トラック運送業は、国内の貨物輸送割合の4割を担っており、人々の生活に欠かせない存在と言えます。
運送会社の多くは中小事業者であり、賃上げなどが難しく、過酷な労働イメージもあることから、若手人材の参入も少ないのが現状です。
安定した売り上げを維持するための一番の課題は、ドライバー人材の確保と育成と言っても過言ではありません。
今回は運送業者が実践するべき、人材育成強化のための戦略について分かりやすく解説していきます。
【この記事でわかること】
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トラックドライバー:人材育成の現状
トラックドライバーの人材育成は、運送企業にとって急務となっています。
一部の地域だけというわけでもなく、全国各地でドライバー不足が深刻化しています。
まずはトラックドライバーの有効求人倍率の推移や離職率について、現状を見ていきましょう。
有効求人倍率は2倍前後で推移
運送業は世界の景気に影響を受けやすく、平成21年に発生した「リーマンショック」の際にはドライバー求人が大きく減少しました。
しかしながら、それ以降は緩やかに景気回復し平成21年に0.42倍だった有効求人倍率は、平成26年には1.55倍にまで跳ね上がっています。
近年ではコロナウイルスの流行により、一時的に有効求人倍率の数値は改善したものの、影響が一時的となった現在では元に戻りつつあります。
また、コロナウイルスによる生活スタイルの変化により、通販貨物の取扱いが急激に増えたこともあり、軽貨物配送もドライバー不足が深刻です。
令和4年度の有効求人倍率に関しては、2倍前後を推移している状態です。
出典:トラックドライバーの人材確保・育成に向けて|厚生労働省
離職率は6.2%と平均を下回る
トラックドライバー不足の原因は複数ありますが、離職率に関しては全残業平均が7.2%なのに対し、運輸業6.2%ほどで平均を下回っています。
11ある業界の中では5番目の数であり、突出して高いというわけではありません。
ただし、トラックドライバーの平均年齢は全残業平均が43.4歳なのに対し、大型トラックは49.9歳、中型トラックは47.4歳と大きく上回っています。
40代後半~50代後半のドライバー割合は全体の45.3%を占めており、10~20代のドライバーは全体の10%ほどしかいません。
そのため、10年後には団塊世代の離職が控えており、急激なドライバー不足が起こると予想されています。
もし、「今すぐ人を採用したい」「人手が足りていない…」といった企業様は、ドライバー専門の採用支援サービス「ドライバーキャリア」にご相談ください。
関連記事:【取材レポート】DX推進・人材育成・M&Aに悩む方必見!成功企業と経営コンサルのプロがノウハウを提供
トラックドライバーの人材育成・確保:国の取り組みについて
トラックドライバー不足は国にとっても深刻な課題であり、早急な解決を目指した取り組みが行われています。
国土交通省と厚生労働省が連携しながら、取り組みを進めているのが現状です。
ここではトラックドライバーの人材確保・育成に向けた今後のイメージや、具体的な施策について解説していきます。
国土交通省・厚生労働省が連携
トラックドライバーの人材確保と育成に関する取り組みは、国土交通省と厚生労働省が中心となって行われています。
国土交通省
トラック運送企業や業界団体と連携し、就労環境の整備や改善、人材確保と育成に向けた取り組みを実施厚生労働省
ドライバーの人材確保や育成に取り組む企業に対する助成金の支給や、ハローワークに置ける就労支援を実施
次章では、両省の具体的な取り組みについて解説していきます。
人材育成・確保に向けた施策の実施
国土交通省と厚生労働省による、ドライバー人材確保と育成に関するテーマは「魅力ある職場づくり」と「人材確保・育成」です。
今後の具体的な取り組みは以下の通りです。
【魅力ある職場づくり】
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【人材確保・育成】
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国土交通省では「下請・荷主適正取引推進ガイドライン」の活用を推進しています。
また、労働改善に向けた取り組みとして、社会保険未加入事業者等に対しての指導強化や、退出促進も行っています。
厚生労働省に関しても、中小企業に対し月60時間超えの時間外労働に対する、割増賃金率引上げ(25%から50%)への内容とした、労働基準法の改正案を提出しました。
出典:トラックドライバーの人材確保・育成に向けて|厚生労働省
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トラックドライバーの人材育成:強化する5つの戦略
ドライバー不足解消に向けた取り組みを国が積極的に行ったとしても、入社した企業の労働環境次第では、すぐに辞めてしまう可能性があります。
いかに入社した人材をしっかり育て上げ、辞めないようにするかが各企業の課題と言えるでしょう。
