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車両の法定点検とは?車検との違いや義務内容についての疑問を解説!

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車両の法定点検とは?車検との違いや義務内容についての疑問を解説

道路運送車両法で定められた「法定点検」は、交通安全と車両性能の維持において重要な役割を果たします。

では、実際の法定点検はどのような点検なのでしょうか?

本記事では、法定点検の内容、車検との違い、必要な費用などについて解説します。

法定点検とは?

点検

車両の法定点検は、交通安全と車両の適正な維持管理を目的として、道路運送車両法によって定められた定期的な車両検査です。

法定点検では、自動車やトラックなどの車両が安全に走行するために必要な要素をチェックし、必要に応じて修理や調整を行います。点検の項目には、ブレーキの効き、ヘッドライトやウィンカーの機能、タイヤの状態、排気ガスの状況など、安全運転に直結する多くの重要なチェックポイントが含まれます。

また、法定点検は車両の長期的な保全にも寄与し、トラブルの早期発見や修理によって、結果的に経済的なメリットにもつながるのです。

法定点検と車検との違いは?

点検

法定点検と車検は同じものとして認識されることもありますが、その実態はかなり異なります。

法定点検は、車がスムーズかつトラブルなく運行できる状態かどうかを確認するためのものです。一方、車検は、車が道路運送車両法に基づく保安基準に適合しているかを調べる制度で、これは厳密には点検ではなく検査にあたります。

例えば、「エアクリーナーエレメントの状態」は法定1年点検の対象になります。エアクリーナーエレメントが詰まると、エンジンが必要な空気を吸入できず、アイドリングの不安定や不完全燃焼が起こり得るため、燃費効率が悪化する恐れがあります。しかし、車検では排気ガスの検査は行いますが、エアクリーナーエレメントの状態や吸気状態のチェックは含まれません。

このように、車本来の快適な走行性能を維持するためには、車検だけでなく、法定点検や日常のメンテナンスが重要となるのです。

法定点検をしなかった場合の罰則や罰金はあるの?

トラック

法定点検は、道路運送車両法で定められた義務ですが、この点検を受けなかった場合の直接的な罰則は設けられていません。一般的に、法定点検は12ヶ月ごとに実施されることが多く、24ヶ月ごとの点検は通常、車検と同時に行われます。

車検に加えて法定点検が必要とされる理由は、車検が車の保安基準を満たすことを確認するためです。その一方で、ブレーキパッドの摩耗度合いや、経年変化や走行距離による性能の低下など、車個々の細かな状態のチェックは車検だけでは不十分だからです。

さらに、多くのメーカー保証は12ヶ月点検を行うことを前提としているため、点検を行わないことで故障や不具合が発生するリスクもあります。特に、バスやトラックなどの事業用車両においては、点検を怠ると罰金や運行停止命令などの罰則を受ける可能性があるため、注意が必要です。

関連記事:法定点検しないとどうなる?法律違反や罰金に繋がらない?

法定点検の種類と内容について

点検

続いては、法定点検の種類と内容を解説します。法定点検は下記の4種類に分けられます。

  • 法定12ヶ月点検(法定1年点検)
  • 法定24ヶ月点検(法定2年点検)
  • 法定3ヶ月点検
  • 法定6ヶ月点検

では、一つずつ解説します。

法定12ヶ月点検(法定1年点検)

法定12ヶ月点検では、エンジンからブレーキの効き具合まで総合的に点検を行います。対象車種は以下の通りです。

  • 自家用車(軽自動車含む)
  • 中小型トラック(自家用)、レンタカー(乗用車)
  • バス・トラック・タクシー(事業用)
  • 大型トラック(自家用)、レンタカー(乗用車以外)

