バス運転手の離職率は、業界における慢性的な課題の一つです。
運輸業界全体の労働力不足も大きく影響していますが、バス運転手固有の厳しい労働条件や職場環境、待遇の悪さも、離職率を挙げる要因となっています。
本記事では、バス運転手の離職率が高い理由やバス運転手が減っている理由、バス運転手の離職率を下げる方法などについて解説します。
バス会社の離職率は入社から4年で約50%近くになる
国土交通省の統計によると、バス会社の離職率は入社から4年で約50%近くになっています。
これは、新入社員が職場環境に適応する過程で、理想と現実のギャップを感じたり、職務に置いてさまざまな課題や困難に直面したりすることが原因だと考えられています。
出典:コミュニティバス運営に係る人件費の推移及び運転士不足の状況について|小金井市
バス運転手の離職率が高い4つの理由
続いて、バス運転手の離職率が高い理由を解説します。バス運転手の離職率が高い理由は以下の4つです。
- 睡眠時間があまり取れない場合があるから
- 拘束時間が長く体力がついていかないから
- 多くの経営難のバス会社で給料が安く設定されているから
- 乗客からのクレームが嫌になるから
では、一つずつ解説します。
睡眠時間があまり取れない場合がある
バス運転手の離職率が高い理由の1つ目は、睡眠時間があまり取れない場合があるからです。
早朝からのシフトや夜間運行、さらには長距離の運転が多いバス運転手は、十分な休息時間を確保することが難しいのが現実です。そして、十分な睡眠を取れない状況は、体と心に大きな負担をかけ、最終的には離職を選択することになるのです。
特に睡眠不足は、仕事のパフォーマンスにも悪影響を及ぼし、運転中の集中力の低下や判断力の鈍化を引き起こすため、事故のリスクも高まります。
そのため、バス運転手の健康と安全を確保し、離職率を低下させるために、企業は勤務スケジュールの見直しや休息時間の確保が必要となります。
拘束時間が長く体力がついていかない
バス運転手の離職率が高い理由の2つ目は、拘束時間が長く体力がついていかないからです。
バス運転手の仕事は、長時間の拘束が伴うことが一般的です。しかし、長時間の拘束は運転手にとって体力的にも精神的にも大きな負担となり、これが健康への悪影響を及ぼすことも珍しくありません。
そして、運転手自身が、このような厳しい労働条件下で限界を感じると、仕事に対する満足度が低下し、離職を検討するきっかけとなることがあるのです。
多くの経営難のバス会社で給料が安く設定されている
バス運転手の離職率が高い理由の3つ目は、多くの経営難のバス会社で給料が安く設定されているからです。
バス会社の運営は、高い維持費や運行コストがかかる一方で、運賃収入だけではこれらのコストを賄いきれない場合が少なくありません。特に地方や人口が少ないエリアでは、利用者数の減少や運賃の値上げが難しいことから、バス会社の経営は一層厳しい状況に置かれています。
このような状況下で、バス会社は運転手の給与や福利厚生の改善に十分な資金を割り当てることは難しく、結果として運転手の給料が低く設定されてしまう場合があります。
言うまでもなく、低賃金は運転手のモチベーションの低下をもたらし、離職の主要な要因となります。特に、長時間の労働や身体的な負担が大きい仕事に対して報酬が見合わないと感じた運転手は、より好条件の職場を求めて転職を検討する傾向にあります。
乗客からのクレームが嫌になる
バス運転手の離職率が高い理由の4つ目は、乗客からのクレームが嫌になるからです。
交通渋滞や遅延、乗車拒否など、運転手にはどうにもできない問題が発生した場合、乗客の不満は運転手に向けられがちです。そのため、バス運転手の仕事では、乗客からのクレームや苦情への対応が不可欠ですが、このような乗客からのクレームは運転手に精神的な負担を与え、離職を考えさせるきっかけとなります。
また、こういった負担を長期にわたって受け続けると、仕事に対する意欲の低下を招きます。そして、負担を避けるために別の職種やより穏やかな労働環境を求める運転手が増え、離職率の上昇につながるのです。
出典:路線バス運転手が足りない…続々と減便・廃止、運転手確保に苦しみ広告で「このままではヤバいです」|読売新聞オンライン
関連記事:バス運転手はきついからやめとけ?本当に過酷仕事なのかと将来性
