高齢化が進む現代日本で、介護業界の重要性は年々高まっています。その中で、施設や家庭を結ぶキーパーソンとして「介護ドライバー」の仕事が注目を集めています。
しかし、介護ドライバーと聞くと、具体的な仕事内容や必要なスキルはもちろん、具体的な年収を想像できる方はほとんどいないのではないでしょうか。
そこで本記事では、介護ドライバーの年収の実態、介護ドライバーの仕事内容、介護ドライバーに向いている人の特徴などを詳しく解説します。
介護ドライバーの仕事内容と年収事情
介護ドライバーは、高齢者や障害を持つ方など、日常生活での移動が困難な人たちをサポートする仕事です。
具体的には、クライアントの自宅や施設から病院、リハビリ施設、各種サービス提供施設などの目的地までの送迎を行うことが主な業務となります。
車内では、車椅子や歩行器を使用している方の乗降の補助や、安全な移動のためのサポートが求められます。そのため、介護技術や移乗の方法、車椅子の固定方法などの基本的な知識や技術が必要です。
また、移動中のクライアントのコミュニケーションを大切にし、快適で安全な移動を提供するための配慮が求められるのもこの仕事の特徴です。
介護ドライバーの1日:仕事の進め方について
介護ドライバーの一日の仕事の大まかな流れは、下記の通りです。
早朝 |
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午前 |
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午後 |
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この中で、クライアントとのコミュニケーションをとりながら、その人の状態や気分を見極め、適切なサポートを行うことが大切です。
介護ドライバーは年収が低い?メリット・デメリット
介護ドライバーの仕事には、いくつかのメリット・デメリットが存在します。
まずは、メリットから紹介します。
介護ドライバーの仕事は、社会的な意義が非常に高い仕事であるため、日々の業務を通じて多くの人々の役に立つことができる喜びや達成感を得ることが可能です。
また、高齢者や障害者の方々と直接関わる機会が多いため、人間関係のスキルやコミュニケーション能力を磨くことができるのも大きなメリットの一つです。
さらに、一般的なドライバー職と比較しても、比較的安定した収入を期待できる場合が多く、福利厚生も充実している企業が増えてきています。
加えて、日々の業務の中でさまざまなシチュエーションに遭遇するため、臨機応変な対応力や問題解決能力を身につけることが可能です。
最後に、介護業界は今後も需要拡大が見込まれるため、キャリアの展望が広がるという点も大きな魅力となっています。
続いて、デメリットを紹介します。
介護ドライバーのデメリットの中でも、まず注目すべきは、高齢者や障害者の方々を移動させる際の責任の大きさです。彼らの安全を第一に考える必要があり、何か問題が起きた場合の責任は極めて重くなる可能性があります。
また、利用者の体調や気分によっては、想定外の状況に遭遇することも少なくありません。これには、精神的な負担やストレスが伴うことも考えられます。
さらに、介護ドライバーとしての仕事は、体力的にも負担が大きい場面が多いです。車椅子の取り扱いや、利用者の補助を行う際には、一定の体力が必要となります。
そして、介護業界の特性上、祝日や週末、早朝や夜間の勤務が求められることも少なくなく、プライベートの時間が制限されることも考慮点として挙げられます。
このように、介護ドライバーの仕事には、多くのメリットとデメリットが存在するのです。
介護ドライバーとして安定した年収を稼ぐのに欠かせない資格
介護ドライバーになるために必要な資格は、普通免許(普通自動車第一種運転免許)です。
また、事業所や施設によっては、送迎車に介護職員が同乗しないこともあるため、介護職員初任者研修や介護福祉士などの資格を取得すれば、就業のチャンスが広がるでしょう。
関連記事:介護タクシーに必要な2つの資格とは?取得方法や給料事情も解説
介護ドライバーと介護タクシードライバー:年収の違い
介護ドライバーと介護タクシー運転手は、高齢者や身体に障害を持つ方々の移動をサポートする役割を担う点では共通していますが、その役割やサービスの内容には明確な違いがあります。
介護ドライバーは、主に特定の福祉施設や介護サービス提供者が雇用するドライバーとして、利用者を自宅から施設へ、またその逆の移動をサポートする仕事です。この場合、移動するルートや時間帯はある程度固定されていることが多く、利用者との関係が深まることで、よりパーソナライズされたサービスを提供することが期待されます。
