法定点検は、道路運送車両法で定められた点検であり、運転手が定期的に行わなければならない整備の1つです。
車検と同じに捉えている人もいますが、全くの別物です。
車検は、車両が保安基準に適合しているか検査するのに対し、法定点検では故障しそうな箇所がないかの点検を行います。
自家用車の法定点検は、法律で義務化されているものの罰則がないため、実施が疎かになっている人も少なくありません。
しかし、事業用車両となるとそうはいきません。
今回は、事業用車両の法定点検の費用や実施方法、点検をしないとどうなるのかなどを解説します。
自家用車に関する法定点検についても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【この記事でわかること】 ・法定点検をしないとどうなるのか ・法定点検をしないデメリット ・法定点検の種類について ・法定点検の実施方法や依頼先について ・法定点検に関するよくある質問 |
法定点検とは?しないとどうなる?
法定点検は義務化されているものの、罰則はありません。
ただし、事業用車両であるタクシー・トラック・バスなどの場合は別です。
事業用車両の法定点検は義務化されており、実施しなかった場合は「道路運送車両法違反110条」に該当し、30万円以下の罰金となります。
法定点検の期限はいつまで?
法定点検は、自家用車と事業用車両によって、具体的な点検時期が定められています。
ただし、あくまでも目安であり明確な期限は定められていません。
そのため、点検時期の1ヶ月前後に行うことが一般的とされています。
早すぎたり遅すぎたりすると、本来の目的からズレてしまうため、なるべく1ヶ月前後を目安としましょう。
関連記事:車両の法定点検とは?車検との違いや義務内容についての疑問を解説!
法定点検しない割合は?
自家用車の法定点検の場合、義務化されているものの罰則がないことから、実施していない人も少なくありません。
マクロミルと自動車点検整備推進協議会がアンケート調査を実施した結果、以下のような内容でした。
年度 | 全く実施していない | 車検の時だけ実施している | 必ず実施している |
2022年 | 9% | 44.3% | 46.7% |
2021年 | 9.3% | 44.9% | 45.8% |
2020年 | 13.1% | 40.3% | 46.6% |
必ず定められたタイミングで法定点検を実施しているのは、全体の約半数程であることが分かります。
ちなみに「なぜ法定点検を毎回実施しないのか」という質問に対しては、以下のような解答がありました。
【法定点検を毎回実施しない理由】
- 面倒だから:41.9%
- お金がかかるから:35.5%
- 車検を受けているから:31.2%
- 時間がないから:12.9%
- 日常点検をしているから:5.4%
- 新車で購入して間もないから:5.4%
※2022年の調査結果となります。
「2年に一度車検を受けているし、面倒でお金がかかるから」と考えている人が多いことが分かります。
事業用車両の場合は罰則もありリスクも大きいため、ほぼ全ての車両で実施されていると推測されます。
ちなみに、具体的な詳細については記載がないものの、令和2年の交通違反取締りにおける「整備不良車運転」の件数は24,344件でした。
参照:自動車点検整備推進協議会
参考:道路交通秩序の維持|内閣府
関連記事:法定点検は義務なの?重要性と車検との違いも徹底解説
法定点検しない3つのデメリット
法定点検は、車検だけでは補えない車両の不備を見つける大切な点検です。
自家用車の場合、罰則はないものの法定点検を実施しないまま乗り続けると、さまざまなデメリットがあります。
・整備不良で突然故障するリスクがある
・故障したとき車検費用よりも修理費があがる可能性がある
・車両の売却時に査定額が下がりやすい
事業用車両の場合は、車両の運転時間が長く多くの乗客を乗せるため、よりリスクが高いと言えます。
ここでは、法定点検を実施しない3つのデメリットについて、詳しく解説していきます。
整備不良で突然故障するリスクがある
