いま、世界中で海上運賃の高騰が話題になっています。一時的な現象かと思いきや2年近くが経過した現在も状況が変わらず、対応に苦慮している荷主企業や物流事業者は多いのではないでしょうか。
今回、Willbox株式会社主催のセミナー『国際物流を徹底解説!vol.01 大胆予想!海上運賃の見通しについて』を取材し、今後の動向について見解を伺いました。まずは高騰の背景について編集部から解説し、記事の後半からセミナー内容をレポートしていきます。
海上運賃の高騰とコンテナ不足はいつまで続く?
近年、国際物流において海上運賃の高騰が企業を悩ませています。2020年後半から、コンテナ不足によって海上運賃が高騰し、2022年に入ってもなお運賃の高騰は高水準のままです。そのほか、コンテナの供給制限や船舶の遅延といったいくつかの問題があります。
運賃高騰の背景
コンテナの供給制限
国際物流で扱われるコンテナは主に中国で生産されますが、米中の貿易摩擦の影響による先行きの懸念から、中国国内での新規コンテナの製造量が大幅に減少しました。
日本でも、国際輸送の混乱や部材供給不足が続いています。多くの企業が、材料の調達難、コストの高騰、受注残の拡大、輸送確保難、出荷遅延、運賃負担増といった負のサイクルに直面しています。また、JETRO(日本貿易機構)がインタビューした中の4分の3の企業が原材料の不足を訴え、そのうちの6割以上の企業が解消時期は2023年度以降としています。
船舶の遅延
コンテナが停滞し市場に出回らなくなったことで、輸送を行うコンテナ船も減少しています。その結果、予約が困難になり、LA(ロサンゼルスビーチ)やLB(ロングビーチ)など米西海岸の港湾で混雑が起こるようになりました。特に、コンテナヤードやトラック、鉄道などの内陸輸送に混雑が起きています。その影響で、貨物の滞留や滞船、船舶の運航遅延が発生しています。
2021年以降も、北米西海岸の港湾において滞船が継続、悪化しています。さらに、世界的な船舶の運航遅延も続いています。コンテナ不足については多少の改善が見られたものの、新型コロナウイルス拡大による港湾労働者の不足や、政府のロックダウンによる港湾活動の停止などが海上輸送に大きな遅延をもたらしています。
海上運賃の高騰
海上運賃は2021年3月から、1年間でなんと316%も高騰しています。海上輸送の需給ひっ迫に伴い、海上運賃がさらに上昇している背景があります。コロナ禍の影響で続く海上運賃の高騰は、業界関係者を深く悩ませています。
日本での動き
2021年度に国土交通省は、世界的な国際海上コンテナ輸送力および空コンテナの不足を受けて、日本発着の国際海上コンテナ輸送の需給のひっ迫状況の改善に向けた動きを始めます。具体的には、荷主、船社および物流事業者などの関係団体に対し、コンテナの効率的な利用や輸送スペースの確保に係る協力要請文書を発行しました。
荷主への要請
- コンテナの早期引取・早期返却
- 実際の予定を上回る過剰な予約や直前のキャンセルの自粛
- 日程上の余裕や経路上の柔軟性のある計画策定
船社への要請
- 臨時船の運航、日本発着貨物へのスペースの割当の確保、コンテナの新規調達の増加の検討
- フリータイム、デマレージ、ディテンション、カット日の適切な運用
こうした要請により、一部改善の兆しが見られるが、引き続き滞船が生じています。世界的な船舶運航スケジュールの乱れが正常化するには、一定の時間を要すると見られており、中には全体の状況の回復はそれほどしないと予想する関係者もいます。
ここで、コンテナ不足における海上運賃の高騰について今後の動向が気になる方も多いのではないでしょうか。
今回クロスワーク・マガジン編集部は、Willboxによる海上運賃の今後の見通しについて解説されたセミナーに参加してきました。果たして今後の動向はどうなっていくのか、Willboxの概要とセミナーの内容を以下に詳しくレポートしていきます。
国際物流の成長に貢献し続けるテクノロジーカンパニー
Willboxのサービス「Giho」
Willbox株式会社は、神奈川県横浜市にある創業2年半のスタートアップ企業です。
Willboxでは、国際物流デジタルプラットフォームサービス「Giho」を展開しています。Gihoを通じて、物流に関わる事業者の1日の生産性を、極限まで高めるためにさまざまなデジタル物流サービスを提供しています。Gihoを活用することで、プラットフォームに参加している物流企業160社へマッチングを行い、最適な物流事業者を組み合わせた見積もりを最短10秒程度で作成することができます。
Gihoについて詳しい情報は下記をご覧ください。
【セミナーレポート】今後の海上運賃の見通しは?
