宅建資格とは「宅地建物取引士」の略称で、不動産取引を行う上で欠かせない資格です。
不動産取引における、重要事項の説明は、宅建士にしかできない独占業務です。
建設業界や金融業界でも需要が高く、宅建資格を取得することで、幅広く活躍できるようになります。
特別な受験資格もないため「独学で宅建資格を取得して異業種に転職したい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
今回は独学で宅建資格の取得はできるのか、必要な勉強時間や合格率をアップさせるコツを中心に解説していきます。
【この記事でわかること】 ・独学で宅建資格に挑んだ場合の合格率 ・独学で宅建資格を取得するのに必要な時間 ・宅建資格の合格率をアップさせる3つの手順 ・宅建試験の科目別の勉強時間 ・独学で宅建試験に合格するためのスケジュール例 |
宅建資格の独学での合格率は約10%
例年の宅建試験の合格率は、15~17%で推移しています。
宅建試験に受験条件はなく、誰でも挑戦できるため、上記の合格率は独学者も同じと考えて良いでしょう。
受験者の5~6人に1人しか合格できない資格であるものの、司法書士や不動産管理士といった難関資格に比べると、難易度は低いと言えます。
宅建試験に向けた適切な対策を行えば、独学でも十分合格を目指せる資格と言えるでしょう。
ちなみに「令和5年度の宅建試験結果の概要」によると、受験者の職業構成は以下の通りでした。
【宅建試験・受験者の職業別構成比】
・不動産業:35.2% ・建設業:8.8% ・金融業:8.2% ・他業種:25% ・学生:10.9% ・主婦:4.0% ・その他:7.9% |
既に不動産を取り扱う業界で働いている人が多いものの、他業種や業界未経験者も全体の約半数を占めています。
受験者の平均年齢も35.6歳と高く、転職を機に取得を目指す人が多い資格と考えられます。
参考:令和5年度宅地建物取引士資格試験結果の概要|一般財団法人 不動産適正取引推進機構
宅建資格の独学での合格に必要な時間について
宅建試験では、不動産関係の法律に関する問題が出題されます。
普段の生活では耳にすることのないような専門用語が多く、合格するには出題範囲全てを丸暗記しなければなりません。
そのため、既に不動産業界で働いている人と、これから独学で学んでいく人では、合格に必要な時間が異なります。
ここでは、宅建試験に合格するために必要な時間について、初学者と学習経験がある人に分けて解説していきます。
初学者の場合
宅建試験に独学で挑戦する場合、初学者では400~600時間の学習が必要と言われています。
一日の勉強時間別による、試験合格に必要な期間は以下の通りです。
【宅建試験に独学で合格するために必要な時間】
・1日2時間学習:7ヶ月~10ヶ月 ・1日3時間学習:4ヶ月~7ヶ月 ・1日4時間学習:3ヶ月~5ヶ月 |
宅建試験は、毎年1回10月に開催されるため、遅くとも6〜7月までには学習をスタートさせる必要があります。
社会人として働きながら取得を目指す場合、今の仕事の繁忙期なども踏まえた上で、余裕を持った期間を設けるようにしましょう。
学習経験がある場合
宅建試験で出題される「権利関係」は、民法に関する内容がメインです。
民法は宅建資格以外の試験でも出題範囲に含まれており、既に保有している資格によっては、勉強時間を短縮できます。
資格は持っていないものの、不動産が関係する仕事に従事している人もいるでしょう。
学習経験者の場合、現時点での知識量にもよるものの、必要な勉強時間は300~400時間となります。
後ほど、出題科目別で必要な勉強時間を紹介していくため、既に詳しい科目の勉強時間を除いた上で、必要となる時間を算出してみましょう。
独学で宅建資格の合格率をアップさせる3つの手順
宅建試験では、不動産取引に関する5つの科目ごとに問題が出題されます。
効率良く学習を進めていかなければ、短期間で知識を身に付けられません。
宅建試験の合格率を上げるには、以下の手順で学習を進めていきましょう。
1.知識を学んで全体像をつかむ
2.知識を定着させる
3.答えを見なくても問題に回答できるようにする
具体的にどのような学習をすればいいのか、ステップごとに解説していきます。
1.知識を学んで全体像をつかむ
初学者が効率良く知識を身に付けていく上で、はじめに行うのが「不動産取引に関する法律の全体像をつかむ」ことです。
テキストを繰り返し読みながら、少しずつ関連法律について理解していきます。
ただし、不動産取引に関する法律は専門用語が多く、大半が初学者には理解が難しい内容です。
テキストを選ぶ際は、初学者用につくられた入門編のものを選ぶようにしましょう。
資格試験への挑戦自体が初めての場合は、楽しみながら理解できる、マンガ形式のテキストがおすすめです。
1回で理解しようとせず、とりあえず最後まで読み進めてから、再度読み返しながら知識を身に付けていきましょう。
学習スピードによるものの、勉強を始めて3ヶ月ほどが第1ステップの目安です。
2.知識を定着させる
テキストを繰り返し読みながら、ある程度理解できてきたら「知識を定着させるステップ」へと移行していきます。
