最近になり製造業や小売業において生産管理職が大きく注目されています。システムや管理工程が整っているはずの今、なぜ改めて重要視されているのでしょうか。
今回はその理由や生産管理職の具体的な仕事内容、大変さややりがいについて詳しく説明していきます。
他にも未経験から転職したり、キャリアアップを図る上で有利な資格なども紹介していくので、生産管理業務への転職などを考えている方は参考にしてみてください。
生産管理とは
製造業や小売業など、作る商品は関係なく需要に応じて生産されます。
ですが、作れば作るほど売れるとは限らず、需要と供給のバランスが取れていない場合、過剰在庫の原因となります。
また、商品によって売れる時期やタイミングが異なるため、需要を把握していないと生産が追い付かなかったり、原材料が足りず製造できない可能性もあります。
そのようなことを防ぐために、各工程ごとで事前に計画を立て発案から生産、販売、運用までを効率よくシステム管理することの総称が生産管理となります。
管理するのはモノや人、スケジュールと様々で会社の利益を確保する上で最も重要と言っても過言ではないポジションです。
生産管理の仕事内容とは
生産管理と言っても、発案から在庫品の管理までその内容は多岐にわたります。今回は製造業を例に、工程ごとの生産管理内容を解説していきます。
・発案と需要予測
会社で新商品を作成する場合、まず初めに行うのが需要の予測です。
類似品や関連商品の売れ行き、市場全体の規模を把握したうえで、どれくらい売れるのかを見極めます。
必要な生産数に応じて、次工程の生産管理が始まります。
・生産計画
必要な生産数が決まると、その量を作るために必要な原材料や人員、設備の数などを計算していきます。
季節によって販売数が大きく異なる場合、閑散期と繁忙期ごとにその生産管理を行います。
・原材料の調達計画
生産数に応じた原材料が決まったら、その仕入れについて詳しく決めていきます。
特に製造業の場合、自社で製造する部品もあれば外注先に委託することも当たり前にあります。
外注先が生産計画に応じた量を作ることが可能なのか、必要な時期までに生産ラインへ供給できるのか、コストの把握もしなければなりません。
仮に生産可能であっても、原価が割に合わない場合は自社での製造や他社への委託変更など、様々な視点から生産管理を行います。
・生産ラインでの管理
実際に生産が始まると、その生産工程の中で具体的な管理が必要となります。
例えば、精密で精度が必要となる場合、必ず全ての部品がその合格値に入るとは限らないからです。
現場の声を聞きながら、そのようなイレギュラーにも対応できるほどの個数や納期管理を行う必要があります。
社内生産の場合はもちろん、外注する場合に関しても実際に製造したうえで計画に合わせられるか常に管理しておかなければなりません。
各工程ごとに担当者が生産管理を行い、定期的に全体の生産統制を行うことでより最適に製造を進めることが可能と1なります。
・品質管理
商品が完成しても、当初の計画通りのものが出来上がっているとは限りません。実際に動かしたり試したりして欠陥がないか、部品ごとに品質をチェックしなければなりません。
この品質管理は最初だけ行えばいいというわけではなく、定期的なチェックが必要となります。
特に外注先を途中で変更したり、工程を見直した場合は細かい品質管理を行います。
・在庫管理
出荷が始まってから重要となるのが在庫の管理です。在庫は、まだ現金化できていない会社の資産なので抱え過ぎてしまうと会社全体の利益率に大きく影響します。
逆に在庫を減らし過ぎると突然の消費や納品に生産ラインが追い付かず、計画通りの売り上げを上げられない可能性もあります。
営業から需要バランスを聞いたり、生産ラインの状況を把握したうえで在庫数の決定を行います。
・工程管理
全ての工程において、更に効率化を図るのも大事な生産管理の仕事です。
実際に製造したうえで計画とのギャップを話し合い、工程の見直しや原材料の変更など定期的に見直す必要があります。
一つの工程を変えただけでも、他の製造ラインに大きく影響が出ることがあるため、各工程の生産管理者を交え連携しながら新しいシステム作りを進めていきます。
生産管理はどこからどこまでを差す?
上記で説明した通り、生産管理と言っても各工程にその業務があり全体的な統率を図る必要があります。
生産管理を行う範囲をまとめると以下の通りとなります。
1市場の調査
2事業戦略と販売予測
3新商品の企画
4販売計画
5製品の設計
6売り上げ利益計画とその規模に応じた投資計画
7資材調達と生産計画
8製造と工程ごとの生産管理
9出荷前後の品質管理
10在庫管理
11全工程を見直したうえでの業務効率化
12次期の生産工程の見直し
各工程ごとにQ(Quality)【品質】C(Cost)【価格】D(Delivery)【納期】という目線から管理していきます。
なぜ今生産管理が注目されている?
