どの業界でも欠かせない存在と言える「事務職」は、女性を中心に人気の職種です。
別の職種から事務職への転職を検討している人も少なくありません。
しかしネット上には「不動産事務はやめたほうがいい」といった、ネガティブな情報も見受けられます。
そこで今回は、不動産事務は本当にやめたほうがいいのか、業界の特徴や仕事内容を基に分かりやすく解説していきます。
これから不動産事務への転職を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事で分かること
・不動産事務で働く5つのメリット
・派遣社員として不動産事務に従事するメリット
・不動産事務に向いている人と向いていない人の特徴
・不動産事務への転職を成功させる方法
不動産事務はやめたほうがいいと言われる理由
不動産事務は顧客や不動産のデータ入力や書類作成、電話対応といった一般的な事務職の業務に加えて、不動産に関する知識が求められます。
しかし、実際には不動産知識を身に付けなければならないこと以外にも、不動産事務の辛さは複数あります。
ここでは「不動産事務はやめたほうがいい」と言われる6つの理由について、解説していきます。
体育会系の文化が残っている
不動産業界は他の業界と比べても、体育会系の文化が残っている企業が多くあります。
「不動産を契約してもらうためには休日出勤や残業は当たり前」「辛くても気合で乗り切るべき」などの考えを持つ上司も少なくありません。
仕事以外では「飲み会の誘いを断るのは失礼」といったものもあります。
不動産事務で営業活動を手伝ったり、長時間の残業となったりすることは滅多にありませんが、普段仕事を進める上で体育会系の文化に辛さを感じる人も少なくありません。
土日出勤が多い
不動産業界において顧客の来店が最も多いのは土日です。そのため、土日が休みになることは、特別な用事がない限り基本的にありません。
業界や会社にもよりますが、社会人は基本的に土日休みであることが多いでしょう。また、子供がいる場合、学校や習い事の行事も、土日に開催されることがほとんどです。
そのため不動産事務で働いていると、友人と遊ぶ約束や、子供の学校行事への参加などが難しくなります。
当然「子供がいるから」「友達と遊びたいから」といった理由で、毎週のように土日に休んでいたら職場の人にも迷惑がかかります。
こういったワークライフバランスが上手く保てないことに、不満を感じる人も多くいます。
小さなミスが大きな損失につながる
不動産契約は「戸建て・マンション・投資用ビル」など、非常に高額なものばかりです。
そのため、ちょっとしたミスが顧客の信頼を失い、大きな損失を出すことも珍しくありません。
間取り図や住所、価格などを書類やWebページに記載する業務を行う際には、細心の注意が求められます。
不動産業界は歩合制が用いられるなど結果主義の傾向が強いため、ミスに対する周りの反応も当然厳しくなります。
クレーム対応が辛い
不動産業界は大きなお金が動くため、些細な問題でも顧客からクレームが入りやすい傾向にあります。
クレーム電話のほとんどは不動産屋にかかってくるため、電話応対する不動産事務職のスタッフが矢面に立つこととなります。
会社全体の責任とはいえ、担当の顧客でもなんでもないのにきつく叱られてばかりでは、精神的に参ってしまうでしょう。
幅広い知識とルールを学ぶ必要がある
不動産事務は、電話応対や契約書類作成といった業務をこなす上で、パソコンスキルや接客スキルだけでなく、不動産に関する専門的な知識も身に付けなければいけません。
不動産契約に関する法律は複雑で、住宅ローンに関する書類も多く扱うことから、幅広い知識が求められます。
その一方で中小の不動産企業の中には、こういった不動産に関する知識や、接客スキルを身に付けられる研修制度が整っていない企業も少なくありません。
不動産業界の専門用語が飛び交う職場で「できて当たり前」のような雰囲気で仕事を頼まれては、仕事を辞めたいと感じてもおかしくはないでしょう。
大きく稼ぎにくい
不動産業界と聞くと「賞与が多く、稼げそう」といったイメージを持つ人も少なくありません。
しかし不動産業界で初めのうちから高収入を狙えるのは、歩合制のある営業職くらいです。
不動産事務の仕事に歩合制はなく、同業界の別職種と比べて特別年収が高いわけでもありません。
会社の業績によって賞与が上がることはあっても、長期的に高収入であり続けるのは難しいと言えます。
不動産事務はやめたほうがいいとも言えない理由
