建築士は建物の設計や工事管理を行う役割を担っており、建設業界に欠かせない存在です。
誰でも簡単に従事できる仕事ではないため、貴重な存在であり、将来性の高い職種の1つと言えるでしょう。
建築士として建設業界で長く働いていく上で、収入面が気になるという人もいるのではないでしょうか。
今回は、建築士の給料について詳しく解説していきます。
【この記事のまとめ】
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建築士の給料は平均より10万円近く高い
厚生労働省が公表した「令和4年度・賃金構造基本統計調査」によると、建築士が含まれる建築技術者の賃金は以下の通りです。
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建築士だけのデータではないものの、上記データから推測される建築士の平均給料は、35〜40万円です。
また、平均年収に関しては550~600万円と推測できます。
この数値は、全産業の平均年収や建設業全体の平均給料を上回っており、建築士の給与水準が高いことが分かります。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種|厚生労働省
関連記事:女性建築士の割合は?一級建築士になった場合の年収と需要がある3つの理由を説明
建築士の給料は会社規模により異なる
建築士の主な就職先には、大手ゼネコンやハウスメーカー、工務店などがあります。
大手ゼネコンは、従業員数が数千人以上と非常に多く、工務店では数名ほどの会社も珍しくありません。
建築士の給料は、就職する会社の規模によっても異なります。
ここでは、令和4年度・賃金構造基本統計調査のデータをもとに零細企業・中小企業・大企業の3つに分けて、建築士の収入事情を紹介していきます。
10〜99人の零細企業
従業員数が10~99人の零細企業に従事している、建築技術者の平均収入は以下の通りです。
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零細企業で働く建築士の給料は、全企業の平均よりも若干少ない程度です。
一方で、年間賞与に関しては全企業の平均と比べて約116万円と大きな差があります。
零細企業の賞与が少ないのは、大企業と比べて収益が安定しておらず、求人募集などに費用がかかることが理由として考えられます。
大企業であれば、既に企業名がブランドとして定着しているため、求人や仕事の受注に費用をかける必要がありません。
零細企業だと稼げないというわけではないものの、大企業と比べると収入が低めになりやすいと言えるでしょう。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種|厚生労働省
100〜999人の中小企業
従業員数が100〜999人の中小企業に従事している、建築技術者の平均収入は以下の通りです。
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中小企業は、給料の平均額が全企業の値よりも若干高くなります。
年間賞与に関しても5万円ほど高く、推計される平均年収は586万9,700円です。
零細企業に比べて、経営が安定しており、利益を確保しやすいことが賞与の高い理由と考えられます。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種|厚生労働省
1,000人以上の大企業
従業員数が1,000人以上の大企業に従事している、建築技術者の平均収入は以下の通りです。
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企業規模ごとの平均収入が最も高いのが大企業であり、推計される平均年収は600万円を超えています。
ブランド力が強く、安定して仕事を得られるのはもちろん、人気企業の場合は費用をかけずに求人を集めることも可能です。
ちなみに、建設業界における大企業としては「ゼネコン・大手ハウスメーカー・ディベロッパー」などがあります。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種|厚生労働省
建築士の給料はキャリアに応じてアップする
建築士は、2級建築士として経験を積みながら、1級建築士を取得しキャリアアップしていきます。
経験を積むほど昇給や昇格により収入が上がっていくため、年代によっても建築士の給料に違いがあります。
ここでは、働き始めたばかりの20代、中堅社員となる30代、管理職になり始める40代で給料にどのくらいの差があるのか解説していきます。
20代の給料:約23〜27万円
専門学校や大学を卒業し、建設業界で働き始める20代は、最も収入が低いと言えます。
令和4年度・賃金構造基本統計調査をもとにした、建築士の20代の平均収入は以下の通りです。
年代 | 所定内給与額の平均 | 年間賞与、その他特別給与額の平均 | 推計年収 |
20~24歳 | 23万3,000円 | 46万3,200円 | 325万9,200円 |
25~29歳 | 27万6,200円 | 84万1,900円 | 415万6,300円 |
20代は建築士資格の有無に限らず、見習いからスタートするため、基本給や支給される手当などの額が少ないと言えます。
そのため、他の産業の20代と大きな差がないことが特徴です。
30代の給料:約33〜38万円
30代は仕事に慣れて、よりキャリアアップを目指すために幅広く経験を積んでいくようになります。
1級建築士を取得する人もおり、会社によっては出世により役職が付くような人も出てくる年代です。
年代 | 所定内給与額の平均 | 年間賞与、その他特別給与額の平均 | 推計年収 |
30~34歳 | 33万1,400円 | 132万9,500円 | 503万6,300円 |
35~39歳 | 38万6,300円 | 139万4,600円 | 603万200円 |
30代になると平均年収は500万円を超え、他の産業との年収も開き始めます。
令和4年度・全国民の平均年収458万円であったため、30代で建築士の給与水準は、全体と比較しても高いと言えるでしょう。
