宅建の資格は、不動産の売買や賃貸物件の紹介をする際に必要です。
重要事項の説明や説明書への記名といった、宅建士にしかできない独占業務もあります。
不動産業界はもちろん、建設業界や金融業界でも需要があり、将来性の高い資格と言えるでしょう。
また、宅建士を取得できれば資格手当が支給されるようになります。
今回は、宅建資格の手当相場や宅建士の収入事情を中心に、分かりやすく解説していきます。
【この記事でわかること】 ・宅建資格の手当相場 ・宅建士の年収相場 ・宅建士が儲かる3つの理由と取得メリット ・宅建士として年収1,000万円を達成するケース ・宅建資格を取得するポイント ・宅地建物取引士証が交付されるまでの流れ |
宅建資格手当の相場:約0.5〜3万円
福利厚生として、資格手当の支給を行っている企業は多く、宅建士もその対象となります。
資格手当の支給は義務ではないため、支給の有無や支給額は企業によって異なります。
手当支給額をリサーチした結果、宅建士の資格手当は5,000〜30,000円がほとんどでした。
宅建士の資格と普段の業務の関連性が高いほど、手当が高くなる傾向です。
一方で、業務に宅建士の資格が必須ではないような企業では、手当支給額が低めに設定されています。
【状況別】宅建士の資格を取得した場合の年収相場と手当
宅建士は、不動産取引の専門家であり、不動産を取り扱う業界で幅広く活躍できます。
不動産業界はもちろん、金融業界や建設業界にも従事可能です。
宅建士を活かせる企業に就職する上で、年収がいくらほどになるのか気になる方もいるのではないでしょうか。
・宅建士として大規模の企業に転職した場合
・宅建士として中規模の企業に転職した場合
・宅建士として小規模の企業に転職した場合
・宅建士として独立した場合
ここでは、上記4パターンごとに、宅建士の年収について解説していきます。
大規模企業の場合
令和4年度・賃金構造基本統計調査における、不動産取引業のデータを基にした、大規模な企業に転職した場合の年収は約650万円です。
詳細は、決まって支給する現金給与額が37万6,900円で、年間賞与額が188万6,200円でした。
宅建士に特化したデータはないものの、基本的に企業規模が大きいほど利益が安定しており、賞与が高い傾向にあります。
不動産業界における大企業としては「三井不動産・三菱地所・住友不動産」などがあります。
ディベロッパーに位置していることが多く、扱う不動産の多くが大規模なものとなります。
中規模企業の場合
宅建士の資格を活かし、中規模の企業に転職した場合の年収は、約620万円です。
詳細は、決まって支給する現金給与額が41万7,600円で、年間賞与額が122万800円でした。
大企業に比べると若干年収が下がりますが、他の職種と比べると収入額は高水準と言えるでしょう。
経験を積み出世できれば、さらに高い年収を目指すことも可能です。
不動産業界における中企業では、不動産売買の仲介事業が多くあります。
小規模企業の場合
宅建士の資格を活かし、小規模の企業に転職した場合の年収は、約510万円です。
詳細は、決まって支給する現金給与額が36万8,700円で、年間賞与額が68万9,300円でした。
大規模な企業と異なり、扱う不動産は個人で使用するアパートや戸建てがメインになります。
業務内容が幅広い特徴があり、覚えるのが大変な一方でさまざまな仕事の経験ができることが魅力と言えるでしょう。
年収は、大規模や中規模に比べて低い傾向にあるものの、営業職に就けば、インセンティブによって収入を上げることも可能です。
独立した場合
宅建士として経験を積んでいくことにより、独立開業も可能です。
会社員と異なり、基本給などがないため平均となる年収はありません。
人を雇う場合は人件費がかかり、毎月事務所の家賃も支払わなければならず、開業当初は赤字になることも珍しくありません。
一方で、利益を全て自分のものにできるため、経営が上手くいくようになれば年収1,000万円も十分目指せます。
高収入を狙える一方で収入が安定していないことが、独立した場合の特徴と言えるでしょう。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業中分類|厚生労働省
