消防設備士の乙種・甲種の難易度は？勉強時間や受験資格について

消防設備士の甲種・乙種における資格概要や取得難易度について、気になっている人もいるのではないでしょうか。

そもそも、消防設備士はビルメンテナンスや消防設備関連の会社で活かせる資格です。甲種は特類から5類、乙種は1類から7類までに細分化されています。

また、甲種に受験資格が設けられていますが、乙種にはありません。したがって、乙種は学歴や実務経験に限らず、誰でも受験可能です。

この記事では消防設備士の甲種や乙種の難易度や受験資格などを紹介します。これから消防設備士の資格取得を目指している人は、ぜひ参考にしてみてください。

消防設備士の難易度を知る前に知っておくべきこと

消防設備士の取得難易度を知る前に知っておくべきことは主に2点です。

• 消防設備士の仕事内容
• 消防設備士の資格種類

それぞれのポイントについて解説します。

消防設備士の仕事内容

消防設備士の仕事内容は、建物や施設の火災予防設備の設置・点検・整備・修理です。

具体的には、消防設備士は建物に適した消火設備や警報設備を設計し、設置工事を行っています。たとえば、消火器・スプリンクラー・火災報知器などです。

また、設置された設備の定期点検を行い、正常に作動するかどうか確認しなければなりません。不具合があれば修理や交換対応をしています。加えて、点検結果は報告書として関係機関に提出しなければなりません。

さらに、火災が発生した場合には、迅速に対応し、被害を最小限に抑えるための措置を講じています。

消防設備士の資格種類

消防設備士は、火災防止や安全管理のために重要な役割を果たす資格です。また、消防設備士の資格種類は大きく分けて甲種と乙種に分類できます。

また、甲種は特類から5類、乙種は1類から7類までに細分化されています。

類別ごとに取り扱える消防設備は次のとおりです。

類別	取り扱える消防設備
特類	特殊消防用設備等
1類	屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・水噴霧消火設備・屋外消火栓設備等
2類	泡消火設備・パッケージ型消火設備・特定駐車場用泡消火設備等
3類	不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備等
4類	自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備・共同住宅用自動火災報知設備等
5類	金属製避難はしご・救助袋・緩降機
6類	消火器
7類	漏電火災警報器

このように消防設備士は細分化されているので、業務内容によって求められる資格が異なってくるでしょう。

参考：消防設備士試験｜一般財団法人消防試験研究センター
関連記事：消防設備士・乙6類の試験概要｜勉強時間や合格率について
関連記事：消防設備士・甲種4類の試験概要｜受験資格や過去問について

消防設備士の取得難易度

消防設備士の合格基準は、甲種・乙種ともに同様です。具体的には、各科目毎に40％以上かつ全体の60％以上の場合に合格となります。

甲種・乙種ともに合格率は20％から50％程度で推移しているため高くありません。しかし、難易度自体が高いわけではないと言われています。

したがって、入念に学習計画を立てて、試験に臨めば合格できるでしょう。

消防設備士の甲種と乙種はどっちが難易度が高い？

消防設備士の資格には、甲種と乙種の2種類あります。一般的に、受験資格や合格率を踏まえて、甲種が乙種より取得難易度が高いと言われているようです。

取得難易度について次の2つの視点から解説します。

• 甲種と乙種の受験資格
• 甲種と乙種の合格率

甲種と乙種の受験資格

消防設備士の甲種に受験資格は設けられていますが、乙種にはありません。したがって、乙種は学歴や実務経験に限らず、誰でも受験可能です。

甲種の受験資格を満たす方法は、大きく分けて2つあります。

まずは、保有免状・実務経験などで受験資格を満たす方法です。具体的には、次の資格もしくは実務経験がある場合、甲種の試験に挑戦できます。

• 甲種消防設備士
• 乙種消防設備士
• 技術士
• 電気工事士
• 電気主任技術者
• 工事の補助5年
• 専門学校卒業程度検定試験合格者
• 管工事施工管理技士
• 工業高校の教員等
• 無線従事者
• 建築士
• 配管技能士
• ガス主任技術者
• 給水装置工事主任技術者
• 旧給水責任技術者
• 消防行政3年
• 実務経験3年
• 旧消防設備士

