不動産の鑑定業務は、不動産鑑定士の有資格者しか従事できない独占業務です。
需要が高く将来性も高い職種である一方で、不動産鑑定士試験は数ある国家資格の中でも難関資格となります。
これから不動産鑑定士を目指す上で資格の難易度や内容、働き始めた際の年収が気になる方もいるのではないでしょうか。
今回は不動産鑑定士の年収を中心に分かりやすく解説していきます。
この記事でのまとめ
・不動産鑑定士になる方法
・不動産鑑定士試験の内容や合格率
不動産鑑定士とは:不動産を鑑定し適正な金額を出す人
不動産鑑定士とは、建物や土地といった不動産の価値を評価・鑑定できる国家資格です。
不動産の所有者が建物や土地を『貸す・売る・贈与』する際に、不動産鑑定士へ依頼して、正確な不動産の価値を判定してもらいます。
また、不動産の評価に関する知識を活かして「どのように不動産を有効活用していくべきか」依頼主へのコンサルティングを行う仕事もあります。
不動産の経済価値は、その時の社会情勢や経済価値と共に変化するだけでなく、借地権や借家権、地上権などの権利関係が絡み合っていることがほとんどです。
そのため、不動産に関する専門知識を持つ「不動産鑑定士」は、建物や土地を適正に評価する上で欠かせない存在と言えるでしょう。
不動産鑑定士は不動産業者で働くイメージが強いかもしれませんが、不動産を取り扱う業務であれば幅広い業界で活躍できます。
金融業界や国・都道府県の業務を請け負うことも珍しくなく、中には独立してさまざまな業界で活躍している人もいます。
不動産鑑定士の年収事情
これから不動産鑑定士を目指し活躍していきたい方であれば、不動産鑑定士の年収はいくらほどなのか気になるのではないでしょうか。
ここでは不動産鑑定士の年収について、3つの項目で解説していきます。
・不動産鑑定士の平均年収
・不動産鑑定士の年齢別の年収
・不動産鑑定士の経験年数別年収
不動産鑑定士として働き始めた頃から中堅・ベテランとなっていく上で、年収がどのように変わっていくのかが分かりますので、ぜひ参考にしてみてください。
不動産鑑定士の平均年収:約754万円
厚生労働省が公表している「令和元年・賃金構造基本統計調査 」によると、不動産鑑定士の平均年収は以下の通りです。
【2019年度・不動産鑑定士の年収データ(企業規模10人以上)】
平均年齢 | 46.6歳 |
平均勤続年数 | 7.5年 |
所定内実労働時間数 | 146時間 |
超過実労働時間数 | 0時間 |
きまって支給する現金給与額 | 490,300円 |
年間賞与・その他特別給与額 | 1,662,300円 |
平均年収 | 7,545,900円 |
※平均年収は「きまって支給する現金給与額」と「年間賞与・その他特別給与額」を基に算出しています。
参照元:e-Stat 政府統計の総合窓口|賃金構造基本統計調査
また、国税庁が発表した「令和元年分 民間給与実態統計調査」によると、日本人男性の平均年収は540万円、女性の平均年収は296万円で全体では418万円となっています。
参照元:国税庁|令和元年分 民間給与実態統計調査
これらのデータから不動産鑑定士の平均年収は、全産業の平均年収と比べてかなり高いと言えるでしょう。
不動産鑑定士の平均年齢は46.6歳となっていますが、年齢別ではどのように平均年収が変わっていくのか、次の章で解説していきます。
【年齢別】不動産鑑定士の年収:約700〜1,600万円
厚生労働省が公表している「平成29年度賃金構造基本統計調査」によると、不動産鑑定士の年齢別の平均年収は以下の通りです。
35~39歳 | 7,178,000円 |
40~44歳 | 9,542,700円 |
45~49歳 | 8,704,300円 |
50~54歳 | 16,760,000円 |
55~59歳 | 7,652,000円 |
※平均年収は「きまって支給する現金給与額」と「年間賞与・その他特別給与額」を基に算出しています。
参照元:e-Stat 政府統計の総合窓口|賃金構造基本統計調査 / 平成29年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
30代後半で既に年収700万円を超えており、50代では年収1,000万円を超えています。
