サービスエンジニアとは、自社製品のメンテナンスや機械が故障した際に対応する仕事です。会社のコピー機や、通信機器といった機械を良好な状態で維持するうえで、欠かせない存在と言えます。
サービスエンジニアが行う業務は、ロボットによる代行が難しいため、今後も需要が落ちることはなく、将来性のある職種と言えます。
機械いじりなどが好きで、サービスエンジニアを目指す人も少なくありません。
今回は、サービスエンジニアの仕事内容を中心に、従事するうえで必要なスキルや業界の現状などを分かりやすく解説していきます。
【この記事のまとめ】 ・自社製品のメンテナンスや故障に対応するのがサービスエンジニアの仕事 ・メンテナンス技術だけでなくコミュニケーション能力も必須 ・セールスエンジニアは「販売サポート」がメイン業務 ・サービスエンジニアは身体的負担が大きく生活リズムを保つのが難しい |
サービスエンジニアとは
サービスエンジニアとは、機械製品のメンテナンスや保守を行う役割を担っており、各種機械のかかりつけ医のような存在です。
自社の機械を導入している企業で、機械に異常が見つかった際に現地へ出向き、点検や部品の交換などを行います。
各種作業が終ったあとは、なぜ異常が出たのか説明したうえで、要望に応じて使用方法などをアドバイスします。
ちなみに、サービスエンジニアとして扱う主な機器は以下の通りです。
- パソコン、電話、複合型コピー機
- 医療機器
- 各種製造機器
- Webソフトウェアシステム
- 家電製品
- 建築設備
- プラント設備
- 梱包機器
- 半導体製造装置
自社製品を長く使い続けてもらうために、顧客と良好な関係を保つ役割も担っている、重要なポジションと言えるでしょう。
顧客の要望に応じて、別の商品を紹介するといった営業の仕事をこなすこともあります。
出典:第5回改定 厚生労働省編職業分類 職業分類表 改定の経緯とその内容|厚生労働省
サービスエンジニアは派手さはないが需要のある安定している仕事
サービスエンジニアは、営業職や開発職のように花形の仕事ではないものの、メーカーにとって欠かせない存在です。
ロボットによる代行が難しく、今後も需要の落ちることがない職種と言えるでしょう。
出張が多く、決して楽な仕事ではないものの手に職をつければ長く活躍できます。
求人の中には業務委託のものも多く、経験を積めば独立することも十分可能です。
サービスエンジニアに求められる能力とは
サービスエンジニアとして働くうえで必須となる資格はなく、未経験からでも挑戦可能です。
しかしながら、機械のあらゆる異常を解決し顧客の要望に応えるには、さまざまな能力が必要です。
・機械のメンテナンス技術
・顧客と良好な関係を築くコミュニケーション能力
・顧客の要望を理解し専門的な内容をわかりやすく伝える能力
・海外出張を見据えるなら語学力
・取扱い製品に対する幅広い知識
・トラブルが発生したときに柔軟な対応や迅速な判断ができる能力
・常に勉強する意欲
・スケジュールの「管理・調整」能力
ここでは、サービスエンジニアとして活躍するために必要な8つのスキルについて、実際の業務も踏まえながら解説していきます。
1.機械のメンテナンス技術
サービスエンジニアとして働くうえで、最も重要と言えるのが「機械のメンテナンス技術」です。
前述した通り、サービスエンジニアは自社で扱う機械のあらゆる異常を解決する役割を担っているからです。
機械の構造や仕組みはもちろん、正常に稼働させるためのメンテナンス方法などを把握していなければなりません。
また、ソフトウェアといったシステムを扱う場合は、各使用環境における動作環境や設定方法も理解しておく必要があります。
どうしても解決できない異常の場合は、担当部署に相談することも可能ですが、基本的に全て1人で作業をこなします。
2.顧客と良好な関係を築くコミュニケーション能力
メンテナンス技術と同様に、サービスエンジニアとして働くうえで、欠かせないのがコミュニケーション能力です。
