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運送会社の監査事情|運輸局による監査実施の流れと対処法

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運送会社の監査事情|運輸局による監査実施の流れと対処法

「運送会社の監査における巡回内容と対策方法を知りたい...」と考えている経営者の方も多いのではないでしょうか。

営業活動や従業員の管理など多くの業務をしていると、なかなか監査についてまで手が回りませんよね。

本記事では、普段忙しい経営者の方向けに運送会社が直面する監査の巡回内容から、対策方法までわかりやすく解説しています。

参考にして、監査への準備をしてみてください。

この記事のまとめ

  • 監査は国土交通省の地方運輸局が実施する
  • 巡回指導は適正化事業実施機関のトラック協会が実施する
  • 一般監査と特別監査でみられるポイントは異なる

運送事業者に対する監査の目的

運送事業者に対する監査の目的

運送事業者への監査は交通事故の減少や法令違反の防止、安全の保持を目的としておこなわれます。

具体的には、以下の事項が監査の対象です。

① 事業計画の遵守状況
② 運賃・料金の収受状況
③ 損害賠償責任保険(共済)の加入状況
④ 自家用自動車の利用、名義貸し行為の有無
⑤ 賃金の支払い状況
⑥ 運送引受書(写しを含む。)の作成・交付・保存状況
⑦ 運行管理の実施状況
⑧ 整備管理の実施状況

引用:国土交通省「一般貸切旅客自動車運送事業の監査方針について」

事業の各側面で法令を遵守し、上記に対して対策を徹底してみてください。

もし、違反した場合は、国土交通省「監査方針について」に記載されているように事業の停止や最悪の場合、刑事告発に発展するため注意が必要です。

出典:国土交通省「一般貸切旅客自動車運送事業の監査方針について」
出典:一般貸切旅客自動車運送事業の監査方針について|国土交通省

関連記事:運転者台帳の保存期間はいつまで?保管期間の管理と効率化する方法

運送事業者に対して監査が入る8つの理由

運送事業者に対して監査が入る8つの理由

運送事業者に対して監査が入る8つの理由は、以下のとおりです。

  • 運転者が悪質違反をした
  • 巡回指導を拒否した
  • 法令違反の疑いがある
  • 保険に加入していない
  • 最低賃金の支払いをしていない
  • 同じ理由の事故を3年間に3回以上起こしている
  • 呼出指導に応じない
  • 改善状況の報告を命じられている