バス運転手が減っている3つの理由
続いて、バス運転手が減っている理由を解説します。バス運転手が減っている理由は以下の3つです。
- バス運転手の高齢化が進み定年退職しているから
- 労働環境がきついから
- 平均年収が安いから
では、一つずつ解説します。
バス運転手の高齢化が進み定年退職している
バス運転手が減っている理由の1つ目は、バス運転手の高齢化が進み定年退職しているからです。
多くのバス会社では、勤続年数の長い経験豊富な運転手が大きな支柱となっていますが、近年ではこれらの運転手が次々と定年を迎えている現状があります。それにもかかわらず、新たな人材の確保と育成が、運転手の退職スピードに間に合っていないため、運転手の総数が減少する結果となっています。
また、経験豊かな運転手の減少は、新人運転手への技術の継承や指導体制の崩壊を招き、業界全体のサービス品質や安全性への影響も懸念されます。
労働環境がきつい
バス運転手が減っている理由の2つ目は、労働環境がきついからです。
バス運転手は日常的に、長時間労働、不規則なシフト、交通渋滞時の精神的ストレス、さらには乗客からの苦情への対応など、厳しい環境の中で働いています。
特に、このような労働環境は、新しくバス業界に入る可能性のある若年層にとって、バス運転手の仕事を選択する際の大きな障壁となっています。なぜなら、現代はワークライフバランスを重視する傾向が強まっているからです。
また、バス運転手の労働条件の厳しさは、既存の運転手がより好条件な他の仕事を求めて離職する原因ともなっています。
結果として、経験豊かな運転手の流出と新たな人材の確保が困難になり、運転手数の減少に拍車をかけているのです。
平均年収が安い
バス運転手が減っている理由の3つ目は、平均年収が安いからです。
長時間労働や不規則なシフト、精神的なストレスなど、厳しい労働条件にもかかわらず、その対価として受け取る給料が少ない場合、仕事の満足度やモチベーションは自然と低下します。
特に、生活費の増加や将来への不安が高まる中で、安定した収入を求めるニーズは増大しており、これらの要求を満たせない職種は人材を確保する上で苦戦します。
また、若年層や転職を考えている人々が、バス運転手の年収が他業種と比較して低いと感じてしまうと、バス運転手になる人は少なくなります。さらに、既にバス運転手として働いている人でも、より良い報酬を求めて他の職種への転職を検討することがあります。
このように、低い報酬はバス運転手の減少に拍車をかけているのです。
バス運転手の離職率を下げる7つの方法
続いて、バス運転手の離職率を下げる方法を紹介します。バス運転手の離職率を下げる方法は以下の7つです。
- 女性運転手を積極的に雇用する
- 新卒採用に力を入れる
- 定年延長の制度を取り入れる
- 短時間正社員制度を取り入れる
- 未経験の人を積極的に採用する
- デジタルを活用する
- 給付金や助成金が使えないか確認してみる
では、一つずつ解説します。
女性運転手を積極的に雇用する
バス運転手の離職率を下げる方法の1つ目は、女性運転手を積極的に雇用することです。
女性運転手を増やすことは、従来の男性中心の職場文化に良い刺激を与え、コミュニケーションやチームワークの向上につながります。これが職場の雰囲気を改善し、離職率の低下につながるのです。
また、女性特有の細やかな気配りや接客スキルは、サービス品質の向上にも関与します。同時に、乗客からのポジティブな意見は、運転手自身の仕事に対する満足度を高め、長期的な就業を促進します。
さらに、女性運転手の積極的な採用は、男性中心だったバス運転手のイメージを変え、より多様な人材に魅力を感じるきっかけを作ります。
このように、女性運転手を積極的に雇用することは、バス運転手としての離職率を下げるための戦略的な選択の一つなのです。
新卒採用に力を入れる
バス運転手の離職率を下げる方法の2つ目は、新卒採用に力を入れることです。
新卒者を対象とした採用活動を強化することで、若いうちから業界に対する理解と愛着を育ませることができます。これは、新卒者が長期的にバス運転手として就業するうえで、非常に重要な要素です。
また、新しい世代の運転手を積極的に採用することで、デジタル技術の活用や革新的なアイデアの導入といった、時代に即したサービスの向上が期待されます。