ただし、統計調査は全ての不動産鑑定士のデータを参考にしているわけではなく、独立開業した人の年収は含まれていません。
そのため、一概に不動産鑑定士がこれくらいの年収であるとは限りませんので、参考程度に捉えておきましょう。
20代の年収が気になる方もいるかもしれませんが、不動産鑑定士は豊富な経験が必要とされ、20代で取得する人は非常に少ないです。
国土交通省の発表している「不動産鑑定士の人材育成について(現状)」という資料によると、不動産鑑定士の年齢構成で最も多い年代は以下の通りです。
- 40~49歳:27.0%
- 50~59歳:18.2%
- 60~69歳:20.2%
参照元:国土交通省の「不動産鑑定士の人材育成について(現状)」
不動産鑑定士の資格取得前は、各企業で働く社員と年収はほとんど変わりません。
次の章では経験年数別の年収について解説していきます。
【年数別】不動産鑑定士の年収:約670〜940万円
厚生労働省が公表している「平成29年度賃金構造基本統計調査」によると、不動産鑑定士の経験年数別の平均年収は以下の通りです。
5~9年 | 6,704,000円 |
10~14年 | 9,287,600円 |
15年以上 | 9,434,500円 |
※平均年収は「きまって支給する現金給与額」と「年間賞与・その他特別給与額」を基に算出しています。
参照元:e-Stat 政府統計の総合窓口|賃金構造基本統計調査 / 平成29年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
比較的経験の浅い5~9年目の人でも、全産業の平均年収を大きく上回っています。
10年目以上になってくると平均年収が900万円台となり、勤務する会社によっては年収1,000万超えも十分にあり得ます。
年収が高いと言われる不動産鑑定士の仕事内容
不動産鑑定士の仕事は鑑定の仕事だけではなく、不動産に関するコンサルティング業務もあります。
ここでは、不動産の鑑定業務やコンサルティング業務について解説していきます。
不動産の鑑定
不動産の鑑定・評価業務では、周辺の地理的状況や市場経済を踏まえて、不動産の経済価値を評価していきます。
不動産鑑定が行われるのは、以下のような場面です。
【賃貸物件の鑑定・評価】
賃貸物件を所有する人にとって最も懸念されるのが、空室状態が続くことです。それを防ぐには不動産の鑑定評価により、適正な家賃設定をしておく必要があります。不動産鑑定評価の結果があれば、家賃が適正だと言い切れるため、借主・賃主の信頼を損なう心配もありません。
【地価公示の評価】
地価公示とは、土地鑑定委員会が毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を公示するものであり、毎年3月に発表されます。一般の土地の取引価格や、公共用地の取得価格の算定に用いられる大切な指標です。公示価格は、各地域で2人以上の不動産鑑定士が鑑定評価を行います。
【相続税・固定資産税基準の評価】
各都道府県で設定される相続性基準・固定資産税基準は、その時の情勢に合わせた評価となります。そのため、適正な基準を算出する上で、不動産鑑定士は欠かせない存在です。
このように不動産評価と言っても仕事範囲は幅広く、不動産業界以外でも十分活躍できます。
コンサルティング
コンサルティング業務では、不動産鑑定士の知識を活かし、不動産を有効活用するためのアドバイスを企業や個人向けに行います。
不動産鑑定士が行う、具体的なコンサルティングの例は以下のようなものがあります。
- 不動産の資産管理業務
- 企業が所有する不動産の有効活用策の提案
- ビル建て替え時の投資収益性などの評価
- 市街地再開発事業に関する不動産の権利調整
建物や土地の評価は、その地域の経済情勢や市場状況を把握していれば鑑定できるので、海外で活躍する不動産鑑定士もいます。
年収が高いと言われる不動産鑑定士の働き方
不動産鑑定士は不動産所有者・金融機関・公共機関など、多くの場所で必要とされる存在です。
そのため、会社に所属して不動産鑑定士として働くケースの他に、独立して個人で不動産鑑定の仕事を請け負う人もいます。
ここでは不動産鑑定士の働き方と、それぞれのメリットについて解説していきます。