宅建資格を取得すると手当の効果が大きい?儲かる3つの理由
宅建士の年収は、転職する企業の規模によって異なり、平均年収が最も低い小規模な企業でも年収500万円を超えています。
令和4年における全産業の平均年収は458万円であり、他の産業よりも稼げる仕事と言えるでしょう。
宅建士が稼げる主な理由は3つあります。
・宅建士の資格がないとできない仕事がある
・取り扱うサービスの単価が高い
・不動産市場は需要が高い
上の3つの理由について、宅建士の仕事内容や将来性も踏まえながら解説していきます。
宅建士の資格がないとできない仕事がある
宅建士になると稼げる1つ目の理由が「宅建士だけしかできない仕事がある」ことです。
具体的な業務は以下の通りです。
・重要事項の説明 ・重要事項説明書への記名 ・契約内容書面への記名 |
住宅やマンションといった不動産の売買や賃貸契約を行う際は必ず「重要事項説明書」が作成されます。
取引相手に取って不利な取引とならないように、販売業者側は詳しく説明しなければなりません。
この重要事項の説明や書面への記名は、宅建士の独占業務です。
不動産取引に関する知識を十分に身に付けた人でも、宅建士でなければ代わりに業務をこなすことはできません。
重要事項の説明は、全ての不動産取引で行われるため、宅建士は不動産業界にとって貴重な存在であり、その分収入も高くなります。
取り扱うサービスの単価が高い
不動産には土地や建物がありますが、売買などの取引では数千万円ものお金が動きます。
大規模な施設になると億単位のお金が動くため、仕事で利益を出しやすいことも、宅建士が稼げる理由の一つと言えるでしょう。
中には、売上によってインセンティブを支給している企業もあります。
不動産市場は需要が高い
不動産市場の需要の高さも、宅建士が稼げる理由の1つと言えるでしょう。
住まいは人々の生活に欠かせないものであり、全国各地で不動産取引が行われています。
新たに立てた建物を販売するのはもちろん、不動産の買取りでも、宅建士が欠かせません。
不動産はお金の貸し借りにおける担保として取り扱われることもあるため、金融業でも需要があります。
さまざまな業界で需要が高く、誰でもこなせる仕事ではないため、宅建士になれば高収入を目指せます。
宅建資格を取得して手当を貰う3つのメリット
宅建資格を取得すると高年収を目指せることを解説してきましたが、他にも以下のようなメリットがあります。
・資格手当がもらえる
・更新不要で一生使用できる
・未経験でも転職しやすくなる
ここでは、上記のメリットについて解説していきます。
資格手当がもらえる
冒頭で解説した通り、宅建士の資格を活かせる企業では、資格手当が支給されています。
携わる業務や企業によって資格手当の額は異なりますが、5,000〜30,000円ほど支給されます。
また、宅建士の取得は決して簡単ではなく、合格により仕事に対する熱意をアピールすることも可能です。
更新不要で一生使用できる
宅建士の資格は、一度試験に合格すると不動産業界や金融業界で長く活躍できます。
定期的に試験を受け直す必要もありません。
ただし、宅地建物取引士証に関しては、5年ごとの更新が義務化されており、法定講習を受講する必要があります。
途中で宅建士以外の仕事に従事したり、会社を退職して年数が経過したりしている場合も、講習を受ければいつでも復帰可能です。
未経験でも転職しやすくなる
宅建士には3つの独占業務があるだけでなく、不動産取引を行う事務所では従業員の2割が宅建の資格保有者でなければなりません。
存在自体が貴重であり、資格取得で身に付けた知識は、幅広い業務で活かせます。
そのため、業界未経験者であったとしても、宅建士を取得できれば転職を有利に進められます。
ちなみに、宅建試験には特別な受験条件がなく、過去の経歴や学歴に関係なく誰でも挑戦可能です。
宅建士で年収1,000万を達成する3つのパターン
宅建士はさまざまな業界で重宝される存在であることから、年収も全体の平均と比べて高い傾向にあります。
条件が合えば年収1,000万円を達成することも可能です。
宅建士として年収1,000万円を達成するパターンとしては、3つあります。