ここまで不動産事務の大変さや辛さについて、6つ解説してきましたが、決して悪いことばかりというわけではありません。
不動産事務ならではの魅力もあります。
一概に「不動産事務はやめたほうがいい」とも言えない5つの理由について、解説していきます。
未経験でも採用されやすい
不動産事務の求人は特別な応募条件のないものが多く、未経験からでも転職できます。
学歴・職歴・保有している資格などが足りずに応募できないというケースは少ないので、すぐにでも挑戦可能です。
給与が低くない
先ほど不動産事務は高収入を狙えないと解説しましたが、年収が低いわけでもありません。
求人にもよりますが、正社員では年収300万円〜の求人もあり、不動産事務の派遣社員の求人では時給1,500円を超える仕事もあります。
不動産業界で役立つ資格を取得すれば、資格手当がついたり、キャリアアップを目指しての転職がしやすくなったりもします。
残業は多くない
不動産事務は営業と違って平日の夜や休日に商談が入ったり、顧客のもとへ運転して向かったりすることがありません。
電話応対などの業務も営業時間内でストップするため、2~3月の繁忙期シーズンを除けばほとんど残業のない仕事です。
そのため、体力に自信がない人や残業が苦手な人でも働きやすい仕事と言えるでしょう。
業界の知識を私生活に活かせる
不動産事務の仕事を通じて身に付けた知識や経験は、賃貸マンションの借り換えやマイホーム購入の際に活かせます。
賢い物件の選び方やローンの組み方など、私生活で役立てられるでしょう。
また勤めている会社に「社員割引制度」があれば、一戸建ての購入時に1割引となるなど、一般の人よりもお得になることもあります。
同業界で転職すれば年収が上がりやすい
住居は人々の生活に欠かせないものであり、将来性が高く今後もなくならない業界の1つと言えます。
不動産事務の仕事をこなしながら不動産に関する知識を身に付ければ、転職しやすくなり長期的に不動産業界で活躍できるでしょう。
不動産業界で役立つ資格を取得すれば、資格手当がもらえたり待遇の良い企業への転職もできたりするため、年収も上げられます。
不動産事務の派遣ってどうなの?特徴を紹介
不動産事務の求人の中には正社員や契約社員の他に、派遣の仕事もあります。
正社員が最も待遇や給料が良さそうなイメージがありますが、派遣の不動産事務には複数のメリットがあります。
ここでは不動産事務の派遣について、特徴やメリットを解説していきます。
大手企業で働ける可能性がある
大手企業は中小企業と比べて待遇が良く働きやすい特徴がある一方で、競争率が高く学歴や資格の条件が定められている求人がほとんどです。
しかし、派遣であればこのような特別な条件はなく、大手企業で働ける可能性があります。
大手企業は社員研修が整っており、働き方改革を進めていることが多いため、長時間の残業や休日出勤もありません。
時給に関しても高い傾向にあるため、派遣であっても年収が低くなりにくいと言えるでしょう。
中小企業なら直接雇用の可能性がある
中小企業の不動産事務の派遣求人には「直接雇用制度」が設けられていることがあります。
派遣社員としてさまざまな不動産会社で働きながら「ここで働き続けたい」と思った場合には、そのまま正社員になれる可能性があります。
直接雇用となればその後も安定して働き続けられるでしょう。
何かあれば派遣会社が仲裁に入る
派遣社員の場合、所属するの派遣先企業ではなく派遣会社です。
派遣先の仕事で事前に聞いていた労働条件や業務内容に違いがあった場合にも、派遣会社が間に入ってくれるため、自分自身で問題を解決する必要がありません。
また、不満に思うことがあった場合は派遣会社に相談できますので、心身の負担も抑えながら働き続けられます。
正社員ほど責任が重くない
派遣社員は依頼された不動産事務だけが仕事のため、上司の機嫌を伺ったり後輩との板挟みにあったりすることもありません。
出世競争なども意識しなくて済むため、余計なストレスを溜めずに仕事ができます。
責任者となり後輩をまとめるような立場にもならないため、正社員と比べてプレッシャーが少なく、仕事も自分のペースで覚えやすいと言えるでしょう。
残業を頼まれにくい
派遣社員は自社の社員ではないため、職場の上長の判断で働き方を調整できるわけではありません。
そのためサービス残業はもちろん、急な残業などを頼まれにくいと言えます。
残業以外でも仕事中のトラブルに関しては、派遣会社が仲介に入ってくれるので安心と言えるでしょう。
不動産事務に向いている人の特徴