入門者用以外のテキストも読みながら、過去の問題集を解いていきます。
問題に正解するのはもちろん、なぜそのような解答になるのか、分かりやすく解説できるレベルになっておくことが重要です。
間違った場合は、答えに関する解説を参考に、テキストの該当する部分を繰り返し読んで理解を深めていきます。
インプットだけでなく、アウトプットも意識しはじめる期間になります。
第2ステップは2~3ヶ月間を目安にして、学習を進めていきましょう。
3.答えを見なくても問題に回答できるようにする
試験の約2ヶ月前からは、インプットよりもアウトプットを意識していきます。
問題に対して、自分なりの言葉で分かりやすく解説できるように練習していきましょう。
試験では、ある事案に対し最適な解答を複数選ばなければならない問題もあり、関連する法律について深く理解しておく必要があります。
また、この頃からは試験のペース配分に慣れる練習も必要です。
実際の試験時間に合わせて、過去問を繰り返し解いていきましょう。
宅建資格に独学で合格するのに必要な時間:約600時間
宅建試験では、5つの科目で50問の出題があり、36点前後が合格基準です。
科目によって出題数は異なるものの、バランスよく理解しておくことが高得点を目指す上で重要です。
出題数も踏まえ、以下の時間を参考に各科目の学習を進めていきましょう。
1.権利関係:90~100時間程度
2.宅建業法:100~120時間程度
3.法令上の制限:80~90時間程度
4.税その他:20~30時間
5.免除科目:10~20時間
ここでは、各科目の勉強時間を踏まえながら、出題内容や学習ポイントなどを解説していきます。
1.権利関係:90~100時間程度
権利関係は、例年で14問の出題があり、勉強時間は90〜100時間を目安にしましょう。
主に民法の内容が出題され、宅建士として業務に携わる上で基本的なルールとなるため、丸暗記が基本です。
民法以外では「借地借家法・区分所有法・不動産登記法」からも出題されます。
権利関係の問題の特徴としては「出題形式のバリエーションが多いこと」です。
ある事例を基にした出題や、裁判所の判決文を一部抜粋した上で、要旨が何なのかを問うような問題もあります。
問題文が長く、内容を素早く理解した上で、自分なりの言葉で答えられるほどの実力が必要です。
14問中、7〜9問以上は正解できるようにしておきましょう。
2.宅建業法:100~120時間程度
宅建業法とは、不動産を購入する人の利益を守るために作られた法律です。
他の科目と比べて出題範囲が狭い一方で、出題数は20問と多いため「宅建業法で何点取れるかで合格が決まる」と言われている重要な科目です。
高得点を目指すために、出題範囲全てを丸暗記しておくようにしましょう。
また、過去問と似た問題が毎年出題されているため、過去問を繰り返し解きながら内容を理解していきます。
中には、理解の難しい内容もありますが「一般のお客様を保護するための視点」を意識して覚えると理解しやすくなります。
20問中、18問以上は正解できるようにしておきましょう。
3.法令上の制限:80~90時間程度
建物や土地は、購入さえすれば自由に扱えるというわけではありません。
土地によって建築できない建物が定められていたり、高さが制限されていたりします。
このような不動産に関する制限について出題されるのが「法令上の制限」です。
具体的には「建築基準法・農地法・都市計画法・国土利用計画法・土地区画整理法」から出題されます。
専門用語の多さが特徴であり、初学者は全体の理解ではなく、専門用語を覚えていくことから始めていきましょう。
各法令を理解するためには「なぜそのような法令があるのか」について理解することが大切です。
法令上の制限は、毎年8問出題されるため、6問以上正解できるようになっておきましょう。
4.税その他:20~30時間
「税その他」では、不動産鑑定評価基準や税制に関する内容が出題されます。
出題内容は、入門的なものが多く、基本的な内容を理解していれば正解できる内容です。
「課税主体」や「課税客体」といった専門用語から覚えていくようにしましょう。
その後は、過去問を解きながら内容について理解していきます。
税その他の出題数は毎年3問だけであるため、理解しやすい内容から覚えて、時間をかけ過ぎないことも大切です。
5.免除科目:10~20時間
免除科目とは、ここまで紹介してきた4科目の、その他に関する内容が出題されます。
具体的な出題範囲は、以下の通りです。
・宅地建物取引業法施行規則 第8条第1号 ・宅地建物取引業法施行規則 第8条第5号 |
土地や建物の地積・地目・形質・構造に関する内容や、受給に関する法令や実務が該当します。
出題内容は基本的な内容が多く、常識で考えて判断すれば正解できる問題が多いことが特徴です。
試験では5問出題されますが、時間をかけ過ぎないようにして、他の科目を理解した後に勉強することをおすすめします。
ちなみに免除科目は、名前にもある通り、一定の条件を満たせば試験から免除できます。
その条件となるのが「宅建登録講習の修了」です。
登録講習を受けた後に、修了試験に合格すれば「免除科目」の問題が免除されます。
