ドライバーの仕事

トラック運転手の現実とは?年収や労働時間・待遇を徹底解説

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国内の流通の9割はトラックによる輸送で支えられており、トラック運転手は「国の血液」とも言われています。

しかし、運送業は「ブラック企業が多い」「身体がボロボロになる」という印象を持っている人も多いのではないでしょうか。

そこで本記事ではトラック運転手の年収トラック運転手の労働時間トラック運転手の業務内容などについて解説します。

トラック運転手の年収の現実

そもそも、トラック運転手の年収はどのくらいなのでしょうか。

職種別平均賃金(一般)

まずは一般運転手の平均賃金を紹介します。

一般男性

事務員 40万5,700円
荷扱手 32万3,800円
整備・技能員 35万100円
けん引 43万5,900円
大型 38万6,600円
中型 33万1,500円
準中型 32万5,900円
普通 32万3,500円
運転者平均 36万8,900円

出典:全日本トラック協会「2021 年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」

一般女性

事務員 26万400円
荷扱手 22万9,100円
整備・技能員 25万1,100円
けん引 39万2,900円
大型 36万7,300円
中型 31万1,900円
準中型 27万8,800円
普通 28万1,000円
運転者平均 32万3,400円

出典:全日本トラック協会「2021 年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」

同じ職種でも男性の方が女性よりも賃金は高く、最も差が大きい「事務員」の職種では14万円以上の差が出ていました。

職種別平均賃金(特積)

続いては特積運転手の平均賃金を紹介します。

特積男性

事務員38万9,900円
荷扱手35万6,100円
整備・技能員35万8,300円
けん引43万7,000円
大型45万1,100円
中型35万1,100円
準中型41万700円
普通38万4,000円
運転者平均41万1,500円

出典:全日本トラック協会「2021 年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」

特積女性

事務員27万9,200円
荷扱手25万8,000円
整備・技能員32万9,100円
けん引35万3,000円
大型36万9,800円
中型28万6,000円
準中型29万6,900円
普通27万7,000円
運転者平均30万4,100円

出典:全日本トラック協会「2021 年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」

一般運転手同様に、全職種において男性が女性の賃金を上回る結果となりました。

年収を上げるなら大型トラックがオススメ

トラック運転手は小型、中型、大型と、トラックの種類によって大きく3つに分かれています。大型トラックの運転手は小型、中型よりもはるかに長い距離を走るため、比較的給料は高めになります。

また、けん引免許を取得していればトレーラーを運転できるようになるため、さらなる年収アップにつながります。

トラック運転手の労働時間の現実 

労働基準法では労働時間や休日日数が定められています。法定労働時間は原則1日8時間、1週間で40時間まで。休日は最低でも週に1日、4週間で4日以上を確保することが必要とされています。

しかし、トラック運転手の場合は一般の労働者と比べて労働時間が長くなりがちです。ここでは、トラック運転手の労働時間について詳しく解説していきます。

出勤時間

トラック運転手の出勤時間は厳密には決まっておらず、その日の荷物の量や荷主の時間指定によって決まります。

長距離運転の場合は深夜から積み込みや移動を開始するため、夜間に出勤することがあります。

拘束時間

トラック運転手の拘束期間とは、始業時間から終業時間までの労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む)の合計時間を指します。具体的には、積み込み、移動時間、待機時間、荷下ろしの時間などを指します。

トラック運転手の1ヶ月の拘束期間は原則293時間までになっていますが、会社と労使協定(36協定)を結んでいる場合は320時間まで延長が可能です。

休息時間

トラック運転手の休息時間の基準も法律で定められています。

1日の拘束時間は原則13時間以内が基本と定められており、仮に延長しても16時間が限度となっています。そして、1日の休息時間は勤務終了後、8時間以上取らなければなりません。

待機時間

トラック運転手の待機時間は拘束時間に当たりますが、荷主の時間指定やトラブルなどで長さは大きく変わります。場合によっては1日の大半が待機時間になることもあります。

平均労働時間

トラック運転手の平均労働時間は、全産業の平均に比べて長い傾向にあります。

大型トラック運転者は全産業平均(2,100時間)の約1.22倍となる2,544時間、小型及び中型トラック運転者は約1.16倍の2,484時間です。

時間外労働時間も過労死ラインを超えていくことがもあることから、トラック運転手が安全に業務を遂行するためには、労働時間や現場の意識改善が必要だと考えられます。

参考元:国土交通省「トラック運送事業の働き方をめぐる現状」

トラック運転手の雇用形態の現実

続いてはトラック運転手の雇用形態の種類について説明します。

雇用形態としては正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト、パートの5つがあります。では、それぞれの雇用形態にはどのような違いがあるのか、詳しく解説していきます。

