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残業代が出ない時に違法性を調べる方法と請求する手順

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時間外勤務が発生した際は、残業代が支給されるのが一般的です。

しかし、会社によっては本来支払うべき残業代がきちんと支払われていないケースもあります。

そこで今回は残業の種類や賃金の計算方法、会社に違法性がないかを調べる方法について解説します。

過去の話であっても、3年以内であれば遡って残業代を請求することも可能ですので、是非参考にしてみてください。

残業代が出ない時に違法性を調べる方法

明らかに長時間労働をしているのに残業代がついていない場合、それが違法であるかを調べることから始めましょう。

雇用契約の内容にもよるのですが、一般的に所定の労働時間と法定労働時間と照らし合わせることで残業であるかを知ることができます。

具体的な確認方法について解説していきます。

総労働時間が所定の労働時間を超えていないか

労働に関する決まりは全て「労働基準法」により定められており、労働時間に関しては下記の定義となっています。

労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のこと」を言い、会社に出勤しない在宅勤務やテレワークに関してもこれに含まれます。

また、労働時間には会社からの指示はないものの、客観的に業務に必要な作業をしている時間も含まれる可能性が高いと言えるでしょう。

労働時間に似た言葉として「所定労働時間」というものがあります。

所定労働時間とは、労働契約や就業規則により定められており、これに対する賃金が基本給となります。

この所定労働時間を超えて労働者を働かせた場合には、残業代を支払わなければなりません。

法定労働時間を超えていないか

所定労働時間を超えて労働者を働かせた場合、残業代を支払わなければいけないのですが「法定労働時間」を超えての労働も残業代を支払わなければなりません。

法定労働時間は1日あたり8時間・一週間あたり40時間と定められており、これを超えて働いてもらいたい場合、労働組合等との間で労使協定を締結する必要があります。

法定労働時間を超える労働をした場合、労働基準法により通常の賃金に対し割増賃金率を乗じた賃金を支払う必要があります。

【残業の種類について】

・法定内残業(所定労働時間を超えていて法定労働時間の範囲内):割増賃金率100%

・時間外労働(法定労働時間を超える残業):割増賃金率125%(大企業の場合で1ヵ月60時間を超える時間に対しては150%)

・所定労働時間で深夜労働となる場合(午後10時~午前5時):割増賃金率25%

・休日労働(法定休日の労働):割増賃金率135%

・法定内残業で深夜労働の場合:割増賃金率125%

・時間外労働で深夜労働の場合:割増賃金率150%(大企業の場合で1ヵ月60時間を超える時間に対しては175%)