なお、自家用車(軽自動車含む)の場合の点検項目は下記の通りです。

検査項目内容
かじ取り装置(ステアリング)
  • パワーステアリング装置(ベルトの緩み・損傷)
制動装置(ブレーキ)
  • ブレーキ・ペダル(遊び、踏み込んだときの床板とのすき間、ブレーキの効き具合)
  • 駐車ブレーキ機構(引きしろ、ブレーキの効き具合)
  • ホース及びパイプ(漏れ、損傷、取付状態)
  • マスタ・シリンダ、ホイール・シリンダ、ディスク・キャリパ(液漏れ)
  • ブレーキ・ドラム、ブレーキ・シュー(ドラムとライニングとのすき間、シューの摺動部分及びライニングの摩耗)
  • ブレーキ・ディスク及びパッド(ディスクとパッドとのすき間、パッドの消耗)
走行装置
  • ホイール(タイヤの状態、ホイール・ナット及びホイール・ボルトの緩み)
動力装置
  • クラッチ(ペダルの遊び、切れた時の床板とのすき間)
  • トランスミッション・トランスファー(オイル漏れ、オイル量)
  • プロペラ・シャフト、ドライブ・シャフト(連結部の緩み)
電気装置
  • 点火装置(点火プラグの状態、点火時期、ディストリビュータのキャップの状態)
  • バッテリ(ターミナル部の接続状態)
原動機(エンジン)
  • 本体(排気の状態、エア・クリーナー・エレメントの状態)
  • 潤滑装置(オイル漏れ)
  • 冷却装置(ファン・ベルトの緩みと損傷、水漏れ)
エグゾースト・パイプとマフラー
  • 取付けの緩みと損傷
その他
  • 車載式故障診断装置の診断の結果

出典:自動車の点検及び整備に関する手引|国土交通省

法定24ヶ月点検(法定2年点検)

24ヶ月点検は自家用車(軽自動車含む)のみが対象の点検で、12ヶ月点検の項目に加えた点検が行われます。24ヶ月点検の項目は以下の通りです。

検査項目内容
かじ取り装置(ステアリング)
  • ハンドル(操作具合)
  • ギヤ・ボックス(取付の緩み)
  • ロッド、アーム類(緩み、がた、損傷、ボール・ジョイントのダスト・ブーツの亀裂と損傷)
  • かじ取り車輪(ホイール・アライメント)
  • パワーステアリング装置(オイル漏れ、オイル量、取付の緩み)
  • マスタ・シリンダ、ホイール・シリンダ、ディスク・キャリパ(機能、摩耗、損傷)
  • ブレーキ・ドラム、ブレーキ・シュー(ドラムの摩耗及び損傷)
  • ブレーキ・ディスク及びパッド(ディスクの摩耗及び損傷)
走行装置
  • ホイール(フロント・ホイール・ベアリングのがた、リヤ・ホイール・ベアリングのがた)
緩衝装置
  • サスペンションの取付部と連結部(緩み、がた、損傷)
  • ショック・アブソーバ(油漏れ及び損傷)
動力装置
  • プロペラ・シャフト、ドライブ・シャフト(ユニバーサル・ジョイントのダスト・ブーツの亀裂と損傷)
  • デファレンシャル(オイル漏れ、オイル量)
電気装置
  • 電気配線(接続部の緩み及び損傷)
原動機(エンジン)
  • 燃料装置(燃料漏れ)
ばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の発散防止装置
  • ブローバイ・ガス還元装置(メターリング・バルブの状態、配管の損傷)
  • 燃料蒸発ガス排出抑止装置(配管等の損傷、チャコール・キャニスタの詰まりと損傷、チェック・バルブの機能)
  • 一酸化炭素等発生防止装置(触媒反応方式等排出ガス減少装置の取付の緩みと損傷、二次元空気供給装置の機能、排気ガス再循環装置の機能、減速時排気ガス減少装置の機能、配管の損傷取付状態)
エグゾースト・パイプとマフラーマフラーの機能
車枠(フレーム)、車体(ボディー)緩み及び損傷

出典:自動車の点検及び整備に関する手引|国土交通省

法定3ヶ月点検

法定3ヶ月点検は、バスやトラックなどの事業用車両に必須の措置であり、これらの車両の維持管理を行う整備管理者は、整備管理規程を策定し、その規程に従って業務を実施することが義務付けられています。

万が一、法定3ヶ月点検をせず、整備管理者制度に違反した場合、道路運送車両法の第110条に違反し、最大30万円の罰金が科される可能性があります。

法定6ヶ月点検

法定6ヶ月点検は、自家用の中小型トラック、レンタカーに義務づけられています。

これらの車両は、その大きな車体のために事故の際の被害が大きくなりがちです。これが、一般の乗用車と事業用車両との法定点検の頻度に差がある理由です。

自家用車に比べて点検の間隔が短いのは、安全性と社会的責任を考慮した結果なのです。

法定点検にかかる費用は?