「不動産事務はやめておいたほうがいい」といったネガティブな情報を目にして「私では務まらないのでは?」と不安に感じる方もいるでしょう。
ここでは不動産事務にどのような人が向いているのか、3つの特徴について業務内容を踏まえながら解説していきます。
仕事が丁寧
不動産事務では数百万~数億円の物件を扱うことが当たり前にありますが、当然物件ごとに値段や間取り、注意事項も異なります。
前述した通り、価格ミスや、違う間取りを掲載してしまうだけで、大きな損失になりかねません。
そのためどれだけ忙しい時であっても、焦らず丁寧に仕事を進められる人が不動産事務に向いていると言えます。
細かい数字を大量に取り扱うことに抵抗がない人も、不動産事務に向いていると言えるでしょう。
基本的なPC操作ができる
不動産事務では、取り扱っている物件情報の入力や顧客データの管理を行うため、パソコンの基本操作ができる人が向いています。
契約書類やポップ広告はテンプレートが用意されていることが多く、深い知識は必要ありませんが、エクセルやワードの使用経験があると仕事が進めやすくなるでしょう。
コミュニケーションが得意
不動産事務はネットの不動産情報を見て店舗へ来店した人の応対を一番初めに行います。
そのため、お店に対する第一印象の良し悪しを決める重要なポジションなのです。
電話応対が不愛想であったり、来店時に元気のない挨拶だったりすると、会社に対する印象も悪くなり、不動産の契約率も当然悪くなります。
そのため、顧客の性別や年代に関係なく明るく接客できるような人が、不動産事務には向いています。
不動産事務に向いていない人の特徴
次は不動産事務に向いていない人の特徴について解説していきます。
これらに当てはまるからと諦める必要はありませんが、不動産事務の仕事をこなす上で大切な要素であるため、意識して慣れるようにしましょう。
仕事が大雑把
細かい仕事が苦手で大雑把に仕事をこなしてしまいがちな人は、不動産事務に向いていないと言えるでしょう。
前述した通り、間取りや家賃は物件ごとに異なるものであり、同じマンションであっても階によって家賃が変わることも珍しくありません。
間違った家賃を入力したり、顧客の名前を間違えたりしては、会社全体の信頼をなくしてしまい大きな損失に繋がります。
丁寧な仕事が苦手な人は、入力後に必ずミスがないか見直すようにするなど、対策を取りながら作業に慣れていくようにしましょう。
学ぶ意欲が低い
不動産に関する法律や金融関係の知識は、日々変わります。
その都度知識をアップデートする必要があるため、「一度仕事を覚えたら、あとはひたすら業務をこなすだけの仕事がいい」といった方は、不動産事務に向いていないと言えるでしょう。
また、不動産業界で将来的にキャリアアップを目指したい場合も、関連の資格取得が必須となります。
働きながら勉強したり、新しい知識を取り入れるのが苦手だったりする人は、不動産事務には向いていません。
一気に覚える必要はないので、少しずつでも学ぶ癖を身に付けるようにしましょう。
コミュニケーションが苦手
不動産事務は業務の中で、さまざまな年代の人を接客します。
中には気難しい人や、必要以上に話しかけてくるような人もいるでしょう。
どのような顧客であっても機嫌を損ねることなく、丁寧なコミュニケーションが取れなければ不動産事務は向いていないと言えます。
積極的に人と話す機会を作り、コミュニケーション能力を高める努力をしましょう。
不動産事務の仕事内容
不動産事務で働いていけるか、向き不向きを自分なりに判断するには、不動産事務の仕事内容について理解することも大切です。
不動産事務の仕事内容は主に4つあります。
・データ管理業務
・資料作成業務
・経理、総務業務
接客業務では、来客時の案内やお茶出しを行い、物件などに関するお問い合わせの電話対応をします。
データ管理業務とは取り扱っている物件の登録や変更作業、顧客情報管理の作業のことです。
資料作成業務はチラシやポップ広告や、契約書や請求書の作成業務です。
その他、送金手配や備品の管理・発注といった経理や総務の作業を行います。
不動産事務への転職を成功させるコツ
不動産事務の大変さや辛さは、就職する会社によっても変わります。
作業効率の向上に力を入れており、社員が働きやすい取り組みを積極的に行っている企業と、そうでない企業があるからです。
ここでは不動産事務への転職を成功させるための、3つのポイントについて解説していきます。
志望動機にこだわる
