さまざまな機械設備の保守・メンテナンスを行う設備保全の仕事は、機械に関する専門的な知識やスキルが求められます。設備保全への転職を検討しており、役立つ資格があるのか気になる方もいるでしょう。
この記事では、設備保全の仕事で役立つ資格を中心に、普段の業務で求められるスキルについて解説します。資格の試験概要や難易度も紹介していますので、取得を検討してみてください。
設備保全の資格を取得する前に知っておくべきこと
仕事で役立つ資格やスキルを知るうえで、設備保全の役割や仕事内容について具体的に理解しておく必要があります。
ここでは、設備保全の役割や仕事内容について詳しく解説します。
設備保全の役割
設備保全の技術者は、製造工場などの施設において以下のような役割を担っています。
- 点検業務による機械設備の故障防止
- 機械メンテナンスによる製造品の不良率の低減
- 機械設備の寿命を伸ばす
- 機械故障を防ぐことによる工場内の安全確保
設備保全は、製造工場などにある機械設備の点検やメンテナンスを通じて、機械トラブルによる不良品の発生を防いでいます。
ライン製造の場合、機械設備が一部故障しただけでも工場全体の生産がストップしてしまう可能性があります。生産がストップすると売上に大きく影響することから、設備保全の役割は責任重大と言えるでしょう。
工場内には人よりも大きな機械もあり、動作不良を起こした場合、近くにいる製造作業員がケガしてしまう可能性も十分考えられます。設備保全は、普段の業務を通じて工場内の安全を確保する役割も担っています。
設備保全の仕事内容
設備保全の仕事は、大きく分けて3つの種類に分類できます。
仕事の種類 | 具体的な仕事内容 |
予防保全 | 事前に立てた計画を元に、機械設備の点検や修理を行う。消耗パーツは、前回の交換時期を目安に新しいものへ付け替え作業を行う。 |
事後保全 | 急な機械トラブルが発生した際に、状況を確認したうえで修理を行う。状況に応じて、応急処置だけ行い稼働停止の時間を最小限に抑えなければならない。 |
予知保全 | 音・臭い・温度といった、機械の些細な変化を見つけ出し、故障する前にメンテナンスや部品交換を行う。 |
設備保全の仕事は「保守・メンテナンス」と表現されることもありますが、明確な違いはなく、どちらも仕事内容は同じです。
設備保全で役立つ機械保全技能士の概要
設備保全の仕事で活かせる資格は複数ありますが、その中でも設備保全の仕事に特化した資格として「機械保全技能士」があります。
ここでは、機械保全技能士がどのような資格なのか、資格試験の概要を交えながら解説します。
機械保全技能士とは
機械保全技能士とは、工場における機械設備の劣化や故障を予防したり、正常な稼働を維持したりするための専門的な知識やスキルを証明する資格です。
設備保全に関する知識と技能の証明になるため、毎年多くの技術者が受験しています。認知度も高まってきていることから、キャリアアップを目的とした転職にも役立てられる資格です。
設備保全以外では、機械製造メーカーのサービスエンジニアなどでも役立てられる資格です。
機械保全技能士は特級・1級・2級・3級の4種類
機械保全技能士は、受験者のレベルによって「特級・1級・2級・3級」の4種類に分類されます。各級の受験対象者は以下の通りです。
受験級 | 受験対象者 |
3級 | 機械保全に関する仕事に従事する予定。実務経験がなく、これから機械保全について学ぼうとしているレベル。 |
2級 | 機械保全に関する仕事に就いており、一定の知識とスキルがある。実務経験2〜6年の技術者が対象。 |
1級 | 機械保全に関する仕事を熟知しており、実務経験を7年以上積んでいる技術者が対象。 |
特急 | 機械保全に関する実務経験が10年以上あり、管理職として全体を指揮できるほどのスキルを持つ技術者が対象。 |
このように受験級ごとでレベル分けされているため、未経験でこれから転職活動を進めるような人でも挑戦できます。
受験資格
受験級ごとに対象となるレベルについて前述しましたが、誰でも好きな級を自由に受験できるわけではありません。下記の通り受験資格が設けられています。