それぞれ解説します。

運転者が悪質違反をした

運転者が悪質な違反をした場合は、運送事業者に対して監査が入るおそれがあります。

悪質な違反内容として、以下のようなものがあげられます。

  • 人身事故を起こした
  • 道路交通法や道路運送車両法などの法令を重大に違反した
  • 運送事業者として不適切な行為をした

上記のような違反は、交通事故や安全運行の妨げにつながる重大な問題です。

そのため、運輸局は、運転者の悪質な違反をおこなった運送事業者に対して、再発防止を図るために監査を実施します。

運送事業者は運転者の行動に対する管理と教育を徹底し、悪質な違反が発生しないように努めてみてください。

巡回指導を拒否した

運送事業者が巡回指導を拒否した場合、運輸局は運送事業者の法令遵守状況を把握できません。

そのため、安全運行の確保が困難になるため、臨店による監査をする必要がでてきます。

巡回指導を拒否したと見なされる行動としては、以下のようなものがあります。

  • 運輸局の職員が事業所を訪問した際に理由もなく応対を拒否した
  • 運輸局の職員が運行中の事業用自動車の検査を拒否した

巡回指導を拒否したと見なされないように、巡回が来る場合は拒否せず丁寧に対応してみてください。

法令違反の疑いがある

法令違反の疑いがある場合は、運送事業者に対する監査の実施理由となり得ます。

運送事業者は、道路交通法や道路運送車両法などの法令を遵守する義務があります。

法令違反による監査が実施される場面は、以下のとおりです。

  • 運転者が道路交通法違反で検挙された
  • 車両の安全装備が不十分な状態で運行されているのが確認された
  • 運行管理が不適切で安全運行ができていない

運送事業者は上記のような法令違反を起こさないように、社員教育の実施もおこないましょう。

保険に加入していない

運送事業者が保険に加入していない場合、運輸局は運送事業者の安全に対する意識の低さや事故の発生リスクの高さを懸念し監査を実施するでしょう。

監査が実施される状況は、以下のとおりです。

  • 巡回指導の際、保険に加入していないことが判明した
  • 事故を起こし保険に加入していないことが判明した

運送事業者が保険に加入していない場合は、事故が発生したときに多額の損害賠償を負う可能性があります。

上記のようなトラブルにならないためにも、運送事業者は必要な保険に加入し、事故や損害に備えておきましょう。

最低賃金の支払いをしていない

運送事業者が従業員に対して、最低賃金の支払いをしていない場合、監査対象となります。

法令により、運送事業者は従業員に対して最低賃金を支払わなければいけません。

たとえば以下のような状況のとき、監査の実施が考えられます。

  • 巡回指導の際、最低賃金を下回る給与が支払われていたのが発覚した
  • 運転者や従業員から最低賃金以下で働かされていると申告があった

最低賃金を支払っていない場合、従業員の生活が困窮するだけでなく、労働意欲の低下や安全運転の妨げにつながります。

そのため、運送事業者は従業員に対して法定の最低賃金を守り、監査に入られても問題ない環境作りをしてみてください。

同じ理由の事故を3年間に3回以上起こしている

運送事業者が同じ理由の事故を3年間に3回以上起こしている場合、運輸局は運送事業者の安全対策が不十分であると判断し、監査に踏み切るおそれがあります。

監査が実施される具体的な事例としては、以下のとおりです。

  • 積載物の落下事故を3年間に3回以上起こしている
  • 居眠り運転による事故を3年間に3回以上起こしている

運送事業者は事故原因の分析と改善措置の実施により、繰り返される事故のリスクを最小限に抑えられます。

上記のように事故が繰り返されるのは、運送事業者の安全管理体制や運転者への教育に問題があると見なされるため注意しておきましょう。

呼出指導に応じない

運送事業者が呼出指導に応じない場合、運送事業者の法令遵守への姿勢が不十分であると判断され監査を実施します。

たとえば、以下のようなときが考えられます。

  • 運輸局から呼出指導の通知が届いたのに運送事業者が無視した場合
  • 運輸局の職員が事業所を訪問しても事業者が対応しなかった場合

呼出指導は、運輸局が運送事業者の法令遵守状況を把握するためにおこなう重要な行政手続きです。

もし、呼出指導がある場合は、積極的に協力し運輸局とのコミュニケーションを取ってみてください。

改善状況の報告を命じられている

改善状況の報告を命じられているのに従っていない場合は、監査が実施されます。

報告をしていないと見なされる場面としては、以下のとおりです。

  • 運輸局の監査で法令違反が指摘され改善を命じられたが従わなかったとき
  • 事故を起こし改善を命じられたのに応じなかったとき

上記のように改善状況の報告を命じられた場合は、速やかに改善策を運輸局に報告するようにしましょう。

関連記事:運行管理で16時間超えた場合はどうなるの?対処法と特例について

一般監査と特別監査でみられるポイントは異なる

一般監査と特別監査でみられるポイントは異なる

一般監査と特別監査では、監査の目的や対象が異なるため、みられるポイントが異なります。

異なるポイントは、以下のとおりです。

  一般監査 特別監査
目的 ・通常の運営が法令や安全基準に遵守しているかの確認する ・特定の事故や法令違反が疑われる場合の詳細な調査をする

上記のように一般監査は、運送事業の日常運営が法令や安全基準に遵守しているかを確認するために実施されます。

一方、特別監査は特定の事故や法令違反が疑われる場合に実施され、より厳格で詳細な調査をします。

運送事業者は一般監査と特別監査の違いを理解し、それぞれの監査に適した対策を講じるようにしましょう。

運送事業者の監査でみられる重点項目

運送事業者の監査でみられる重点項目

運送事業者の監査でみられる重点項目は、以下のとおりです。

  • 運送事業許可の条件を守っているか
  • 運行管理は適正な内容で実施されているか
  • 車両の整備や管理は適正におこなわれているか
  • 運転者の安全教育は定期的に実施されているか
  • 車両の整備は定期的に実施されて管理できているか
  • 賃金は適正な料金が支払われているか
  • 社会保険には加入しているか
  • 名義貸し行為の有無はあるか
  • 損害賠償責任保険(共済)の加入はしているか
  • 運賃・料金の収受は適切におこなわれているか

