一昔前までは、マフラーから排気ガスをいっぱい出しながら走っていく自動車や大型トラックをよく見かけました。
自動車に関しては、燃費向上が進んだエンジンやアイドリングストップ、またハイブリッド車、電気自動車といった技術革新によって、以前のような排気ガスを巻き上げたクルマを見かけることは少なくなってきました。
しかし大型トラックに関しては、昔ほど多くありませんが、まだ多くのトラックが大量の排気ガスを出しながら走行している印象を受けます。
実際に大型トラックが、自家用車に対してどれくらいの燃費で走行しているか気になったことはありませんか?
今回は、そんな気になる大型トラックの燃費について、一般的な燃費事情と運転テクニックなど燃費を向上させる方法についてこれから解説していきます。
実際に大型トラックを運転していて、もっと燃費を良くしたいと思っている人や管理者として、もっと燃費を良くすることでコスト削減を行いたい人は、ぜひ参考にしてください。
大型トラックの燃費:平均3〜3.5km/L
みなさんは、一般的な大型トラックの燃費は平均でどれくらいだと思いますか?
一例として、走行条件などにもよりますが、10tトラックの場合だと平均3〜3.5km/Lです。
一目瞭然ですが、自動車と比べると明らかに燃費が悪いのがわかります。
また、中型トラック(積載量3t以上6.5t未満)の平均燃費は約7~8km/Lとなっており、小型トラックでは平均燃費は10~11km/L程です。
この数値からわかるように、サイズが大きいほど燃費が悪くなりその主な原因としては車両の重量があると言われています。
車両の重量によるものは仕方が無いのですが、これ以外にも運転の仕方や定期的なメンテナンスによっても平均燃費は変わってきます。
ここでは大型トラックの燃費事情を、空車時と積載時における燃費の違いと、燃費を節約するメリットといった2つの観点から探っていくことにします。
空車時の燃費:約5.0㎞/L
空車時の燃費は、リッター約5.0㎞/Lといわれています。
やはり荷物を積んでいない状態では、トラック自体が軽くなるので、平均値よりも数値が良くなる傾向があります。
ただし、走行条件等次第で数値が変化することももちろんあります。
積載時の燃費:約3.5㎞/L
積載時の燃費は、リッター約3.5㎞/Lといわれており、荷物を搭載している分だけトラックが重くなるため、平均値よりも数値が低くなる傾向があり、走行条件次第によっては、さらに低下する可能性もあります。
燃費をそれぞれ比較すると、積載時は空車時の燃費と比べて約74%となり、かなり燃費が悪化していることがわかります。
関連記事:大型トラックの積載量、寸法の違いを解説!2t,4t,10tの違いとは?
大型トラックの走行距離と燃費の関係
トラックの平均燃費に関して説明しましたが、その数値は新車の状態であることが前提となっています。
その後長年乗り続けることにより平均燃費に関しては悪くなってしまいます。
トラックは短距離であっても長距離であっても一日中走行するため、多くの燃料が必要でありタンクの容量が大きいのもあって給油の手間は長期的に考えるとかなりもったいないとも言えます。
もちろん経済的な負担も増えていってしまいます。
また、トラック協会では地球温暖化の防止を目的として「グリーン・エコプロジェクト」を進めており、様々な対策を行っています。
環境汚染に対する対策が会社としての責任となりつつある現在、トラックの燃費悪化は様々なデメリットとなります。
この燃費に関しては大型トラックだけではなく、中型や小型にも当てはまります。
次の章では燃費を節約するメリットにはどのようなものがあるのか、具体的な節約方法などについて詳しく説明していきます。
大型トラックの燃費を節約するメリット|3選
大型トラックに限らずどのクルマにおいてもそうですが、燃費を節約するというのは、口でいうほど簡単なことではありません。
しかし、燃費を節約することによって恩恵を受けることはたくさんあります。
ここでは、そんなメリットをいくつか紹介していくことにします。
燃料費が抑えられる
燃費を節約することで得る一番わかりやすいメリットは、やはりこれではないでしょうか。
実際、燃料費が減ったことによるコスト削減の効果は大きく、燃費を削減することだけでも、会社にとっては経営を左右する程の問題となるのです。
トラックの買い替え費用を抑えられる
トラックも消耗品です。消耗すれば消耗するほど、当然トラックの燃費も悪くなってきます。その消耗を抑えるために必要なこと、それがメンテナンスです。
トラックのメンテナンスをきちんとしておけば、燃費が悪化しないだけでなく、トラック自体の消耗や劣化も抑えることができるので、新車のときに近い性能を維持することができます。
よってトラックを末永く使用することができ、その分買い替えの需要が少なくなります。
風が吹けば桶屋が儲かる的な発想ですが、燃費の節約はいろいろな相乗効果を生む要素も持っているんですね。
地球環境にも貢献できる
トラックの燃料から発生する排気ガスの主成分は二酸化炭素でできており、それが大気中に舞うことによって、環境被害をもたらしています。
