自動車整備士のやることは、乗用車やトラックなど様々な車両の点検や修理をおこなうことです。
人の命に関わる重要な仕事であり、ロボットでの代行が難しいため、今後も需要がなくなることは考えにくいでしょう。
そこで本記事では、自動車整備士が具体的にどのような整備をしているのか、他にどのような業務があるのかを解説します。自動車整備の仕事に興味のある方は参考にしてください。
【この記事で分かること】 ・自動車整備士が普段やること ・資格別での仕事内容の違い ・自動車整備士の1日の流れ ・自動車整備士に関するよくある質問 |
自動車整備士のやること
自動車整備士は、あらゆる車両の整備を通じて事故や故障を防ぐ役割を担っています。
また、走行中に故障してしまった箇所を修理するのも整備士の仕事です。
整備業務には複数の種類があり、自動車整備士の具体的な業務は以下の通りです。
・点検整備
・分解整備
・緊急整備
・鈑金塗装
・電子制御装置整備
・損傷した車の修理
・お客様への説明
各整備や業務の詳細について見ていきましょう。
点検整備
車検や日常点検、定期点検などで行われるのが「点検整備」で、車両に以上がないか以下の項目で点検を行います。
【点検整備のチェック項目例】
・ブレーキのきき具合
・ブレーキドラムやブレーキディスクの摩耗や劣化、損傷のチェック
・ハンドルの動作異常チェック
・ホイールシリンダ等の摩耗や損傷、液漏れのチェック
・ホイールの変形や損傷、ベアリングがたのチェック
・サスペンションの損傷や緩みのチェック
・点火プラグの状態確認
・ドライブシャフトの緩みのチェック
・ファンベルトの緩みや損傷のチェック
・各種オイルやフィルターの汚れチェック
どの部分も、自動車が安全に走行するうえで重要な役割を果たしており、整備士は1つずつ異常がないかチェックしていきます。
ちなみに「車検=整備」と捉えられがちですが、車検は「国が定める保安基準を車両が満たしているかの検査」です。
整備は「車を良好な状態で維持するためのメンテナンス」であるため、チェック項目などが同じでも目的が異なります。
分解整備
分解整備とは、点検整備の中で異常が見つかった場合に、当該部分を車両から取り外したうえで、細かいパーツに分解しながら原因を追及する整備です。
【分解整備する箇所】
・原動機:エンジン
・走行装置:ベアリング、ロアアーム
・操縦装置:タイロッドエンド
・動力伝達装置:プロペラシャフト、ドライブシャフト
・制動装置:ブレーキドラム、ディスクキャリパ
・緩衝装置:シャシのバネ
分解整備は、車の構造に関するより専門的な知識が必要であり、整備不良は人の命に関わります。
そのため、地方運輸局長の承認を受けた整備工場でなければ、分解整備はできません。
緊急整備
緊急整備とは、普段走行している最中に異音がしたりエンジンがかからなくなったりして、緊急で行う整備のことです。
故障した際の状況をもとに、予想される箇所や心臓部である電気系統やエンジン部分の点検を行います。
故障個所を特定したあとは、必要に応じて分解整備を実施したうえで部品を交換します。
事故車両の場合は、どこまで損傷が及んでいるのかを見極めるのが難しく、整備士としての経験が特に問われる整備と言えるでしょう。
鈑金塗装
板金塗装は、事故や飛び石で外装パーツがへこんだり塗装が剥がれたりした場合に、板金作業と塗装作業で修復する作業です。
専門店のように外装を全て塗り替えたりすることはないものの、ちょっとした塗装の補修などを整備のついでに行うケースもあります。
板金塗装するにあたって必須となる資格はなく、基本的な知識と技術を身に付けられれば、簡単な補修であれば対応できるようになります。
電子制御装置整備
電子制御装置整備では、自動ブレーキや自動運転のために搭載されているレーダーやカメラを点検・整備します。
普段の運転で正常に作動させるためには、取り付け角度の微調整などが必要であり、他の箇所とは異なる知識が必要です。
そのため、電子制御装置を整備するには、特定整備の承認を受けなければなりません。
センサーの調整や校正、故障診断機を使った診断を行います。
近年は自動車の電子化が進んでおり、電子制御装置整備は今後さらに需要が高まっていくと予想されています。
損傷した車の修理
交通事故で車両が大きく損傷している場合、専門機器を使いながらフレームのゆがみなどを計測します。
劣化による故障とは違い、どこまで事故の影響が及んでいるのかを詳しくチェックしていかなければなりません。
調査が済んだ後には、部品交換などを行い動作確認したうえで納車する流れです。
勤める会社にもよりますが、車の修理を行う場合は保険会社に見積もりを提出したり、修理の状況を報告したりする業務もあります。
お客様への説明
自動車整備士は、車がどのような状態なのか、オーナーに対して分かりやすく説明するのも大切な仕事です。
車のどの部分に異常があるのか、なぜ故障してしまったのか、修理費用などの質問に対して的確に答えていきます。
車の状態をチェックしたうえで、普段の乗り方についてアドバイスすることもあります。
自動車整備士のやることは資格によって異なる
自動車整備士が修理や点検を行う車両は、乗用車やバス、トラックなどさまざまな種類があります。
また、電子制御装置整備で解説したとおり、近年は車の電子化が進んでおり、より専門的な知識が必要となる車両も増えてきました。