受験級 | 受験資格 |
3級 | 実務経験などの受験資格はなし |
2級 | 2年以上の実務経験 |
1級 | 7年以上の実務経験 |
特急 | 1級試験に合格後、5年以上の実務経験 |
1級・2級に関しては、学歴や修了した学科によって上記実務経験の短縮も可能です。実務経験の詳細や学歴別の受験資格は試験実施機関である「公益社団法人日本プラントメンテナンス協会」の専用ページで確認できます。
参考:機械保全技能検定|公益社団法人日本プラントメンテナンス協会
試験の合格率と難易度
2023年度・機械保全技能士の試験結果は、以下の通りです。
受験級 | 学科試験合格率 | 実技試験合格率 | 全体合格率 |
3級 | 88.7% | 81.8% | 76.4% |
2級 | 55% | 47.3% | 39.5% |
1級 | 47.9% | 38.8% | 33.8% |
特級 | 26.4% | 28.5% | 19.7% |
入門編となる3級は、特別な受験資格がなく全体の合格率も約76%と高いため、難易度は低いと言えるでしょう。所定の実務経験を満たす必要がある2級以上の級に関しては、合格率が4割を下回っています。
現役の技術者が受験していることを踏まえると、難易度はかなり高いと言えるでしょう。
参考:2023年度 機械保全職技能検定・試験集計情報|公益社団法人日本プラントメンテナンス協会
試験問題の内容
機械保全技能士試験は、全ての級で学科試験と実技試験が実施されます。3級を例に紹介すると以下の内容で出題されます。
3級・学科試験 | |
出題内容 | 機械系保全作業と電気系保全作業 |
出題数と解答方式 | 30問出題・マークシート方式 |
3級・実技試験 | |
出題内容 | 機械系保全作業と電気系保全作業 |
出題数と解答方式 | ・判断等試験:7課題 ・制作等作業試験:2課題 ※一部マークシート方式で解答 |
合格基準は、学科試験で100点満点中65点以上(加点法)、実技試験で41点以上(減点法)となります。
設備保全で役立つ関連資格
機械保全技能士以外にも、設備保全の仕事で役立てられる資格が2つあります。資格の内容や、どのような業務で役立つのか解説します。
電気工事士
電気工事士とは、電気設備の設置や電気配線といった電気工事に従事する際に必須となる資格です。携われる工事の規模によって第一種と第二種に分かれています。
資格取得することで、電気設備の点検や保守業務に活かせるだけでなく、電気配線などに関する修理作業もこなせるようになります。
関連記事:電気工事士の年収を年代別・資格別・学歴別・経験年数別に解説
関連記事:電気工事士資格一種・二種の技能試験|実技試験の内容と難易度
電気主任技術者
電気主任技術者とは、ビルや工場といった施設の電気設備の保安監督業務をこなすうえで必要な資格です。取り扱える事業用電気工作物の電圧により第一種・第二種・第三種に分類されます。
資格取得することで、高圧な電気設備の保安監督業務ができるようになり、仕事の幅を広げられます。需要の高い資格で、電力会社の技術職やビル管理といった仕事でも役立てられます。
関連記事:電気通信主任技術者の難易度は高い?受験資格やメリット、合格のコツ
関連記事:電気主任技術者と電気工事士の違いは業務内容|役割・年収・資格の比較
資格以外で設備保全業務に必須のスキル
設備保全の仕事で役立つ資格について解説してきましたが、実際の業務では、さまざまなスキルが求められます。
ここでは、普段の業務で必須となる5つのスキルや知識について解説していきます。
電気図面や機械図面の読解
電気図面や機械図面を読解できる知識は、設備保全に欠かせません。機械にトラブルが発生した場合、図面で構造を確認したうえで原因となる箇所を推測するためです。
メンテナンスや修理で機械を分解した場合、元通りに組み立てる際にも図面を使用します。
各種機械の構造や仕組みに関する知識
機械の構造や仕組みに関する基本的な知識も、絶備保全の仕事では重要です。
機械の構造について理解できていれば、機械が稼働した際に各部品がどのような動きをしているのか想像できるため、故障の原因を追究しやすくなります。