勤務鑑定士
勤務鑑定士は不動産の賃貸や売買を仕事とする不動産会社や、建物を担保に融資を行う金融関連の会社などに勤務しながら、さまざまな土地・建物の不動産鑑定をこなします。
業績に応じた賞与や、資格手当・住宅手当・家族手当といった福利厚生も充実しており、収入が安定していると言えるでしょう。
一方で、会社員である以上は上司の指示に従う必要があるため、独立鑑定士に比べると自由度が低くなります。
また、自分で仕事量を調整しづらく、繁忙期には長時間の残業となるケースもあります。
独立鑑定士
不動産鑑定は、不動産鑑定士の資格を持っている必要があり、無資格者が鑑定を行った場合には刑事罰の対象になります。
このように不動産の鑑定評価は独占業務なので、独立して自分の得意とする分野で仕事を請け負う人もいます。
民間の仕事だけでなく、地方自治体といった機関との提携業務もあり、仕事がなくなる可能性は低いです。
勤務鑑定士と違って、自分で仕事の内容を決めたり、スケジュールを調整したりできるため、自由度の高い働き方となります。
個人の仕事量や会社の経営に成功すれば、高収入を目指すことも可能です。
一方で、仕事は全て自分で受注しなければならず、依頼主への営業なども含めたマーケティング能力が求められます。
基本給や賞与もないため、結果次第では会社員時代よりも年収が落ちてしまう可能性もあります。
年収が高いと言われる不動産鑑定士の依頼相場
不動産鑑定士は、建物の規模や種類によって依頼主から鑑定・評価の依頼料をもらって仕事を行います。
依頼する会社やサービス形態にもよりますが、不動産評価の依頼料の相場は以下の通りです。
土地のみ | 戸建住宅程度の広さの場合 | 20万円~ |
土地のみ | 商業施設建設程度の広さの場合 | 30万円~ |
建物のみ | 戸建住宅の場合 | 20万円~ |
土地と建物 | 戸建住宅の場合 | 25万円~ |
アパート | 一室の所有権 | 30万円~ |
鑑定費用は土地の広さだけでなく、対象物件の評価額を基に決定されることもあります。
評価額1億円程度となると、60~70万円程度かかります。
マンションの場合、設備や景観も重要な評価対象であり、共有設備も考慮して鑑定しなければならないため、戸建てよりも若干高めです。
年収が高いと言われる不動産鑑定士になるには試験を受ける
不動産鑑定士になるには、国家資格に合格する必要があります。
不動産鑑定士試験に合格した後は、研修生として国土交通大臣の登録を受けた不動産鑑定事務所などに所属しながら、実務の講義を受けなければなりません。
その後、修了考査で修了を確認されれば不動産鑑定士として登録され、初めて仕事に従事できるようになります。
ここでは不動産鑑定士試験について、受験条件や試験の内容、合格率などを詳しく解説していきます。
不動産鑑定士試験は国家試験であり、弁護士・公認会計士と並んで3大国家資格の1つとされています。
不動産鑑定士試験には「短答式試験」と「論文式試験」があり、短答式試験で約7割、論文式試験で約6割の点数が合格基準となります。
その他の試験概要は以下の通りです。
受験条件 | なし |
試験日 | 短答式試験:5月中旬 論文式試験:8月中旬 |
合格発表日 | 短答式試験:6月下旬 論文式試験:10月下旬 |
試験地(短答式試験) | 北海道・宮城県・東京都・新潟県・愛知県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・沖縄県 |
試験地(論文式試験) | 東京都・大阪府・福岡県 |
受験手数料 | 書面申請:13,000円 電子申請:12,800円 |
ちなみに、試験に合格した後の実務講習には実地演習と基本演習があり、指定された団体もしくは会場で修習しなければなりません。
年収が高いと言われる不動産鑑定士の試験内容
短答式試験は5択方式で「行政法規」と「鑑定理論」ごとに出題されます。
行政法規に関しては、不動産鑑定士の業務に関わる38の法令の中から出題されます。
主な法令は以下の通りです。
- 建築基準法
- 土地基本法
- 都市再開発法
- 不動産登記法
- 都市計画法
- 鑑定評価に関する法律
- 国土利用計画法
- 土地区画整理法
- 地価公示法
- 農地法