・休日労働で深夜労働の場合:160%

このように残業代は一律ではなく、労働時間帯などにより細かく割増賃金率が定められています。

関連記事:知らないと損。トラック運転手の労働時間や給与・残業代の真実

残業代が出ないことが違法となる事例

労働時間の管理は会社によって違い、働く場所や時間帯も異なります。

そのため、会社ごとで残業代が発生する時間について線引きなどが曖昧になっているケースがあり、注意が必要です。

こちらでは残業代を支払う必要がある事例について7つ紹介していきます。

当てはまっているのにも関わらず残業代が支給されていない場合は、違法となります。

タイムカードで虚偽の打刻をさせる

勤怠管理を行うためにタイムカードを使用している会社は多くありますが、打刻のタイミングで不正を行い残業をなしにする行為は違法となります。

既に出勤して作業をしているのに、タイムカードを押さずに作業し、出勤時間になったら打刻をしたり、打刻をした後も仕事をしているような状況です。

社員が勝手に行っている場合に関しても、会社側が管理を行い不正打刻をなくす必要があります。

この他にも、タイムカードの打刻と残業に関しては下記のようなケースで注意が必要です。

・タイムカードによる残業代の計算は15分単位

タイムカードを使用している企業に多いのが、15分単位で残業代を計算するといったケースなのですが、これも違法となります。

定められた労働時間を過ぎた労働は、1分単位で残業代を計算しなければなりません。

そのため、定時から14分後にタイムカードを打刻したから、残業代がでないといったケースは法律に抵触しています。

ただし、タイムカードを使用した残業代の計算方法には例外があり、一か月ごとに残業時間を算出する場合に関しては30分未満であれば切り捨てることができます。

30分を超えているのであれば切り上げ処理しなければなりません。

この他にも遅刻をしてしまい、タイムカードを押すのが定時より4分遅くなったのに15分の減額となるのも違法です。

・朝礼や終礼後にタイムカードの打刻をする

短時間で終わるからといった理由で、タイムカードを押す前に朝礼などを行うケースがありますが、企業に拘束されている以上賃金は発生します。

残業代の上限が決められている

残業代は、残業をした分だけ支払われる必要があるのですが、会社によっては「固定残業代」に含まれているからといって、毎月決まった残業代しか支払われないケースがあります。

これに関しても、設定された固定残業代や時間を超えて残業した場合は、その超過分を支払わなければいけません。

また、固定残業代の時間設定は45時間までとなります。

就業規則で「〇時間を超えて残業した分に関しては残業代が発生しない」といった記載がある場合、労働基準法に違反しており、規則自体が無効となります。

在宅ワークなので残業代が出ない

コロナウイルスの流行により、最近では当たり前となった在宅ワークやリモートワークでも残業代のトラブルは増加しています。

よくある誤解としては「在宅ワークやテレワークだから残業代は出ない」といった内容です。

在宅ワークやリモートワークは一般的な勤務と同じで、法定労働時間(1日8時間、1週間に40時間)が適用となります。

「本当に仕事をしているのかわからない」といった理由で支払わないケースもありますが、どのような働き方であっても、勤怠管理は会社側がしっかりと行わなければなりません。

ただし、在宅ワークに関しても固定残業制(みなし残業)は適用となるため、注意が必要です。

持ち帰るので残業代が出ない

繁忙期などによくあるのが、仕事を持ち帰って残業するといったケースです。

在宅ワークやリモートワークでも残業代は発生するので、持ち帰りでの仕事もこれに当てはまります。

ただし、労働時間にあたるかどうかがポイントとなります。

仕事が忙しく、上司の指示があって作業を持ち帰った場合には使用者の指揮命令下に置かれていたと言えるので残業代が発生します。

一方で「明日バタバタしながら作業を進めたくないから」といった理由で、上司の指示がなく自分の判断で持ち帰った場合、残業代は発生しないので注意が必要です。

持ち帰りの判断が難しいのが、会社側が黙認しているケースです。

明らかに所定労働時間では終わらないほどの仕事があり、社員が持ち帰って作業しているのがわかっているはずなのに、上司が何もそれに関して指示を出さないことがあります。

このような場合、黙認の指示があると認定されれば残業代は発生します。

仮に上司が「持ち帰っていることを知らなかった」と言っている場合には、持ち帰り残業の必要性や証拠を含め判断することになります。

任された作業が就業時間内に終わらせられる量なのか、残業の指示は無くても明日までに提出を求めたりする発言をしていたかなどを踏まえて決定します。

早朝出勤には残業代が出ない

残業とは別に、早出でも同じことが言えます。

最近では、無駄な残業をなくすなどの目的から、オフィスの電源が落ちたりして使用ができなくなるなどの対策をとっている会社もあります。

このような会社でよくあるのが早朝出勤です。

早めに出てきて作業を行い、出勤時間前になってタイムカードを押すようなケースです。

これに関しても、上司からの指示があった場合はもちろん、明らかに早出をしないと終わらないような仕事量を任しており、黙認しているような時には時間外労働賃金が発生します。

また、残業と同じで自主的に出社している場合や、仕事目的ではなく込み合う時間を避けて早く出社している社員は賃金が発生しません。

年俸制だから残業代が出ない

年俸制だからという理由で残業代を支給しないというケースも発生しています。

年俸制とは、定めておいた給料を12月で割って1ヵ月ごとに支給したりする制度のことです。

一年間の給与が決定しているため、普段の勤務時間など関係ないといった感じで残業代の支払いを拒否する会社も存在します。

これに関しても法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超えて働いた場合には残業代を支払う必要があります。