上記の内容が監査での重点項目としてみられますが、この中でとくに気をつけておかなければいけない項目は以下の3点です。

  • 名義貸し行為の有無はあるか
  • 運行管理は適正な内容で実施されているか
  • 車両の整備や管理は適正におこなわれているか

上記の項目に関しては処分を受けた場合、一発で30日間の営業停止となる重い違反になるため注意しておきましょう。

運送事業者に対して監査がおこなわれる場所

運送事業者に対して監査がおこなわれる場所

運送事業者に対して監査がおこなわれる場所は、以下のとおりです。

  • 臨店
  • 呼出
  • 街頭

詳しく解説します。

臨店

臨店による監査は、運輸局の職員が法令違反の疑いがある運送事業者の営業所に訪問して、法令遵守の確認をします。

国土交通省「1.自動車運送事業(貸切除く。)監査方針」では、以下のように定義されています。

① 臨店による監査(事業者の営業所その他の事業場又は事業用自動車の所在する場所に立ち入って実施するもの

引用:国土交通省「1.自動車運送事業(貸切除く。)監査方針」

この監査は事業者の業務管理や安全対策、整備記録など、運送業務の全般にわたる項目を対象としています。

呼出

呼出による監査は運送事業者が運輸支局に出向いて、運送事業の適切な運営がおこなわれているか確認します。

呼出による監査に関して、国土交通省「1.自動車運送事業(貸切除く。)監査方針」の資料には以下が記載されています。

② 呼出による監査(当該事業者の代表者若しくはこれに準ずる者又は運行管理者等事業運営の責任者(以下「代表者等」という。)を地方運輸局又は運輸支局等へ呼び出して実施するもの)

引用:国土交通省「1.自動車運送事業(貸切除く。)監査方針」

なお、行政処分を受けたあとの改善確認は呼出監査として対応されます。

街頭

街頭による監査は、運行中の事業用自動車を対象として、法令遵守状況の確認をおこなう監査です。

街頭による監査に関しては、国土交通省「1.自動車運送事業(貸切除く。)監査方針」に以下のように述べられています。

③ 街頭監査(事業用自動車の所在する場所へ立ち入って実施するものであって、バスに係る発着場等街頭において実施するもの)

引用:国土交通省「1.自動車運送事業(貸切除く。)監査方針」

街頭による監査は、事業用自動車の所在する場所へ立ち入って実施されます。

バスに係る発着場の街頭において実施されるケースが多いようです。

よく間違える監査と巡回指導の違い

よく間違える監査と巡回指導の違い

運送事業者に対する内容は、監査と巡回指導にわかれており、違いがあまりわからない方も多いのではないでしょうか。

「目的・方法・対象」別の違いを以下の表に記載しているので、参考にしてみてください。

  監査 巡回指導
目的 ・法律やルールが遵守されているかの確認をする ・運送事業の運営が適切におこなわれているかの確認をする
実施期間 ・不定期 ・定期的
事前連絡 ・事前の予告なしに実施する ・事前の予告にもとづいて実施する(2〜3週間前)
行政処分 ・行政処分に直結する可能性がある ・行政処分には直結しない
機関 ・国土交通省(地方運輸局) ・適正化事業実施機関

詳しい監査と巡回指導については、以下より解説していきます。

監査

監査は国土交通省(地方運輸局の職員)が、運送事業者の法令遵守状況を総合的に確認するためにおこないます。

国土交通省によると監査は「安全・安心な事業運営を形成するために実施」すると記載されています。

事故の未然防止及び法令遵守の徹底を図ることを目的として、効果的に実施するよう努めるものとする。

引用:一般貸切旅客自動車運送事業の監査方針について|国土交通省

監査の実施方法としては、国土交通省(地方運輸局の職員)が事前予告なしで運送事業所を訪問し、事故情報や運送に関する業務内容をもとに監査を実施します。

そのため、運送事業者は監査の準備として、事故報告や運送記録、整備記録などの文書は常に整理しておきましょう。

適切な対策を事前に講じておくことにより、監査での問題発生を防げます。

巡回指導

運送会社の巡回指導は、国土交通省の指定を受けた適正化事業実施機関(トラック協会)が実施します。

巡回指導の目的は、運送事業者の法令遵守体制が整っているかの確認です。

もし、巡回指導中に改善事項があった場合は、改善報告書の提出を求められます。

改善報告書を提出していなかったときは、運輸支局に報告され、監査の対象となるおそれもあるため注意が必要です。

また、巡回指導では以下の内容を中心的にチェックします。

  • 事業計画の適正性
  • 車両の整備・管理の適正性
  • 運転者の安全教育の実施状況

巡回指導は、通常2〜3年の間で実施されるため、日頃から不備がないように対策しておきましょう。

運送事業者に対する監査の種類

運送事業者に対する監査の種類運送事業者に対する監査の種類は、以下の表のとおり3種類あります。

監査の種類 特徴
特別監査

・重大事故や違反を起こした場合に実施される
・法令遵守状況を厳しく確認する

一般監査 ・特別監査に該当しない事業者を対象に実施される
・運送事業の一般的な法令遵守状況を確認する
街頭監査 ・選ばれた事業用自動車を街頭で実施される
・運行実態の状況を確認する