- 森林法
- 税法
出題範囲に関しては変更となる可能性があるため、必ず国土交通省の「不動産鑑定士試験の規定等」を確認するようにしましょう。
鑑定理論とは、不動産の鑑定評価を行う際に、規範とするべき理論のことです。
国土交通省が制定した「運用上の留意事項」と「不動産鑑定評価基準」に基づいて、どのような理論や手順で鑑定評価するのかの知識を問う内容です。
鑑定理論は、不動産鑑定士試験の中でも特に配点が高く、重要な科目とされています。
年収が高いと言われる不動産鑑定士の合格率は30%前後
直近の不動産鑑定士試験・短答式試験の合格率は以下の通りです。
試験開催年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和5年度 | 1,647人 | 553人 | 33.6% |
令和4年度 | 1,726人 | 626人 | 36.3% |
令和3年度 | 1,709人 | 621人 | 36.3% |
令和2年度 | 1,415人 | 468人 | 33.1% |
令和元年度 | 1,767人 | 573人 | 32.4% |
短答式試験は、5択問題であり論述試験と比べると正解率が高いこともあり、合格率は毎年30%前後で推移しています。
参考書で内容を理解した上で過去問で勉強を進めれば、ある程度の点数を取りやすいと言えるでしょう。
しかし、後に行われる論文試験は選択式ではなく、関連の法律を熟知していなければ回答できません。
短答式試験だけの合格を目指す勉強法では、あまり意味がありませんので注意しましょう。
年収が高いと言われる不動産鑑定士の論文試験
論文試験は記述式で行われることもあるため、各科目について十分に理解しておく必要があります。
試験は3日間に分かれており、以下の4科目で試験が実施されます。
・民法
・経済学
・会計学
・鑑定評価に関する論理
【民法】
民法は人々の生活関係を規律する法律であり、不動産鑑定士では「建物の区分所有などに関する法律」と「借地借家法」も一緒に出題されます。不動産取引に関する内容が重点的に出題されやすいため、初めて勉強する場合は「不動産取引に関する内容」の部分から勉強を始めていくと良いでしょう。
【経済学】
経済学はミクロ経済学とマクロ経済学に別れており、以下のような内容が出題されます。・ミクロ経済学:消費者や企業がどのような経済行動を取るのかを分析する内容・マクロ経済学:国や世界の経済を分析した上で、国民所得について分析する内容試験では計算問題が出題されやすく「偏微分」といった難しい分野もあるため、独学ではなく通信講座など、解説付きで学んでいく方法が理解しやすいでしょう。
【会計学】
会計学では、財務諸表の作成ルールや基礎となる部分の知識や理論が問われます。会計学で身に付けた知識は、不動産鑑定士試験で合格した後に必須となる実務作業の中ですぐに必要となるため、より実践を見越した勉強をしておく必要があります。
【鑑定理論】
鑑定理論は試験の中でも特に重要とされており、短答式・論文式試験どちらにも科目が設けられています。不動産鑑定士試験に合格するには、正しい教材で正確な知識を身に付けることが大切です。記述式で自分の意見を表現する必要があるため、なんとなく理解しているくらいのレベルでは合格できません。
また、仮に試験に合格しても実際の現場で実務経験を積まなければならず、不動産鑑定に関する知識を身に付けていないと、業務をこなすのは難しいと言えるでしょう。
関連記事:不動産業界で働く宅建士の年収は?資格取得のコツも解説
年収が高いと言われる不動産鑑定士の論文試験の合格率は15%前後
直近の不動産鑑定士試験・論文式試験の合格率は以下の通りです。
試験開催年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和4年度 | 871人 | 143人 | 16.4% |
令和3年度 | 809人 | 135人 | 16.7% |
令和2年度 | 764人 | 135人 | 17.7% |
令和元年度 | 810人 | 121人 | 14.9% |
平成30年度 | 789人 | 117人 | 14.8% |
論文式試験は短答式の合格者のみが受験可能であることから、不動産鑑定士試験全体の合格率は実質10%未満となります。