燃費の節約は、結果的に二酸化炭素の排出を抑えることにもなり、その分地球環境にも負担が掛からなくなります。
また会社のセールスポイントとして環境に優しい点をアピールすることは、会社のイメージやブランドの向上に繋がり、人財の確保や受注する仕事の質・量に大きくプラスの影響を与えることにもなるのです。
その他にも、ドライバーによる給油回数が減るために身体の負担が軽減されるなど、まだまだメリットはたくさんあります。
燃費を節約することで発生する効果は、メリットばかりであるといえるでしょう。
大型トラックの燃費を向上させる5つの方法
ここまで大型トラックの空車時及び積載時における燃費の違いや、燃費を節約することによって起こるメリットなどを紹介してきました。
燃費を節約することは、確かに大変なことですが、普段行動していることにちょっとした工夫を加えたり、継続し続けることによって、意外と燃費を向上させることができるんです。
ここからはそんな燃費向上のテクニックを、運転技術・メンテナンス・車両パーツ・アイドリング時・テクノロジー面といった視点からみていくことにします。
運転の技術で燃費向上させる
みなさんが普段仕事として行っている運転操作においても、燃費向上に役立つテクニックがあります。
ここではそのいくつかを紹介します。
急発進及び急加速をしない
急発進や急加速を繰り返すと、燃費が悪くなるだけでなくトラックにも負担がかかり、結果的にメンテナンスの手間や最悪トラックの寿命を縮めてしまいます。
一定の速度で走行し早めに減速を行うだけで、各々の負担が少なくなります。
タコメーターのグリーンゾーンでシフトチェンジする
最近の自動車は搭載されないものも増えてきましたが、多くのトラックはスピードメーターにプラスしてタコメーターが設置されています。
タコメーターには、緑色で表示されているところがあり、これをグリーンゾーンといいます。
このグリーンゾーン内にメーターの針がきているときにシフトチェンジをすると、エンジンの回転数を低く抑えることができるため、結果として燃費の向上へと繋がっていきます。
エンジンブレーキ及び排気ブレーキを多用する
エンジンブレーキを使用している間は、燃料がエンジン内に噴射されない、いわゆる燃料カットの状態になります。
燃料カットを多用すれば、おのずと燃費の節約に繋がっていくというわけです。
余談ですがまたエンジンブレーキや排気ブレーキを多用する人は、クルマの運転が上手い人とよくいわれますよね。
ここからは、一般道における燃費向上運転テクニックを紹介します。
一般道で7速を使ってみる
トラックの運転でギアを7速に入れるときは、高速道路を走行中の場合に多いですが、一般道においても燃費向上に役立つ有効なテクニックです。
一般道では、他の乗用車の加減速に合わせるため、最高でもギアを5速または6速にすることが多いですが、クルマの流れや交通量などによっては、7速であっても安定した走行をすることができます。
また安定した走行で速度を一定にすることによって、エンジンの回転数も抑えることができ、燃費向上はもちろんのこと、トラックへの負担も減らすことができます。
一般道での燃費向上のコツとしては、速度を一定にしつつ、早め早めのシフトチェンジでエンジンの回転数を少なくするといったところでしょうか。
次に高速道路における燃費向上運転テクニックを紹介します。
オートクルーズを使ってみる
一般道と同じく高速道路においても、一定の速度で運転し続けることは、燃費の向上に繋がることになります。
現在のトラックは、設定した速度を自動的に一定に保つことができる、オートクルーズという装置が搭載されているものが多いです。
高速道路を運転中の速度にムラを感じるドライバーは、一度オートクルーズを使用して一定の速度を保つことによって、燃費向上を図ってもいいかもしれません。
スピードを出しすぎない
高速道路だと、一般道に比べてスピードが出しやすい環境にあるため、ついつい飛ばしてしまいがちですが、トラックという乗り物の構造上、スピードを出しすぎると空気抵抗が増加し、結果として燃費が逆に悪化してしまいます。
高速道路での燃費向上のコツとしては、一定の速度を保ちながらスピードを出しすぎないといったところでしょうか。
その他にも、停車中などによるアイドリングをしないなど、燃費向上におけるコツはいろいろありますが、全てにおいて共通するのは、トラックを大事に扱う気持ちを常に持つことだといえますね。
関連記事:10t大型トラックの燃費を劇的に向上・改善する7つの効果とは?平均燃費と悪化する要因を解説
メンテナンスで燃費向上させる
燃費向上に効果的なメンテナンスとしては、主にエンジンオイルとタイヤの空気圧の2つが大きく関係してきます。
エンジンオイルを5千kmまたは3か月に1回交換する
トラックで使用するエンジンオイルは、乗用車と比べて劣化が早く交換時期に関しては、かつては走行距離1万km程度が目安といわれていましたが、最近では5千kmまたは3か月に1回ぐらいといわれています。
オイルが劣化することで、エンジン内に金属の汚れやカスが貯まるため、エンジンの機能や燃費に悪影響を及ぼすことになります。