車は走行距離が伸びるほど、さまざまなパーツが劣化していきます。
安全性に配慮して造られているため、いきなり故障することは稀であるものの、ひび割れや異音など何かしらの異常が現れ始めます。
法定点検を行っていれば、些細な異常に気付けるため、未然の対策が可能です。
一方で、法定点検を行っていなかった場合は、これらの異常に気付けないため急に故障してしまうリスクが高まり非常に危険です。
故障したとき車検費用よりも修理費があがる可能性がある
大きな故障を前に、何かしらの異常に気付いた場合、一定の箇所だけの対策で済むことが多く、修理費用は低く抑えられます。
一方で、法定点検を行わないまま故障してしまった場合、関連の部品全てを交換しなければならず、修理費用が高額になってしまいます。
また、故障が原因で事故を引き起こした場合、故障した箇所以外の部分も修理しなければならず、廃車となる可能性もゼロではありません。
「整備不良車運転」の交通違反となり、罰則を受ける可能性も十分あり得ます。
車両の売却時に査定額が下がりやすい
法定点検をしないまま乗り続けると、各パーツの劣化が早まるため、売却時の査定額にも影響があります。
パーツが酷く劣化している場合、修理してから販売しなければならないからです。
この他にも、新車などで故障に関する保証がついている場合、適用となる条件に「法定点検の実施」が定められていることがあります。
定期的な点検を行わずに故障した結果、保証を受けられない可能性もあります。
このように、法定点検を実施しないデメリットは多いため、必ず実施するようにしましょう。
関連記事:法定点検を受けないデメリットは?車検との違いまで説明
法定点検は4種類ある
最適な点検のタイミングは、車両のサイズや利用目的によって異なります。
そのため、自家用車やトラック、事業用車両ごとで4つの法定点検が存在します。
ここでは、各法定点検の内容や対象車両について、詳しく解説していきますので、どれに該当するのかチェックしてみましょう。
3ヶ月点検
法定3ヶ月点検は、タクシーやバス、トラックといった事業用車両が対象の点検です。
点検項目は47項目となり、けん引車両の場合は20項目です。
事業用車両の場合、実施しなければ法律違反となり30万円以下の罰金が科せられることとなります。
費用に関しては小型車両で1万円前後、中型トラックで15,000円前後、大型トラックで2万円前後となります。
6ヶ月点検
法定6ヶ月点検は、自家用の小型・中型トラックやレンタカー(乗用車)が対象の点検です。
自家用車よりも走行距離が長く安いことから、一般車両よりも早めの時期で設定されています。
点検項目は22項目となり、費用は1万円前後となります。
12ヵ月点検(1年点検)
自家用車が、初めに受けることとなるのが12ヶ月点検(法定1年点検)です。
点検項目は26項目あり、具体的には以下のような箇所のチェックを行います。
- ブレーキ
- 駐車ブレーキ機構
- ペダル
- パワーステアリング装置
- ホイール
- 各種パイプやホース
- ランスミッション
- 点火装置など
点検に掛かる時間は2~3時間ほどであり、費用は1~3万円が相場となります。
24ヶ月点検(2年点検)
自家用車に定められている、法定点検の2つ目が24ヶ月点検(法定2年点検)です。
走行距離が伸びている分、1年点検よりも検査項目が増えて56箇所の点検を行います。
新たに加わる項目としては、使用し続けていくうちに発生する損傷や摩耗をチェックするものとなります。
この頃になると、使用頻度によっては交換が必要なパーツも増えるため、費用は2~5万円程です。
法定点検は自分で可能?
法定点検は自分で行うことも可能です。
ただし、点検項目が多く普段見慣れていないような、エンジンルーム内部の装置もチェックしなければなりません。
最低限の整備に関する知識がなければ、些細な異常に気付くのは難しいと言えるでしょう。
また、承認を受けている業者で点検を実施した場合、ダイヤルステッカーが支給されますが、自分で行った場合には支給されません。
法定点検はどこでおこなうのがおすすめ?