今までも身近に存在してきた生産管理ですが、最近になり特に注目され始めています。その理由として人手不足の深刻化と、製造業全治のIT化があります。
業界自体の売り上げや人気の変動により、製造ラインなどでの人手不足が深刻となっています。
細かい部品の組み上げや製造は、管理やチェック業務も含めると多くの人手が必要となるからです。
様々な商品のグローバル化に伴い、海外商品の勢いも伸びてきているのが現状です。
そこで今、製造業全体がIT化して業務の効率を図っており、その中でもAI・IOT技術は今後必須となると言われています。
AIによる画像認識技術などを活かし、生産ラインでの品質チェックを機械化することで圧倒的に速い検品が可能となります。
IOT技術とは、センサーと通信機能を持った各機械がインターネットを通じてつながる技術の総称です。
その場に人がいなくても各工程ラインで異常が発生した場合、その検知内容などが即座にわかるようになっています。
情報を収集することで機械の寿命を見極めたりすることが可能となり、更に全工程の可視化が進みます。
このように製造業や小売業などは今、変革期を迎えていると言われており、それに伴い大幅な生産管理の見直しが必要となっています。
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生産管理の仕事で重要なBOMとBOP
生産プロセスの効率化に不可欠な要素が、部品表の「BOM(Bill Of Materials)」と工程表の「BOP(Bill of Process)」です。それぞれの詳しい説明は以下となります。
BOMとは
BOMは、製品を構成する全ての部品や材料を一覧化したものであり、どの部品が必要であるかを明確にするものでもあります。
この部品表によって、製品の組み立てや必要な部品の調達がスムーズに進みます。
また、BOMは用途や管理の方法によって様々な形式で存在します。
たとえば、設計段階で用いられるE-BOMや、製造段階で用いられるM-BOMなどです。
BOMの利点は、部品管理が効率的に行えることや、製品品質の維持、在庫の正確な管理を容易にすることです。
一方で、製品バリエーションの増加に伴い、BOMの維持管理が複雑化する可能性もあります。
生産管理の現場では、BOMの適切な管理によって、部品の不足や誤配を防ぎ、生産プロセスの最適化を目指しています。
BOPとは
BOPは、製品を製造するために必要な具体的な工程を定義した文書です。これには、どの工程でどの機械を使用し、どのような手順で作業をおこなうかが記載されています。
BOPの導入により、設計から生産に至るまでの情報が一元化され、各部門間での情報共有が促進されます。これによって、製造コストの削減や開発時間の短縮が可能となるのです。
特にBtoB製品の製造では、製造プロセスの効率化が製品競争力を左右するため、BOPの詳細な管理が重要視されます。
生産管理の課題
ここでは、生産管理の最適化を進める上で、企業が直面するさまざまな課題を紹介します。
生産を標準化する
生産の標準化とは、作業の一貫性と品質を保つことを意味します。生産管理の現場では常にこの「生産の標準化」を目指していますが、実際には生産ラインごとの差異や品質のばらつきが生じることがあるのが現実です。
標準化の障害となっているのは、工程が複雑な製品や少量生産の製品などの需要が増えていることがあげられます。
工程が複雑になると、各ステップの詳細が共有されにくくなり、一貫した生産が難しくなるのです。
標準化を進めるためには、全ての生産ステーションでの負荷を明確にし、問題点を特定することが重要となります。
十分な生産準備をする
生産準備は、製造開始前に必要な製品設計の確認、工程計画の立案、設備配置計画などを含む重要なプロセスです。
生産準備が不十分だと、製造過程での問題発生やスケジュールの遅延が生じる可能性があります。
適切な準備を確実におこなうためには、各部署間で情報を共有し、計画段階での誤解を避けることが重要です。しかし、現実には多忙な現場で準備に必要な時間を割けないこともあり、計画の不備が生じやすくなっています。
ヒューマンエラーを減らす
現代の製造工程では多くの作業が機械化やデジタル化を経ていますが、完全に人の介入を排除することは不可能です。
データ入力、部品加工、品質チェックなど、手作業が必要な作業が依然として存在します。
そこで、人間が関与することで避けられないのがヒューマンエラーです。いくら注意深く作業をおこなっても、エラーを完全になくすことは極めて困難です。
エラーを減らすためには、繰り返しの自己チェックや、他者による監査が効果的といえます。
ただし、このようなチェック作業は時間やコスト、労力を要するものです。チェックのための資源を削減しつつ効率を保つのは、多くの企業にとって高いハードルとなっています。
部門間のすれ違いをなくす
部門間でのコミュニケーション上のすれ違いも、生産管理の大きな課題の一つです。