また、休日出勤や早出をした場合に関しても同様です。

一方で年俸制であっても、その中にみなし残業代も含まれている場合には、一定の残業時間を超えない限りは支給してもらえません。

歩合制だから残業代が出ない

歩合制とは、成果報酬型の給与形態であり、仕事の成果や売り上げによって給与が決まります。

「結果が全てだから」といった感じで残業代の支給を断るケースも発生していますが、歩合制であっても残業代請求は可能です。

通常の給与とは計算方法が違うものの、他の形態と同じように法定労働時間を超えて働いた場合には時間外賃金の支払いをしなければなりません。

残業代を払わない企業への罰則

所定の労働時間や法定労働時間を超えている場合、年俸制や歩合制であっても残業代を支払う必要があり、1分単位で計算しなければなりません。

残業代を支払わなかった場合は、企業側には罰則が科されてしまいます。

ここでは、具体的にどのような罰則の決まりがあるのかについて詳しく解説していきます

6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金

法定労働時間や所定労働時間を超えての労働や、深夜帯勤務、休日出勤に対する割増賃金を支払わなかった場合、企業側には6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰則が科せられると労働基準法119条1項1号で定められています。

この罰則は必ず会社が受けるというわけではなく、実際に現場を指揮していた責任者が対象となることもあるので注意が必要です。

また、裁量労働制に関する労使協定や、変形労働時間制における協定届を提出していない場合に関しては、30万円以下の罰金が科されてしまいます。

36協定違反の罰則

36協定違反をした場合にも罰則が定められています。

36協定とは、法定労働時間(1日8時間・1週間で40時間)を超えて労働を命じる場合に、所轄の労働基準監督署へ届け出なければならないという制度です。

あくまでも法定労働時間を超える場合となるので、所定労働時間が1日7時間である場合は一日1時間の残業であれば問題ありません。

この36協定の届出をしていなかった場合は、6ヵ月の懲役または30万円以下の罰金が科されてしまいます。

【36協定の時間外労働の上限規制について】

36協定により、法定時間外労働を社員に命じることができるようになりますが、無制限に働かせることは禁止されています。

時間外労働で残業や早出をさせられる時間は、月に45時間・年間360時間までに抑えなければなりません。

どうしても繁忙期などで難しいという場合は「特別条項付き36協定」を結ぶ必要があります。

この特別条項付き36協定に関しても、年に6回(一か月単位)までと定められており残りの6回は必ず残業時間を45時間以内に抑えなければなりません。

関連記事:残業が多い人が早く退社するための5つの方法

残業代が出なくても問題がないケース

企業は従業員の所定労働時間や法定労働時間を超えての残業に対し、基本的に1分単位で計算し、時間外賃金を支払う必要があります。

早朝出勤や仕事を持ち帰っての作業も時間外労働となり、歩合制や年俸制など関係なく支払わなければなりません。

その一方で、時間外労働となっても残業代が発生しないケースもあります。

どのようなケースがあるのか解説していきます。

固定残業代制

固定残業制とは、一定時間の時間外賃金手当が毎月の給与に含まれて支払われる制度のことです。

そのため、20時間の時間外労働を見込んだ固定残業制の場合、時間外労働が20時間まで発生しても残業代は発生しません。

ただし、20時間を超えて残業が発生した分に関しては時間外賃金を支払ってもらうことができます。

みなし労働時間制

みなし労働時間制とは、労働時間の計算が難しい場合などに実際の労働時間関係なく、特定の労働時間分はたらいたものとみなす制度のことをいいます。

法定労働時間を超えて働いたとみなす分の賃金も給与に含まれているので、基本的に時間外労働賃金は発生しません。

みなし労働時間制は「事業場外労働制」と「裁量労働制」の2つがあります。

【事業場外労働制】

営業職や記者など、オフィスではなく会社の外で働くことが多く、決まった作業などを繰り返すわけでもない労働時間の計算が難しい職種に用いられています。

ただし、全ての営業職がこの事業場外労働制に適用されるわけではなく、労働時間の計算が本当に困難なのか、監督者の目が届くかの2点を考慮して決定します。

例えば外回りの営業を数人で行い、その中の一人に労働時間の管理をする人がいる場合や、電話や無線で随時指示を受けながら働いているようなケースでは認められません。

最近ではLINEやチャットワークなど、簡単に連絡や指示ができるツールが増えてきており、事業場外労働制は減少しつつあります。

【裁量労働制】