人材育成を強化する戦略は主に5つあります。
- 入社式の実施
- 体験入社の実施
- 新人向け教育カリキュラムの作成
- 指導員向けマニュアル作成
- 管理職向け評価指標の設定
この5つの戦略について、具体的な方法を解説していきます。
入社式の実施
1つ目の戦略が「入社式の実施」による社員同士の交流です。
新入社員がすぐに辞めないようにするには、同期や先輩社員と打ち解けることが大切であるからです。
一般的な会社であれば同じ職場で一緒に働くため、自然にコミュニケーションが増えていき良好な関係が築けます。
一方で運送会社の場合、すぐに現場で働き始めるため、直属の先輩以外とはなかなか仲良くなれません。
ちょっとした違いに感じるかもしれませんが、入社直後の新入社員は緊張しており、ちょっとした孤独が負担になり得ます。
理想は先輩社員側の意識を変えることなのですが、人数が多いと簡単ではないため、まずは入社式を行ってみるといいでしょう。
体験入社の実施
2つ目の戦略は「体験入社の実施」です。
入社してすぐに辞めてしまう人の主な退社理由には「思っていたよりも辛かった」「夜がこんなに遅いと思わなかった」といった内容があります。
このような入社前とのギャップを防ぐには、体験入社が最適です。
実際に作業を手伝わせる必要はなく、先輩ドライバーに付き添い1日の流れを見せるだけで問題ありません。
この時点で「辛そう」と感じた場合、遠慮なく伝えてもらうことにより、採用コストを軽減できます。
また、1日一緒にいることにより、面接だけでは見えてこなかった人間性もチェックしやすくなります。
新人向け教育カリキュラムの作成
3つ目の戦略が「新人向けの教育カリキュラムの作成」です。
運送業界では忙しさを理由に、しっかりとした新人向けの教育カリキュラムを設けていない企業が多くあります。
これでは段階を経て成長していくことができません。
各段階で細かく設定する必要はなく、数ヵ月先までの簡単な教育の流れを作っておくだけでも離職率が変わってきます。
指導員向けマニュアル作成
4つ目の戦略が「指導員向けのマニュアル作成」です。
運送業界では座学による研修が少なく、先輩社員に付き添って仕事の流れを覚えていくのが一般的です。
この場合、教育スキルが人によってバラバラであり、中には「忙しいから黙って見とけ」といった扱いをしているケースもあるほどです。
これでは前述した通り、新入社員は孤独になってしまい「先輩社員が何も教えてくれない」と辞めてしまいやすくなります。
新人の教育は各社員に任せっきりにするのではなく、指導マニュアルを作成するなどして教育レベルを上げていくようにしましょう。
どうしても難しい場合には、教育に関する試験を行い評価の高かった人にだけ教育を任せる方法もあります。
教育を行う社員には教育手当をつけるなどして、快く教育ができるようにしてあげましょう。
管理職向け評価指標の設定
5つ目の戦略は「管理職向けの評価指標の設定」です。
運送会社の管理職はほとんどがドライバー経験者であり、ドライバーとしての実力で管理職が決まるケースも珍しくありません。
しかしながら、ドライバーの仕事と管理職としてのマネジメントは全く別物です。
優秀なドライバーだからといって、しっかりマネジメントできるとは限りません。
管理職に対しても、しっかりマネジメントができているかをチェックするため「社員定着率」や「採用目標達成率」の評価指標を設定するようにしましょう。
もし、「今すぐ人を採用したい」「人手が足りていない…」といった企業様は、ドライバー専門の採用支援サービス「ドライバーキャリア」にご相談ください。
関連記事:大型免許取得に助成金が出る?教育訓練給付金制度で安く免許を取得する方法
トラックドライバーの人材育成は運送業者の重要課題
「定期的に人が辞めてしまうのであれば、再度育て上げれば良い」と考える経営者もいますが、運送業界に取って人材育成と人材の定着はとても重要です。
運送業界で最も避けるべき事故率が全く異なるからです。
当然ではありますが、経験豊富なドライバーになるほど事故率が下がるため、ドライバーが定着するほど会社の損益も上がります。
一方でドライバーが定着していない会社は、教育コストが定期的にかかるだけでなく、事故による損失リスクも高まってしまいます。
将来的にも健全な経営を維持したいのであれば、人材確保と教育は避けて通れない課題と言えるでしょう。
関連記事:ドライバー採用が難しい理由とは?採用を成功させるコツも紹介
トラックドライバーの人材育成に関するまとめ
今回はドライバーの人材育成と確保に関して解説してきました。
近年は全国各地でドライバー不足が深刻化しており、若手人材の確保と育成が大きな課題となっています。
特に入社してきた人材の育成と、会社への定着は非常に重要と言えるでしょう。
今回紹介した5つの戦略を取り入れれば、ドライバーの離職率を下げられます。
少しの取り組みであっても将来に大きく影響するため、できることからでも実践していくようにしてみましょう。
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