一方、介護タクシー運転手は、通常のタクシーサービスに加え、車いす対応車両を利用したり、乗り降りの補助を提供するなど、介護に特化したサービスを行うタクシードライバーです。
そのため、介護タクシーは、個別の要望に応じて、病院やリハビリ施設、ショッピングモールなど、様々な場所への移動をサポートします。日々の業務は多岐にわたることが多く、柔軟に対応する能力が求められます。
また、介護ドライバーは普通自動車第一種運転免許で十分なのに対し、介護タクシー運転手の場合は普通自動車第二種運転免許が必要な点も、大きな違いです。
介護ドライバーを含む介護職員の年収:約300〜450万円
介護ドライバーを含む介護職員の年収は下記の通りとなっています。
年齢 | 男性 | 女性 |
29歳以下 | 28.6万円 | 27.4万円 |
30~39歳 | 32.5万円 | 29.2万円 |
40~49歳 | 34.3万円 | 29.8万円 |
50~59歳 | 31.4万円 | 30.0万円 |
60歳以上 | 27.1万円 | 27.2万円 |
年齢が上がっていくにつれて平均給与も上がっていきますが、給与のピークは男性が40代で34.3万円、女性が50代で30万円となっています。
出典:介護タクシー運転手|職業提供サイト
出典:施設介護員|職業提供サイト
【雇用形態別】介護ドライバーの年収について
続いて、介護ドライバー雇用形態別の年収について解説します。
正社員
正社員として勤務することで、安定した収入を得られるのはもちろん、福利厚生やボーナスも多くの施設で提供されています。特に、残業が少ないという点は、多くの求職者にとって魅力的な条件となっているようです。
具体的な例を挙げると、東京都の介護タクシーまたは介護ドライバーとしての常勤職員募集の求人では月給22万円〜、和歌山県の介護タクシーまたは介護ドライバーの求人では月給は17万円〜のものがあります。
いずれの場合も、月給だけで見ると一般的な給与よりも少し低く感じるかもしれません。しかしながら、正社員であればこの金額にボーナスが乗るため、実際の月給としては20〜25万円程度になるでしょう。
契約社員
契約社員は、正社員と比較して雇用の安定性に劣りますが、残業が少なめでプライベートの時間が取りやすい点は魅力的です。
多くの場合、契約社員はボーナスは受け取れませんが、通勤手当や週2日以上の休日など、働くスタイルとしての利点も多いため、支持を受けています。
具体例を挙げると、鹿児島県の社会福祉法人が運営するデイサービスの介護タクシー・ドライバーの求人の給料は月に15〜22万円、一方、和歌山県のある施設では月給が16〜18万円の範囲となっています。
全体として、契約社員としての介護ドライバーの給与は、月給15~18万円程度が標準的です。
パート・アルバイト
介護ドライバーのパートやアルバイトの求人を見ると、週に1日や2日の勤務が可能で、残業はほぼ発生せず、年齢に制約がない施設が目立ちます。
パート・アルバイトの場合の報酬は時給制で、デイサービスや訪問介護、サービス付き高齢者住宅、有料老人ホームなどでの送迎業務を主に手掛けます。
具体的例を挙げると、千葉県のサービス付き高齢者住宅での時給は1,100円以上、神奈川県のケアハウスでは時給が1,200円での求人があります。
さらに、東京都の大規模な介護サービス企業が展開する介護付き有料老人ホームや住宅型老人ホームの求人では、時給が大体1,200〜1,500円の範囲での募集が主流です。
近年、最低賃金の見直しが積極的に進められているため、時給もどんどん上がっており、働く頻度によっては契約社員以上の収入を得ることも可能です。
【都道府県別】介護ドライバーの年収について
このように、介護ドライバーの年収は労働形態によって異なりますが、働く地域によっても異なります。
東京都の場合
厚生労働省が実施した「平成30年賃金構造基本統計調査」によれば、介護職員の月給が最も高いのは東京都の28.2万円となっています。首都圏の東京都をはじめ、千葉県、埼玉県、神奈川県などでは物価が高いため、給与の待遇も高めの求人が多く集まっているようです。
なお、令和5年時点での東京都の介護ドライバーの募集を確認すると、パートやアルバイトの時給は1,200円程度が標準です。
大規模な介護サービス提供企業では、社会保険完備や質の高い研修プログラム、そして介護職員資格の取得を支援する制度などが整っていることが多く、パートとして勤務しながらでもスキルアップが期待できます。
さらに、東京都で正社員として勤務する場合の月給の相場は、おおよそ20〜24万円です。
