物流業界

【2024年問題】1日の走行距離は片道250km?物流業界がすべき対策

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【2024年問題】1日の走行距離は片道250km?物流業界がすべき対策

2024年は、物流業界にとって節目の年となります。なぜなら、この年から施行される新しい労働法規制により、トラックドライバーの労働環境が大きく変化することが予測されているからです。

中でも、ドライバーの走行距離の問題は、物流業界の運営にとって大きな課題となるでしょう。これまで長時間労働が当たり前であった業界において、労働時間の制限はドライバーの走行距離に直結し、結果として物流全体の効率性や収益性に影響を与えます。

本記事では、2024年問題がドライバーの走行距離にどのような影響を及ぼすのか、またその影響を最小限に抑えるために物流業界が取り得る対策などについて解説します。

2024年問題が走行距離に及ぼす影響

トレーラー

まずは、2024年問題が走行距離に及ぼす影響を解説します。

長距離の場合

長距離運行の場合は、時間外労働の上限規制によって走行距離が短くなると予想されます。

実際に法改正前と法改正後の走行距離を比較するために、下記の条件で考えてみます。

法改正前法改正後
  • 1日の拘束時間の上限が原則13時間(改正後も同様)
  • 運転以外の業務に4時間かかるとした場合、運転に充てられるのは9時間
  • 4時間の運転ごとに合計30分の休憩が義務付けられているため30分×2(8時間以上の勤務では1時間の休憩が必須)
  • 9時間-休憩1時間=運転可能時間は8時間
  • 高速道路の法定速度80キロで計算した場合、8時間の走行距離は640km
  • 時間外労働は960時間までなので、÷12ヵ月で1ヵ月あたり80時間
  • 1か月22日出勤と仮定とすると、1日3時間36分まで残業できるという計算
  • 労働基準法で定められた1日の労働時間の8時間+上記仮定の計算3時間36分=1日11時間36分までが労働の限度となる
  • 11時間36分-4時間(運転以外の業務)=7時間36分
  • 休憩1時間
    ⇒時間ごとの運転に合計30分の休憩が義務付けられているため休憩30分
    ⇒8時間以上の勤務では1時間の休憩が必須であるため+30分
  • 7時間36分-休憩1時間=運転可能時間は6時間36分
  • 高速道路の法定速度80キロで計算した場合、6時間36分の走行距離は508.8km

以上より、法改正前の走行距離がおよそ640km、改正後の走行距離がおよそ500kmとなり、長距離運行の走行距離は短くなると予想されています。

短中距離の場合

短中距離運行は複数の荷下ろし拠点を経由することが多く、労働時間の制限により、荷下ろしできる拠点数の減少が予想されます。

実際に、法改正前と法改正後で、荷下ろしできる拠点数の変化を見てみます。まずは、法改正前のデータです。

法改正前の詳細
  • 荷卸し業務:全体1時間×10回=10時間(荷卸し先迄の走行時間:30分、待機時間:15分、荷卸し:15分)
  • 休憩:1時間
  • 荷積み業務:全体2時間(荷積み地迄の走行時間:30分、荷積み:30分、帰庫:1時間)

※下記の前提条件にもとづくものとする

  • 降ろす量が少ない小型車両
  • 拘束時間13時間以内
  • 積み置きパターン

続いて、法改正後のデータを紹介すします。

法改正後の詳細
  • 時間外労働の上限960時間を12ヶ月で割ると1ヶ月あたりの時間外労働の目安は80時間
  • 1か月22日を出勤と仮定をし「80時間÷22日」と計算すると、1日の残業の目安は約3時間36分
  • 労働基準法で定められた1日の労働時間の8時間に上記仮定の1日3時間36分を加算すると、11時間36分

以上のことから、改正後は1日の拘束時間の目安が11時間36分までとなり、改正前と比べて約1時間30分減少します。そのため、以下のような対応が必要になります。

  • 運行ルートの組み替え
  • 1人あたりの荷下ろし先を削減して、新たな人材を確保する
  • 10箇所の荷下ろし先を回ってもらい、残業時間分は別日に早く切り上げてもらう

