人々の生活を支える「バス運転手」は、かつて待遇が極めて恵まれており、1990年代頃には人気の職業の一つでした。しかし近年、不況の影響により、バス業界の運転手不足問題が深刻化しています。
そんな動向の移り変わりが激しいバス業界の退職金事情について、気になる人も多いのではないでしょうか。
本記事では、バス運転手の退職金の相場はいくら位なのか、昔と今でバス運転手の給料水準はどう変わったのかなど、バス運転手の待遇について解説します。
また、20年働いたバス運転手の退職金の事例も紹介しているため、バス運転手として働いている方は参考にしてみてください。
バス運転手の退職金の相場
これまで、バス運転手の退職金の相場は、バス運転手の「待遇の変化」とともに変わってきました。
ここでは、バス運転手の過去〜現在の待遇について振り返り、この数十年でどのような変化が起こったのか、解説していきます。
昔は給料が高水準だった
1990年代頃、バス運転手の給料は、全国平均と比較すると極めて高いものでした。
しかし、市バス・地下鉄運転士だけが好待遇を受けていることが問題視されるようになり、段階的な見直しによるコストカットが迫られるようになりました。
京都市営バス運転手を例に挙げてみると、1999年に926万円だった平均年収は、2021年には542万円と、半分以下になっています。
現在は退職金制度自体が貴重
一昔前まではごく一般的な制度として捉えられていた退職金制度ですが、最近では徐々になくしている会社も多くなっています。ドライバー業界でも、退職時に高額の退職金をもらうのはなかなか難しいでしょう。
しかし、他の業界に比べてドライバー業界は、退職金制度をしっかりと残している会社が多いとも言われています。
退職金を支払わない会社が増えてきている現代の世の中では、退職金制度自体が貴重なものとなってきていることを認識しておく必要があります。
バス運転手の退職金の相場を考える上で押さえたいポイント
バス運転手の退職金の相場を考える上で、前提として押さえたいポイントがいくつかあります。
ここでは、それらの押さえたいポイントについて、一つずつ解説します。バス運転手の退職金事情の理解を深めるために、ぜひチェックしてみてください。
そもそも退職金は長期就労が前提
東京都産業労働局が実施したアンケート調査によると、大卒で勤続年数10年の方が受け取れる退職金は約110万円となっており、決して高い金額とは言えません。
同じアンケート調査の結果によると、勤続年数25年の方が自己都合で退職した際の退職金は約490万円であり、勤続年数30年以上の方が定年退職した際の退職金は約650万円でした。
この結果から退職金の額は勤続年数によって大きく異なっており、自己都合による退職か定年退職かによっても、かなりの差があることが分かります。
60代で退職する時代ではなくなった
以前は女性は55歳、男性は60歳から受け取ることができていた老成年金ですが、時代とともにその受給開始年齢が引き上げられており、現在では65歳です。
そのため、以前のように「60歳で定年退職し、その後は穏やかに第二の人生を生きる」ことも難しくなりました。
定年を引き上げたり、上限年齢のない継続雇用・再雇用を取り入れたりしている企業も増えていることから、60歳を超えても何らかの形で仕事を続ける人は年々増加しています。
これにより、継続雇用・再雇用の機会など働き続けられる環境があるかどうかが、職業選びの際に重視されるようになってきています。
出典:高年齢者雇用安定法改正の概要|厚生労働省 ハローワーク
関連記事:バス運転手は何歳まで採用される?70歳以上の高齢運転手でも働ける条件
待遇改善を試みるバス会社もある
もともとバス運転手は、勤務時間の長さや運転中のストレスなどから「大変そう」とマイナスなイメージを持たれがちな職業です。
これに加え、少子高齢化やコロナ禍による不況などによって、バス運転手の人手不足問題はさらに深刻化してきました。
このような人手不足問題を受け、待遇を見直しているバス会社も増えてきています。
具体的には、民間のバス会社の中に、公務員と同程度の退職金制度を採用する会社が出てくるなど、退職金問題も少しずつ改善されてきています。
20年働いたバス運転手の退職金が250万円
ここで、あるバス運転手Aさんの退職金に関するエピソードを紹介します。
とあるバス会社に中途入社し、路線バスの運転手として21年間勤務してきたAさんの退職金は250万円で、私鉄・バス12社の退職金の平均額である約573万円の半分にも満たないものでした。
しかし運転が大好きなAさんは、仕事のステップアップのため、けん引免許やフォークリフトの免許を取るための費用、そして趣味のバイクに退職金の250万円を注ぎ込み、「将来の心配はしていない」と明るい表情で語りました。
Aさんのエピソードから、退職金の額の大きさだけでなく、退職金の使い道や退職後のライフプランをしっかりと考えることが大切であると分かります。
バス運転手の退職金の相場に関連してよくある質問
退職金事情について明らかになってきたところで、退職金の相場に関してよくある質問をいくつか紹介します。
「大企業」「中小企業」「ドライバー業界」に分けて具体的な退職金の相場を紹介しているため、ぜひチェックしてみてください。
20年働いたら退職金はいくらくらいですか?
20年働いたときの退職金相場は、大卒の場合「自己都合による退職」で約340万円、「会社都合による退職」で約410万円となっています。
また、退職金を「退職一時金」として受け取るか「退職年金」として受け取るかによって支払う税金の額も変わるため、選択ができる場合は、退職金の受け取り方も慎重に検討する必要があります。
5年働いたら退職金はいくらくらいですか?
厚生労働省の調査によると、5年間働いたときの退職金相場は、大手企業の場合、自己都合なら59万円、会社都合なら118万円となっています。
中小企業の場合は、自己都合退職なら47万円、会社都合退職なら64万円であり、やはり大手企業と比べると全体的に低めの金額が設定されています。
ドライバーの退職金の相場は?
ドライバーの退職金の相場の平均額は、約570万円となっています。
しかしこれは、民間のバス会社か公務員のバス運転手かなど「バス会社ごとの差」や、「勤続年数の差」などによっても、大きく異なります。
出典:「2019年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」について|公益社団法人全日本トラック協会
バス運転手の退職金の相場についてのまとめ
今回は、バス運転手の退職金の相場について解説しました。
バス運転手の退職金制度は、残念ながら現状ではあまり期待できるものではないでしょう。しかしバス運転手は、体力や健康などの条件さえクリアすれば、比較的続けやすい職業です。
そのため、60歳を超えても働く必要の出てきた現代の日本に適している職業であるとも言われています。
「退職金があるかどうか」だけでなく、「どれだけ長く働き続けられるか」が、今後の職業選びで重要なポイントになるでしょう。
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