さらに、新卒採用に力を入れることは、業界全体のイメージ改善にもなります。若年層がバス運転手を選択することが社会全体でポジティブに捉えられるようになれば、より広い年齢層からの応募が期待でき、結果的に優秀な人材の獲得と離職率の低下につながります。
なお、新卒者は将来性や成長の機会を重視する傾向にあるため、バス運転手においても、明確なキャリアパスの提示や継続的な研修・教育の機会の提供が重要です。
このように、新卒採用に注力し、新卒者の育成とキャリア支援を行うことで、バス運転手の離職率を効果的に下げると同時に、将来のリーダーを育成する基盤を築くことが可能になるのです。
定年延長の制度を取り入れる
バス運転手の離職率を下げる方法の3つ目は、定年延長の制度を取り入れることです。
定年延長の制度は、運転手が希望する場合、定年を超えても引き続き勤務できるようにするもので、経験豊富な運転手を職場に留める手段の一つです。これにより、年配の運転手は豊富な経験や知識を若手運転手に伝えることができるようになり、職場全体のスキルとモチベーションが向上し、離職率の低下にもつながります。
また、長期間勤務する運転手が増えることで、バス会社は採用コストや新人育成コストの削減にもつなげられます。
このように、定年延長制度の導入は、バス運転手としての職業価値を高め、離職率の低下に貢献するのです。
短時間正社員制度を取り入れる
バス運転手の離職率を下げる方法の4つ目は、短時間正社員制度を取り入れることです。
短時間正社員制度は、従来のフルタイム勤務ではなく、短時間勤務でも正社員としての報酬や福利厚生を受けられるようにするもので、働き方の柔軟性を大幅に向上させます。
特に、家庭と仕事を両立させたい人、育児や介護などで時間に制約のある人、あるいは健康上の理由で長時間勤務が難しい人など、さまざまな事情を持つ運転手が仕事を続けやすくなります。
また、正社員としての保障があるため、短時間勤務であってもキャリア形成やスキルアップに向けたモチベーションの維持も期待できます。さらに、このような働き方の多様性を受け入れることで、より幅広い層からの採用が可能になり、特に女性や高齢者、若年層など、新たな人材の確保につながると考えられます。
総じて、短時間正社員制度の導入は、従業員のワークライフバランスの実現、離職率の低下、そして人材の多様性の確保を実現し、離職率の低下を促進すると言えるのです。
未経験の人を積極的に採用する
バス運転手の離職率を下げる方法の5つ目は、未経験の人を積極的に採用することです。
未経験者を積極的に採用することで、新しい視点や熱意を持った人材をバス業界に組み入れることが可能となります。これらの人材は、研修や教育プログラムを通じて、バス運転手に必要なスキルや知識を意欲的に身につけようとするため、既存のバス運転手にもプラスの刺激を与えられます。
なお、未経験者を対象とした採用では、綿密な研修プログラムやメンター制度など、新人運転手の成長を支援する仕組みが重要となります。これにより、未経験の新入社員は仕事の技術だけでなく、安全運転の重要性や顧客サービスの精神も学ぶことができます。
このように、未経験者を積極的に採用し、適切なサポートと教育を提供することは、バス運転手の離職率を下げる適切な戦略となるでしょう。
デジタルを活用する
バス運転手の離職率を下げる方法の6つ目は、デジタルを活用することです。
デジタル技術の活用は、バス運転手の日常業務をサポートし、労働環境を改善することにより、離職率の低下に貢献します。
例えば、スケジューリングソフトを使うことで、運転手の勤務時間や休日が公平かつ効率的に管理され、ワークライフバランスの実現が促進されます。これにより、運転手の疲労蓄積を防ぎ、仕事への満足度を高めることが期待できます。
また、オンライン研修プログラムを通じて、運転手は自分のペースで必要なスキルや知識を学ぶことができ、職業能力の向上につながります。さらに、デジタルツールを活用することで、運転手の勤務状況などのデータを収集・分析し、運転手が直面する問題の特定や改善策の立案が容易になります。
このように、デジタルツールの導入は、バス会社の運営効率の向上やサービス品質の向上にもつながり、職場の魅力を高めることが可能となるのです。