・独立して開業する
・固定給+歩合制で働く
・完全歩合制で働く
上記の3パターンについて、開業までの流れや歩合制の詳細などを解説していきます。
独立して開業する
宅建士として不動産業を学び独立すれば、年収1,000万円も可能です。
独立後の収入源としては、不動産売買の手数料があり「売買価格×3%+ 6万円」が上限と定められています。
4,000万円の不動産売買が成立した場合、最大で126万円の手数料が依頼主から支払われます。
手数料はそのまま自分のものにできるため、不動産売買の成立数によっては年収1,000万円以上も可能です。
ただし、先ほど解説した通り、事務所の家賃や人件費などが毎月必要であり、サラリーマンにはない経費があるため、注意が必要です。
固定給+歩合制で働く
不動産業界の営業職は「固定給+歩合制」が一般的です。
宅建士の取得で身に付けた知識は、営業にも活かせるため歩合給による年収1,000万円も可能です。
宅建士の資格を活かせる不動産営業の求人も多く、年収例が1,000万円を超えている求人も少なくありません。
サラリーマンとして年収1,000万円以上を目指したい場合は、歩合制のある企業がおすすめです。
完全歩合制で働く
独立のリスクは負いたくないものの、個人の頑張りで稼ぎたいような人は、完全歩合制で働く選択肢もあります。
完全歩合制は業務委託契約での採用となり、不動産会社から依頼を受けて仕事をこなしていきます。
独立に必要な費用を抑えつつ、成果次第で正社員よりも稼げます。
一方で、固定給がなく成約に至らなかった場合、収入がなくなる可能性もゼロではありません。
経験を積んだ上で挑戦するかを考えてみましょう。
宅建資格を取得して手当:3つのポイントを押さえる
宅建資格は需要が高く、さまざまな取得メリットもあることから、毎年多くの人が受験しています。
過去の経歴などに関係なく受験できる一方で、例年の合格率は15〜18%と決して高くありません。
業界未経験で宅建資格の取得を目指す場合は、以下の学習ポイントを意識するようにしましょう。
・1日1時間勉強する
・教材は1つに絞る
・過去問題を繰り返し実施する
なぜこのような学習ポイントを意識するべきなのか、宅建試験の難易度も踏まえながら解説していきます。
1日1時間勉強する
宅建資格では、5つの科目に分けて不動産取引に関するさまざまな法律問題が出題されます。
聞き慣れない専門用語が非常に多く、複雑な内容の法律もあります。
初学者が効率良く知識を身に付けていくには、毎日欠かさず勉強していくことが大切です。
日が空いてしまうと、一度覚えた知識を忘れてしまいやすく、モチベーションを維持するのも大変です。
効率良く学習を進めるには、毎日1時間以上の勉強を欠かさないようにしましょう。
ちなみに、初学者が宅建取得に必要な勉強時間は300〜600時間と言われています。
教材は1つに絞る
資格取得に向けた勉強を始める場合、使用する教材は1つに絞ることが大切です。
複数のテキストを使用すると、勉強する箇所が重複してしまいやすく、効率良く学習を進められません。
どうしても、選んだ教材が分かりにくい場合は、初学者向けの入門編テキストを選ぶようにしましょう。
勉強自体が苦手な人は、マンガ形式の解説書が理解しやすくおすすめです。
過去問題を繰り返し実施する
テキストを繰り返し読み、ある程度知識が身についてきた場合は、過去問を解いて身に付けた知識をアウトプットしていきましょう。
過去問を解くことにより、自分の実力を把握しやすくなり、成績の悪い科目を集中して学ぶといった対策もできます。
過去問と似た問題ばかりが出題される科目もあるため、開催年度に関係なく、なるべく多くの過去問をこなすようにしましょう。
ちなみに、宅建業に転職した上で資格取得を目指す場合は「宅建登録講習」を受講するようにしましょう。
宅建業の従事者のみが受講可能であり、講習を修了すれば試験問題50問のうち対象の5問が免除されます。
講習を受講して3年以内であれば、免除を受けられます。
宅地建物取引士証が交付されるまでの4ステップ
宅建試験は、誰でも受験可能であり試験に合格することで宅建士になれます。
ただし、宅建士として働く上で必要となる「宅地建物取引士証」が交付されるまでには、4つのステップを進める必要があります。
