小型トラック十数台分にも及ぶ大量の荷物を一気に運ぶ大型トラック。
大型トラックはとても重いですから、動かすには強大なエンジンとともにたくさんの燃料を必要とします。荷物を満載すればその分必要な燃料も増大するのは論をまたないことです。
燃料はタダではありませんので、大きくなればなるほど、積めば積むほど燃料費は増え燃費も悪化します。燃費が悪化すればその分だけ動力費が嵩み、ゆくゆくは会社の経営にも響いてくるのです。
今回はそんな、大型トラックの燃費に関わるお話です。
10t大型トラックの平均的な燃費は約4km/L
全日本トラック協会によると、現在運行されている大型トラックの平均的な燃費はリッターあたりおよそ3〜3.5kmということです。大型トラックの燃料タンクの容量がだいたい300リッターですので、一回の満タンでおよそ900kmは走るという計算になります。これは空荷状態での数値であるため、荷物を満載したり重量物を積んだりするとこの数値より燃費は悪化します。具体的にはおおよそ3割悪化すると言われています。
つまり空荷状態の燃費が3km/lである大型トラックに荷物を満載したときの燃費は、
- リッターあたり3km × 0.7(←空荷状態の燃費を1とした場合)= リッターあたり2.1km
と計算できます。会社が燃費向上をうるさく訴えるのも納得と言えますね。
では、メーカーごとの平均燃費を見ていきましょう
メーカー | シリーズ | 平均燃費 |
いすゞ自動車 | ギガ | 4.06km/L |
三菱ふそう | スーパーグレート | 4.05km/L |
UDトラック | クオン | 4.05km/L |
日野自動車 | プロティア | 4.03km/L |
この結果を見ると、いすゞ自動車の平均燃費が一番大きいですが、大きな差はないと言ってもいいでしょう。そのため、1otトラックの平均燃費は約4キロ程度と覚えていけば問題ないです。
関連記事:トラックメーカーの特徴を徹底比較!いすゞ・日野・UD・三菱ふそうメーカー別人気車種一覧
10t大型トラックの燃費は運転の方法次第で向上する
続いて型トラックのエンジンのスペックがどのようなものかを知る必要があります。
大型トラックのエンジンはとにかく巨大の一言に尽きます。その排気量はおおよそ1万ccから2万ccが主流で中には3万ccに迫るものもあり、馬力も300PS超えは当たり前に存在し、中にはターボチャージャーおよびインタークーラーを備え500PSを超えるものもあります。乗用車の世界では考えられないようなスペックでなければ、大型トラックを動かすことなど到底出来ないのです。
気になるのはやはりその燃費です。一体どのくらい走るのでしょうか。
先述したように、全日本トラック協会によると、現在運行されている大型トラックの平均的な燃費はリッターあたりおよそ3〜3.5kmということです。大型トラックの燃料タンクの容量がだいたい300リッターですので、一回の満タンでおよそ900kmは走るという計算になります。大型トラックは多くの荷物を積載できるだけあって長距離運行に就くことが多いので、なるほどこれは納得のスペックと言えます。
しかし実際には、この数値より下回ることが多いです。
例えば街中ではストップ&ゴーの繰り返しで燃費が悪くなります。大型トラックも含め自動車というのは発進時に燃料を多く消費しがちです。このため渋滞などでストップ&ゴーを強いられる街中での走行時間が長ければ長いほど、燃費は悪くなります。
上り坂の登坂時も燃費を悪くする場面の一つでしょう。大型トラックはその自重のせいで上り坂が苦手です。例えば平野から山間部への変わり目のような地形での上り坂では、大型トラックを先頭にした大名行列がよく見受けられます。あんな状態でも大型トラックは大量の燃料を使って必死に上り坂を登っているのです。
荷物の積載状態も燃費を左右する要素の一つです。当たり前ですが空荷の状態が一番燃費が良い状態です。軽い荷物であれば燃費にはあまり影響を与えませんが、これが重い荷物を積んだ時あるいは宅配便の荷物のように一個一個は軽くてもその数が膨大であった時などは、自車の自重に加えて積載物も一緒に動かさなくてはなりませんから、とりわけ発進時や登坂時に空荷状態以上の燃料が必要になります。
大型トラックの燃費を向上させるには、
- 渋滞に捕まらない
- 上り坂を避ける
- 荷物を積まない
ということが一番の早道なのですが、もちろんこれらはナンセンス以外の何物でもありません。では、大型トラックの燃費を向上させる手段は存在しないのでしょうか?