年収が高いと言われる不動産鑑定士:試験勉強の方法
不動産鑑定士試験は、短答式試験に合格後に論文式試験もあり、関連する単語だけ覚えておくような勉強方法で資格を取得するのは難しいと言えるでしょう。
また、試験合格後には実習修習で実地演習と基本演習を行わなければならず、試験に合格するためだけの勉強では、実際の作業で通用しない可能性もあります。
試験に挑戦する時点で、不動産鑑定士として活躍できるくらいになることを意識しながら勉強に励みましょう。
具体的な勉強方法には「独学」と「通信講座」の2種類があります。
どちらも学ぶ範囲に変わりはないのですが、通信講座の場合は費用が数千円~20万円を超えるものもあります。
費用を抑えながらまずは挑戦したい場合には、短答式試験用と論文試験用の参考書を購入して、何度も読み返しながら知識を身に付けていきましょう。
「とにかく最短で不動産鑑定士試験に合格したい」という方は、通信講座がおすすめです。
初めての単語ばかりで理解できなかったり、計算式の内容についていけなかったりした際にも質問ができます。
通信講座の内容にもよりますが、講師が相手に合わせて分かりやすく解説してくれますので、より早く理解しながら学べます。
通信講座の場合、勉強期間は1年で設置してあることがほとんどですので、申し込む期間によって費用が変わります。
まずは通信講座を提供する学校へ、問い合わせてみるようにしましょう。
関連記事:不動産業界の平均年収は高い?特に高い職種4選を紹介
年収が高いと言われる不動産鑑定士の将来性
さまざまな業界で必要とされる不動産鑑定士ですが、これから目指す方にとっては将来性が気になるのではないでしょうか。
ここでは不動産鑑定士の将来性や、更に需要を高める方法について解説していきます。
士業の中でも希少な業種
冒頭で解説した通り、不動産となる建物や土地の取り扱いは、不動産業だけで行われるわけではなく、金融関係や建設業、専門サービス業でも行われています。
また、民間企業だけではなく、地方自治体などからの依頼もあります。
これらの不動産鑑定業務は、その業界の経験年数に関係なく、不動産鑑定士しか従事できない独占業務です。
不動産鑑定士の仕事内容に関しても、鑑定業務が全てではなく、不動産に関するアドバイスといったコンサルティングの仕事もあります。
今後も不動産鑑定士の需要が大きく減少したり、なくなったりすることはないでしょう。
ちなみに、最近ではAI技術の進歩が著しいため「不動産鑑定士の仕事も奪われる」といった声がネット上で見受けられます。
ただ、不動産鑑定ではその時の社会情勢などを加味して判断しなければならず、AIが代わりに考えて鑑定するのは難しいと言えます。
特に依頼主の要望を聞いた上で、不動産に関する運用方法などをアドバイスするような業務は、AIの最も苦手とする分野です。
業務の一部にAIが取り入れられることはあっても、仕事自体が奪われるのは考えにくいと言えるでしょう。
不動産鑑定士と宅建士を両方保有するメリット
不動産鑑定士に加えて、宅建士の資格を取得すればより需要を上げられます。
鑑定業務だけでなく、不動産取引や仲介業務にも携われるようになり、仕事の幅がより広がるからです。
また資格を保有していれば、プロフェッショナルとして、更に周りからの信頼を得やすくもなるでしょう。
独立している場合でも、不動産鑑定士の業務がない時には不動産の賃貸仲介といった、異なる業務領域で収益源を確保できます。
「宅建士も難関資格で2つも取得するのは難しいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、試験範囲には重複する部分もあり、ゼロから宅建士を目指す人と比べれば、試験のハードルを大きく下げられます。
関連記事:不動産鑑定士はやめとけと言われる理由は?AIの影響も解説
不動産鑑定士の年収についてよくある質問
最後は不動産鑑定士の年収についてよくある、4つの質問に答えていきます。
不動産鑑定士を目指す段階での年収や、独立後の年収などについて解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
不動産鑑定士の修業期間の年収はいくらですか?
