「配置技術者」と「主任技術者」は、いずれも建設工事の監理・監督を行う立場です。
建築や施行の仕事に興味がある人のなかには、「2つの仕事の違いが分かりにくい」と考える人も多いのではないでしょうか。
本記事では、主任技術者と監理技術者の違いについて解説します。また、必要な資格の取得方法や将来のキャリアパスについても解説していきます。
未経験から主任技術者や監理技術者を目指したい人は参考にしてください。
主任技術者と監理技術者の違いは?
まずは、主任技術者と監理技術者の違いを3つの視点から解説します。
職務責任の範囲の違い
まずはじめに、職務責任の範囲の違いについて解説します。
主任技術者は現場管理を担当
職務責任の範囲の違いの1つ目は、主任技術者が現場管理を担当するということです。
具体的に定められた業務内容は以下の4つです。
- 施工計画の策定・実行
- 工事の工程管理
- 工事の品質管理
- 工事の安全管理
「施工計画の策定・実行」とは、期間内に建築物を完成させるため必要な方法・手順を計画したものを指します。
主任技術者は、適正な工事を確保するために現場管理を行う役割を担っています。
監理技術者は全体の統括を担当
職務責任の範囲の違いの2つ目は、監理技術者は全体の統括を担当することです。
監理技術者と主任技術者は、建設業法で定められた役割に違いがあります。
ただし、監理技術者の業務には、主任技術者の業務にくわえて下請け業者の適切な指導・監督といった総合的な責任も含まれています。
全体の統括を担当する監理技術者は、主任技術者の上位のポジションにあたります。
参考:監理技術者について|一般財団法人 建設業技術者センター
工事範囲の違い
続いて、工事範囲の違いについて解説します。
主任技術者は特定工程を担当
工事範囲の違いの1つ目は、主任技術者が特定工程を担当することです。
主任技術者が担当できる範囲は、一般建設業および請負金額が4,500万円未満の特定建設業です。
なお、令和2年10月からは、請負金額が4,000万円未満の鉄筋工事や型枠工事に限り主任技術者を配置する義務がなくなりました。
監理技術者は全工程を監督
工事範囲の違いの2つ目は、監理技術者が全工程を監督することです。
監理技術者は、請負金額が4,500万以上(建築一式工事は7,000万円以上)の工事を監理・監督し、全工程を監督する者を指します。
上記のような大規模工事を担当できる点が、主任技術者との明確な違いです。
経験とスキルの違い
最後に、経験とスキルの違いについて解説します。
主任技術者は実務経験が重要
経験とスキルの違いの1つ目は、主任技術者には実務経験が求められます。
主任技術者として働くには、学歴によって以下の実務経験が必要です。
学歴 | 必要な実務経験年数 |
大学・高専・短大の指定学科を卒業 | 3年以上 |
高校・専門学校の指定学科を卒業 | 5年以上 |
それ以外 | 10年以上 |
指定学科は、建築工事業や電気工事業など目指す業種によってそれぞれ異なります。
参考:指定学科一覧|国土交通省
監理技術者は管理能力が求められる
経験とスキルの違いの2つ目は、監理技術者は管理能力が求められることです。
監理技術者は大規模な建設現場に配置されることが多いので、下請け業者を指導・監理する機会が多い立場です。
そのため、主任技術者よりも総合的な管理能力が求められます。
関連記事:監理技術者と主任技術者の違い|主任技術者の具体的な役割と責任|仕事内容と関連資格
主任技術者と監理技術者として必要な資格と取得方法
主任技術者と監理技術者として必要な資格と、その取得方法について解説します。
必要な資格
まずは、主任技術者と監理技術者として必要な資格を解説します。
主任技術者は建築士資格が必要である
実務経験年数のほかに、建築士資格の取得で主任技術者になることも可能です。
主任技術者として取得可能な資格は以下のとおりです。
- 2級建築士
- 2級施工管理技士
- 第2種電気工事士
- 技能検定(技能士)
未経験で主任技術者を目指す場合、取得しやすい資格は2級施工管理技士です。
2級施工管理技士は、種類によって7つの試験区分に分かれています。
参考までに、令和4年度の建築・土木・電気工事・管工事の各2級試験における合格率を紹介します。
試験区分 | 2級第一次検定合格率 | 2級第二次検定合格率 |
建築 | 42.3% | 53.1% |
