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トラック運転手の飲酒運転に関するルールや罰則

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トラック運転手の飲酒に関するルールや罰則を徹底解説

トラック運転手への転職を検討しているものの、飲酒運転などのニュースを聞き、禁酒しなければならないかと考えている方もいるかもしれません。

そこでこの記事では、トラック運転手の飲酒に関するルールや罰則を解説します。

トラック運転手が抱える飲酒問題に関してリアルに知りながら、トラック運転手に転職後のお酒との向き合い方が分かるので、ぜひ最後までご覧ください。

トラック運転手による飲酒事故の現状

走行中の大型トラック

まずは、トラック運転手の飲酒事故について紹介します。実際にあった過去の事故の事例や、飲酒事故を改善するために策定されたプランも解説するので、今後トラック運転手として働く未来のために把握しておきましょう。

事業用車両による飲酒運転事故の大半はトラック

公益財団法人「交通事故総合分析センター」の調査によると、事業用運転者の飲酒運転による事故件数は、令和元年が27,884件、令和2年は21,871件でした。

うち、トラックの運転手による飲酒事故件数は、令和元年は15,606件、令和2年は13,500件と、全体の半数を占める件数です。

全体の件数は減っているものの、トラック運転手による飲酒事故が極めて多いことが分かります。

参考:「事業用自動車の交通事故統計(令和2年版)」|公益財団法人 交通事故総合分析センター

事業用トラックの飲酒事故事例

事故事例(1)
大型トラックが運行中、国道に合流する際、走行していた側道の左側ガードレールに接触し、弾みで中央分離帯に衝突、さらに道路左側ガードレールおよび街灯に衝突し停車しました。
この事故による負傷者はいませんでした。
事故後の警察の調べにより、当該大型トラックの運転者からアルコールが検出されたため、道路交通法違反(酒気帯び運転)の疑いで逮捕されました。

事故事例(2)
千葉県の国道にて、同県に営業所を置く大型トラックが運行中、赤信号を無視して交差点内に侵入し、対向車線から右折してきた乗用車と衝突しました。
この事故により、乗用車の運転手が軽傷を負いました。
事故後、当該大型トラックの運転手は現場から立ち去りましたが、約1時間後に警察に出頭し、呼気からアルコールが検出されたため、道路交通法違反(酒気帯び運転等)の疑いで逮捕されました。

事故事例(3)
中型トラックが運行中、信号機のある交差点を右折する際、横断歩道を青信号で渡っていた歩行者をはね、当該歩行者に重傷を負わせました。
事故後の警察の調べにより、当該中型トラック運転者の呼気からアルコールが検出されたため、道路交通法違反(酒気帯び運転)の疑いで逮捕されました。

出典:「令和4年中の事業用トラックの飲酒事故事例」

令和2年度のトラック運転手の飲酒運転事故件数は13,500件です。

平成20年のデータでは、トラック運転手の飲酒運転事故件数は28,838件のため、トラック運転手の飲酒事故件数自体は減っているのが分かります。

しかし、いまだに飲酒事故件数がゼロにはなっていないので、まだまだ改善の余地があると言えるでしょう。

参考:「事業用自動車の交通事故統計(平成20年版)」|公益財団法人 交通事故総合分析センター

事業用自動車総合安全プラン2025を策定

こういった飲酒運転による交通事故の多さを受け、国土交通省は「事業用自動車総合安全プラン2025」というプランを作りました。

これは、国土交通省が設定した、令和7年までに事業用自動車による交通事故の死者数を2,000人以下、重傷者数を22,000人以下にする「第11次交通安全基本計画」という目標を達成するために作られたプランです。

飲酒運転をゼロにする、24時間の死者数を225人以下にする、バスやタクシーの乗客死者数をゼロにするといった4つの目標を掲げており、飲酒運転に関しては点呼時のアルコールチェックを強化するなどの施策を取る予定です。

《事業用自動車総合安全プラン2025の目標》

  • 24時間死者数225人以下、バス、タクシーの乗客死者数ゼロ
  • 重傷者数2,120人以下
  • 人身事故件数16,500件以下
  • 飲酒運転ゼロ
  • 乗合バス: 車内事故件数85件以下
  • 貸切バス: 乗客負傷事故件数20件以下
  • タクシー:出会い頭衝突事故件数950件以下
  • トラック:追突事故件数3,350件以下

関連記事:酒気帯び運転の免許取り消しはいつから?防止方法と免許取り消し後の流れを解説!