正社員

正社員とは、フルタイムで働いたり、労使協定の範囲内で残業を義務付けられていたり、解雇が厳しく制限されていたりする労働者を指します。

正社員のトラック運転手の仕事はトラック運転以外にも、契約社員や派遣社員がこなせなかった配達、伝票の処理などもあります。

非正規雇用と比較すると煩雑な業務は多いですが、安定した給料と賞与をもらうことができます。

契約社員

契約社員とは、契約時点で雇用期間が定められている労働者です。そのため、雇用期間が終了する段階で契約が更新されなければ、次の勤め先を探す必要があります。

なお、労働契約法では契約社員の最長契約期間は3年と定められていますが、専門的な知識や優れた技術を持つ労働者や、60歳を超える労働者と有用雇用契約をする際は、最長で5年間の契約が認められています。

契約社員は正社員と異なり、「就労時間を契約ごとに設定することができる」「他社も雇用契約を結べる」「契約更新時に昇給や昇進が可能である」という特徴があります。ただし、福利厚生においては契約社員の保障は正社員よりも薄いことのほうが多いです。

派遣社員

派遣社員のトラック運転手の場合は運送会社と派遣会社との間で契約が結ばれており、ドライバーが直接契約を結ぶのは派遣会社です。

一部の派遣会社は給料を時給で支給しているため、原則月給制の契約社員よりも給料が高くなる場合があります。

パート・アルバイト

トラック運転手のアルバイトはかなり珍しく、運転手が別にいてその運転手のサポート(荷積みや荷下ろしの手伝い、倉庫整理など)をする、といった業務がほとんどです。

アルバイトで実際にトラックを運転できる求人はほとんどありません。

トラック運転手の業務内容の現実

続いては、トラック運転手の業務内容の現実を紹介します。

長時間の運転が多い

トラック運転手の業務内容の現実の1つ目は、長時間の運転が多いことです。

長距離トラックの運転手は早朝から深夜まで長時間運転をすることが多く、常に意識をして運転しなければ、大きな事故を引き起こす可能性があります。

長距離を長時間運転することで疲労が蓄積し、注意力が散漫になったり、眠気を催してしまう過労状態に陥る危険があります。  

現在では過労からくる居眠り運転による事故が後を絶たない中、厚生労働省労働基準局によって「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」が定められ、連続運転可能時間などの目安が設定されています。

手積み手降ろしの有無で負担が異なる

トラック運転手の業務内容の現実の2つ目は、手積み手降ろしの有無で負担が異なることです。

荷積み、荷降ろしの際にフォークリフトなどで作業ができれば負担は少ないですが、常にフォークリフトが使えるとは限りません。時には、荷物をトラック運転手みずから運ばなければならないこともあります。

その際、足腰に非常に負担がかかり、疲労や怪我を招いてしまうこともあります。

トラック次第で高度な運転技術が必要

トラック運転手の業務内容の現実の3つ目は、トラック次第で高度な運転技術が必要であることです。

中型、大型トラックの運転には、高度な運転技術や危機管理能力、広い視野、空間把握能力などが必要となります。

トラックは一般の乗用車よりもはるかに大きく、運転席の視界も非常に高い位置からのものになるため、ミラーや目視での確認はもちろん、周囲の状況を早めに察知し的確な判断をしなければなりません。

トラック運転手の福利厚生の現実

このように、トラック運転手の業務は、一般的な仕事以上の負担がかかるものとなっています。続いては、トラック運転手の福利厚生の現実を紹介します。

社員寮

運送会社によっては、会社所有(もしくは借り上げ)の住宅に格安で住めるように支援してくれることがあります。

しかし、同僚や先輩と相部屋だったり、築年数がかなり古くて設備が老朽化していることもあったりするため、利用を検討する際は会社にしっかり確認しておくようにしましょう。

