現代の物流業界において、荷物の効率的かつ安全な取り扱いは業務遂行の重要な要素です。この点で、テールゲートリフターは、その重要性を日々増しています。
テールゲートリフターは、重い荷物の積み下ろしを容易にし、労働者の負担を大幅に軽減することから、多くの物流・運送業者にとって欠かせないツールとなっています。
本記事ではテールゲートリフターとは何か、導入するメリットなどについて解説します。
テールゲートリフターとは
テールゲートリフターとは、トラックや大型輸送車両の後部に設置される機械式の昇降装置です。
テールゲートリフターの主な目的は、重い荷物を車両の荷台への積み込みや、荷台からの降ろし作業を容易にし、作業効率を向上させることにあります。
荷物を平台に置き、リフターを操作して荷台の高さまで持ち上げることができるため、手作業による負担を軽減し、労働者の安全を確保することが可能です。
また、テールゲートリフターは、バリアフリー輸送の際に車椅子などの移動を助けるためにも利用されます。
このように、テールゲートリフターは物流業界において重要な役割を担い、荷物の搬入・搬出作業をスムーズにするだけでなく、作業者の安全を向上させるための効果的なツールとして広く使われているのです。
テールゲートリフターの種類
テールゲートリフターは、以下のようにいくつかの種類があります。
- ゲートの動作方法:「垂直式(ゲートが垂直に上下する)」と「アーム式(ゲートが弧を描くように上下する)
- ゲートの格納方法:「後部格納式(荷台後部のあおりとして垂直に固定・格納される。プラットホームに着けられない。)」と「床下格納式(トラック荷台の床下に格納される。プラットホームに着けられる。)」
上記のように、テールゲートリフターはゲートの動作方法とゲートの格納方法によって、種類分けがされています。
そのため、それぞれのテールゲートリフターの特徴や使用するシーンに合わせて選択することが重要です。
テールゲートリフターとパワーゲートとの違いとは
テールゲートリフターは、「パワーゲート」という名前でも知られていますが、この名称は極東開発工業株式会社の登録商標です。
そのため、テールゲートリフターとパワーゲートに違いはなく、同じものと言えます。
関連記事:テールゲートリフターとパワーゲートの違いは商標名か否か
テールゲートリフターを導入するメリット
続いては、テールゲートリフターを導入するメリットを4つ紹介します。
作業時間を短縮できる
テールゲートリフターを導入するメリットの1つ目は、作業時間を短縮できることです。
テールゲートリフターを使用することで、重い荷物を手作業で運ぶ必要がなくなり、従来に比べて荷物の積み降ろし作業が劇的に迅速かつ、効率的に行えるようになります。
特に、荷物の量が多い場合や一つ一つの荷物が重い場合にその効果は顕著で、総合的な作業時間の削減に大きく貢献します。
これは運送業務の生産性向上に直結し、より多くの配送タスクを短時間でこなすことが可能になるため、企業の業務効率化にも寄与する重要な要素です。
身体への負担を軽減できる
テールゲートリフターを導入するメリットの2つ目は、身体への負担を軽減できることです。
荷物の積み降ろし作業は、特に重い物品を扱う際には体への負担が大きく、長期間にわたると腰痛や関節の痛みなどの身体的問題を引き起こす原因となります。
しかし、テールゲートリフターを利用することで、重量物を持ち上げる作業が大幅に減り、作業員が直面する身体的ストレスを軽減することに繋がります。
さらには、作業員の健康維持や労働災害のリスク軽減に貢献し、安全で健康的な労働環境の実現に役立ちます。
また、身体的な負担が少ないことは作業員の満足度向上にも繋がり、長期的には従業員の定着率の向上にも影響を与える可能性があるのです。
荷物を保護できる
テールゲートリフターを導入するメリットの3つ目は、荷物を保護できることです。
通常、重い荷物の手積みや手降ろしでは、不慮の落下や衝撃により荷物が破損するリスクが常に伴います。
しかし、テールゲートリフターを使用することで、荷物を安定して持ち上げ、慎重に荷台へと移動させることが可能です。
この昇降装置によって、荷物は安全に、そして均一に扱われるため、落下やぶつけるといったアクシデントによる損傷リスクが著しく低減されます。
これは特に壊れやすい品物や精密機器を扱う際に重要で、荷物の品質保持に大きく寄与します。結果として、顧客への信頼性向上にもつながり、ビジネスにおいてプラスの影響をもたらすことが期待できるのです。
長期的なコストカットにつながる
テールゲートリフターを導入するメリットの4つ目は、長期的なコストカットにつながることです。
テールゲートリフターは、初期の設置費用やメンテナンスコストがかかるものの、荷物の積み下ろしに要する時間の大幅な短縮により、労働効率が向上します。これにより、配送や積載に関わる人件費の削減が可能になります。
また、テールゲートリフターの使用により、荷物の破損リスクが低減されるため、補償や再配送に関わるコストも抑えることも可能です。
さらに、従業員の肉体的な負担が軽減されることで、労働関連の健康問題や事故による損失を減少させ、長期的な人材確保や健康管理に関するコスト削減にもつながります。
これらの要素が合わさることで、テールゲートリフターは運送業務の全体的なコスト削減と効率化に大きく貢献するのです。