トラック運転手向け飲酒運転に関するルールや罰則

トラック運転手

トラック運転手が実際に飲酒運転を起こしてしまった場合、どんな罰則があるのでしょうか。飲酒運転に関するルールについて、解説します。

酒気帯び運転の基準と点数のルール

酒気帯び運転は、体内のアルコール量により違反かどうか、また違反点はどれくらいになるのかが決まります。

この測定方法は、吐き出した息に、どれだけのアルコールが含まれているかで測定されることが多いです。

吐き出した息1L中、0.15mg以上で0.25mg未満だと違反点は13点、0.25mg以上だと25点となります。

ただし、飲酒によって正常な判断ができない状態であるのにもかかわらず運転した場合は、「酒酔い運転」となり、違反点数は35点です。

違反時の処分や刑罰について

飲酒運転した場合、付与された違反点数に応じた処分や罰則があります。

前歴がないと仮定して、0.15mg以上で0.25mg未満の場合違反点は13点で、免許停止処分となり90日間運転ができなくなります。

一方で、0.25mg以上の場合の違反点は25点で、前歴のあるなしに関係なく、処分は免許取り消しです。免許取り消しになると、2年間は免許を再取得できないことも覚えておきましょう。

また、刑事罰として3年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられることもあります。

アルコールの分解能力には個人差がある

実は、アルコールの分解能力は人によって異なります。

遺伝の影響で、先天的にお酒が強い方もいれば全く飲めない体質の方もいます。また、体型や性別、年齢によってもアルコール分解能力はさまざまです。

それに伴って、アルコールの検出量も人によって変わります。

飲酒から8時間空ける必要がある

アルコールの分解能力には個人差があるため、一概には言えませんが、基本的には飲酒してから8時間空ける必要があります。

ただし、飲酒量が多いと、8時間だけでは充分にアルコールが抜けません。お酒を飲んだ次の日の体調を考慮するのが重要です。

運転手だけでなく事業者も罰せられる

飲酒運転をした場合、罰せられるのはトラック運転手だけではありません。

事業者にも事業停止処分が科せられます。事業停止となる期間は、飲酒運転のケースによってそれぞれです。

事業者が飲酒運転を命じていたり容認していたりすると14日間の事業停止で、重大事故があり事業者の監督義務に違反していると7日間の営業停止となります。

営業停止の日時に関しての細かい区分は以下の通りです。

《事業者の罰則》

  • 事業者が命令した・容認していた:営業停止14日間
  • 重大な事故があり、事業者が監督義務違反していた:営業停止7日間
  • 道路交通法通知等があるのに、事業者が指導監督義務に違反していた:営業停止3日間
  • 酒酔いや酒気帯び乗務があった:初違反100日の車両使用停止/再違反200日の車両使用停止
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トラック運転手のアルコールチェックの現状

トラック運転手と作業員

トラック運転手の飲酒運転は、免許停止や取り消しになると分かりました。また、トラック運転手だけでなく、事業者にも事業停止処分が下されるなどの影響があります。

それだけリスクのある飲酒運転をゼロにするために、各事業所でアルコールチェックをしています。ここからはアルコールチェックの現状について解説します。

緑ナンバー車は検知器によるチェックが義務

営業用のトラックである緑ナンバー車は、2011年からアルコール検知器でアルコールチェックをすることが義務となっています。

運転開始前と終了後の点呼の際に、アルコール検知器を使ってアルコールチェックしながら、トラック運転手の顔色や呼気の臭いなども確認し、徹底的にアルコールを摂取していないかをチェックします。