監査の種類について以下より、ひとつずつ解説していきます。

特別監査

特別監査は事故の発生や法令違反の疑いがあるなど、法令への遵守状況がとくに問題視される運送事業者に対して実施される監査です。

国土交通省「自動車運送事業者に対する監査」によると、以下のような場合特別監査が実施されます。

事業用自動車の運転者が、第一当事者と推定される死亡事故及び酒酔い運転者等の悪質違反を伴う事故など、社会的影響の大きい事故を起こした事業者や悪質違反を犯した事業者等に対し行われます。

また、監査の実施により、行政処分(口頭注意、勧告、警告、自動車等の使用停止処分若しくは事業の停止処分等)を受け、事業の改善についての出頭及び改善の状況の報告を命じられた事業者であって、出頭を拒否した者、改善報告を行わない者、または報告内容が履行されず事業の改善が認められない場合についても実施しています。

引用:国土交通省「自動車運送事業者に対する監査」

特別監査は巡回指導で指摘を受け改善されなかったり、拒否したりした場合も対象になるため注意しておきましょう。

一般監査

一般監査は全運送事業者を対象として、法令が遵守されているか総合的な確認をする監査です。

国土交通省では、以下のように定義されています。

特別監査に該当しないものであって、3.に掲げる監査を実施する端緒(以下「監査端緒」という。)に応じた重点事項を定めて法令遵守状況を確認する監査を一般監
査とする。

引用:一般貸切旅客自動車運送事業の監査方針について|国土交通省

ただし、一般監査でさらに詳しく業務調査が必要とされたときは、特別監査に切り替わる可能性があります。

街頭監査

街頭監査は公共の場で、事業用自動車の運行実態を目的とした監査です。

この監査は運輸局が場所を選ばず実施し、運行中に法令が遵守されているか確認します。

国土交通省「街頭監査」の資料からは、以下のように記載されています。

街頭監査において、緊急を要する重要な事項以外の法令違反が確認された場合でも、その場で実施・改善が確認できない場合は、運行を中止させる。

引用:国土交通省「街頭監査」

街頭監査は、いわゆる抜き打ちチェックになるため、日頃から管理の不備を無くしておきましょう。

ただし、街頭監査はバス運行の事業がメインでおこなわれるため、そのほかの運送事業者は「特別監査・一般監査」に重点を置くようにしてみてください。

運送事業者の監査におけるよくある質問

運送事業者の監査におけるよくある質問

運送事業者の監査におけるよくある質問を、3つ厳選しました。

  • 名義貸し行為の有無はあるか
  • 運行管理は適正な内容で実施されているか
  • 車両の整備や管理は適正におこなわれているか

監査について細かく知りたい人は、最後まで読んでみてください。

運輸局からの抜き打ちの監査内容はどのようなものがありますか?

運輸局による抜き打ちの監査は、運送事業者の法令遵守と安全基準の厳格な評価を目的としています。

監査内容としては、運送事業者の監査でみられる重点項目に記載している車両の整備状態や運転記録などがチェックされます。

抜き打ちの監査に対応するためにも、法令を遵守し安全管理の体制は常に整えておきましょう。

運送会社の監査は何年ごとにおこなわれますか?

運輸開始届出書を提出したあと、1ヶ月から3ヶ月以内に適正化事業実施機関(トラック協会)の巡回指導が実施されます。

その後、巡回指導の評価により頻度は異なりますが、2年に一度監査の実施がされることが多いようです。

そのため、運送事業者は監査に備えて常に法令を遵守し、管理体制を整えておきましょう。

運輸局からの監査処分の内容はどのようなものがありますか?

運輸局からの監査処分には、主に以下の3種類があります。

処分の種類 内容
行政指導 ・口頭による注意や文書による勧告と警告
行政処分 ・事業の一部または全部の停止、許可の取り消し
刑事罰 ・違反行為に対する法的な罰則(罰金や懲役)

行政指導の場合は注意のみですが、状況によって行政処分や刑事罰にもつながるおそれがあるため注意しておいてください。

運送事業者の監査についてのまとめ

運送事業者の監査についてのまとめ

運送会社の監査には監査と巡回指導があり、それぞれ異なる役割を持っています。

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この記事を書いたライター

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高坂 勇介

工業高校で電気技術・機械制御・自動車工学を専攻。卒業後、複数業種を経験したのち、大手プラントメーカーで非破壊検査、造船メーカーで品質・工程管理に従事。物流業者への発注業務も多数経験。現在は製造・建設業界で培った12年の知識と経験を活かし、転職専門ライターとして活動中。

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