点検

まずは、12ヶ月法定点検にかかる費用を解説します。

車種 12か月法定点検の費用目安
軽自動車9,000〜13,000円
自家用乗用車(1.0~1.5L)10,000〜16,000円
自家用乗用車(1.5~2.0L)11,000〜18,000円
自家用乗用車(2.0~2.5L)12,000〜20,000円
自家用乗用車(2.5~3.0L)13,000〜22,000円

出典:平成27年度国産自動車点検・整備料金実態調査|一般社団法人日本自動車整備振興会連合

12ヶ月法定点検にかかる費用は車種によって異なりますが、おおむね1万~2万円程度で実施可能です。

一方、24ヶ月の法定点検は車検と同じタイミングで実施されるため、車検費用としてまとめて請求されるのが一般的です。24ヶ月法定点検と車検を合算した費用は、7〜10万円ほどが相場です。24ヶ月法定点検は12ヶ月点検よりも検査項目が56項目に増え、より細かな点検を実施するので、費用が高くなります。

部品交換などが必要であれば、部品代や交換代も加算されることとなります。

関連記事:法定点検の費用はいくらかかるの?費用相場と安くするコツを説明

法定点検が受けられる場所は?

点検

車両の法定点検を受けることができる場所は、いくつか存在します。

最も一般的なのは、正規の自動車ディーラーや認定自動車整備工場です。これらの施設では、専門の技術者が車両の状態を詳細にチェックし、必要な整備を行います。

また、一部のガソリンスタンドや自動車用品店でも、限られた範囲で点検サービスを提供している場合があります。さらに、大型車両や特殊な機能を持つ車両の場合は、特定の点検を専門とする工場を選ぶこともできます。

どの場所を選ぶにしても、法定点検を適切に行って安全な運転を維持することが重要です。

法定点検の3つの必要性

点検

続いては、法定点検の必要性を3つ紹介します。法定点検の必要性は以下の3つです。

  • 車両のトラブルを未然に防げる
  • 故障時に保証が受けられる場合がある
  • 事故したときの責任が軽減される場合がある

では、一つずつ解説します。

車両のトラブルを未然に防げる

法定点検の必要性の1つ目は、車両のトラブルを未然に防げることです。

車は日常的に使用することで徐々に部品が摩耗したり、性能が低下したりします。法定点検を行って車の重要な部分を徹底的にチェックすることで、小さな不具合が大きな事故や故障につながるのを事前に防ぐことが可能になります。

したがって、法定点検は単なる義務ではなく、安全運転を継続するための重要なプロセスと言えるのです。

故障時に保証が受けられる場合がある

法定点検の必要性の2つ目は、故障時に保証が受けられる場合があることです。

多くの車両保証や延長保証プランでは、定期的な点検やメンテナンスを条件としています。これは、定期的な点検によって車両の状態が適切に維持され、故障リスクが最小限に抑えられると考えられるためです。

したがって、法定点検を定期的に受けることで、万が一の故障が発生した際に保証を適用しやすくなり、結果として修理費用の節約につながる可能性があります。

このように、法定点検は車の安全性を保つだけでなく、経済的な利点も提供する重要なプロセスなのです。

事故したときの責任が軽減される場合がある

法定点検の必要性の3つ目は、事故時の責任が軽減される場合があることです。

法定点検を定期的に実施することは、車両や機械が常に最適な状態に保たれていることを保証するものです。万が一、事故が発生した場合においても、法定点検を適切に行っていたことが証明されれば、その事故が機械の不備によるものでないことが明らかになります。

これにより、事故に関連する責任の所在を評価する際に、点検を怠っていないという事実が重要な要素となり得るのです。

したがって、法定点検は単に安全基準を満たすためだけでなく、万一の事故における法的な責任を軽減するためにも極めて重要なプロセスと言えるでしょう。

関連記事:法定点検は義務なの?重要性と車検との違いも徹底解説

まとめ

トラック

今回は、車両の法定点検について解説しました。

車両の法定点検を受ける必要がある方は、本記事を参考にして、スムーズな車両点検を行えるようにしましょう。

関連記事:法定点検を受けないデメリットは?車検との違いまで説明

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