資格取得支援制度

大型免許やけん引免許など、業務に必要な資格の取得を目指す社員のために、受験費用や資格に必要な参考書代などを会社が肩代わりしてくれる制度です。

会社ごとに対象の必要な資格は異なるため、取得前に会社とよく相談しておくことが大切です。

残業手当

トラック運転手の残業手当は、一般的な仕事と同様に時間外労働時間分が支払われる場合もあれば、初めからみなし残業として通常の給料に含んでいる会社も存在します。

しかし、中には「拘束時間のうちの移動時間、待機時間は残業代を出さない」「みなし残業代以上の残業代は出さない」「歩合制だから残業代は出さない」などの悪質な会社も存在するため、会社を選択する際には十分調べてから入社する必要があります。

無事故手当

無事故手当とは、事故なしで仕事を完遂した月にもらえる手当です。

ただし、無事故手当は必ず支払わなければならないという決まりはありません。実際に「無事故手当はない」という運送会社も存在します。

そして、仮に一度事故を起こしてしまったとしても、会社によっては数ヶ月から数年後に再びもらえるようになります。

休日出勤手当(休出手当)

休日出勤手当とは、「労働契約で休みと決められた日に仕事をした際に付与される手当」です。

なお、労働基準法では、原則1週に1回、もしくは4週で4回、従業員に対して休日を付与しなければならないと定められています。

そのため、社員に休日出勤をしてもらうためには、書面による労使協定の締結が必要となります。

早出手当

早出手当は会社既定の出勤時間より早く出勤することで発生する手当を指します。

ただし、自主的な早出などは認められないので、会社に早出をしなければならない旨を伝えて許可をもらう必要があります。

皆勤手当

皆勤手当は自己都合で休むことなく、その月の労働日数全てで働いた社員に支給される手当です。

こちらも支払いが義務付けられている手当ではないため、付与されない会社も存在します。

運送業界の現実

では、トラック運転手が働く運送業界はどのようになっているのでしょうか?

深刻な人材不足

運送業界は過酷で辛いイメージがあり、どうしても若手のトラックの運転手が育たない状況です。

また、全日本トラック協会の「日本のトラック輸送産業現状と課題2020」によると、2019年度の自動車運送事業就業者は50歳以上が42.8%を占め、40歳未満の若手ドライバーは27%にとどまっており、労働者の年齢バランスの悪化も課題になっています。

出典:「日本のトラック輸送産業現状と課題2020」

ネット通販の浸透でニーズが上昇

近年のインターネット通販の成長による宅配便の増加は、運送業界には大きな追い風となっています。

しかし、2024年には時間外労働の上限がドライバーにも課されることとなり、これまでよりも効率的な業務遂行が求められることとなります。

こうした動きを受け、運送業界では同業他社や異業種間での業務提携を行っており、業務効率化や省人化を進める動きが出てきているのです。

トラック運転手あるある

ここではトラック運転手の仕事でのあるあるを解説していきます。

トイレのタイミングが難しい

トラック運転手あるあるの1つ目は、トイレのタイミングが難しいことです。

トラック運転手は「なかなかパーキングエリアにたどり着けない」「大型車両を停められるコンビニがない」「次の配達時間が迫っている」などの理由で、トイレに行けないことが多いです。