アルコール検知器を用いた酒気帯び確認の義務化が無期延期に

緑ナンバーのトラックだけでなく、ナンバープレートが白で基本的に自家用として使われる白ナンバーのトラックにもアルコールチェックを義務付ける働きがありました。

しかし、現在この働きは無期延期中です。この延期になった経緯を以下で紹介します。

白ナンバー車の義務化が無期延期に

2022年の10月から緑ナンバーのトラックのように、白ナンバーのトラックにも検知器によるアルコールチェックを義務付ける予定でした

しかし、同年9月に警察庁が上記について無期延期することを発表し、現在も無期延期状態です。

義務化が無期延期となった理由

無期延期となった理由は、半導体不足です。2022年、コロナ禍の物流停滞により半導体不足が問題になりました。

アルコール検知器のセンサーの部分には半導体が使われており、この半導体がアルコール濃度を検知します。つまり、アルコール検知器に半導体は必須なのです。

まとめると、アルコール検知器の肝とも言える半導体が不足していることで、アルコール検知器を十分に用意できないのが無期延期となった要因です。

従って現在、白ナンバーのトラック運転手には顔色や言動などを確認する、目視によるアルコールチェックの義務のみがあります。

緑ナンバー車と白ナンバー車の違い

トラック輸送に使うトラックには、主に緑ナンバーと白ナンバーの2種類があります。

これらは用途が異なり、緑ナンバーはお客様の荷物を有償で運び、白ナンバーは自社の荷物を自社で運ぶのに使用されます。

また、ナンバープレートの色や税金の価格、社会的信用もそれぞれです。

《緑ナンバーと白ナンバー》

  • 緑ナンバー:営業用。社会的信用は高いが、保険料も高くなる可能性がある
  • 白ナンバー:自家用。比較的保険に加入しやすいが、自動車税が高い

トラック運転手の飲酒検査の方法

飲酒検査は、機械による検査と目視による検査の2種類を行います。

機械による検査は、アルコール検知器を使い呼気からアルコールが検出されるか確認します。乗務開始前と終了後の点呼の際に行うことが多いです。

目視による検査は、管理者や事業者がトラック運転手の顔色や呼気の臭い、応答の声、言動などを総合的に見て判断します。

関連記事:【2023年最新】アルコールチェックの義務化はいつから始まるのか徹底解説

トラック運転手の車内飲酒がなくならない理由

走行中の大型トラック

飲酒運転では厳しい罰則を設けているのにもかかわらず、未だに飲酒運転による事故が多いことが分かりました。

そこで、なぜトラック運転手による車内の飲酒が多いのか探ります。今後、トラック運転手になった場合の、飲酒との向き合い方の参考になるでしょう。

トラック運転手は宿泊施設や飲食店を利用しにくい

車内で飲酒するトラック運転手が多いと聞くと、「お酒を飲みたいなら飲食店に行けばいい」と思うかもしれません。

しかし、トラック運転手が使用するトラックは大きいもので10トン、車幅2.5m・長さ12mほどのサイズ感のため、通常の飲食店の駐車場では停められないのです。

そのためトラック運転手の多くは、飲食店での飲酒を諦めざるを得ず、トラックでも駐車できるスペースに駐車し、車内で飲酒します。

休息期間中の飲酒や車内飲酒を禁止していない企業もある

トラック運転手の労働規則に、8時間継続して休息を取らなければならない「休息時間」というものがあります。

この休息時間は、トラック運転手のプライベ―トな時間となるので、その間の行動を規制することはできません。

休息時間に何をしようとトラック運転手の勝手でもあるので、車内の飲酒を完全に禁止できないのです。

トラック運転手の飲酒対策について

走行中の大型トラック

最後に、トラック運転手の飲酒対策について解説します。

トラック運転手の健康管理について

運行管理者用の、健康管理マニュアルというものがあります。これは運転手の健康管理を行うことで事故を減らすため、国土交通省自動車交通局が作成した冊子です。

この冊子の中には、点呼の際に管理者が確認すべきことや、体調不良者がいた場合の対応などが記載されています。

ちなみに、飲酒などをはじめとする体調不良者がいた場合、管理者の判断でトラックへの乗車を禁ずることが可能です。トラック運転手は、管理者の指示に従い健康管理を行うよう意識しましょう。

アルコール依存症への対策について

安全教育マニュアルの「自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル」では、アルコール依存症について、本人だけで解決しようとするのではなく周囲の人の適切なサポートが必要と記載されています。

仮にトラック運転手がアルコール依存症となってしまった場合は、職場の人のサポートも借りながら回復を目指しましょう。

ちなみに、アルコール依存症の方への対応は以下のように記載されています。

《職場全体のアルコール依存症への対応方法》

  • 孤立を解消する
  • 叱責しない
  • 世話を焼きすぎない
  • 健やかな人間関係を作る
  • 一杯もアルコールを勧めない

飲酒事故撲滅のためにトラック運転手ができること

当たり前ですが、飲酒したら運転を控えるのを徹底することが重要です。

たしかに、労働時間が長いトラック運転手が飲んでストレスを発散したい気持ちがあるのも分かりますが、自分の運転ひとつで人の命を奪う可能性があることを認識する必要があります。

そもそも、お酒がすごく好きな人なのであれば、トラック運転手という職業を選択しないのが無難です。

仕事でストレスが溜まった場合でも、飲酒以外で発散できる別の趣味を見つけることをおすすめします。

関連記事:トラック運転手はやめとけと言われる理由|離職率や注意点も紹介

関連記事:トラック運転手の食事事情とは?オススメスポットも紹介

関連記事:ドライバーの面接で聞かれやすい質問&回答事例16選

トラック運転手の飲酒運転についてのまとめ

平成20年と比べると、飲酒運転による事故は半数ほどに減っています。しかし、事業用車両による飲酒運転事故の大半はトラックによるものであり、まだまだ改善する必要があるのも事実です。

飲酒運転対策として、アルコール検知器によるアルコールチェックの導入の検討、また管理者による目視確認の義務化などがあります。ただ、一番の対策はトラック運転手本人が業務前の飲酒を断ずることです。

そもそも、お酒がすごく好きな方はトラック運転手職には就かないほうが無難です。今後トラック運転手になろうか検討している方は、自分がどれだけお酒が好きなのかを見つめ直しつつ、お酒のいらない趣味を探すことをおすすめします。

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