青森県の場合
介護業界での収入を都道府県ごとに見てみると、最も低い給与の都道府県は青森県で、月給平均が19.4万円となっています。特に地方のエリアでは、介護福祉士などの資格を有する者であっても、月給が20万円以下になることが珍しくありません。
令和5年時点での青森県の介護ドライバーの求人を確認すると、アルバイトやパート、契約社員の時給相場は900円〜1,000円の間。正社員の場合、月給は大体16〜19万円が一般的です。
首都圏である東京都と比較すると、青森県の時給は約200円〜300円低く、月給も3〜5万円ほど差がつくことが見受けられます。
地方は物価や住宅費が手頃で生活しやすい面もありますが、上記のように基本的な給与が低いため、収入と生活コストのバランスをよく考慮する必要があります。
介護サービスの種別ごとの平均年収
介護ドライバーの年収は、どのような施設で働くかによっても差が生じます。ここでは、5つの施設・サービス別に、介護ドライバーの報酬を紹介します。
有料の老人ホーム
有料老人ホームは、高齢者が集まり共に生活する場で、その安心感を提供しています。これらのホームは多くが民間によって運営されており、各施設ごとに独自のサービスや料金が設定されています。
例えば、都内のある有料老人ホームの介護ドライバーとして勤務する場合、月給は約24.5〜28万円です。埼玉の施設では、入居者へのサポートや送迎業務を含めて、月給は16.5万円です。
北海道における有料老人ホームの募集情報では、施設のメンテナンスやデイサービスの送迎業務等を担当し、月給は14.2万円となっています。そして、群馬県の施設では、経験やスキルに応じて月給が17.6〜26.3万円となり、25万円を超えるケースも考えられます。
デイサービス
デイサービスやデイケア施設での主なタスクは、利用者を朝と夕方に送迎することです。ただし、施設によっては、管理業務や介護のサポートも求められる場合があります。そのため、デイサービスやデイケアの施設では、担当する業務の内容に応じて、給与の幅が広がることが特徴的です。
デイサービスでの介護ドライバーの報酬は、パート・アルバイトの場合が時給850円~となっており、一部の施設では時給が1,100円以上となっています。
正規雇用としての月給は、15〜25万円が相場です。例として、福島県の施設では月給が22〜24万円、青森県の老人保健施設では、月給は15.1〜16.6万円となっています。
特別養護老人ホーム
所得制限の範囲が広い特別養護老人ホームでは、多種多様な入居者が生活しています。常勤および非常勤のドライバーの需要が高まっており、全国各地で特別養護老人ホームのドライバーの求人が掲載されています。
具体例を挙げると、愛知県の特別養護老人ホームでは、入居者の送迎や家事のサポートを担当するパートのドライバーを時給1,100円の条件で募集しています。一方、東京都の施設でも、ほぼ同程度の時給1,150円での求人があります。
正社員として常勤ドライバーとして勤務する場合、東京都の特定の施設で月給15.8万円、埼玉県の施設で月給16.5万円という募集内容も見受けられます。
さらに、東京都の山間部にある特別養護老人ホームでは、事務関連のタスクも兼ねて担当する職員を、月給18.4〜20.8万円の範囲で募集しています。
小規模多機能型居宅介護
多様な介護サービスを提供している複数の介護事業所にて、介護ドライバーの募集が行われています。時給制の仕事では、給与の相場は900円〜1,100円となっています。
具体的には、神奈川県や大阪府の施設での求人は時給1,100〜1,200円で、岡山県の小規模多機能型居宅介護の求人では時給が950円〜1050円となっています。
一部の施設では時給が800円台後半での募集も確認できるため、地域や施設の大きさによる給与の差異は、求人サイトできちんと調査しておくと良いでしょう。
正社員としての募集の一例として、千葉県の施設では月給が23.1万円、福岡県の事業所では月給が15.5〜16.5万円、そして北海道の募集は月給15〜18万円となっています。
パートやアルバイトとしての募集が多いのが、小規模多機能型居宅介護のドライバーの特色といえます。
ショートステイ
短期間の宿泊が可能で高齢者が安心して滞在できるショートステイは、特別養護老人ホームやデイサービスセンターと併設されている場合が多いです。特に、パートやアルバイトとして、自分の都合のいい時間に勤務するのに適した介護施設となっています。
実際に、ショートステイの介護ドライバーの求人では、京都府の施設で時給は1,000〜1,050円、千葉県の施設で1,050円〜1,100円、そして愛知県の施設で時給1050円といったものが存在しています。