ただし、登録講習は宅建業に従事している人しか受講できません。
別の業界で働きながら取得を目指す場合は、免除科目の学習も必要です。
宅建資格に独学で合格するためのスケジュール
ここまで独学で宅建資格を取得するための、具体的なスケジュールの立て方について解説してきます。
・試験1年前からのスケジュール
・試験半年前からのスケジュール
・試験3ヶ月からのスケジュール
上記3パターンで、具体的な学習の進め方について紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
1年前
試験の1年前から学習をスタートする場合、以下のようなペース配分で進めていきましょう。
1~2ヵ月目 | 試験の全体像をつかむため、初学者用のテキストを繰り返し読んでいく。1回で理解しようとしないことが重要。 |
3~9ヶ月目 | 繰り返しテキストを読み返しながら、各出題科目について深く理解していく。インプットするだけでなく、過去問を解きながら身に付けた知識のアウトプットも行っていく。 |
10~12ヵ月目 | 繰り返し模試を行い、弱点とする科目の克服を集中して行う。実際の試験時間に慣れておく。 |
初学者の場合、勉強をスタートした頃は内容が難しすぎて一度で理解できません。
深く理解しようとせずに、ある程度分かった段階で次に読み進め、全体像を理解することを意識しましょう。
全体像が理解できた後は、先ほど紹介した科目ごとの勉強時間を参考に、出題内容について理解を深めていきます。
半年前
試験の半年前から学習をスタートする場合は、以下のようなスケジュールで進めていきましょう。
1ヵ月目 | 入門用のテキストを繰り返し読みながら全体像を掴んでいく |
2~5ヵ月目 | 各科目の勉強時間を参考に、出題内容について理解を深めていく |
6ヵ月目 | 模試を繰り返しながら、正解率を上げていく |
半年前から準備を開始する場合も、1年前からの学習と基本的に内容は変わりません。
1年前から準備するよりも余裕がないため、まんべんなく学ぶためのペース配分を意識しましょう。
3ヶ月前
試験の3ヶ月前から学習をスタートする場合、ペース配分は以下のような内容です。
1~2ヶ月目 | 参考書を繰り返し読んで学習しながら、過去問を解いて理解を深めていく。ひたすらインプットとアウトプットを繰り返す。
期間内に全体を1週するのではなく、何週も周りながら理解していく |
3ヵ月目 | 模試を繰り返して試験対策を進める |
3ヵ月間で宅建試験に合格するのは、かなり難しい挑戦と言えます。
半年のスケジュールよりも、さらにペース配分が重要です。
3ヵ月で資格取得を目指す場合、独学では難しいため、なるべく通信講座などの利用をおすすめします。
1年に1回しか試験がないため、失敗しないように、なるべく余裕のある学習計画を立てるようにしましょう。
宅建資格の独学に関するよくある質問
最後は、宅建資格を独学で取得することに関する、3つのよくある質問に答えていきます。
・宅建資格は独学で受かりますか?
・宅建資格を独学で受かった人の勉強時間はどれくらいですか?
・宅建の勉強は何ヶ月前からするべきですか?
独学で合格を目指す難易度や実際に合格した人の勉強時間に関する内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。
宅建資格は独学で受かりますか?
宅建資格は決して簡単な資格ではないものの、独学での取得も十分可能です。
冒頭でも解説した通り、宅建試験の合格者の約半数は、学生や社会人であり勉強法は通信講座や独学が大半と予想されます。
今回紹介した学習スケジュールを参考にしながら、試験に挑戦してみましょう。
宅建資格を独学で受かった人の勉強時間はどれくらいですか?
独学で宅建資格を取得した人の勉強時間について、リサーチした結果、以下のような声がありました。
・1日1~2時間のペースで週5日勉強して半年で合格 ・1日6時間勉強して7ヶ月で合格 ・平日3時間、休日は8時間勉強して3ヶ月半で合格 ・毎日2~3時間勉強して4ヶ月で合格 |
一日の学習時間にもよりますが、半年前から準備している人が多い印象でした。
学習方法に関しては、日が空くと忘れてしまうため、毎日勉強することが大切です。
宅建の勉強は何ヶ月前からするべきですか?
宅建の勉強は、半年~1年前から学習をスタートしていくようにしましょう。
初学者が独学で進めていく場合、予定よりも理解に遅れが生じる可能性があります。
中には3~4ヶ月で合格する人もいますが、なるべく半年前からは学習をスタートするようにしましょう。
宅建資格の独学についてのまとめ
宅建は試験に特別な受験資格がないため、業界未経験から取得を目指す人も少なくありません。
テキストを繰り返し読みながら独学で学習を進めることも可能であり、毎年受験者の5〜6人に1人が合格しています。
出題範囲が広いため、初学者の場合はなるべく余裕を持ったスケジュールを立てることが大切です。
毎日の勉強時間にもよりますが、なるべく半年~1年前から準備を進めるようにしましょう。
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