トラックの故障は大変ですよね。なかでもオーバーヒートは、深刻なトラブルですので焦ります。
しかし、オーバーヒートは、点検で普段から気をつけていれば高い確率で防げます。
そこで今回はトラックのオーバーヒートの「対処法と防止策」を詳しく解説していきます。
「オーバーヒートとは何か?」といった初歩的な内容から説明しますので、日々の安全運転に役立ててくださいね。
トラックのオーバーヒートとは
トラックのエンジン本体が、熱くなりすぎた状態をオーバーヒートと言います。
実際のオーバーヒートの映像
(出典:youtube)
オーバーヒートという言葉自体は、トラックに乗らない人でも聞いたことがあるでしょう。トラックはエンジン内部で、空気と燃料の混合気を爆発させ動力を作り出しています。
そのため爆発が起きているエンジン内部は高温になり、冷却しなければ使い続けることができません。
オーバーヒートを防止するため、トラックにはラジエーターと呼ばれる冷却装置が設置されています。
ラジエーターの設置目的は、冷却水を循環させエンジンから不要な熱を奪うことです。
そのためラジエーターに何か問題が発生すると、冷却がスムーズに行われずにオーバーヒートします。普段は車を運転しない人でも、聞きなじみがある故障ですよね。
しかし決して軽い故障ではなく、内容によってはトラック自体が壊れる危険もあるでしょう。
オーバーヒートの対処や防止策は、トラックドライバーなら知っておくべきですね。
関連記事:トラックの日常点検はどんなことが必要?方法や点検項目を徹底解説!
トラックのオーバーヒートには前兆がある
トラックはオーバーヒートする寸前に、いろいろな前兆を発生させます。
これらに注意することで、大きなトラブルにならずに済むはずです。
水温計の上下の振れ方に異常が出る
オーバーヒートの前兆で、わかりやすいのが水温計のトラブルです。水温計はスピードメーターの近くにあるので、チェックするため手間がかかりません。
水温計はエンジンをかけてしばらくすると、針が「C」と「H」の間にきますよね。オーバーヒートすると、水温計の針が「H」に近づきます。
ですがトラックが、オーバーヒートしてからでは遅いですよね。
実は水温計の針を注意深くチェックすることで、前兆が読み取れます。
- エンジン始動後に、通常よりも早く水温計の針が動いた
- エンジンをかけても、水温計の針が動かない
トラックのエンジンをかけてすぐ水温計の針が動き出した場合、オーバーヒートの前兆かもしれません。冷却水が足りず、水温が上がりやすい状況が想定できます。
逆に、「水温計の針が全然動かない……。」このような場合も、オーバーヒートの前兆です。冷却水の漏れが考えられるので、すみやかに対処する必要がありますね。
アイドリング時のエンジン回転数が不安定に
トラックが不調になると、アイドリング状態でエンジンの回転数が不安定になります。
このような状態だとトラックが、何かトラブルを抱えていることは間違いありません。すみやかに停車場所を探して、必要な処置をするべきです。
アクセルを踏むとエンジンから異音がする
トラックのエンジンは、普段から大きな音を出していますよね。聞き慣れている人なら、エンジン音だけでトラックの車種がわかる人までいます。
ですが普段聞いているトラックの音とは、違うものが聞こえたら注意してください。エンジンから異音が聞こえた場合、何かしらの故障を起こしているはずです。
適切な処置をするため、すぐにトラックを停車させましょう。
アクセルを踏んでもエンジンの回転数が上がらず加速しない
オーバーヒート寸前になると、トラックの加速性能が低下します。
簡単にわかるほど加速性能が低下している場合、すでにエンジンは深刻な状況かもしれません。
「何だかトラックが遅いような気がする。」「それほどの重量を積んでいないのに、加速しない……。」と、少しでも違和感を感じたら、1度トラックを点検するべきですね。
エンジンから異臭や白煙が発生する
ボンネットから異臭や白煙が出た場合は、すでに危険な状態です。恐らく誰でもわかる、オーバーヒートの前兆ですよね。
すみやかにトラックを停車させ修理を行いましょう。オーバーヒートは、ひどく悪化しています。
そのままにしておくと、車両火災が起こるでしょう。
車両火災を起こせばトラックはもちろん、人命にも関わります。自分以外のほかの人まで危険にさらすので、一刻も早く処置を行ってください。
関連記事:トラックの日常点検はどんなことが必要?方法や点検項目を徹底解説!