続いて、学歴・修得単位・学位による受験資格の満たし方です。

学歴による受験資格の満たし方は次のとおりです。

学歴	資格内容
大学・短大または5年制高専	機械・電気・工業化学・土木または建築に関する学科もしくは課程を修めて卒業した場合
高校および中学校	機械・電気・工業化学・土木または建築に関する学科もしくは課程、授業科目を8単位以上修めて卒業した場合
旧制の大学および専門学校等	機械・電気・工業化学・土木または建築に関する学科もしくは課程、授業科目を15単位以上修めて卒業した場合
外国の学校	外国に所在する学校で、日本における大学・短大、高専または高校に相当するもので、指定もしくは同内容の学科または課程を修めて卒業した場合

また、学歴に加えて各単位の履修状況で受験資格を満たすこともできます。

学歴	資格内容
大学・専門大学、短大・5年制高専または専修学校・防衛大学校・防衛医科大学校・職業能力開発総合大学校・職業能力開発大学校・職業能力開発短期大学校・職業訓練大学校・職業訓練短期大学校・中央職業訓練所・水産大学校・海上保安大学校・気象大学校等	機械・電気・工業化学・土木または建築に関する授業科目を、各設置基準による単位を15単位以上修得した場合
各種学校	機械・電気・工業化学・土木または建築に関する授業科目を講義については15時間、実習については30時間、実験・実習および実技については45時間の授業をもってそれぞれ1単位として15単位以上修得した場合

他にも、指定された博士号・修士号を有する場合も消防設備士・甲種4類を受験できます。

学位	資格内容
博士・修士	理学・工学・農学または薬学のいずれかに相当する専攻分野の名称を付記された修士もしくは博士の学位を有する場合

甲種の受験資格を満たす方法は、さまざまあります。個人の状況に合わせて、どの受験資格を満たせるのか確認しましょう。

関連記事：電気工事士の資格の取り方を紹介！第一種・第二種の違いも細かく解説
関連記事：電気主任技術者の認定に実務経験は必須？要件や証明書の作り方も
関連記事：建築士の受験資格を満たすための学歴要件｜受験資格を得る具体的な方法

甲種と乙種の合格率

令和6年4月実施分における甲種と乙種の合格率は次のとおりです。

	受験者数	合格者数	合格率
甲種	622人	164人	26.4％
乙種	554人	248人	44.8％

また、令和6年4月以前も、甲種の合格率は乙種と比較して低い状況です。ただし、それぞれの合格率は受験状況によって、大きく変動する傾向があります。

参考：試験実施状況｜一般財団法人消防試験研究センター

【種類別】消防設備士の取得難易度ランキング

令和6年3月実施分の合格率から見た、消防設備士の中で取得難易度が高い上位3つの資格は次のとおりです。ただし、乙種3類・2類は令和6年3月の受験者数が少なかったため、実施月によって合格率は大きく変動する可能性があります。

• 1位：乙種3類：16.8％
• 2位：乙種2類：18.8％
• 3位：甲種特類：27.1％

それぞれの資格について紹介します。

1位：乙種3類

乙種3類は、不活性ガス消火設備・ハロゲン化物消火設備・粉末消火設備・パッケージ型消火設備・パッケージ型自動消火設備の設置・維持・管理に関する資格です。

2位：乙種2類

乙種2類は、泡消火設備・パッケージ型消火設備・パッケージ型自動消火設備・特定駐車場用泡消火設備の設置・維持・管理に関する資格です。

3位：甲種特類

甲種特類を取得すると、特殊消防用設備等の取り扱いが可能となります。特殊消防用設備とは、従来の消防用設備等ではないものの、総務大臣が同等以上の性能があると認定した設備を指します。