故障している部品によって、修理にどれくらいの時間を要するのかも判断できるようになります。
シーケンス・PLCに関する知識
工場などの機械設備には、PLC・シーケンスが多く用いられており、エラーを検出した際は詳細を追いながら原因を追究します。各機械の制御について理解していなければ、早急にトラブルの原因を特定できません。
ちなみにPLCとは、機械設備を制御するためのコントローラーのようなものです。シーケンス制御とは、あらかじめ設定された順序で各工程を順次進めていく制御方法です。
例として、洗濯機でメニューを選択後、給水・洗い・すすぎ・脱水といった作業が自動で行われるのはシーケンス制御によるものです。
点検・整備で使用する測定器や工具の扱い方
機械設備の点検・メンテナンス業務では、さまざまな工具や測定器を使用します。適切に測定できなければ、異常を正確に検知できません。また、精密機械などの場合、締め付けにトルクの指定があり、規定の強さで固定しなければなりません。
扱い方の他では、工具の管理にも注意が必要です。万が一小さな工具が機械の中に紛れ込んだままになった場合、大事故に繋がる可能性があります。
設備全般の保全・修理経験
技術者として機械の異常を検知したり、トラブルを最短で解決できるようになるには、さまざまな機械の保全・修理経験を積む必要があります。
知識やスキルを身に着けるためには、積極的に新しい機械の保全を担当するようにしましょう。
設備保全で役立つ資格に関するよくある質問
最後は、設備保全で役立つ資格や仕事に関する、3つのよくある質問に答えていきます。
- 設備保全に関する資格を持っていない未経験者でも転職できる?
- 機械保全技能士って役に立たない?
- 機械保全技能士を取得するメリットは?
転職やキャリアアップを目指す際に役立つ内容ですので、参考にしてみてください。
設備保全に関する資格を持っていない未経験者でも転職できる?
設備保全の仕事では、さまざまなスキルと知識が求められるものの、未経験者でも転職できます。そのため、資格を保有していない人でも問題ありません。
近年、製造業では人材不足が深刻化しており、設備保全の技術者も例外ではありません。これを受けて、若手人材を確保するために未経験者を歓迎している求人が増えてきています。
未経験で転職する場合は、社内教育や研修制度が充実しているかをチェックしたうえで、応募する企業を決めていきましょう。
機械保全技能士って役に立たない?
機械保全技能士を取得すると、機械保全に関する知識やスキルを証明できるようになるため、仕事の幅を広げたり昇格したりするのに役立ちます。
全ての企業で評価の対象とされているわけではないものの、徐々に資格の認知度が上がってきています。積極的に上位級の取得にチャレンジしてみましょう。
ちなみに、役に立たないという意見としては「試験の内容が普段の業務とあまり関係性のないものばかり」といった声がありました。
機械保全技能士を取得するメリットは?
機械保全技能士を取得する主なメリットは、以下の通りです。
- 機械保全に関する知識やスキルを証明できる
- 昇給や昇格に繋がる
- キャリアアップを目的とした転職で役立つ
この他にも、現役の技術者からは「担当設備の見え方が変わった」「これまで以上に予知保全しやすくなった」といった声がありました。
設備保全で役立つ資格の取得を検討しよう
さまざまな機械設備のトラブルに対応する設備保全の仕事では、機械に関する知識やスキルが求められます。普段の業務で活かせる、知識やスキルを身に着けたい場合は、機械保全技能士がおすすめです。
資格取得することで、機械保全に関する知識やスキルを証明できるのはもちろん、仕事の幅を広げやすくなります。この他にも電気工事士や電気主任技術者といった資格もおすすめです。
近年は、未経験者を歓迎する設備保全の求人も多くあるため、必ず入社前に取得しておかなければならないわけではありません。自身のスケジュールを調整したうえで受験を検討してみましょう。
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