専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があり、忙しさに波があるような職種に適用されます。

適用となる条件としては、専門知識と経験のある人が下記の4項目すべての業務を行う場合のみとなります。

・労働者に大きな裁量がある

・調査をしたり立案や企画業務も行う

・事業の運営に関する内容である

・業務の進め方や時間配分について具体的な指示がなく本人で決める

専門業務型裁量労働制を導入する場合、労使協定を締結し労働基準監督署への届け出が必要です。

企画業務型裁量労働制を導入する場合は、労使委員会の設置と労働基準監督署への届け出が必要であり、労働者本人の同意も得なければなりません。

変形労働時間制

変形労働時間制とは、労働時間を月単位や年単位で調整し、繁忙期などに効率よく働けるような仕組みとなっています。

繁忙期などで勤務時間が増加したとしても、時間外労働とはならないので残業代が発生しません。

ただし、労働時間を増やした時期であったとしても、法律で規定された労働時間を超えた分に関しては残業代が支払われます。

一か月単位の変形労働時間制の場合、月の日数によって下記の通り法定労働時間が定められています。

28日の場合:160時間

29日の場合:165.7時間

30日の場合:171.4時間

31日の場合:177.1時間

この時間に収まるように各週や日によって労働時間を振り分けていきます。

一年単位の変形労働時間制の場合は下記の通りです。

365日の場合:2085.7時間

366日の場合:2091.4時間

この中で労働時間を振り分け、超えてしまった分に関しては残業代が支払われます。

変形労働時間制は、一見残業代の計算が難しく感じるのですが、就業規則で定めた労働時間は変更することができません。

そのため、6時間の所定労働時間で定められている日に、8時間働いた場合は別の日に繰り下げや繰り上げはできず2時間の残業代が発生します。

まずは就業規則を確認するようにしましょう。

管理監督者・機密事務取扱者

管理監督者や機密事務取扱者は、経営者と密接な立場にあり突発的な業務を担ったりすることが珍しくありません。

そのため、労働基準法における労働時間や休日、休憩の規定が適用されず残業代や休日出勤手当は発生しません。

ただし、深夜労働や有給休暇の規定は適用となるため、深夜労働手当は支給されますし、最低でも年に5日の有給休暇取得が義務付けられています。

監視労働に従事している

監視または継続的労働に従事する人(労働基準法第41条3号)の場合も、労働基準監督署の許可を得れば労働時間規制の適用がなくなり、残業代が支給されません。

理由としては、監視や継続的労働に従事する場合、労働密度が低く負担が少ないといった解釈となっているためです。

ただし、監視する内容によっては精神的や肉体的な負担が高いものもあり、下記のような監視労働者は「監視に従事する者」ではありません。

・交通関係や車両誘導を行う駐車場など、精神的緊張が高い業務

・危険物や有害な場所における業務

・プラント等における計器類を状態として監視するような業務

このような業務は監視業務であっても残業代が支給されると言えます。

農業・水産業・畜産業に従事している

農業や畜産、水産業に従事している場合、仕事が天候や季節などの自然条件に左右されやすく、決まった仕事内容を毎日こなしたり調整するのが困難です。

そのため、労働基準法41条1号により時間外労働に対する割増賃金の適用除外となります。

ただし、深夜労働に関しては割増手当が支給されます。

また、生産業者ではなくその加工や販売を行う会社で働いている場合などに関しては、通常の時間外料金が適用となります。

関連記事:2024年から建設業の残業規制により給料が減る人の特徴

会社に未払いの残業代を請求する方法

残業代が発生するケースやしないケースについて解説してきました。

普段働いていて残業代が発生する条件に当てはまるのにも関わらず、支給がないといった場合には会社へ支払いを請求することができます。

ここでは未払いの残業代を請求するための流れや方法について解説していきます。

⑴残業をした証拠を揃える

未払いの残業代を支払ってもらうために、まず最初にやるのは残業の事実を示す証拠を集めることです。

残業の証拠があることで会社は残業代の未払いを認めやすくなり、労働裁判などとなった場合にも主張が認められやすくなります。

残業の証拠には下記のようなものがあります。

・タイムカードの記録

・会社システムへのログイン履歴

・オフィスの入出館記録

・交通系ICカードの乗降者履歴

・業務日誌

・業務メールの送信日時など

一日の労働時間や所定労働時間以外で作業をしていた記録などであれば、証拠となる可能性があるのでなるべく残しておくようにしましょう。

参考:クラウド型人事労務システムのジンジャー(jinjer)