たとえば、加圧防煙システムなどです。

【難易度とは別】消防設備士の取得優先度ランキング

消防整備士の資格取得を目指すにあたって、どれから受験していけばよいのか迷う人もいるでしょう。特に、優先して取得を目指すべき資格は次のとおりです。

• 1位：乙種6類
• 2位：甲種4類
• 3位：乙種7類
• 番外編：第二種電気工事士

それぞれの資格について紹介します。

1位：乙種6類

乙種6類は、消火器の設置・維持・管理に関する資格です。消火器は一般人も目にするほどのなじみのある消防設備です。また、乙種のため、受験資格が設けられていません。

そのため、これから消防整備士の取得を目指すにあたって、乙種6類はおすすめの資格と言えるでしょう。

2位：甲種4類

甲種4類は、自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備・消防機関へ通報する火災報知設備

共同住宅用自動火災報知設備などに関する資格です。

建物の設置にあたって頻繁に求められる設備に関わる資格のため、需要があると言われています。

3位：乙種7類

乙種7類は、漏電火災警報器に関する資格です。7類には甲種がありません。

そのため、乙種の中でも7類は比較的、受験者が多い傾向にあります。

番外編：第二種電気工事士

第二種電気工事士は、電気工事を行うために必要な国家資格です。また、受験資格は設けられていません。

試験は学科と技能の2つありますが、いずれも合格率は60％から70％前後で推移しているケースが多くなっています。

したがって、第二種電気工事士の資格を皮切りに、キャリアアップも狙えるでしょう。

関連記事：【2024年度】第二種電気工事士の試験概要｜試験日や合格発表日について

消防設備士の難易度は種類によって異なる｜取得にかかる勉強時間

消防設備士の資格取得に向けて必要な勉強時間は、少なくとも60時間と言われています。一般的な勉強時間の目安は、1日2時間以上の勉強を1か月から3か月以上です。

ただし、資格の種類や実務経験などによっても、必要な勉強時間は異なってきます。

消防設備士の資格取得を目指す際は、自身の状況に合わせて計画的に学習しましょう。

消防設備士の難易度や資格に関するよくある質問

消防設備士の難易度や資格に関するよくある質問は次のとおりです。

• 消防設備士を取得するメリットは？
• 消防設備士の勉強方法は？

それぞれの質問について解説します。

消防設備士を取得するメリットは？

消防設備士の資格を取得するメリットは複数あります。消防設備士は法律で定められた国家資格です。

そのため、特定の建物における消防設備の設置や点検・整備を担当できます。

また、消防設備士の資格は、転職やキャリアアップの面でも非常に有利になると言われています。実際に多くの企業が資格を持つ人材を求めており、求人の選択肢が広がるでしょう。

特に大規模な施設や公共施設では、消防設備の管理が重要となるため、より安定した職に就くことができる可能性が高まります。

消防設備士の勉強方法は？

消防設備士の資格取得に向けた勉強方法はいくつかあります。たとえば、テキストを活用した独学や通信講座の利用です。

消防設備士の試験では、法令や設備の構造・機能などに関する知識が問われるため、基礎知識から身につけなければなりません。したがって、独学や通信講座などで、テキストや過去問集を使って、試験の出題傾向を把握し、繰り返し学習する必要があります。

また、消防設備士の試験は一朝一夕の勉強で合格できるものではないと言われています。試験日までのスケジュールを立て、継続的に学習を進めましょう。

消防設備士の難易度や受験条件を理解して受験する種類を決めよう

この記事では、消防設備士における甲種・乙種の資格概要や取得難易度などについて解説してきました。

甲種は特類から5類、乙種は1類から7類までに細分化されています。

また、甲種に受験資格は設けられていますが、乙種にはありません。したがって、乙種は学歴や実務経験に限らず、誰でも受験可能です。

その結果、乙種6類の資格取得をはじめに目指すのがおすすめと言われています。

これから消防設備士の取得を目指しているのであれば、資格概要を理解した上でチャレンジしてみてはいかがでしょうか。