物流業界

テールゲートリフターとパワーゲートの違いは商標名か否か

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中型トラックを横から撮影した様子

一口にトラックと言っても、想定される荷物の積み込みや配送の内容により、さまざまなタイプの車両が存在します。

そのため、効率良く配送するには、取り扱う荷物や積み降ろしの手段に最適な車両を選ぶことが大切です。

トラック後部に昇降装置が付いているタイプの車両には「テールゲートリフター」や「パワーゲート」があります。

名前は違うものの、具体的な性能の違いが分からず、どちらを導入すべきか分からない人もいるのではないでしょうか。

今回は、テールゲートリフターとパワーゲートの具体的な違いについて解説していきます。

【この記事でわかること】
・テールゲートリフターとパワーゲートの違い
・パワーゲートの構造の種類
・パワーゲート搭載車両を導入する際の注意点
・パワーゲートリフター車両を導入する4つのメリット
・テールゲートリフター車両を導入する上で知っておきたい規則改正

テールゲートリフターとパワーゲートの違い

トラックが一直線に並ぶ様子

テールゲートリフター車とパワーゲート車は、どちらもトラック後部に昇降装置が付いているタイプのトラックです。

昇降装置の利用目的も同じであり、何が違うのか気になる人もいるでしょう。

ここでは、2つの呼び方が存在する理由について解説していきます。

テールゲートリフターは機械の総称

テールゲートリフターは、荷物の積み降ろし用の昇降装置のことで、トラックの後方に搭載されています。

車種によって若干形状や操作方法が異なりますが、トラックの昇降装置の総称として「テールゲートリフター」という名前があります。

パワーゲートは商標名

テールゲートリフターの別名として「パワーゲート」という呼び方がありますが、これは特装車の総合メーカーである、極東開発工業株式会社の登録商標となります。

極東開発工業株式会社のトラックが普及したことにより、この呼ばれ方が広く認知されたため、2つの名前が存在しています。

そのため、利用目的や操作方法などに大きな違いはなく、同じものとして捉えても問題ありません。

関連記事:テールゲートリフターとは?種類や導入するメリットを解説

パワーゲートの構造の種類

テールゲートリフターとパワーゲートに大きな違いはなく、導入メリットは同じですが、車両によって構造は2種類に分かれています。

・直下式パワーゲート
・アーム式パワーゲート

構造別でどのような特徴があり、どんな荷物の積み降ろしに向いているのか、解説していきます。

垂直式パワーゲート

垂直式パワーゲートを使用する様子

画像引用元:極東開発工業 公式チャンネル|YouTube

垂直式のパワーゲートは、トラックのあおり自体がゲートになっており、ゲートを倒すことで操作ができます。

ゲートは上下のみに動く構造で、揺れが昇降時に起きにくいことが特徴です。

不安定な荷物の積み込みが多い場合には、垂直式の方がおすすめと言えるでしょう。

また、アーム式よりも費用が安く、ゲートが後部のあおりになるため、総重量の変更を気にする必要もありません。

ちなみに、パワーゲートは後付けも可能であり、費用に関しては50〜100万円となります。

わざわざトラックを買い替えなくても、パワーゲートの取り付けは可能です。

アーム式パワーゲート

アーム式パワーゲートを使用する様子

画像引用元:極東開発工業 公式チャンネル|YouTube

アーム式パワーゲートは、荷台後部の下側に取り付けられたアームの動作によってリフトを昇降させるタイプのゲートです。

上下の動作ではなく、弧を描くように動く特徴があり、リフトを斜めに傾けて傾斜をつけた状態で動かせます。

そのため、バイクなどの積み降ろしに向いており、福祉車両に取り付け車椅子ごと車に乗り込むことも可能です。

垂直式に比べると揺れやすく、背が高く不安定な荷物の積み降ろしには不向きと言えます。

パワーゲートのリフト部分の格納方法

トラックに荷物を積み込む様子

パワーゲートは動作だけでなく、リフトの格納の仕方によっても2種類に分けられます。

・格納式
・跳ね上げ式

具体的な格納方法や車両の特徴について解説していきます。

格納式

格納式は、トラックの荷台の下にリフトを格納するタイプであり、使用しない際に他の作業が行いやすいメリットがあります。

集荷場にトラック後部を直接付けて、荷物を積み下ろすような業務に最適です。

トラック後部のあおりとして使用しないため、後部に扉があるようなタイプのトラックにも装着可能です。

格納時はリフトが折りたたまれているため、利用の際に広げる必要があることが、少し面倒と言えます。

跳ね上げ式

跳ね上げ式は、最終的にリフトが垂直になり、トラック後部のあおりとして収納されるタイプです。

格納スペースの制限に合わせる必要がないため、荷物を乗せられるリフトの面積が比較的広いことが魅力です。

トラック後部の扉を横に開ける必要もないため、道幅が狭かったり、近くを他の車が多く通過したりする道での積み降ろしにおすすめです。

一方で、荷物をトラック後部から降ろす際には、必ずパワーゲートを下に降ろしきる必要があり、操作が面倒であることがデメリットとなります。

パワーゲートを利用する際の注意点

高速道路を走る大型トラックの様子

パワーゲートは、ボタン1つで誰でも簡単に操作できます。

特に難しい作業はないのですが、過去には以下のような事故が発生しています。

【パワーゲートに関する事故事例】
・バランスの悪いパレット台車を落としていた際に、リフトから台車が倒れてきて下敷きになってしまった。・2人で荷物の積み下ろし中、1人が状況を確認しないままリフトを上げたため、リフトにいた作業員が荷台とリフトに足を挟まれてしまった。・夜間に荷物を積み降ろしをしていたところ、カラーコーンを設置していなかったため、車がトラック後部に追突してしまった。