そのため「利尿作用のあるコーヒーやお茶を避ける」「車内に簡易トイレを備えておく」「腹痛時には下痢止めを服用する」などの工夫が必要となります。

事故を起こさないか不安

トラック運転手あるあるの2つ目は、事故を起こさないか不安なことです。

トラックは一般的な乗用車よりも車体が大きいため、常に事故の危険性を孕んでいます。特に、夜間の長距離走行や渋滞は事故に繋がりやすいので、より一層の注意が必要です。

事故を起こさないためにも必要に応じて仮眠を取ったり、バックモニターを搭載したり、事故を未然に防ぐ意識を持っておくことが大切です。

煽り運転をされても気にならなくなる

トラック運転手あるあるの3つ目は、煽り運転をされても気にならなくなることです。

トラックには、急加速やスピードの出しすぎなどを監視する機能がついており、煽り運転をされても追走することができないため、次第に煽り運転への耐性がついてくるのです。

トラック運転手がきつくても続ける理由

トラック運転手は、長い距離を走ったり、重い荷物を手で積み込んだりと大変な仕事です。

それでも続ける理由は、「お客様からの感謝の言葉が嬉しい」「走ることが好きだから」「給料が良いから」など様々な理由があります。

ここではトラック運転手の仕事を続ける理由について解説していきます。

高い給料を稼ぎやすいから

トラック運転手がきつくても続ける理由の1つ目は、高い給料を稼ぎやすいからです。

長距離運転のトラック運転手の給料は月30〜40万円ほどの給料を貰っており、一般的には「稼いでいる」部類に入ります。

しかし、なかなか家に帰れず、週の大半は車の中で生活しなければならないことがある点も覚悟して仕事をしていかなければなりません。

1人で仕事をするのが楽だから

トラック運転手がきつくても続ける理由の2つ目は、1人で仕事をするのが楽だからです。

トラック運転手は客先以外ではほとんど一人で時間を過ごします。誰に気を遣うことなく、トラックの中というパーソナルスペースで仕事ができるのです。

眠くなったり誰かと話したくなったりしたときはインカムなどで同僚に電話して、気を紛らわすこともできます。

全国中を回れるから

トラック運転手がきつくても続ける理由の3つ目は、全国中を回れるからです。

トラック運転手は荷物さえあれば、北は北海道から南は沖縄まで走ります。

年配のトラック運転手の中には全国各地を走り、その土地の景色やご当地フードなどを堪能しつくした人もいます。

どのトラック運転手になるかで現実は異なる

一口にトラック運転手と言っても、トラックには小型、中型、大型トラックと種類があり、走る範囲や積載物、さらには仕事量も給料もそれぞれ異なります。

ここではそれぞれのトラック運転手になった場合の仕事について解説していきます。

小型トラック運転手

小型トラック運転手の仕事は普通免許でこなせます。

運送会社や集配所からオフィスや個人宅などに荷物を届けたり、集荷希望の連絡を受けて荷物を引き取りに行ったりするのが主な役割です。

給料面は手取りで15〜30万円ほどの金額が一般的です。

中型トラック運転手

中型トラック運転手の仕事は中型免許を持っていればこなせます。

個人宅や倉庫、建設現場、工場と広い範囲で配達を行います。小型トラックと仕事はそこまで変わりませんが、移動距離や荷物の規模、配達できる数は大きく異なります。

給料面は手取りで20〜30万円ほどの金額が一般的です。

大型トラック運転手

大型トラック運転手の仕事は大型免許を持っていればこなせます。

中型トラックよりも大規模の荷物や大量の箱物などを積載し、移動に半日以上かかる場所まで届けることが多いです。

給料面は手取りで30〜40万円ほどの金額が一般的です。

Q&A

ここからはトラック運転手を目指す方が気になる質問について解説していきます。

トラック運転手は何歳まで働ける?

多くの運送会社では就業規則で60歳が定年と定められています。しかし、定年後は嘱託や契約社員などの形で仕事を続けるトラック運転手の人も多くいます。

また、定年制度がない運送会社もあるため、60歳を超えても正社員として働ける可能性もあります。

トラック運転手の職場にいじめはある?

残念ながら、トラック運転手の職場でもいじめはあります。

例を挙げると、「古かったり運転しづらい車両ばかり配車される」「積み下ろしが大変な案件ばかり割り当てられる」「インカムで嫌がらせをされる」などです。

また倉庫などでも「積み込み待ちの順番をいつも後回しにされる」「わざと破損したものを積ませる」など悪質な嫌がらせが報告されています。

もし、自身がいじめにあっていたら、迷わず信頼できる上司や厚生労働省の「総合労働損談のコーナー」などに相談することが、自身を守る最善の手段です。

アメリカでトラック運転手になれる?

アメリカでトラック運転手になるにはまず大前提として英語が話せなければなりません。

また、アメリカの運送会社は自社でトラックの貸し出しをしていない会社が多く、自分のトラックを購入するだけの資金も必要です。

さらに、基本的には何も知らない外国人より、ある程度土地勘のある自国の人の採用を優先するため、土地勘や卓越した運転スキルも必要となります。

女性の求人はありますか?

女性のトラック運転手の求人は存在します。

運送業界では近年、女性のトラック運転手を積極的に採用する動きが広がってきており、「トラガール」という言葉も出てきました。

また、トイレや更衣室をはじめとした施設環境を見直したり、ライフスタイルに合わせた働き方が選べる制度を整えたりと、運送業界の各企業が女性が働きやすい環境づくりに向けてさまざまな取り組みを積極的に進めています。

まとめ

今回はトラック運転手の現実について解説しました。

トラック運転手への就職を検討している場合は、ぜひ本記事を参考にして、トラック運転手への就職に挑戦してみてください。

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