⑵会社に交渉する

証拠を集めたら、未払いの残業代を支払うように会社と交渉を行います。

職場の状況などにもよるのですが、一般的に直属の上司に話をすることから進めていきましょう。

上司が認めてくれなかったり、話を聞こうとしないような場合は、経理担当や経営者側へ直接交渉しても問題ありません。

⑶労働審判に持ち込む

労働裁判とは、労働者と会社の間で起きた労働関係の問題について、早く適切に解決するために行うもので裁判所での手続きとなります。

一般的な訴訟とは違い、期日が原則3回までと決まっているため、早い解決が可能であり費用も比較的安く抑えることができます。

流れとしては、1人の裁判官と2人の労働裁判員で構成される労働審判委員会が、非公開の手続きで残業代請求を認めるかについて審理します。

結果に対しては異議を申し立てることも可能であり、その場合は控訴手続きへと移行します。

労働裁判を行う場合、一般的に弁護士へ依頼して裁判を進めていきます。

費用に関しては着手金や成功報酬、手数料や実費が必要です。

内容によって変わるので一概に言えませんが、およそ60万円~100万円ほどとなります。

かなり高額に感じるかもしれませんが、成功報酬などは裁判により支払いが決定した残業代から数割を支払うので安心です。

⑷訴訟を起こす

労働審判で話がまとまらず、企業と労働者のいずれかが異議を申し立てた場合は控訴となります。

控訴した場合は裁判所の公開法廷で、お互いが主張し裁判所が最終的に判決を言い渡します。

残業代を請求する際の注意点

未払いの残業代を請求する方法や流れについて解説してきました。

残業代が発生していることを確認し、会社と交渉したり労働裁判を行うと支払いを要求できます。

過去の未払いの残業代を請求する場合、いくつかの注意点があります。

残業代が支払われる可能性にも影響するので、全て把握しておくようにしましょう。

残業代を請求できる時効は3年

過去に未払いの残業代が発生している場合、さかのぼって請求することは可能なのですが、時効があり3年前までと定められています。

2年という情報もありますが、2020年4月1日に施行された改正民法で3年へと変更になりました。

最近の変更であるため、残業代が発生した時期によって成立の内容が異なるので注意が必要です。

【残業代が2020年3月31日以前に発生しているケース】

時効改正前であるため、時効は2年のままとなります。

2023年の現時点で、さかのぼって残業代を請求することはできません。

【残業代が2020年4月1日以降に発生しているケース】

改正後の時効が適用されるため、時効は3年となります。

この残業代の中には、早出や休日出勤、深夜労働などの割増賃金が含まれています。

【3年の時効が適用されないケース】

さかのぼって残業代を請求できるのは3年と解説してきましたが、例外もあります。

まず1つ目が、企業側が不正行為をしていた場合です。

企業側の残業代不払いが不正行為によるものであった場合、残業代請求ではなく不正行為による損害賠償請求の時効が適用となる可能性があります。

不正行為での損害賠償請求の場合、時効は損害と加害者を知った時から3年となります。

明らかに残業代が発生しているのに支払っていないケースや、それに関する労務管理が適切ではなかった場合は不正行為責任が問われる可能性があるので、当てはまる場合は弁護士などに相談してみるといいでしょう。