なお、法改正前も法改正後も1日の拘束時間の上限は原則13時間のため、今回の仮定では、13時間のなかで荷下ろしできる拠点数がどのように変動するかという点で解説しています。

2024年問題:とくに走行距離に影響がでるのは長距離

トレーラー

2021年に国土交通省が行った調査によると、1運行における走行距離が500km以下と回答したドライバー・事業者は全体の9割に上り、平均走行距離は241kmでした。また、1日の運行距離が500km以上と回答したのは、全体の約1割程度にとどまっています。

この結果を見ると、「2024年問題による影響も小さいのでは?」と思われますが、同調査による車両別構成では、大型トラックとトレーラーが占める割合が6割程度でした。

500km以上を走行する大型トラックとトレーラーの割合が多く、かつ、2024年問題の影響で走行距離が減少することになれば、物流量の減少は避けられません。そのため、2024年問題では、特に長距離走行に影響が出ると言われているのです。

出典:物流の2024年問題について|国土交通省

関連記事:2024年問題がドライバーに与える影響と物流業界の今後を解説

物流業界:2024年問題の走行距離問題について

トレーラー

2024年問題とは、2024年に施行される働き方改革法案によって、労働時間の上限設定や、時間外労働の規制強化が行われることで生じる問題の総称です。

働き方改革法案は、労働者の過重労働を防ぎ、ワークライフバランスを改善することを目指していますが、長時間労働が常態化している業種に大きな影響を与えることが予想されています。

なお、2024年問題の発端は、ドライバーの労働環境の改善でした。

運送業界では、長時間労働が常態化しており、ドライバーたちは厳しい労働条件の下で働いていました。この状況を改善するため、2024年に労働関連法の改正が予定されており、労働時間の上限設定や時間外労働の規制強化が主な内容となっているのです。

出典:物流の2024年問題について|国土交通省

2024年に起きる走行距離問題:物流会社にできる3つの対策

スーツの女性

続いて、2024年に起きる走行距離問題について物流会社にできる対策を3つ紹介します。

運送方法の見直し

2024年に起きる走行距離問題について物流会社にできる対策の1つ目は、運送方法の見直しです。

運送方法の見直しにより、長距離輸送の効率化やコスト削減が可能になります。例えば、地域ごとに専門化された運送ネットワークを構築することで、各トラックの稼働範囲を限定し、長距離運転による労働時間の過剰な拡大の抑制も有効です。

また、最新のナビゲーションシステムやAIを活用して最適なルートを計算し、走行距離の無駄を省きつつ配送効率を高める方法も考えられます。

これらの施策は、ドライバーの負担を軽減すると同時に、燃料コストの削減にもつながり、企業の持続可能性を高めることに貢献するのです。

荷待ち時間の短縮

2024年に起きる走行距離問題について、物流会社にできる対策の2つ目は、荷待ち時間の短縮です。

荷物の積み下ろしにかかる時間を減らすことで、ドライバーの効率的な運用が可能になり、限られた労働時間内でより多くの配送を実現できるようになります。

これを達成するためには、荷物の積み下ろし作業を効率化するための設備投資や、荷主との連携を強化して荷物の準備状況を把握し、待機時間を最小限に抑えることが重要です。

また、リアルタイムでの荷物追跡システムの導入により、荷物の到着予測が精度高く行えるようになるため、荷待ち時間の削減に直結します。

これらの取り組みは、ドライバーの負担軽減に寄与し、限られた労働時間を最大限に活用することで、企業の運営効率と顧客満足度の向上に貢献することになるのです。

デジタル化による効率的な勤怠管理

2024年に起きる走行距離問題について物流会社にできる対策の3つ目は、デジタル化による効率的な勤怠管理です。

具体的には、GPS追跡やモバイルアプリケーションを活用してドライバーの勤務時間や走行経路の記録などが挙げられます。これにより、ドライバーの勤務時間の適正管理が可能となり、特に長距離運転における無駄な走行を避け、時間内に最大限の効率をもたらすルート計画が可能になるのです。