トラックのオーバーヒートの前兆を感じた時の対処法
長年トラックに乗っている人でも、オーバーヒートの対処法がわからない人もいます。
また知っているつもりで、間違った行動をとる人も少なくありません。
正しい対処法を学んで、落ち着いて行動しましょう。
安全な場所にトラックを停車する
トラックがオーバーヒートし、そのまま走行を続けるのはあまりに無謀です。
エンジンに深刻なダメージを与えるのはもちろん、車両火災に発展する可能性があります。
まずは安全に停車できる場所を探しましょう。トラックを停車した後に、必要な処置を行います。
パーキングや道の駅などの広い駐車場が、選択肢としてはベストです。
それらが見つからないときは、少しでも事故の危険が少ない広い路肩に止めるほかありません。またオーバーヒートしたからといって運転中に慌てると、交通事故の危険があります。
エンジンを停止させると症状が悪化するケースも
「早くエンジンを切って、冷やさないと!」
安全な場所に停車した後、急いでエンジンを停止させるトラックドライバーがよくいます。確かにこのままエンジンを稼働させ続けたら、オーバーヒートが悪化する気がしますよね。
ですがオーバーヒートで熱くなったエンジンを停止させる行為は、対処法としては間違いです。トラックのエンジンを停止させると、冷却装置も止まってしまいます。
安全な場所で停車後は、アイドリング状態で次のような対処を行いましょう。
- エンジンに負荷がかかるので、エアコンを停止させる
- トラックのキャビンを上げ、エンジンの熱を冷ます
エアコンといった装置類は、エンジンに負担がかかります。エンジンの負担を少しでも減らすため、すべての装置類を停止させてください。
トラックのキャビンを上げると、エンジンが目視できますよね。キャビンを上げることで風通しが良くなり、エンジンの熱が冷ませます。
状況によりキャビンが上げられないときは、ボンネットを開けて少しでも熱を逃しましょう。
応急処置後にロードサービスに連絡する
「トラックがオーバーヒートしたが、停車したら直った。」このような状況でも、そのまま走行するのは避けてください。
オーバーヒートは、エンジンに深刻なダメージを与えてしまう大きな問題です。オーバーヒートが改善したからといって、自己判断で出発するのは危険すぎます。
応急処置が済んだら、ロードサービスや会社の整備担当者に連絡しましょう。オーバーヒートは深刻な故障ですので、やはりプロの指示を仰ぐべきです。
もし連絡がつかない場合は、運行ストップも致し方ありませんよ。
トラックのオーバーヒートの防止策
オーバーヒートを処置するのも大切ですが、未然に防止できれば安心です。
ここからは、トラックのオーバーヒート防止策を紹介していきます。
判断が難しいものも多いですが、日頃から注意を払っていると少しの異変でも気がつけますよ。
水温計の針が示す位置に気を配る
トラックのオーバーヒートは、水温計から前兆を読み取れる場合が多いです。水温計の針の動きを、日頃からよくチェックしましょう。
これだけで、多くのオーバーヒートを防止できます。トラックドライバーなら、頻繁に速度を確認しますよね。
速度確認のついでに、オーバーヒートの対策として、頻繁に水温計の針をチェックするクセをつけましょう。
冷却ファンが正常に動作しているか
先ほども説明しましたが、トラックのエンジンはラジエーターから出る冷却水で熱を冷ましています。
冷却水はエンジンから熱を奪うので、ラジエーターに戻るころには高温になっています。
熱くなった冷却水を、再びエンジンに送っても熱を奪えませんよね。
そこでラジエーターは熱くなった冷却水に風を当てて、エンジンから吸収した熱を冷ましています。
- 走行しているときに入り込む風
- 冷却ファンにより発生した風
冷却ファンがトラブルなどで正常に動作していないと、冷却水が冷えません。
さらにトラックが停まっていると風が入り込まず、冷却ファンが動作していないと、オーバーヒートが起こります。
冷却ファンの動作不良はオーバーヒートに直結します。
点検時には、注意深くチェックする必要があるでしょう。
リザーバータンク内の冷却液の容量を確認
冷却ファンも大切ですが、冷却水が不足していると意味がないですよね。