また、正社員の求人を見ると、ショートステイの利用者の送迎だけでなく、自宅や病院への送迎も担当する職種の月給が16.3〜27.1万円となっているようです。
介護ドライバーが年収を上げる3つのコツ
続いては、介護ドライバーが年収を上げるコツを2つ紹介します。
資格を取得する
介護ドライバーが年収を上げるコツの1つ目は、資格を取得することです。
資格を持っていることで、専門性や信頼性が認められるため、より高い給与を求める際の交渉材料として役立ちます。
また、資格を取得することで、特定の業務や専門的な仕事を任される機会も増える可能性があります。
資格取得の努力は、自らを成長させるだけでなく、より良い待遇を得るための大きなステップとなることでしょう。
条件の良い施設に転職する
介護ドライバーが年収を上げるコツの2つ目は、条件の良い施設に転職することです。
条件の良い施設とは、給与水準が高い、福利厚生が充実している、キャリアアップの機会が多いなど、働き手にとって魅力的な要素を多く持つ施設を指します。
転職活動を通じて、自身の経験やスキルを最大限に活かせる施設を見つけることで、待遇の向上や更なるキャリアの発展を目指すことが可能です。
もちろん、転職は環境の変化も伴うため、慎重な判断が必要ですが、適切なタイミングと施設選びを行うことで、年収を上げる大きなチャンスとなるでしょう。
関連記事:介護タクシーの仕事内容や給料、必要資格などを解説!実際の求人もいくつか紹介します!
介護ドライバーとして年収アップできる人の特徴|3選
続いては、介護ドライバーに向いている人の特徴を3つ紹介します。
運転が得意
介護ドライバーに向いている人の特徴の1つ目は、運転が得意であることです。
運転が得意な人は、安全に利用者を目的地まで送迎する能力が高いだけでなく、突発的な交通状況の変化にも迅速に対応できるため、利用者に安心感を提供することができます。
さらに、日々の業務の中で運転のスキルを活かすことで、ストレスを感じにくく、持続的に高いパフォーマンスを発揮することが期待されます。
このように、運転の得意な人は、介護ドライバーとしての仕事をスムーズに進めることができるでしょう。
人の役に立ちたい
介護ドライバーに向いている人の特徴の2つ目は、人の役に立ちたいと考えていることです。
介護ドライバーは単に運転するだけではなく、利用者の安全と快適な移動をサポートする仕事です。
そして、人の役に立ちたいという思いがある人は、利用者一人ひとりのニーズに気配りし、その場面ごとに最適なサポートを提供する姿勢を持つことができます。
このような感覚は、介護ドライバーとしての信頼関係を築き、仕事のやりがいを感じる大きな要因となるでしょう。
高齢者と関わりたい
介護ドライバーに向いている人の特徴の3つ目は、高齢者と関わりたいと考えていることです。
介護ドライバーは、高齢者と直接のやりとりを多く持ちながら、彼らの日常の移動をサポートする役割を果たします。
そのため、高齢者とのコミュニケーションを楽しみ、彼らの人生の経験や話を尊重し、学びたいと思っている方は、介護ドライバーとしての仕事に大きな充実感や満足感を得られるでしょう。
高齢者との深い関わりを通じて、人としての成長や人間関係の豊かさを感じることができるのが、この仕事の魅力の一つと言えます。
介護ドライバーの年収に関してよくある質問
ここからは、介護ドライバーの年収に関するよくある質問に回答していきます。
介護ドライバーの転職状況はどうなっていますか?
近年の高齢化社会の進展とともに、介護業界の需要は増加傾向にあります。そのため、介護ドライバーのポジションも多くの施設やサービスで必要とされ、転職市場においての価値は高まっています。
しかし、介護ドライバーとしての給与や待遇、勤務環境は施設やサービスによって大きく異なるため、転職する際には、自身のキャリアやライフスタイルに合った条件を持つ施設や事業所を見つけることが重要です。
また、転職を成功させるためには、自身の経験やスキルをしっかりとアピールすること、そして求人情報を網羅的にチェックすることが重要となります。
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介護ドライバーの年収に関するまとめ
今回は、介護ドライバーの年収について解説しました。
介護ドライバーに興味がある人は、本記事を参考にして、ぜひ介護ドライバーへの転職に挑戦してみてください。
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