Willboxの見解では、高騰した海上運賃は今後下がることはありません。
海上運賃高騰の主な原因は新型コロナウイルスの影響だと思われた方も多いのではないでしょうか?それだけではありません。コロナウイルスのほかに、造船費用や人件費、船の燃料、管理費用の高騰も原因として挙げられます。
エコが注目される現代において、自動車のみならず船舶においても、クリーンな燃料を使用することが求められています。しかし、クリーンな燃料を生成するためのエンジンは決して安価ではありません。一方で、船の耐久年数に対してそうしたコストの支払いが厳しくなっているのも現状です。さらに、それに加えてコンテナ船の費用や船乗りの人件費の増加も重なり、結果的に海上運賃の高騰につながっているのです。
海運ビジネスのスキームにも変革が起こる可能性
海上運賃の高騰を受けて、海運ビジネス自体のスキーム(計画)にも、下記のような変革が起きることが予想されます。
- 従来のスキーム
- [回遊率×積載率]
- 現在のスキーム
- [単価×積載率]
- これからのスキーム
- [回遊率×単価×積載率]
上がってしまった海上運賃が戻らない以上、今後は、市況にあった価格帯のコンテナをいかにたくさん積み(積載率)、船を回すこと(回遊率)が海運ビジネスの計画に重要です。
Willboxの予想通りとなれば、海上運賃は今後も高水準が続くことになります。そのため、最適な選択をもってコストを抑える必要があります。
コストを抑えるための2つの重要なポイント
コストを抑えるために重要なポイントが2つあります。
出荷フローの変化
今まではCargo Readyに合わせて船を選定していました。そのため、物流は後工程でした。スペースに関しては、一時期の中国やアメリカの間でコンテナが回された時に比べれば、かなり供給量が多くなってきています。今後は最初に物流調整を行い、船のスペースやコストに合わせて出荷工程を組むことがポイントです。
ニーズの合致
今までは情報の非対称性があったので、船会社は荷主がいつ、どれくらいの荷物を持ってくるか分かりませんでした。これからは、船会社の「この地域を強くしたい」という航路を、あらかじめ把握したうえで荷主との連携を強めていく必要があります。
【セミナーレポート】今後の見通し・予想
ポイントは理解できても多数の船会社がある中で、荷主側が比較や検討を細部まで行うのは難しいですよね。また、ルートが違えば選定の仕方も変わってきます。
今回セミナーを主催したWillboxは、193航路・243ルートをデータベースとして持っています。膨大なデータによって、比較・検討を瞬時に行うことができます。また、すぐに調べて金額を掲示してくれるといったメリットもあります。
スエズ運河でのコンテナ船座礁事故や上海のロックダウン、ロシアによるウクライナ軍事侵攻など世の中の情勢は変わりやすいといえます。
そのなかで、「情報を武装して時代の流れに屈しない物流を構築」することが大切です。
つまり、人が直接的に結果を変えることが難しい今、一番手っ取り早い方法は情報武装なのです。
荷主側はこれをするべき!
荷主側が具体的にしなければならないことは、以下6点です。
- 過去にかかった物流コストを向け地ごと、製品ごとに比較する
- 船会社ごとに金額を比較する
- 船会社、乙仲(フォワーダー)との相互理解を深める
- INVOICE価格に対する物流コストの割合は何%か確認する
- 仕向地に対する航路やルートはどれくらいあるのか確認する
- ソーシング先の見直しをする
一方で業者側は、船会社のビジネスモデルの変化をキャッチできているか確認する必要があります。
安定してコンテナスペースを確保する方法
コンテナスペースの確保は大事ですが、今後安定してスペースを確保する方法はあるのでしょうか?
安定したスペースを確保するためには、ある程度業者を複数購買して、分析したうえで選択することがベストです。そこで、購買する業者がどのスパンで組んでいるのかを把握することや、さまざまな航路を持った業者と付き合うといった工夫が必要です。
物流コストを1%削減するのには、それ相応の努力が必要です。コストの引き下げは、会社にとってのインパクトがすごく大きいですよね。
物流にかかるコストの割合が7%程度におさまっていれば、状態は良好です。もし10%を超えているようであれば、現状を改善したほうが良いでしょう。
編集部のまとめ
今回取材したWillboxのセミナーによると、残念ながら、海上運賃はコロナ前の価格まで下がることはありません。そのため、元々お付き合いしている業者や今回ご紹介したWillboxに相談し、今後の自社の対応方法を工夫していきましょう。
以下のロゴをクリックでWillboxコーポレートサイトに移動します。
次回は「梱包資材費の高騰について」をテーマにWillboxがセミナーを開催します。気になる方は、ぜひ一度参加して国際物流の動向についてさらに理解を深めましょう。