型免許の取得費用について解説してきましたが、国が実施する補助金制度を利用することで、免許取得費用の一部を負担してもらえます。
大型免許の取得では「教育訓練給付制度」が活用できます。
教育訓練給付制度とは、働く人々の能力開発やキャリア形成を支援するための制度です。
厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が給付金として戻ってきます。
大型運転免許は「特定一般教育訓練」に該当し、受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給されます。
【教育訓練給付制度・特定一般教育訓練の支給条件】 ・受講開始の時点で雇用保険の支給要件期間が3年以上あること ・前回の教育訓練給付金受給から3年以上経過していること |
具体的な給付条件に関しては、ハローワークで調べてもらえます。
そのため、教育訓練給付制度を利用する場合、以下のような流れで運転免許を取得することになります。
ステップ1.ハローワークで教育訓練給付制度の受給資格を確認する ステップ2.大型免許を取得する(全額負担) ステップ3.ハローワークで教育訓練給付制度の支給申請を行う ステップ4.教育訓練給付制度の給付金が支給される |
関連記事:大型免許取得に助成金が出る?教育訓練給付金制度で安く免許を取得する方法
大型免許の取得条件に関してよくある質問
最後は大型免許の取得条件に関する、2つの質問について答えていきます。
・大型免許を19歳でも取得できるのはいつからですか?
・大型免許を取得するとどのようなメリットがありますか?
受験資格特例教習や大型免許取得のメリットに関する内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。
大型免許を19歳でも取得できるのはいつからですか?
19歳でも大型免許を取得できる受験資格特例教習の制度は、2022年5月13日から施行されました。
そのため、受験資格特例教習を行っている自動車教習所であれば、いつでも19歳で大型免許の取得にチャレンジできます。
大型免許を取得するとどのようなメリットがありますか?
大型免許を取得すれば、大型トラックやバスの運転ができるのはもちろん、中型や準中型の車両も運転できます。
ドライバーとして活躍できる仕事の幅を広げられるため、キャリアアップを目的とした別会社への転職もしやすくなるでしょう。
また、運転する車両が大型になるほど収入アップも目指せます。
関連記事:10トントラックに必要な免許は?取得方法や費用について一挙解説!
関連記事:4tトラックに必要な免許とは?準中型・中型・大型との違いと取得方法
大型免許の取得条件についてのまとめ
今回は大型免許の取得条件について解説してきました。
取得するには年齢や運転歴、身体に関する条件を満たす必要があります。
従来であれば満21歳以上で3年以上の運転歴が条件でしたが、道路交通法の改正により「受験資格特例教習」を受ければ、19歳でも取得可能となりました。
大型免許の取得方法は教習所に通う方法と、一発試験を受ける方法の2種類があります。
大型免許を取得することにより、さまざまなサイズの車両が運転できるようになります。
ドライバー職に興味がある人は、ぜひ今回の記事を参考にして大型免許の取得を目指してみてください。
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