大学新卒者であれば、不動産鑑定士の修業期間の年収は約250万円前後となります。
不動産鑑定士の試験に合格した後には実務修習期間が設けられており、単位を取得するまでには1~3年ほどかかります。
その間の給与は、大学新卒者と同じ扱いです。
厚生労働省が公表する「令和元年賃金構造基本統計調査(初任給)の概況」によると、大学新卒者の初任給は210,200円ですので、年収は約250万円前後となります。
参照元:厚生労働省|令和元年賃金構造基本統計調査(初任給)の概況
ただし不動産鑑定士を目指し始めるのは、会社に入社して数年以上経っていることが多く、入社年数によって年収は上がります。
また、不動産鑑定士の実務修習期間になったからといって、年収が急に下がることはないと言っていいでしょう。
不動産鑑定士は独立したら年収はいくらになりますか?
会社勤務の不動産鑑定士の平均年収は750万円ほどですが、独立した場合の年収も大きな差はないと考えられます。
ただし、仕事の受注量次第では年収1,000万円を超えるケースもありますし、逆に750万円を下回る可能性もあります。
どこまで経験を積んだ上で起業するかにもよりますが、手当や賞与がなく税金も全額負担となります。
そのため、独立当初は仕事が思うように受注できなければ、年収が下がってしまう可能性が高いと言えるでしょう。
会社の規模によって不動産鑑定士の収入に差はありますか?
勤め先の会社の規模によって、不動産鑑定士の収入に差はあります。
厚生労働省が公表している「平成23年賃金構造基本統計調査」によると、不動産鑑定士の会社規模ごとの年収は以下の通りです。
【会社規模・100~999人】
- 決まって支給する現金給与額:767,100円
- 年間賞与・その他特別給与額:1,570,000円
- 推定年収:10,775,200円
【会社規模・10~99人】
- 決まって支給する現金給与額:455,300円
- 年間賞与・その他特別給与額:1,182,700円
- 推定年収:6,646,300円
参照元:厚生労働省|平成23年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種
企業規模だけでなく、所属する業界が不動産鑑定業・金融業・不動産業のどれになるかによっても平均年収は変わります。
関連記事:不動産鑑定士の年収は高い?年齢別・経験年数別に紹介
不動産鑑定士と宅建士はどちらが難しいですか?
学習内容や範囲が異なりますので一概には言えませんが、試験の合格率で判断すれば、不動産鑑定士の方が難しいと言えます。
宅建士の合格率は毎年15~18%で推移しているのに対し、不動産鑑定士の合格率は短答式試験と論文試験を含めれば約5~9%です。
また勉強時間に関しても、どのレベルの段階で受験するかにもよりますが、宅建士の場合はおよそ300時間と言われています。
一方で不動産鑑定士は2,000~3,700時間とも言われているため、不動産鑑定士の資格取得の方が難しいと言えるでしょう。
関連記事:不動産業界で活躍しやすい資格を一挙に紹介
関連記事:不動産の営業事務ってどうなの?仕事内容や年収を解説
不動産鑑定士の年収に関するまとめ
今回は不動産鑑定士について解説してきました。
不動産鑑定士の年収は750万円ほどであり、全産業を含めた日本人の平均年収を大きく上回っています。
独占業務であり、経験を積めば独立する人も多く、年収1,000万円を超えるケースも決して珍しくありません。
不動産業界だけでなく、金融業界や専門サービス業といった業界で幅広く活躍できるでしょう。
一方で、不動産鑑定士になるには国家試験に合格し、実務修習を受ける必要があります。
試験の合格率は約5%ほどとなっており、特別な受験条件はないものの、誰でも簡単に目指せる職種ではありません。
市販されているテキストや通信講座を活用して、効率良く勉強を進めていきましょう。
不動産鑑定士は需要が高く、将来性のある職種なので、未経験であっても十分これから目指してみる価値があると言えます。
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