いえいえ、燃費向上にどれだけ不利な条件が重なっても、実は運転の仕方次第で燃費を向上させることが出来るのです。
関連記事:大型トラックの燃費向上対策!運転テクニックやアイドリングでの対応方法を紹介【保存版】
10t大型トラックの燃費を向上させる方法|9選
燃費を悪化させる最大の要因は燃料の使い過ぎ、すなわちアクセルワークにあります。このアクセルワークをいかに細かく調整するかによって、燃費は大きく改善されます。
トラックのエンジンオイルの交換
エンジンオイルの交換をすることで下記のような5つのメリットがあり、燃費向上に繋がります。
・潤滑効果
エンジン内部では様々な部品が動き摩擦が発生するのですが、新しいエンジンオイルになることでより摩擦でのダメージが軽減されます。
・冷却効果
エンジンが稼働中は高温になり、劣化が進みやすくなるのですが、新しくエンジンオイルを補充することで熱が上がりにくくなります。
・密封効果
ピストンとシリンダーの間などが、エンジンオイルで満たされることで密封されることで燃費向上に繋がります。
・洗浄効果
エンジンの稼働により発生した汚れをオイル交換することでリセットすることができます。
・防錆効果
エンジン内部を常にオイルで満たしておくことで、サビを防ぎエンジンの劣化を防止します。
上記のような効果があるため、オイル交換は燃費を向上させる上で欠かせないものとなります。
オイル交換に関しては下記記事で詳しく知ることができます。
トラックの空気圧の適正化
小型や大型関係なく、タイヤの空気圧が落ちていると地面との接地面積が増えてしまい、抵抗による負荷で燃費が悪くなります。
また、燃費だけではなくタイヤのヨレが大きくなるためハンドル操作がしにくくなり、高速で走行すると劣化が進んだりパンクの原因にもなります。
空気圧は適正値が設定してあり、たくさん入れればいいというわけではありません。
空気圧が高すぎるとクッション性がなくなるため、振動などが伝わりやすくなり乗り心地が悪くなり、衝撃も受けやすくなるため最悪の場合はバーストすることもあります。
トラックの燃費を向上させるためには、定期的な空気圧のチェックを行う必要があります。
ガソリンスタンドなどで無料で測定できたりするので、燃費が落ちてきたと感じた場合は一度スタッフに聞いてみるといいでしょう。
タイヤの空気圧に関しては下記記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
スピードは出しすぎない
とにもかくにもスピードは抑えるに越したことはありません。スピードを上げるためには当然アクセルを大きく踏み込まなければなりません。すると当然燃料は多く消費されることになります。
そのような努力をしても目的地に着ける時間にそれほど大差がないことは、多くの人々の実際の経験談としてすでに語り尽くされています。あくまでも交通の流れに乗ることを最優先にし、無闇矢鱈に急がないことです。
速度を一定に保とう
前項とも一部関連しますが、交通の流れに乗る、とはすなわち速度を一定速に保つことでもあります。
走行しているクルマには慣性の法則が働きます。抵抗する力が存在しなければ、クルマはそれまでの速度で永久に走り続けようとします。しかし実際には、タイヤと路面との摩擦抵抗や正面からの空気抵抗、そして上り坂下り坂における重力抵抗など、様々な抵抗力が生じています。これらのためにどれほど高速度であろうと、その後何もしなければクルマは徐々に速度を落とし、最後には完全に止まってしまいます。
そこから再び速度を上げて交通の流れに乗ろうとすると、当然に燃料を多用します。そしてまた何もせずに速度が落ち、また速度を上げる・・・といったことを繰り返すと、最終的に燃費は著しく悪化することになります。これではいくら燃料があっても足りません。
ですから、出来るだけ今までの流れに乗っていた速度を保ち、不要なアクセル操作を極力減らすことに努めなければなりません。
エンブレや排気ブレーキを多用しよう
燃費を悪化させる要素の一つとして「急停車」が挙げられることがあります。これは止まるべき箇所ギリギリまでアクセルで走行し、そこが迫ってきたら一気にブレーキを踏み込んで止めるというものです。
普通なら、止まるべき箇所が予めわかっているなら事前にアクセルから足を離し、エンジンブレーキや排気ブレーキで徐々に速度を落としつつ接近し、最後はブレーキを踏んで止めるべきなのですが、何故かこういった運転をするドライバーは少なくありません。危険ですし、燃料もその分無駄に消費するだけでなく、何より積んでいる荷物に不必要な衝撃を与えることにもなり、いいことなど一つもありません。
アイドリングストップ
そもそもエンジンは回っている限り燃料を消費する機械です。ですからエンジンを止めてしまえば燃料消費は完全にゼロになり、トータルで燃費が良くなるという理屈です。
しかし、夏場は高温多湿・冬場は積雪寒冷という国土の日本にあって、常日頃からアイドリングストップに努めるのは、並大抵ではない決意と法外なインセンティブでも無い限り非常に難しいのではないでしょうか。
せめて、気候が安定する春先や晩秋の頃においてパーキングエリアなどで休憩や仮眠を取る際には、冷房も暖房も必要ありませんから積極的にエンジンを切り、窓を開けて外からの爽やかな空気を車内に取り入れる、程度のことは可能かと思われます。
もちろん、そのような状況でも常に冷やし続けることが必要な冷凍冷蔵車においては、この限りではありません。
こまめなメンテナンス