コミュニケーションが不足すると、計画の進行状況が共有されず、予期せぬ生産停止やスケジュールの遅れが発生する可能性があります。
適切なコミュニケーションのためには、全部門が協力し、情報共有し合う体制を整えることが必要です。
不良率を下げる
製品の不良率を減少させることは、利益向上に直結します。しかし、不良原因が特定できない場合が多く、不良率を低減するのが難しい状況が続いています。
生産管理を改善するための対策
ここでは、生産管理の効率を向上させるための5つの改善策を提案します。
生産準備の見直し
製造開始前の生産準備のプロセスを見直すことで、製造中の不具合や作業の遅延を防ぎ、コスト削減と効率向上を図ることが可能です。
生産準備を効率化するには、事前に十分な準備時間を設け、必要な資料や情報を収集することが重要になります。
また、生産準備に関わる各部門が連携し、情報を適切に共有することも、スムーズなプロセス運営には欠かせません。
業務全体の効率的な見直し
業務プロセスを「削除」、「削減」、「変更」の三つのアプローチで見直し、非効率な業務を改善することが重要です。
「削除」は不要な業務を排除し、「削減」は業務の量を減らし、「変更」は業務の方法を改良することを意味します。このように区分けして、業務を見直すことで、無駄を省き効率的な業務フローを実現できます。
属人的な業務の削減
特定の個人に依存する業務、いわゆる属人化された業務は、その人が不在の際に問題を引き起こすことがあります。
これらの業務を標準化することで、誰もが対応可能な業務プロセスを確立することが重要です。
マニュアル化
業務をマニュアル化することで、作業の標準化を図り、作業の品質や速度を向上させることが可能です。
特に、複雑なタスクや頻繁に発生しない業務をマニュアル化することで、誰でも一定の品質で作業をおこなえるようになります。
小さく始める
生産管理を改善する際は、全体のプロセスを一度に変更するのではなく、小規模から始めて徐々に範囲を拡大するのがおすすめです。
この方法であれば、短期間内に改善の効果を実感しやすく、成功体験を積み重ねながら次第に全体の改善につなげられます。
生産管理に必要なスキル・資格
生産管理を行う上で必須の資格はありません。
幅広い知識が必要となることから、持っていることで有利となる資格はあります。
・ビジネス・キャリア検定
中央職業能力開発協会が実施している試験で「職務上必要な知識の習得と実務能力の評価を行うこと」が目的です。
事務系の職務ごとに試験が用意されており、その中に生産管理に関するものがあります。
【生産管理プランニング】
~生産計画や生産システムの設計、原価や品質、納期管理など全体的な生産管理工程に必要な知識が習得できます。
【生産管理オペレーション】
~物流業務の生産管理知識に関するものです。
各製造ラインの管理や工場の機械、設備はもちろん資材や在庫管理、運搬管理まで製造業の一連の流れを管理するうえで必要な知識が習得できます。
それぞれにBASIC級~1級までレベルに応じた試験が用意されているため、実務経験がない状態で生産管理の仕事に転職しようとしている人から、更にキャリアップを図る目的の人にもおすすめです。
関連記事:生産技術職とはどんな仕事?仕事内容や必要なスキル、向いている人などを紹介!
生産管理の仕事はきつい?
生産管理の仕事は業務内容がとても幅広く、様々な視点から仕事を進めなければなりません。
製造ラインや営業、外注先、事務など全体とつながっているため、そのバランスを見極めるのは大変です。
例えば、営業から「○日までに10個商品を用意してほしい」と要望があった場合、製造ラインや外注先へ確認と依頼をしなければなりません。
製造ラインから「作業自体は何とかできるが材料がない」と言われた場合は資材の調達の確認といった流れです。
このように様々な部署への依頼を行いながら、生産全体のバランスを取るので生産管理は簡単な業務ではありません。
その分、全体を統率するため生産管理の内容次第で大きく利益を出すことが可能です。
業務効率化を図り、会社の利益に大きく貢献できることは大きなやりがいとなります。
関連記事:物流コンサルタントとは?仕事内容や将来性をわかりやすく解説
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生産管理についてのまとめ
生産管理と言ってもその業務は多岐にわたり、企画・開発から生産、納品・在庫管理まで全てに関わります。
そのため、幅広い知識とリサーチ力、コミュニケーション能力が必要です。
製造業や小売り業などでは、現在ITやIOT化に伴う大幅な変革期を迎えており、特に生産管理業務が重要視されています。
全ての工程を把握しバランスを図り、新技術により更に可視化を進めることで大きく会社の利益に貢献することができる職務です。
一つ一つ問題を解決し、会社を大きく前進させる生産管理職は、とてもやりがいのある職種の一つです。
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