パワーゲートを使用する際には、以下のようなことに注意しましょう。

・周りに人がいないかを確認する
・坂道など荷物を乗せた状態での昇降が難しい際には使用しない

パワーゲートは重量物を簡単に積み降ろしできるほどパワーが強いため、挟まれてケガしてしまう危険性があります。

昇降の際には、周りを確認してから作業するようにしましょう。

関連記事:テールゲートリフターの事故原因とは?事例や防止策を紹介

テールゲートリフターを導入する4つのメリット

トラックの後ろで腕を組む女性の様子

テールゲートリフター車の導入には、以下のようなメリットがあります。

・積み下ろし作業の時間短縮
・積み下ろし作業の肉体的負担の軽減
・荷物の保護と品質の維持
・生産性の向上

なぜこのようなメリットがあるのか、実際に積み降ろしで行う具体的な作業内容も踏まえながら解説していきます。

積み下ろし作業の時間短縮

テールゲートリフターを使用すれば、台車やパレットごと荷物の積み降ろしができるため、積み降ろし作業の効率改善が可能です。

手積みや手降ろしの場合、パレットに乗った荷物を一個ずつ積み降ろす必要があり、時間が掛かります。

テールゲートリフターの場合、台車の荷物をバラす必要がなく、そのままトラックから降ろせます。

パレットを移動させられるハンドリフトごと積み降ろしができるため、リフトから目的地までパレットのまま移動させることも可能です。

積み下ろし作業の肉体的負担の軽減

テールゲートリフターがあれば、手積みや手降ろしの作業が一切ないため、肉体的負担を軽減させることも可能です。

重い荷物を持ち上げるような作業がなくなるため、トラック運転手の職業病とも言える腰痛対策にも役立ちます。

テールゲートリフターであれば、体力が少なく力仕事に自信のない女性の方でも簡単に荷物の積み降ろしができます。

荷物の保護と品質の維持

テールゲートリフターがあれば、荷物の保護や品質の維持にも役立ちます。

手積みや手降ろしで、荷物を乱雑に扱ってしまったり、落としてしまったりするリスクを防げるからです。

カゴ台車などに入っていれば、トラック内の固縛もやりやすく、荷崩れも防げます。

荷物の引き取りから引き渡しまで、ほとんど荷物に触れないため、貨物損傷のリスクを軽減できます。

生産性の向上

ここまで紹介してきた、積み降ろし作業の作業効率改善や運転手の肉体的負担の軽減は、長期的な生産性向上にも繋がります。

積み降ろし作業が短時間になる分、配送できる件数が増えるのはもちろん、荷物損傷による損失も少なくなります。

テールゲートリフター車は、一般的なトラックに比べると多少価格は高くなりますが、長期的に考えると、利益を生み出しやすいと言えます。

テールゲートリフターに関する3つの大幅な規則改正

作業スタッフが2人立っている様子

テールゲートリフター車を導入すれば、積み降ろし作業の時間短縮や運転手の負担軽減に繋がり、配送効率を大幅に向上させられます。

そのため、テールゲートリフター搭載トラックの導入が当たり前になりつつあります。

このような現状を踏まえ、安全な運行ができるようテールゲートリフターに関する、3つの規則が改正されています。

・昇降設備の設置義務範囲の拡大
・保護帽の着用義務範囲の拡大
・運転者が離れるときの措置

具体的にどのようなルールが制定されているのか、解説していきます。

万が一、これらのルールを守っていなかった場合は、罰則もあるため事前に理解しておくようにしましょう。

昇降設備の設置義務範囲の拡大