大型トラックの運行には日々のメンテナンスが必要ですが、燃費を向上させる目的でメンテナンスを行っている人はそう多くありません。何故ならこうした行為が燃費の向上に繋がるとは誰も思っていないからです。しかし、実はこうしたメンテナンスにも燃費向上のカギが隠されているのです。
例えばタイヤの空気圧です。そもそもクルマはゴム製のタイヤを路面に接地させて自重で潰し、そこから得られる摩擦力で動くモノです。摩擦力がゼロだとクルマは動きませんし(タイヤが空転する)、また過大だと動かすのに多大な燃料を必要とします。この時路面との接地面積が少なければそれだけ摩擦力が少なくなるので、接地面積を少なくするにはタイヤに適切な量の空気を入れて潰れ方が小さくなるようにします。
エアクリーナーの目詰まりも、燃費悪化の要因の一つです。燃料を燃やすには空気に含まれる酸素が必要です。そのためにはエンジンに、一定の割合で異物を含む空気を送り込まなければなりませんが、これを除去するためにエアクリーナー(エアフィルターともいう)がエンジンの吸気ライン上に取り付けられています。このフィルターが詰まってしまうと、燃料を燃やすために十分な空気がエンジン内に送り込まれず、馬力を稼ぐために多くの燃料を消費することに繋がってしまい、これが燃費の悪化として現れます。
最近燃費が悪いなと感じたら、まずタイヤの空気圧、そしてエアクリーナーの目詰まりを疑ってみると良いかも知れません。
7速を多用すべし
ATも増えてきているとは言え、大型トラックでの現場ではまだまだMTが主流です。
燃費を稼ぐためにも高速段のギアを積極的に多用するよう努めましょう。少しでも速い流れに乗れるようなら、面倒でもとっとと高速段・特に7速に入れてしまうのが一番良いです。
大型トラックのエンジンはトルクの太いディーゼルエンジンであるため、ガソリン車と違って負荷に強いという特徴があります。ガソリン車によくある「あまり速度が乗らないうちに高速段に入れてしまったためにエンストする」といったことを、大型トラックではあまり気にする必要はありません。ですから少しでも流れに乗れたならガンガン高速段に入れましょう。
とは言え、7速へのシフトチェンジは面倒極まりないので、これを敬遠するドライバーの気持ちもわからないではありません。しかし会社あってのドライバーなのですから、ここは会社の経営に貢献する意味でも、7速を多用して燃費改善に努めるのは決して悪い話ではないように思います。
グリーンゾーンでのシフトアップ
インパネの速度計の隣りにあるタコメーター。良く見ると回転数表示に赤と緑の枠が被せられてることに気づくと思います。いわゆるレッドゾーンとグリーンゾーンです。
レッドゾーンの意味は恐らくドライバーなら誰もが知っていることなのでここでは省きます。一方でグリーンゾーンを知っているドライバーはあまり多くありません。というよりグリーンゾーンを示すタコメーターを備える車自体まず見かけません。燃費にシビアさを求められる大型トラックならではの装備と言えます。
ディーゼルエンジンはもともとガソリンエンジンのように高回転によって馬力やトルクを得る構造ではありません。逆に言えばガソリンエンジンほど回さずとも走行に十分な馬力やトルクは得られるのがディーゼルエンジンです。ですがドライバーによってはシフトアップするのに十分な回転数を飛び越してさらに回す者もいて、これではせっかくのディーゼルエンジンの特性を活かせないばかりか燃費も悪くするばかりです。
そこで大型トラックのタコメーターには、回転数表示に緑の枠を被せ、「ここまで回したらシフトアップせよ」という視覚に訴えてそれを促すという方策が採られました。これにより適切な回転数を維持し、ひいては燃費の改善に繋がることとなります。シフトアップ時には、このグリーンゾーンを意識して行うと良いのです。
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10t大型トラックの燃費が向上しないのは経年劣化が原因
以上の知識やテクニックを以てしても、燃費の向上が見込めないことがあります。大型トラックそのものの経年劣化等です。
大型トラックも機械ですから、どれほど綿密なメンテナンスを行っていても、徐々にあちこち傷んできます。人の手が入りにくいエンジンやトランスミッションなどはその代表例です。エンジンではシリンダー内をピストンが常時上下していますし、トランスミッションでも常時複数のギアとギアが接しています。どこかに触れる機会の多い箇所ほど劣化が進み、その劣化を補おうとして燃料が多く消費されます。その結果、ますます劣化が進んでさらに燃費が悪くなる、といった悪循環に陥るのです。
走行環境やメンテナンス状況にもよりますが、新車登録より数年を経過した大型トラックの燃費は、おおむね1〜2割程度低下すると言われています。
関連記事:軽トラの燃費はどれくらい?新車や中古車で徹底比較!
10t大型トラックの燃費についてのまとめ
大型トラックのエンジンは巨大であるがゆえに燃費が悪いという状況です。そんな燃費を改善するためには、速度を出し過ぎず一定速を保つ、こまめなメンテナンス、早めの7速などで燃費は向上させられる方法が勧められます。
また経年劣化でも燃費は悪化するので新しいトラックを購入するのも一つの手かもしれません。
ご自身の状況と相談しながらどう燃費を向上・改善させていくのか考えていきましょう。
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