不動産業界は市場の変動や顧客の多様なニーズに柔軟に対応する必要があるため、残業が発生しがちです。
業務の範囲が広く、締め切りが厳しく、顧客との対話が頻繁に必要とされることも、残業が発生する原因となっています。
そこで本記事では、不動産業界の残業時間の実態と傾向、不動産業界で違法な残業をさせられたときの対処法などについて解説します。
不動産業界への転職を検討中の方は参考にしてください。
不動産業界の残業時間の実態と傾向
不動産業界の平均の残業時間はどのくらいなのでしょうか。
近年は減少傾向にある不動産業界の残業時間と不動産業界の残業時間がなぜ多いのかを紹介します。
ワースト5位
不動産業界は、残業時間が他の業種と比較するとワースト5位の順位です。
平均残業時間は47時間に対して、不動産業界は64.8時間でワースト5位です。
平均よりも8.5時間も長く残業していることがわかります。
1位はコンサルティング・シンクタンクの83.5時間、2位は広告代理店、PR、SP、デザインの78.6時間、3位は建築、土木、設計、設備工事の70.8時間です。
出典:約6万8000件の社員口コミから分析した残業時間に関するレポート|働きがい研究所by openwork
サービス残業が多い
残業代の出ない残業時間を「サービス残業」と言い、不動産業界はサービス残業が多いと言われています。
マネージャーなどの階級が上がっていくと、仕事量も増えてサービス残業をしないと仕事が終わらないことも多いハードな業界です。
残業が多い理由
お客様の都合に合わせる必要があるから
不動産業界の残業が多い理由は、サービス業に近いため、お客様の都合に合わせて動く必要があるからです。
不動産会社の業務は、内見や契約、商談などを行なうため、お客さんの都合に合わせて仕事をします。
特に、賃貸仲介の場合には、お客さんが閉店間際に来店したり、閉店時間が過ぎても対応しなければならなかったりします。
事務手続きが発生しやすいから
さらに、お客さんの対応後に、事務手続きが必要になる可能性も出てくるため、必然的に残業となります。
年収を上げたいから
また、不動産業界は、成績を上げると年収も上がっていくため、年収を上げるために残業をする人もいます。
このように、さまざまな理由から、不動産業界は残業が多い業種となっているのです。
近年は減少傾向にある
近年は、残業が減少傾向にあります。
政府の働き方改革などで、全業界が長時間労働が緩和されてきています。
大手の不動産業界では、残業を減らすために業務効率化に役立つシステムを導入したり、有給は絶対に取らせたり、さまざまな対策を実行中です。
残業時間を減少しようと会社全体で取り組んで、従業員に負担を掛けないように変更されています。
業務効率のためのシステムには、業務の簡略化や顧客データの管理、追客メールの自動送信など、従業員が働きやすいようになっています。
職種によって残業時間は異なる
不動産業界でも、職種によって残業時間は異なります。
事務の場合
事務の場合は、ほとんど残業がなく定時で帰宅できますが、繁忙期には多少残業が発生します。
営業の場合
営業の場合は、お客様の都合に合わせて行動したり、ノルマの達成・成績のために残業したりすることがあるため、残業時間が多くなるでしょう。
売買や仲介が特に残業が多い傾向があります。お客様の都合が優先され、繁忙期には物件を探すお客様の接客に集中しなければなりません。
法律で定められている残業時間
法律で認められている残業時間は、1日8時間、1週間40時間です。届け出を出せば、1ヶ月45時間まで36協定で労働時間を延長できます。
特別な事情がある場合は1ヶ月80時間まで延長できますが、労働行政では80時間の残業時間は過労死の労災認定の目安です。
近年は大手の不動産会社も長時間の残業をしないように対策していますので、しっかりと休暇を取れるようになっています。36協定に違反した企業は、罰則や罰金もあります。
不動産業界で違法な残業を見分けるポイント
続いては、不動産業界で違法な残業を見分けるポイントを紹介します。不動産業界で違法な残業を見分けるポイントは以下の5つです。
- 固定残業時間を超えているのに超えた分の支払いがない
- 基本給に固定残業代が組み込まれている
- 固定残業時間が月45時間を超えている
- 基本給が最低賃金より低い
- 雇用契約書や就業規則にみなし残業に関する規定がない
では、一つずつ解説します。
固定残業時間を超えているのに超えた分の支払いがない
固定残業時間を超えて働いているのに、超過分の残業代が支払われていない場合、それは違法です。
企業が固定残業代を設定している場合でも、定められた時間を超えた分の残業代は、法律に基づいて支払う義務があります。
もし超過分の残業代が支払われず、企業が適切な対応を取らない場合、労働基準法に違反している可能性が高く、労働基準監督署に相談することが推奨されます。
基本給に固定残業代が組み込まれている
基本給に固定残業代を含むことで、過剰な労働が隠蔽されている可能性も考えられます。
労働者は、自身の労働時間と賃金が適切かを確認し、違法が疑われる場合は労働基準監督署に相談する権利があります。
固定残業時間が月45時間を超えている
労働基準法では、時間外労働の上限が月45時間と定められており、これを超える契約は違法となる可能性があります。
不動産業界では、業務の特性上、残業が多くなることがありますが、固定残業時間が法定の限度を超える場合、労働者の健康や法的リスクが問題となります。