入社時から特別なスキルや資格を求められない不動産事務は、仕事に対する気持ちの強さや考えが採用時に重視されやすいと言えます。
「残業が少なく、条件がなかったから」「休みが多いから」といった志望動機では理想の企業から内定をもらうことはできません。
「なぜこの業界を選び不動産事務を志望したのか」「入社後にはどのようなビジョンを持っているのか」などを積極的に記載してアピールしましょう。
関連記事:不動産事務の志望動機の書き方・例文・面接対策をまとめて解説
資格の取得
不動産事務の求人では学歴や資格などに指定がないものがほとんどですが、仕事に活かせる資格があれば当然優遇されます。
応募できる不動産求人の幅を広げて理想の企業へ転職できる可能性を上げるには、資格取得もおすすめです。
宅建士などの難関資格を目指す必要はなく「MOS」や「FP(ファイナンシャルプランナー)3級」など、取得しやすいものから挑戦してみましょう。
転職エージェントを活用する
転職を成功させる上で重要となるのが、いかに多くの情報を集められるかです。
求人に掲載されている情報だけでは、自分に合っているのかどうか判断が難しいでしょう。
転職エージェントを活用すれば、多くの転職サポート実績のあるアドバイザーが転職をサポートしてくれるので安心です。
希望する条件にあった求人を見つけてくれるだけではなく、求人詳細では分からない疑問点も、直接企業の採用担当者に連絡を取って代わりに聞いてもらえます。
不動産事務の平均年収
不動産事務の年収は350〜400万円で、月給は25〜30万円と言われています。
「求人ボックス」で実際に掲載されている求人を基にした数値は以下の通りです。
ちなみに、厚生労働省が公表している「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、不動産業界の平均賃金は326,100円であり、年収にすると3,913,200円となります。
参照元:厚生労働省|令和3年賃金構造基本統計調査(5) 産業別にみた賃金
年間に50万円のボーナス支給があったとして計算すると、不動産業界の平均年収は441万円となります。
ブラックな不動産会社の見分け方
不動産事務の仕事を無理なく続けていくには、ブラックな不動産会社への入社に注意が必要です。
ここでは、ブラックな不動産会社を見分ける2つのポイントについて解説していきます。
該当している会社は必ずブラックというわけではありませんが、応募する企業を決める際には意識してチェックするようにしましょう。
常に求人を募集している会社は注意
求人を常に募集しているような会社には注意が必要です。
なぜなら働きやすく好待遇な会社は人が辞めにくく、常に求人を出す必要がないからです。
常に求人を募集している会社は、すぐに社員が辞めてしまう何かしらの原因があると予想できます。
このような会社に応募する場合には、事前に企業の口コミサイトで働いていた方の評判を調べ、自分に合っている会社なのか慎重に検討するようにしましょう。
求人票に具体的な数字がない会社は注意
具体的な数字を出してしまうと応募が来なくなるために、抽象的な表現でごまかしている求人もあります。
「スタッフみんなが仲良くアットホームな職場です!」
「未経験でも安心して働ける環境です!」
といった、曖昧な記載ばかりの求人には注意しましょう。
逆に月の残業時間や社員の年収例、有給消化率などの情報をしっかり記載している会社は、働き方改革に積極的だと判断できます。
不動産業界は残業が多い傾向にあるため、月の残業時間の記載は意識してチェックするようにしましょう。
関連記事:不動産業界で土日休みの仕事はある?水曜休みが多い理由も解説
関連記事:不動産仲介・売買の営業職はきつい?きついと言われる理由7選
まとめ
今回、不動産事務はやめておいたほうがいいのか、その理由や仕事の特徴を基に解説してきました。
土日出勤が当たり前でクレーム対応が大変であるため、不動産事務はやめておけと言われがちですが、決して悪いことばかりではありません。
未経験でも挑戦しやすく、残業も少ないのでワークライフバランスの調整がしやすいメリットがあります。
ただし、常に求人を出しているような会社や、求人詳細で残業時間や休日数など具体的な数値が記載されていないような場合は、ブラックな会社の可能性があるので注意が必要です。
しっかり会社選びを行い向上心を持って働けば、不動産業界で長期的に活躍し続けられるでしょう。
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