1.宅地建物取引士試験に合格する
2.実務講習を受講する
3.宅地建物取引士の登録を行う
4.宅地建物取引士証が交付される
ここでは各ステップの詳細について解説していきます。
1.宅地建物取引士試験に合格する
宅建試験は1年に1回10月に実施されます。
試験結果は12月に発表され、インターネットにて確認できます。
合格者は宅地建物取引士の資格登録を行うこととなるのですが、登録には以下の条件のいずれかを満たしておく必要があります。
・宅地建物取引業の実務経験が2年以上ある
・国や地方公共団体またはこれらの出資により設立された法人で、建物・宅地の処分や取得業務に従事した期間が2年以上ある ・国土交通大臣の登録を受けた建物・宅地の取引に関する実務についての講習を修了した者 |
異業種で働いており、実務経験がない場合は実務についての講習を受ける流れとなります。
2.実務講習を受講する
宅建登録実務講習は、38時間分の通信講座と2日間の演習に分かれています。
受講後には修了試験が実施され、4肢択一式で20問・記述式で20問が出題され、試験時間は90分です。
8割以上の正解で合格となり、出題内容は簡単な内容が多いため、ほとんどの受講者が合格しています。
万が一不合格だった場合も、無料で再受験できます。
宅建登録実務講習の費用は、受講機関によりますが20,000円前後が相場です。
3.宅地建物取引士の登録を行う
実務講習を受講し、修了試験に合格した後は、宅地建物取引士の登録申請を行います。
登録申請に必要な書類は以下の通りです。
・契約書 ・登録申請書 ・身分証明書 ・登記されていないことの証明書 ・合格証書 ・住民票 ・顔写真 ・登録資格を証する書面(登録実習講習の修了証など) ・印鑑 ※宅建業の従事者は従業者証明書も必要 |
申請する際は、登録手数料として37,000円必要です。
各書類の準備や具体的な記入箇所などに関しては「不動産適正取引推進機構」の公式ホームページで確認できます。
4.宅地建物取引士証が交付される
宅建士の資格登録を申請すると、宅地建物取引士証が交付されます。
ステップ1〜4にかかる期間は約30日となります。
ちなみに、試験に合格したあとすぐに登録する必要はなく、欠格事由に該当しない限り試験合格が取り消されることはありません。
宅建資格の手当に関するよくある質問
最後に、宅建資格の手当に関する、3つのよくある質問に答えていきます。
・宅建資格を持っている人はどれくらいの割合ですか?
・宅建士になるには何歳までならいいですか?
・宅建は誰でも受かりますか?
宅建資格取得に関する内容となっていますので、試験に挑戦する方は参考にしてみてください。
宅建資格を持っている人はどれくらいの割合ですか?
不動産業界における宅地建物取引業者では、業務に従事する従業者の5分の1以上の宅建士を設置しなければなりません。
そのため、宅建業における宅建資格保有者の割合は約2割と推測されます。
宅建士になるには何歳までならいいですか?
宅建試験の受験資格には、年齢制限がないため何歳でも受験可能です。
これまでの実例としては最高で90歳、最年少で10歳の合格実例があります。
ちなみに、前述した配置義務は、18歳以上の宅建士であることが条件です。
宅建は誰でも受かりますか?
宅建士の合格率は15~18%と低く、決して簡単ではないものの、努力次第で誰でも合格できます。
令和5年度の宅建試験における合格者の約半数は、関連業界に従事していない社会人や学生でした。
無理のない学習スケジュールを立てた上で、取得を目指してみましょう。
宅建資格の手当に関するまとめ
宅建士は、不動産業界だけでなく金融業や建設業でも需要があり、多くの企業で資格手当が支給されています。
支給額は企業によるものの、5,000~30,000円が相場となります。
宅建資格の取得メリットは、この他にも複数あり、関連業界への転職で資格取得を検討している方におすすめです。
資格難易度は高めであるものの、特別な受験資格がないため、誰でもチャレンジできます。
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