40代の給料:約40〜42万円
40代になると、管理職として組織を束ねる存在になる人が増え始めます。
20・30台と比べて基本給が高くボーナスが高額になるだけでなく、役職手当が支給されるため、年収もさらに高くなります。
年代 | 所定内給与額の平均 | 年間賞与、その他特別給与額の平均 | 推計年収 |
40~44歳 | 40万6,500円 | 148万4,200円 | 636万2,200円 |
45~49歳 | 42万4,700円 | 173万7,700円 | 683万4,100円 |
40代になると、年収が600万円台になり、全産業よりもかなり高水準と言えます。
ちなみに、今回参考にした賃金構造基本統計調査データで、最も収入が高かった年代は50代後半で、平均給料が46万9,000円、年間賞与が174万7,200円でした。
出典:令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種|厚生労働省
建築士が給料をアップさせる3つの方法
前章で紹介した通り、20代の建築士は、収入面で他の産業と大きな差がありません。
建築士として、さらに給料をアップさせていく方法は、主に3つあります。
- 上位資格を取得する
- 大手企業に転職する
- 独立する
ここでは、上位資格の種類や大手企業の詳細、建築士の独立について解説していきます。
上位資格を取得する
建築士には2級と1級があり、扱える建物の規模に違いがあります。
2級建築士が戸建て程の建物までしか扱えないのに対し、1級建築士は病院や競技場、大規模な商業施設の建設に携われます。
当然、1級建築士の方が評価が高いため、上位資格の取得を目指していきましょう。
また、不動産管理系の業種であれば「宅地建物取引士」や「マンション管理士」などの資格を取得することで、仕事の幅が広がり、給料が上がりやすくなります。
大手企業に転職する
冒頭で解説した通り、企業規模が大きいほど年収は高い傾向にあります。
高い年収を目指したいのであれば、ゼネコンやディベロッパー、大手ハウスメーカーなどへの転職を検討しましょう。
ゼネコンやディベロッパーの中には、平均年収が1,000万円を超えている企業もあります。
独立する
建築士として経験を積み、独立することでも収入を上げられます。
経営者として、営業や事務処理などの業務もこなす必要がある一方で、経営が安定すれば、年収1,000万円以上も十分目指せます。
ただし、仕事の受注量によって利益が前後するため、必ず安定して稼げるとは限りません。
関連記事:建築士・建築家・設計士の違いは?やりがいと仕事内容を詳しく解説
建築士の仕事に将来性がある2つの理由
建築士が人気である理由の1つに将来性の高さがあります。
AI技術の進歩などにより、なくなる仕事も出てくると予想されている中で、建築士は将来性の高い職種の1つと言われています。その理由は以下の通りです。
- 需要に対して供給が追いついていない
- インフラに関する仕事なのでなくならない
なぜ需要の高い状態が続くのか、建設業界の実情も踏まえながら解説していきます。
需要に対して供給が追いついていない
建設業界では、現役従事者の高齢化が深刻化しています。
国土交通省が公表している「建築行政に係る最近の動向」によると、1級建築士の年齢構成では、50代以上が全体の約6割を占めている状況です。
今後も建設需要が大きく下がることは考えにくく、将来的に建築士が不足すると予想されています。
そのため、建築士の需要が下がることもないと言えるでしょう。
インフラに関する仕事なのでなくならない
国内の人口減少が加速する中で、さまざまなモノの需要が落ちていくとの予想があります。
建物の建設も例外ではなく「需要が落ちていくのでは?」と考える人もいますが、建築士自体の需要が急激に下がるようなことはないと言えるでしょう。
建設事業には、老朽化した建物の改築や再開発などもあるからです。
建築士は、全ての建物の設計に必要となるため、将来性が高いと言えるでしょう。
関連記事:建設業の給料は安いのか高いのか?金額を決める10の基準を解説
建築士の給料に関するよくある質問
最後は、建築士の給料に関する、2つの質問について答えていきます。
- 1級建築士の勝ち組と言われる人の年収はいくらですか?
- 大手ゼネコンに勤める一級建築士の年収はいくらくらいですか?
1級建築士の中でも特に年収の高い人や大手ゼネコンの収入事情に関する内容ですので、転職する上でぜひ参考にしてみてください。
1級建築士の勝ち組と言われる人の年収はいくらですか?
勝ち組の具体的な基準はないものの、1級建築士として年収1,000万円を超えていれば勝ち組と言えるでしょう。
建築士の平均年収は600~700万円程であり、誰でも簡単に年収1,000万円を稼げるわけではありません。
ゼネコンでも一流と言われるような大手企業に就職したり、経験を積み独立した上で経営に成功したりしなければ、年収1,000万円は到達できません。
大手ゼネコンに勤める一級建築士の年収はいくらくらいですか?
大手ゼネコンに勤める1級建築士の平均年収は、800〜1,200万円と予想されます。
国内を代表する大手ゼネコン「鹿島建設・大林組・竹中工務店」などは従業員の平均年収が1,000万円を超えています。
建築士に限ったデータはないものの、他の社員と同じくキャリアを積み上げていけば、より高い年収を稼ぐことも十分可能です。
関連記事:【2024年最新】建築士の平均年収はいくら?一級建築士の年収ランキングも紹介
建築士の給料に関するまとめ
建築士は、建物の建設に欠かせない貴重な存在であり、建設業界に関わる他の業種と比べ給料は高いと言えます。
ただし、全ての建築士が高収入というわけではありません。
経験年数や、在籍する企業の規模によって給料や賞与に違いがあります。
初めのうちは、年収が低かったとしても上位資格の取得や大手企業への転職により、収入を上げられます。
将来性の高い職種でもあるため、気になる方は建築士の資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。
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