土木 | 64.0% | 37.9% |
電気工事 | 55.6% | 61.8% |
管工事 | 56.8% | 59.7% |
このように、2級施工管理技士試験の合格率は試験区分で大きな幅があります。
自分が希望する仕事や転職したい企業に応じて、受ける試験を検討しましょう。
関連記事:施工管理技士の7種類の資格|特徴や要件、合格率などのまとめ
監理技術者は監理技術者資格が必要である
監理技術者になるには、定められた要件を満たして監理技術者資格を得る必要があります。
具体的には、「指定建設業7業種で指定の1級国家資格の保有」または「建設業22業種での実務経験」が求められます。
指定建設業とは、土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業の7つです。
詳しい資格要件は建設業技術者センターの案内を確認してみてください。
参考:監理技術者の資格要件|一般財団法人 建設業技術者センター
取得方法
続いて、主任技術者と監理技術者として必要な資格の取得方法を解説します。
主任技術者は講習受講が必要である
2018年4月より、登録基幹技能者講習の受講によって主任技術者の認定が受けられるようになりました。
登録基幹技能者講習を修了し、主任技術者と同等以上と認定された場合、「登録基幹技能者」として主任技術者要件を満たせます。
講習受講を受けるには、該当の業種において10年以上の実務経験(そのうち3年以上の職長経験)が必要です。
受講資格を満たしている人、もしくは受講資格を得られる見通しがある人は、講習での資格取得が一番の近道です。
監理技術者は筆記試験が求められる
監理技術者になる要件として、1級建築⼠や1級建設機械施⼯管理技⼠、1級⼟⽊施⼯管理技⼠といった、指定建設業7業種の1級国家資格の保有が挙げられます。
1級国家資格を取得するには、筆記試験の範囲の幅広い知識を覚えなくてはなりません。
監理技術者には筆記試験の本格的な勉強が求められることを、事前に知っておきましょう。
主任技術者と監理技術者を取得するメリット・デメリット
主任技術者と監理技術者を取得するメリット・デメリットについて解説します。
メリット
まずは、主任技術者と監理技術者を取得するメリットを2つ解説します。
キャリアアップが見込める
主任技術者と監理技術者を取得するメリットの1つ目は、キャリアアップが見込めることです。
主任技術者と監理技術者は、建設業法により建設現場への配置が義務づけられており、建築業において必要不可欠な存在です。
そのため、未経験であっても、建設業界への転職が有利となりキャリアアップが見込めます。
給与や待遇が向上する
主任技術者と監理技術者を取得するメリットの2つ目は、給与や待遇が向上することです。
主任技術者や監理技術者になるには、実務経験や高度な専門知識が必要です。
スキルと知識を兼ね備えた有資格者は企業に重宝されるため、給与や待遇の向上が期待できるでしょう。
関連記事:主任技術者になるメリット|主任技術者の具体的な役割と責任|仕事内容と関連資格
デメリット
続いて、主任技術者と監理技術者を取得する上でのデメリットを2つ解説します。
資格維持に学習が必要である
主任技術者と監理技術者を取得するデメリットの1つ目は、資格維持に学習が必要であることです。
監理技術者資格者証の有効期限は5年で、更新には監理技術者講習の再受講が必要です。
期限内に受講できない場合は資格が失効してしまうため、講習を修了できるよう学習する必要があります。
とはいえ、資格更新時は経験やスキルが蓄えられた状態なので、きちんと準備すれば問題なく対応できるでしょう。
業務責任が増加する
主任技術者と監理技術者を取得するデメリットの2つ目は、業務責任が増加することです。
主任技術者と監理技術者は、工事現場を管理・監督する責任者です。
幅広い業務を経験することでキャリアアップが望める一方、仕事の範囲が幅広く、業務責任も増大する立場です。
主任技術者と監理技術者のキャリアパス
主任技術者と監理技術者のキャリアパスについて解説します。
資格取得後のキャリアを考える上で、ぜひ参考にしてみてください。
主任技術者から監理技術者への昇格
最初のキャリアパスは、主任技術者から監理技術者への昇格です。昇格までの流れを解説します。
主任技術者として経験を積む
未経験から主任技術者になる場合、まずは必要な資格を取得する必要があります。