冷却水はそれほど減らないので、日々の点検でも見逃しがちですが、適切な量が入っているか注意深くチェックしましょう。
点検の際に冷却水が減っていた場合は、適切な量まで足してください。
ラジエーターホースの各部からの漏れがないか
頻繁に冷却水が減っている場合、ラジエーターホースの劣化により漏れが発生している可能性が高いです。
ラジエーターホースは消耗品ですので、何度も冷却水が通過することで劣化していきます。点検の結果、漏れが見つかった場合は修理よりも「交換」ができれば安心です。
経年劣化による漏れは、直しても別の場所が壊れます。何度も修理費用を出すよりは、最初に交換したほうが結局安く済むでしょう。
思い切って交換した方が、点検での注意箇所が減らせますよ。
エンジンオイルの量は十分か
エンジンオイルは、さまざまな役割を担っています。そのうちの1つが、エンジンの摩擦熱を軽減することです。
エンジンオイルが劣化していたり、適量入っていなかったりするとオーバーヒートにつながります。
トラックドライバーなら、エンジンオイル点検の重要性は理解しているはずですよね。
関連記事:トラックのオイル交換の時期や目安/量/費用を徹底解説!
トラックのオーバーヒートによる各パーツの修理・交換費用
最後にトラックがオーバーヒートすると、どのくらい費用がいるのかを紹介します。
金額を見れば、しっかりと防止や対処をするはずですよ。
冷却水
初期のオーバーヒートだと、冷却水を補充するだけで問題ありません。冷却水の費用は数千円です。
ただしトラックが大型である場合は、たくさんの冷却水が必要になるはずです。
冷却水を補充するだけでも、1万円以上も費用がかかります。
ラジエーター
すぐにわかるほどオーバーヒートを放置していた場合、ラジエーターを交換する必要が出てきます。
トラックのラジエーター交換費用は、2万円から6万円程度です。
「交換」と言っても、ラジエーター全体を交換する必要はありません。よほど症状が悪くなければ、傷んだパーツを交換するだけで済むでしょう。
ガスケット
ガスケットとは、
- エンジン内を通る冷却水や、オイルなどの液漏れを防ぐ
- エンジン内の混合気を漏らさない
これらの役割を担う部品です。
紙製から金属製まで、いろいろな種類があります。オーバーヒートがある程度進んでしまうと、ガスケット交換も必要です。
ただしこのガスケット交換は、恐らく想像よりも高額な修理費用が請求されます。ガスケット自体の金額は、それほど高くありません。安いものだと数千円くらいで、ガスケットは購入できます。
問題なのはガスケットが、エンジンを分解しないと交換できない点です。エンジンの分解には、プロの整備士であっても多くの時間が必要です。
そのためガスケットを交換すると、数万円の工賃が請求されます。ガスケット交換には、安くても5万円程度が必要です。
ただしトラックの車種によっては、10万円を超える場合も珍しくありません。
エンジン
「新しいエンジンに載せ替える必要が出た……。」
車種にもよりますが、トラックのエンジン交換費用は100万円を超える場合もあるでしょう。
- ディーラーではなく整備工場などに頼み、少しでも費用を安く抑える
- 長年使用したトラックなら、あきらめて新車を購入する
古くなったトラックに、100万円を超える費用をかけるのは厳しいです。状況によっては、新車に乗り換えたほうが良いかもしれません。
トラックのオーバーヒートについてのまとめ
長年トラックに乗っている人でも、「オーバーヒートしたら、しばらく停車すれば問題ない。」「冷却水を足せば、直るのでは?」と、オーバーヒートを簡単に考えている人がたくさんいます。
オーバーヒートは決して軽いトラブルではありません。トラックを廃車寸前にしてしまうどころか、車両火災にもつながります。
深刻なオーバーヒートを起こす前に、トラックはさまざまな前兆を発生させます。オーバーヒートの前兆には、すぐに対処を行ってください。
ひどいオーバーヒートは、たくさんの費用が必要になるかもしれません。今回紹介した対処や防止策を活用し、最悪の事態だけは避けてくださいね。
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