テールゲートリフターに関する労働安全衛生規則の改正内容と改正理由
続いては、テールゲートリフターに関する労働安全衛生規則の改正内容について解説します。
昇降設備の設置義務範囲が拡大
テールゲートリフターに関する労働安全衛生規則の改正内容の1つ目は、昇降設備の設置義務範囲の拡大です。
昇降設備の設置が義務付けられていた貨物自動車の範囲は、以前は「最大積載量5トン以上」でした。しかし、法改正により、「最大積載量2トン以上」の貨物自動車に範囲が拡大しました。
出典:貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落防止対策の充実に係る労働安全衛生規則等の一部改正のポイント|厚生労働省
保護帽の着用義務範囲が拡大
テールゲートリフターに関する労働安全衛生規則の改正内容の2つ目は、保護帽の着用義務範囲の拡大です。
昇降設備と同様に、以前は「最大積載量5トン以上」の貨物自動車に課せられていた保護帽の着用義務は、法改正により、「最大積載量2トン以上」の貨物自動車に範囲が拡大しました。
なお、保護帽の着用義務の拡大に関しては、荷台の側面が構造上開閉できるものなど、昇降設備が備えられている箇所以外で荷役作業が行われる可能性がある自動車や、テールゲートリフターが設置されている自動車に限ります。
出典:貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落防止対策の充実に係る労働安全衛生規則等の一部改正のポイント|厚生労働省
特別教育の義務化
テールゲートリフターに関する労働安全衛生規則の改正内容の3つ目は、特別教育の義務化です。
テールゲートリフターの操作には特定の知識と技術が必要なため、2024年2月1日より、テールゲートリフターを操作する際の特別教育が義務化されることになりました。
出典:貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落防止対策の充実に係る労働安全衛生規則等の一部改正のポイント|厚生労働省
関連記事:テールゲートリフターの特別教育の義務化はいつから?罰則は?
運転者が離れるときの措置の適用除外
テールゲートリフターに関する労働安全衛生規則の改正内容の4つ目は、運転者が離れるときの措置の適用除外です。
法改正以前は、運転者が自動車を離れる際は原動機の停止が義務付けられていました。
しかし、テールゲートリフターの中には、原動機停止の状態では操作することができない種類も存在することから、運転者が離れる際の原動機の停止義務は除外されました。
出典:貨物自動車における荷役作業時の墜落・転落防止対策の充実に係る労働安全衛生規則等の一部改正のポイント|厚生労働省
なぜ労働安全衛生規則の改正が必要なのか
令和2年度の統計によれば、テールゲートリフターに関連する労働災害は合計330件にのぼり、このうち60日以上の休業が必要な重大なケースが4割以上を占めています。さらに、これらの事故の中には死亡事故も含まれています。
特に、陸運業での墜落・転落事故に関する分析では、5t以上のトラック関連の事故が約50%、2t以上4t未満のトラック関連の事故が約40%を占めていることが明らかになりました。
これらの事故の中には、5t未満のトラックで保護帽の着用が義務付けられていなかったため、保護帽を着用していない状態での死亡事故が発生したケースもありました。
これらの事例が積み重なり、労働安全衛生規則の改正へと繋がったとされています。
テールゲートリフターの特別教育とは
続いては、テールゲートリフターの特別教育について解説します。
対象者
テールゲートリフターの特別教育の対象者は、テールゲートリフターを操作する作業に携わる労働者です。これには、以下のような職業の人々が含まれます。
- トラックドライバー
- 倉庫作業員や物流作業員
- 現場作業員
- 管理職や監督者
これらの対象者は、テールゲートリフターの特別教育が必要です。
教育内容
テールゲートリフターの特別教育では、安全かつ効率的な操作方法や関連する安全規則について学びます。主な教育内容は以下の通りです。
- テールゲートリフターの構造と原理
- テールゲートリフターの操作方法
- テールゲートリフターの安全管理・保守・点検
- テールゲートリフターの法規制とルール
- 操縦実習
教育を受ける場所
テールゲートリフターの特別教育を受ける場所は地域によって異なりますが、一般的には以下のような場所で提供されています。
- 運送会社の内部研修
- 外部の研修期間
- 専門の教習所
受講を検討している場合は、事前に各教育機関に問い合わせて、教育内容、スケジュール、費用などの詳細を確認することが重要です。
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テールゲートリフターとは?についてのまとめ
今回は、テールゲートリフターとは何かを解説しました。
今後、業務でテールゲートリフターを利用する可能性がある方は、本記事を参考にして、安全にテールゲートリフターを使用しましょう。
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