自分の勤務時間を定期的に確認し、違法な労働が疑われる場合は、労働基準監督署に相談することが重要です。
基本給が最低賃金より低い
最低賃金は、労働者が受け取るべき最低限の報酬として法律で定められています。
基本給が最低賃金を下回る場合、違法であり、労働者の権利が侵害されている可能性があります。
最低賃金を守っていない企業は法的制裁を受けるリスクが高いため、従業員は自分の給与が最低賃金以上であるか確認し、問題があれば労働基準監督署に相談することが重要です。
雇用契約書や就業規則にみなし残業に関する規定がない
みなし残業とは、あらかじめ一定の残業時間を見込んで、その残業代を基本給に含めて支払う制度です。
例えば、月に20時間分の残業代があらかじめ給与に含まれている場合、その時間を超える残業が発生した場合には、追加の残業代を支払う必要があります。
この制度を採用している企業は、みなし残業の詳細を雇用契約書や就業規則に明記し、従業員にその内容を説明することが法律で義務付けられています。
この規定がない場合、従業員は自分の残業に対する報酬が適正かどうか確認できず、違法な残業のリスクが高まります。労働条件に不明点がある場合は、労働基準監督署に相談するなどの対応が必要です。
不動産業界で違法な残業をさせられたときの対処法
続いては、不動産業界で違法な残業をさせられたときの対処法を紹介します。不動産業界で違法な残業をさせられたときの対処法は以下の3つです。
- 会社にかけあう
- サービス残業を拒否する
- 労働基準監督署に相談する
では、一つずつ解説します。
会社にかけあう
違法な残業をさせられた場合、まずは会社に相談しましょう。上司や人事部門に、勤務時間や残業時間の正確な記録を基に、自身の状況を冷静に伝えることが大切です。
証拠となるデータを提示することで、会社側も問題を認識しやすくなります。また、感情的にならず、具体的な解決策を提案する姿勢が効果的です。
同様の問題を抱える同僚がいる場合は、団体での提起も検討しましょう。
サービス残業を拒否する
サービス残業を拒否することは、労働者が自身の権利を守るために重要な対応です。
ただし、サービス残業を拒否する際は、自分の労働条件や契約内容を確認し、正当な労働時間を把握してからにしましょう。
その上で、上司や人事部門に対して冷静に立場を伝え、法律に基づいた正当な労働条件を主張することが効果的です。
可能であれば、同僚と協力して団体で行動することで、企業への影響力を高められます。職場の環境や人間関係への影響も考慮しつつ行動することが重要です。
労働基準監督署に相談する
労働基準監督署は、違法な労働環境や不当な扱いに対して労働者を保護する機関です。
違法な残業がおこなわれている場合、勤務時間や残業代の支払い状況を記録し、労働契約書や給与明細などの証拠を整理して相談することが重要です。
相談は匿名でも可能で、労働者に不利益が生じることなく状況を報告できます。
労働基準監督署が企業に調査をおこない、違法な状況が確認されれば、企業に対して改善指導がおこなわれ、労働環境の改善を期待できます。
不動産業界で残業が少ない会社を見極める方法
続いて、不動産業界で残業が少ない会社を見極める方法を紹介します。不動産業界で残業が少ない会社を見極める方法は以下の3つです。
- 会社に口コミや評判をチェックする
- 営業時間外に会社に電話する
- 夜間にオフィスの外観を観察する
では、一つずつ解説します。
会社の口コミや評判をチェックする
残業が少ない会社を見極めるには、オンラインでの口コミや評判をチェックすることが効果的です。
求人サイトや企業評価プラットフォーム、SNSなどで、実際に働いた人々の意見を集め、労働時間や残業の実態を確認しましょう。
ただし、口コミには偏りがある場合もあるため、複数の意見を総合的に判断することが重要です。
また、残業だけでなく、ワークライフバランスや職場の雰囲気など、全体的な労働環境も確認することで、理想的な職場を見つけやすくなります。
営業時間外に会社に電話する
営業時間外に会社に電話をかけることで、その企業に残業があるかを間接的に確認できます。
公式な営業時間後に電話をかけ、誰かが応答すれば残業している可能性が高く、逆に応答がなければ定時で退社している兆候かもしれません。
ただし、この方法だけでは残業の頻度や時間の長さは正確に把握できないため、他の情報源と併せて活用することが大切です。
夜間にオフィスの外観を観察する
夜間にオフィスの外観を観察することで、その会社の残業状況を確認できます。
あるいは、営業時間終了後にオフィスビルを訪れ、照明の点灯状況や従業員がまだ働いているかを確認することで、残業が多いかどうか、傾向がわかるでしょう。
ただし、テレワークの導入などで判断が難しい場合もあるので、他の手段と併用して確認しましょう。
不動産業界の残業についてのまとめ
不動産業界では、残業が多い企業も少なくありませんが、働きやすい環境を見つけることは可能です。
会社の口コミや評判を確認し、営業時間外の状況を調べるなど、いくつかの方法を活用すれば、残業が少ない企業を見極められるでしょう。
ただし、自分に合った職場環境を見つけるためには、労働条件をよく調査し、慎重に判断することが大切です。
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