また、デジタルツールの使用により、ドライバーの疲労度の監視や安全運転の確保も容易になり、事故リスクの低減にも寄与します。

効率的な勤怠管理システムは、労働時間規制の遵守を助けるだけでなく、運送業務の全体的な効率向上を実現するための重要な手段となるでしょう。

2024年に起きる走行距離問題:荷主に期待したい対策

ドライバー

続いて、2024年に起きる走行距離問題について荷主に期待したい対策を3つ紹介します。

中継地点の設置

2024年に起きる走行距離問題について、荷主に期待したい対策の1つ目は、中継地点の設置です。

荷主は配送ルート上に中継地点を設けることによって、長距離の輸送を複数の短いセクションに分割し、異なるドライバーがそれぞれのセクションを担当することで、ドライバー一人あたりの運転時間と走行距離を削減することができます。

各ドライバーは中継地点で荷物を次のドライバーに引き継ぎ、そこから元の中継地点に戻るか、別の荷物を運ぶことになります。この方法は、ドライバーの労働時間を効果的に管理し、2024年問題による労働時間の制限に対処するのに役立ちます。

また、中継地点の設置は運送業界における人手不足の問題を緩和し、より多くのドライバーに仕事の機会を提供する可能性もあるのです。

手積み手下ろし作業を減らす

2024年に起きる走行距離問題について荷主に期待したい対策の2つ目は、手積み手下ろし作業を減らすことです。

手積み手下ろし作業の削減は、ドライバーが配送業務中に負担する物理的な労力を減らすことを目的としています。

具体的には、荷物のパレット化や機械化された荷役設備を使用することで、荷物の積み降ろしにかかる時間を短縮し、ドライバーの運送効率を高めることが可能です。

パレット化された荷物はフォークリフトやその他の機械を使って素早く積み込み・降ろしができ、ドライバーの作業負担が軽減されると同時に、総走行時間の短縮にも寄与します。これにより、ドライバーは運転により集中でき、安全かつ効率的な運送が可能になります。

また、荷主としても、積み込みや降ろしの効率化により、全体の物流コスト削減につながるため、双方にメリットがあるのです。

宅配ボックスの設置

2024年に起きる走行距離問題について、荷主に期待したい対策の3つ目は、宅配ボックスの設置です。

宅配ボックスの設置によって、配達時の不在が原因で生じる再配達の必要性が減少するため、特にECを活用したビジネスモデルで効果的です。

荷物の再配達はドライバーの負担を増やす要因の一つですが、宅配ボックスを使用することで、ドライバーは最初の配達で荷物を安全に保管でき、再配達による時間の浪費や燃料の消費を削減できます。

また、消費者にとっても、荷物の受け取りが容易になり、サービスの利便性が向上します。

このため、荷主が宅配ボックスの設置を積極的に進めることは、物流業界全体の持続可能性を高めるための重要な手段となるでしょう。

2024年問題による走行距離への影響に関してよくある質問

荷物運び

ここからは、2024年問題による走行距離への影響に関してよくある質問について回答します。

2024年問題は何キロまで影響しますか?

2024年の法改正後は、500km以上の長距離運行に影響が出ると予想されています。

2024年問題で1日の走行距離はどう変わる?

2024年問題の規制により、ドライバーの走行距離は1日500km、往復の場合は片道250kmを超えることは難しくなると予想されています。

2024年問題による走行距離への影響についてのまとめ

トラック

今回は、2024年問題による走行距離への影響について解説しました。

物流業界で働いている方は、本記事を参考にして、ぜひ2024年問題に対応したトラックの走行距離を心がけてください。

関連記事:トラック運転手は10年後に消滅している?物流業界の今後を解説

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