法定点検は自分でできると解説しましたが、業者に依頼するのが一般的です。
法定点検をお願いできる業者は以下の通りです。
・ディーラー
・指定・認定の整備工場
・車検専門店
・ガソリンスタンド
各業者の法定点検サービスについて、解説していきます。
ディーラー
法定点検は車を購入したディーラーに依頼できます。
車両について熟知した、経験豊富な整備士が在籍しており、高品質な点検を受けられることが特徴となります。
具体的なサービス内容は、ディーラーによって異なりますが、規定の項目とは別に独自のタイミングで点検を行っていることもあります。
費用に関しては、消耗品の劣化具合にもよりますが、1〜2万円が相場となります。
指定・認定整備工場
国からの認定を受けている整備工場も、経験豊富な整備士が在籍しており、高品質な法定点検が受けられることが特徴です。
ディーラーと比べて費用も比較的安く、法定点検以外でも気になる症状があれば、一緒に相談できます。
ダイヤルステッカーによる、点検整備の証明が必要という人におすすめです。
車検専門店
車検専門店やカーショップでも法定点検を受けられます。
整備工場やディーラーと比べて費用が安く、オートバックスといったカーショップでは、同時にオイル交換やタイヤ交換もできます。
関連商品の品揃えも豊富であり、法定点検と別のことを依頼したいような人におすすめです。
全てのお店でもらえるわけではないものの、点検済みステッカーの発行も行っています。
ガソリンスタンド
ガソリンスタンドでも法定点検を行っています。
費用も安く、簡単な点検であれば無料で行っているようなお店もあります。
整備士など車の構造を熟知しているスタッフは少ないため、新車など比較的劣化が少ない車の法定点検におすすめです。
法定点検に関するよくある質問
最後は法定点検に関する、3つのよくある質問に答えていきます。
・法定12ヶ月点検を過ぎたらどうしたらいいですか?
・法定点検と車検の違いは何ですか?
・新車の場合だと1年点検を受けなくて大丈夫ですか?
法定点検と車検との違いや、実施の必要性に関する内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。
法定12ヶ月点検を過ぎたらどうしたらいいですか?
法定点検は3ヶ月や12ヶ月などタイミングが決められているものの、車検のように明確な期日は決められていません。
そのため、以前に案内された法定点検期限を多少過ぎていたとしても、問題なく点検を受けられます。
特別な申請や追加料金はなく、いつも通りの方法で点検を依頼しましょう。
ただし、新車などの修理保証条件として法定点検が定められている場合、保証の対象から外れてしまう可能性があるため、注意が必要です。
法定点検と車検の違いは何ですか?
法定点検と車検の違いは検査の内容や目的が異なります。
車検は、車両が保安基準に適合しているかの検査となり、法定点検は車両の異常や劣化をチェックする作業となります。
また、罰則やその他のルールにも違いがあるため、注意が必要です。
車検は必ず指定の期限内に実施しなければならず、車検切れの車は運転できません。
法定点検は、義務化されていますが、実施していなかったとしても罰則はありません。
ただし、事業用車両の法定点検に関しては、受けなかった場合、道路運送車両法違反となります。
新車の場合だと1年点検を受けなくて大丈夫ですか?
新車で購入した場合も、法定1年点検は行わなければなりません。
走行距離や使用頻度が多くない場合でも、1年点検は使用者の義務となります。
ほとんど使用しておらず各種パーツの劣化が考えにくい場合には、1年点検だけ自分で行っても問題ありません。
ただし、故障に関する保証が切れる可能性があるため、注意が必要です。
法定点検についてのまとめ
法定点検は車検と異なり、パーツの劣化や異常をチェックした上で事故や故障を未然に防ぐことが目的となります。
多少の費用はかかりますが、車の故障を防ぐのはもちろん、長く乗り続ける上で欠かせない点検です。
法定点検は、車のサイズや使用用途によって期間やルールが異なり、乗用車の場合には実施していなかったとしても罰則の対象とはなりません。
一方で、バスやトラックといった事業用車両に関しては、点検期間が短めに設定されており、実施しなかった場合には30万円以下の罰金となります。
大きな事故を未然に防げる大切な点検となるため、必ず実施するようにしましょう。
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