これまで、昇降設備の設置義務の対象となる車両は、最大積載量が5t以上のトラックのみでした。

しかし、令和5年10月1日からは、2t以上5t未満の車両も昇降設備の設置義務が発生します。

保護帽の着用義務範囲の拡大

保護帽の着用に関しても、これまでは最大積載量5t以上の車両が対象でした。

しかし、令和5年10月1日より、以下のような車両でも保護帽の着用義務が発生します。

・最大積載量が2t以上5t未満の貨物自動車で、荷台の側面が構造上開放されているものや開閉できる車両(ウイング・平ボディトラック)

 

・最大積載量が2t以上5t未満の貨物自動車で、テールゲートリフターが設置されているもの※テールゲートリフターを使用しない作業では保護帽を着用する必要はありません。

保護帽に関してはどのような帽子でも良いわけではなく「墜落時保護用」の形式検定に合格したものを使用しなければなりません。

運転者が離れるときの措置

運転席と、テールゲートリフターの操作位置が離れているトラックを運転する場合、テールゲートリフターを操作する際にエンジンの停止義務が除外されます。

ブレーキを確実にかけるといった、逸走防止措置は引き続き義務付けられています。

施行は令和5年10月1日からです。

この他にも令和6年2月1日に施行される決まりとして「パワーゲートを使用する作業への特別教育」があります。

パワーゲートを使用して配送を行うトラック運転手は、以下のような特別教育を受けることとなります。

【学科教育】

パワーゲートに関する知識・パワーゲートの構造や種類、取扱い方について
・パワーゲートの整備や点検方法
1.5時間
パワーゲートによる作業に関する知識・台車の構造や種類、取扱い方について
・荷物の種類及び取扱い方について
・保護具の着用について
・災害防止について
2時間
関係法令労働安全衛生法令中の関係条項30分

これとは別に、実技教育として「パワーゲートの操作方法」も2時間行う必要があります。

運送会社は、特別教育を行った受講者や科目を記録し、3年間保存しなければなりません。

出典:トラックでの荷役作業時における安全対策が強化されます|厚生労働省

テールゲートリフターに関する規則が改正された背景

点検をする様子

テールゲートリフターに関する規制が改正された背景には「起因する労働災害の増加」があります。

テールゲートリフターに関する労働災害は、令和2年の1年間で330件も発生しています。

中には保護帽を着用していなかったことが原因による死亡事故も発生しており、これらの事故を防ぐために規則改正が進められました。

関連記事:テールゲートリフターの特別教育はどこで受けさせればいい?

関連記事:テールゲートリフターの補助金制度とは?対象機器も紹介

関連記事:車両の法定点検とは?車検との違いや義務内容についての疑問を解説!

テールゲートリフターとパワーゲートの違いについてのまとめ

街中を走るトラックの様子

テールゲートリフターとパワーゲートは同じであり、極東開発工業株式会社の商標名が広まったことから2種類の呼び方が存在しています。

構造や格納方法には複数種類あり、それぞれに特徴があるため、理解した上で普段の業務に最適なタイプのリフトを選ぶことが大切です。

一方で、関連の事故も多く発生しているため、導入する際にはしっかりとした教育と事故防止措置を取るようにしましょう。

普段の配達効率の向上にテールゲートリフター車を活かしてみてはいかがでしょうか。

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