いずれにせよ、エンジンオイルの交換は、頻繁に行うことに越したことはありません。
タイヤの空気圧をこまめにチェックする
タイヤの空気圧が基準よりも低くなると、摩擦抵抗が増えるため、結果的に燃費の悪化に繋がっていきます。
またトラックの場合は、自動車と違って大変重い荷物を運ぶため、空気圧が基準値に達していないと最悪パンクなどによる事故を引き起こす可能性さえあります。
タイヤの空気圧チェックは、燃費向上以上にドライバーの安全のためにも必ずきちんと行う必要があります。
また同時にタイヤ自体の摩耗もチェックしておく必要もあるでしょう。
その他にもエアフィルターの掃除・交換なども燃費向上に効果のあるメンテナンスになります。
車両パーツの交換で燃費向上させる
地球環境問題やコスト削減が叫ばれている今の時代、燃費向上に役立つカー用品も多く販売されています。
その中でも、燃費向上に効果が期待できる商品の1つが低燃費タイヤになります。
低燃費タイヤは従来のタイヤと比べて、転がり抵抗を低減する設計を施されており、実際に燃費向上に効果があることが実証されています。
またタイヤ以外にも、ホイールやサイドバンパーなどをアルミ製といった軽い素材に交換し、トラックの重量を軽くすることで燃費向上を図る方法もあります。
アイドリングストップで燃費向上させる
ここまでいろいろな燃費向上に向けての方法を述べてきましたが、ある意味アイドリングこそが燃費向上を妨げる一番の要因の1つかもしれません。
アイドリングは、停車中などにエンジンをかけたままにしておく行為のことで、燃費が悪くなるだけでなく、排出される排気ガスによって環境汚染の元にもなっています。
最近は自動車だけでなく、トラックなどの大型車にもアイドリングストップが導入されるようになりましたが、あまりドライバーからは好意的に受け入れられていない側面があります。
熱さ寒さが厳しい夏や冬はエアコンが必要なため、アイドリングをしたままのトラックや自動車をよく見かけます。
エアコンを切った状態でも、涼しさを維持するための保冷剤などの対策もおこなっているようですが、アイドリングストップの決め手にはなっておらず、今後の抜本的な改革が待たれるといったところです。
関連記事:アイドリングストップの効果とは?トラックの状況別燃費も検証!
テクノロジー面で燃費向上させる
現在では燃費向上において、さまざまなテクノロジーが開発されています。
ここでは燃費向上ににおける新技術を簡単にですがいくつか紹介していきます。
リーンバーンエンジンを使用する
別名希薄燃焼エンジンとも呼ばれており、ガソリンと空気量の混合割合が、今まで以上に空気の割合が多くなっても燃焼を可能とし、ガソリンの割合を抑えることで燃費向上に繋げている新しいタイプのエンジンです。
多段トランスミッションを使用する
従来は3速または4速が多いATトランスミッションに対して、多段トランスミッションは10速ATを採用しています。
ギア比を細かくすることによって、エンジンの回転数を抑え、燃費の向上に繋げることを狙ったテクノロジーです。
その他にも、空気抵抗低減技術や軽量化、そしてハイブリッドカーといったよく知られたものまで、さまざまな技術革新が行われています。
またトラックにおいても、CNGという圧縮天然ガスを使用したトラックが実用化されたりと、少しづつではありますが燃費向上に向けた開発は進んでいます。
関連記事:10t大型トラックの燃費を劇的に向上・改善する7つの効果とは?平均燃費と悪化する要因を解説
大型トラックハイブリッドモデルで約15%燃費削減できる
2019年の夏に登場した、日野自動車の大型トラック「プロフィア」はハイブリッドモデルとなっており、ディーゼルエンジンモデルと比較した場合に燃料値を約15%ほど改善できると発表しました。
このことで二酸化炭素の排出量削減はもちろん、燃料費用を大きく削減することができます。
新しいシステムでは高速道路の勾配を利用し、下り坂でエネルギーを回生させモーターのみで高速定常走行にしたり、高負荷時の駆動力をアシストできるようになっています。
検証では一般道90kmと高速道路270kmの合計360kmの走行を行い、ディーゼルエンジンのものと比較した結果、燃料使用量が14リットル削減しました。
年間走行距離が12万kmで計算すると、燃料コストが約55万円ほど節約できます。
乗用車と違い、大型トラックは数十年間の運用が当たり前のため、一台の運用あたり数千万円ほどの節約となり、数台となると大きな費用削減と環境保全へつなげることが可能です。
関連記事:日野のトラックの特徴と機能・価格は?新車・中古車価格も解説!
大型トラックの燃費に関するまとめ
いかかでしたでしょうか。ここまで大型トラックにおける燃費事情や燃費を向上させる方法について述べてきました。
燃費向上のカギは、トラックを丁寧に運転することや、仕事の相棒として大切に扱ってあげることにあるのではないでしょうか?
これを機に、一度初心に戻った気持ちで仕事に取り組んでみるのもよいのかもしれません。
きっと自分の中で新しい発見をすることができます。
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