そのため、自動車整備士は扱える車両に応じて、資格が分かれています。
- 一級自動車整備士
- 二級自動車整備士
- 三級自動車整備士
- 特殊整備士
ここでは、各整備士資格の概要について解説していきます。
一級自動車整備士
一級自動車整備士には、一級小型自動車整備士があり、ジーゼル(ディーゼル)車やガソリン車に関わらずあらゆる箇所の整備を行えます。
近年、増えてきている、電気自動車やハイブリッド自動車などの整備もこなせる資格です。
試験を受けるには二級自動車整備士(シャシ整備士を除く)を取得してから、3年以上の実務経験が必要です。
二級自動車整備士
二級自動車整備士は、扱える車によって以下の通り4種類に分けられています。
- 二級ジーゼル自動車整備士(ディーゼル車)
- 二級ガソリン自動車整備士
- 二級自動車シャシ整備士
- 二級二輪自動車整備士
ディーゼル車とは、ガソリンエンジンではなく軽油を燃料とするディーゼルエンジンの車両を言います。
燃料の燃焼方法がガソリン車と異なるため、ジーゼル自動車整備士とガソリン自動車整備士に分かれています。
ちなみに「ジーゼル」と「ディーゼル」は同じであり、自動車整備士試験ではジーゼルという言い方をします。
シャシ整備士とは、エンジンやボディ以外の部分のみ整備できる資格です。
具体的にはサスペンションやブレーキなどがあります。
三級自動車整備士
三級自動車整備士とは、自動車整備士の中で最も取得難易度が低く、未経験者がはじめに取得を目指す資格です。
構造の複雑なエンジンなどの整備はできず、基本的な点検作業のみ担当できます。
三級自動車整備士も、二級と同様に4種類に分かれています。
特殊整備士
特殊整備士は、ここまで紹介してきた一級・二級・三級自動車整備士とは別に設けられた資格です。
より専門的な知識が必要な車両の整備を行うために設けられた資格で、特殊整備士は以下の3種類に分けられています。
- 自動車電気装置整備士
- 自動車車体整備士
- 自動車タイヤ整備士
最近の自動車に必ず搭載されている、電気装置を整備するのが自動車電気装置整備士です。
今後も電気自動車への切り替えが進んでいくため、より需要が高まる整備士資格と言えるでしょう。
自動車車体整備士は、フレームや車体の点検整備に特化した資格であり、自動車の組み立て工場や板金塗装業で需要があります。
自動車タイヤ整備士は、タイヤのスペシャリストとしてタイヤの異常摩耗を点検したり、お客様の使用頻度に応じたタイヤをアドバイスしたりします。
自動車整備士が1日でやることの流れ
自動車整備士として働く場合、一日は以下のような流れで進んでいきます。
8:15 【出社】 | 出社して作業服に着替えて準備を整える |
8:30 【朝礼】 | その日の作業予定などを確認してからラジオ体操をする |
8:45 【勤務開始】 | 作業指示書のもと、自分が担当する車の整備を行う |
12:00 【お昼休憩】 | きりのいいタイミングで作業を終えてお昼休憩をとる |
13:00 【作業再開】 | お客様の予約状況を踏まえながら整備作業を進めていく |
17:00 【片付け・清掃】 | きりのいいタイミングで作業を終えて、片付けや清掃をする |
17:45 【退社】 | 服を着替えて退社 |
自動車整備士の主な勤務先には「ディーラー・整備工場・トラックやバスの営業所・カーショップ」などがあります。
ディーラーは、多くのお客様が訪れるため必要に応じて接客などもこなします。
また、納車時間を最優先に動く必要があり、他の部署が遅れている場合は、洗車などの仕上げ作業を手伝うことも珍しくありません。
トラックやバスの営業所では、整備だけでなく運行管理業務なども一緒にこなすのが一般的です。
カーショップでは、整備や点検だけでなくお客様の要望をヒアリングしたうえでおすすめの商品を紹介するような業務もあります。
出典:職業情報提供サイトjobtag・自動車整備士|厚生労働省
自動車整備士のやることに関連してよくある質問
最後は、自動車整備士に関するよくある質問に答えていきます。
自動車整備士を目指すかを考える際に役立つ内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。
自動車整備士の仕事はなくなる?
自動車整備士の仕事は、自動車の構造などが変わったとしてもなくなる可能性は低いと言えます。
自動車の整備や点検は、人の命に関わることであり、些細な異常も見逃せない仕事だからです。
目視で点検するのはもちろん、音・臭い・温度などで異常がないかチェックします。
これらの業務をロボットが代行するのは難しく、今後も自動車整備士の需要は下がらないと言えるでしょう。
自動車整備士のやることについてのまとめ
自動車整備士がやることは、乗用車やバスなどあらゆる車両が良好な状態で走行できるように、整備や点検をすることです。
整備には、点検整備や分解整備、緊急整備といった種類があり、それぞれで専門的な知識と経験が求められます。
そのため、扱える車両や箇所によって自動車整備士の資格は、4種類に分類されています。
具体的に従事したい仕事を見つけたうえで、資格の取得から目指してみましょう。
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