中でも、2級施工管理技士は主任技術者になれる代表的な資格です。
資格取得で要件を満たし、主任技術者として実務経験を積んでいきましょう。
関連記事:【役立つ】令和6年最新の2級施工管理技士試験の詳細ガイド
昇格には資格取得が求められる
監理技術者への昇格には、指定建設業7業種で認められている1級国家資格の取得が求められます。
監理技術者へ昇格するための主な国家資格は以下のとおりです。
- 1級施工管理技士(建築・土木・建設機械・電気工事など)
- 1級建築士
- 技術士試験(第二次試験合格者)
主任技術者として一定の実務経験年数を満たすと、これらの資格の受験が可能になります。
関連記事:1級建築施工管理技士の受験資格と試験内容|合格率と難易度について
関連記事:電気工事施工管理技士の1級と2級の違い|仕事内容や資格試験、難易度
監理技術者としてのキャリア成長
監理技術者へ昇格すると、これまで以上にキャリア成長が期待できます。
ここでは2つのキャリア成長について解説します。
大規模プロジェクトへの配属が増加
監理技術者は、請負金額が4500万以上(建築一式工事は7,000万円以上)の工事を管理・監督できるようになります。
そのため、主任技術者よりも大規模プロジェクトへ配属される機会が増加します。
公共事業や大型施設などの大規模工事に携わるチャンスが増え、多くのキャリア成長が望めるでしょう。
管理職への昇格が可能になる
建設現場を統括的に管理できる監理技術者は、企業にとって貴重な人材です。
そのため、豊富なスキルと経験が評価されて管理職への昇格が期待できます。
管理職は会社の利益を考慮した統括的な管理が求められるので、経営者視点でのマネジメントスキルを磨けます。
主任技術者・監理技術者の違いに関するよくある質問
ここからは、主任技術者・監理技術者の違いに関するよくある質問に回答します。
主任技術者と監理技術者の現場選任要件が4,000万円になるのはいつ?
主任技術者と監理技術者の現場専任要件が4,000万円になったのは、令和5年1月1日からです。
具体的な変更内容は以下のとおりです。
令和5年1月1日以前 | 令和5年1月1日以降 | |
主任技術者および監理技術者の専任を要する請負代の最低金額 | 3,500万円(建築一式工事は7,000万円) | 4,000万円(建築一式工事は8,000万円) |
監理技術者が主任技術者を兼務できる金額は?
監理技術者が主任技術者を兼務できる金額は、4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)です。
建設業者が工事を行う際、下請契約の金額が4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)の現場では、監理技術者の配置が定められています。
そのため、大幅な工事内容の変更などで途中から上記金額を超えた場合は、主任技術者の代わりに監理技術者を置かなければなりません。
主任技術者の専任と非専任の違いは?
専任とは1つの建設現場のみを担当することを指します。一方で、非専任は複数の建設現場を掛け持ちで担当することです。
令和5年1月から、4,000万円以上の土木一式工事(建築一式工事は8,000万円)は、「専任の主任技術者」の配置が義務付けられています。
なお、令和2年10月からは、技士補などを専任で配置した場合は監理技術者の兼務が可能となり、条件が緩和されました。
監理技術者になれる資格は?
監理技術者になれる資格は、指定建設業7業種(土木工事、建築工事、電気工事、管工事、鋼構造物工事、舗装工事、造園工事)で認められている以下の1級国家資格です。
- 1級施工管理技士(建築、土木、建設機械、電気工事、電気通信工事、管工事、造園)
- 1級建築士
- 技術⼠試験(第⼆次試験合格者)
- 国⼟交通⼤⾂認定の業種
主任技術者・監理技術者の資格やスキルの違いを把握してキャリア設計しよう
今回は、主任技術者と監理技術者の違いについて解説しました。
主任技術者と監理技術者は、いずれも工事の適切な管理に欠かせない役割を持ちますが、工事範囲や経験・スキルにおいて異なる資格です。
主任技術者・監理技術者として安定したキャリアパスを目指せるよう、本記事を参考に準備を進めてみてください。
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