給付金や助成金が使えないか確認してみる
バス運転手の離職率を下げる方法の7つ目は、給付金や助成金が使えないか確認してみることです。
政府や地方自治体、関連団体から提供される資金支援は、運転手の給与向上、職場環境の改善、研修プログラムの充実など、労働条件を向上させる目的で活用可能です。特に、労働市場の変化や社会的ニーズに応えるための研修、福利厚生の向上などに関しては、助成金を活用することで大幅な改善が期待でき、離職率の低下につながります。
また、調達した資金を健康管理プログラムの充実に充てることにより、運転手の健康状態の維持が図られ、職場の満足度が向上します。このような取り組みは、運転手が長期間にわたって安心して働ける環境を作り出し、新たな人材の確保にもつながります。
さらに、助成金や給付金の活用は、会社全体の運営効率の向上やサービス品質の改善にも役立ちます。例えば、最新の安全技術や環境に優しい運行システムへの投資は、長期的に見て運営コストの削減や顧客満足度の向上につながり、結果として会社の競争力を高めることになります。
このように、給付金や助成金の利用可能性を探ることは、財政的な負担を軽減しながら、バス運転手の労働環境を改善し、離職率を下げるための有効な戦略なのです。
バス運転手になっても離職する人の特徴
バス運転手は、高い集中力と忍耐力を要求され、決められたルートを安全かつ正確に運転し続ける必要があります。そのため、運転自体に興味を持てない人や、長時間の作業に耐えられない人は、この仕事を続けることは困難であると言えます。
また、バス運転手は乗客との直接的なやり取りが頻繁にあり、サービス業としての側面も強いため、人とコミュニケーションを取ることに抵抗がある人や、忍耐力や柔軟性に欠ける人は、バス運転手に不向きであると言えるでしょう。
さらに、時間や安全性を優先する職務の性質上、細かなスケジュール管理やルールに従うことが苦手な人、自己管理能力が低い人も、バス運転手として職務を遂行することは難しいかもしれません。加えて、責任感に乏しく、自発的に行動を起こすことができない人も、安全を最優先し、時には迅速な判断が求められるバス運転手には不向きと言えます。
関連記事:バス運転手を辞めたいと感じる理由とは?転職する前に知っておくべきこと
バス運転手の離職率に関するよくある質問
ここからは、バス運転手の離職率に関するよくある質問に回答します。バス運転手の離職率に関するよくある質問は下記の3つです。
- バスの運転手が少ないのはなぜですか?
- 日本のバス運転手は何人くらいいますか?
- バス運転手の男女割合はどうなっていますか?
では、一つずつ解説します。
バスの運転手が少ないのはなぜですか?
バス運転手の数が少ない理由は、複数の要因が絡み合っています。
まず、バスの運転手は長時間の勤務や不規則なシフトが多く、休日や夜間に勤務することも少なくありません。また、バス運転手として働くためには、専門的な技能や資格が必要であり、これらを習得するための時間とコストが求められます。
さらに、バス運転手は他業種と比較した場合の給与水準が低く、福利厚生も不十分なことが多いです。加えて、高齢化による運転手の定年退職が増加している一方で、若年層の関心が低いことも、運転手不足の背景にあります。
そして、交通事故や乗客とのトラブルなど、仕事の性質上避けられないリスクも、ネガティブな要因となっていることも否めません。
このように、バスの運転手が少ない理由は、労働条件、経済的なインセンティブ、社会的認識、人口構造の変化など、多岐にわたる課題が複雑に絡み合っている結果と言えるのです。
日本のバス運転手は何人くらいいますか?
国土交通省によると、2020年時点のバス運転士数は125,320人です。
バス運転手の男女割合はどうなっていますか?
女性のバス運転手の割合は、全体の2%と言われています。そのため、バス運転手は圧倒的に男性が多い職業なのです。
バス運転手の離職率についてのまとめ
今回はバス運転手の離職率について解説しました。
運転手の離職の増加で困っているバス会社の担当者の方は、本記事を参考にして、バス運転手の離職率を低下させてみてください。
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