2つ目は企業側が時効を援用していない場合です。

過去をさかのぼっての残業代請求は3年までと決まっているのですが、自動的に消滅するわけではありません。

企業側は「この期間の残業代は3年の時効を迎えたため支払いません」と援用する必要があるのです。

仮に社員が過去6年間の残業代を請求してきたとして、支払うと企業が答えた場合は債務の承認をしたことになり支払う義務が発生してしまいます。

3つ目は、残業代の請求を妨害した場合です。

過去の未払いが発覚したため、残業に関する情報を偽造したりして残業代の請求を妨害したと認められた場合は時効の援用ができなくなります。

証拠を徹底的に集めておく

未払いの残業代があったとしても、過去をさかのぼって請求する場合、証拠がないと認められない可能性が高くなります。

「周りの従業員や上司は必ずわかっていたはずだから」といったものでは、第三者からその事実を確認することができません。

タイムカードや出勤簿、仕事に使用するパソコンなどのログイン記録や出勤に使用した交通機関の利用履歴など、必ず残しておくようにしましょう。

この証拠の中には、自主的に記録した出勤時刻やメモ、LINE等での関連会話も含まれます。

既に退職しており、証拠もないといった場合には弁護士に依頼するのがおすすめです。

個人で証拠の開示請求をするよりも、弁護士が請求した方が企業側が応じる可能性が高くなるからです。

請求額を正確に計算しておく

未払いの残業代を請求する場合は、その詳細について先に計算しておくようにしましょう。

正確な金額を計算しないまま、交渉してしまうと企業側が出した金額が適用となってしまい、本来の残業代よりも少なくなってしまう可能性があります。

残業代の割増率は下記の通りです。

・法定内残業(所定労働時間を超えていて法定労働時間の範囲内):割増賃金率100%

・時間外労働(法定労働時間を超える残業):割増賃金率125%(大企業の場合で1ヵ月60時間を超える時間に対しては150%)

・所定労働時間で深夜労働となる場合(午後10時~午前5時):割増賃金率25%

・休日労働(法定休日の労働):割増賃金率135%

・法定内残業で深夜労働の場合:割増賃金率125%

・時間外労働で深夜労働の場合:割増賃金率150%(大企業の場合で1ヵ月60時間を超える時間に対しては175%)

・休日労働で深夜労働の場合:160%

残業代の計算式は【(基礎賃金÷一ヵ月の所定労働時間)×割増率×残業時間】となります。

例えば基礎賃金が190,000円であり50時間の残業(深夜労働なし)があった場合は下記の通りとなります。

(190,000円÷176時間)×1.25×50時間=67,500円

このように集めた証拠を元に残業代を請求しておくといいでしょう。

残業代が払われない時の相談先

ここまで残業代が支払われるケースや、そうでない雇用形態について解説してきました。

中には未払いの残業代があることが発覚した人もいるのではないでしょうか。

ですが、未払いの残業代があるとわかっても「他の人も当たり前のように働いてるし上司に責任があるわけではないから」といった考えから会社に支払いを言いにくいかもしれません。

また、どこまでが違法でどこまでが支払われるべきなのか微妙なケースもあります。

このような残業代に関する悩みなどがある場合、相談先としては労働基準監督署や労働組合、弁護士などがあります。

労働基準監督署は、事業所が労働関係の法令を守り運用しているかを監督するための機関です。

残業代不払いなどの違法行為があると、実態を調査し改善の勧告をしたりする権限もあります。

次に労働組合ですが、労働者たちで権利を守り労働条件や職場環境の改善をしていくための組織となります。

一人で会社と話し合うのが難しい場合などに相談することで、労働組合が労働者の代表という立場で会社と対等に話し合うことができます。

弁護士に関しては、法律を熟知していることもあり会社側の対応が変わりやすいと言えます。

代わりに話し合ってくれるので精神的な負担も少なく安心です。

弁護士に依頼する場合は費用がかかるので注意が必要です。

費用の内訳としては下記のような項目があります。

・相談料

・着手金

・成功報酬

・実費

相談料は弁護士事務所によって変わるのですが、通常1時間で5,000円~10,000円ほどとなります。

着手金に関しても依頼先によって異なるのですが、およそ請求額の8%ほどが多く、中には無料としている弁護士事務所もあります。

成功報酬は獲得金額の2割~3割となります。

この他に控訴費用や内容証明などにかかる費用を負担しなければなりません。

まとめ

残業代の請求は、労働基準法で認められた労働者の立派な権利です。

どのようなケースが違法に該当するのか、未払いの残業代を請求するにはどうすればいいのか、未払いの残業代を請求する際は何に注意すればいいのか、しっかり押さえておきましょう。

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