機械に異常が発生した場合、その原因を調べるために普段の使用状況や使用量について、ヒアリングすることからスタートしていきます。
故障などにより、業務に支障がでている状況の中、顧客に納得してもらうには分かりやすく説明する必要があります。
説明が不十分であった場合、他社製品へ切り替えられてしまう可能性もあり、高いコミュニケーション能力が必須と言えるでしょう。
3.顧客の要望を理解し専門的な内容をわかりやすく伝える能力
コミュニケーション能力と似ていますが、機械の現状をいかに分かりやすく顧客に伝えられるかが非常に大切です。
難しい専門用語などを並べて説明したところで、顧客に納得してもらえません。
また、仮に故障の原因が相手側にあったとしても、そのまま伝えると揉めてしまう恐れがあります。
顧客と良好な関係を築くためには、分かりやすく気遣いのある説明が大切です。
4.海外出張を見据えるなら語学力
日本製の機械は、海外での人気が高く、医療機器や半導体製造装置などは世界各国で使用されています。
このようなメーカーで働いている場合、海外出張も珍しくないことから語学力も必要です。
全てのメーカーが当てはまるわけではないため、求人を探す際には語学関係の応募条件もチェックするようにしましょう。
5.取扱い製品に対する幅広い知識
機械の故障などで出張した際には、製品の使い方に関する質問を受けることがよくあります。
より効率良く使う方法や、各種機能の設定方法といった内容のほかに、通信機器の場合はおすすめのプランなどについて質問されることもあります。
顧客の満足度を上げるのはもちろん、新しく契約してもらうためには、自社の関連サービスについても熟知しておかなければなりません。
6.トラブルが発生したときに柔軟な対応や迅速な判断ができる能力
顧客満足度を下げないためには、すぐに異常を解決し正常に使える状態にしてあげなければなりません。
応急処置だけしてすぐに使用できるようにしたり、消耗した部品を全て交換して長く使えるようにしたりと、顧客の要望に応じて対応します。
あらゆる異常に対して迅速に対応するには、機械に関する知識はもちろん関連部署との連携も求められます。
7.常に勉強する意欲
顧客の要望に応じて、全ての機械は日々改良が行われています。
商品に対する料金プランなども同様で、一度覚えたら大丈夫というわけではありません。
新しい商品を発売する際は、どのような機能が追加されたのか、どのようなことができるようになるのか、その構造まで全て覚えなおす必要があります。
常に学ぼうとする意欲がなければ、サービスエンジニアの仕事は務まりません。
8.スケジュールの「管理・調整」能力
機械の故障などは、いつどこで発生するか分からないため、最適なスケジュール調整が求められます。
故障の内容や緊急性、場所などを踏まえて効率の良いスケジュールをたてていきます。
中には、夜間や早朝関係なく対応しなければならない会社もあるため、就職する際は勤務条件の詳細まで確認しておくようにしましょう。
関連記事:サービスエンジニアは楽しい?向いている人の特徴も紹介
サービスエンジニアとセールスエンジニアの違い
サービスエンジニアの仕事内容や求人を調べていると「セールスエンジニア」という職種を見かけることがあります。
似たような名前ですが、担当する業務に違いがあります。
・サービスエンジニアは機械製品の「保守・修理」を担当
・セールスエンジニアは機械製品の「販売サポート」を担当
ここでは、各職種の役割や具体的な仕事内容について解説していきます。
サービスエンジニアは機械製品の「保守・修理」を担当
サービスエンジニアとは、自社製品の保守や修理を担当します。
「機械がいつも通り動かない」「エラー表示が出ている」といった、連絡を受けて顧客の元へ向かいます。
現場に到着すると、顧客に具体的な症状などをヒアリングしたうえで、異常を解消するのが仕事です。
セールスエンジニアは機械製品の「販売サポート」を担当
セールスエンジニアは、見込客の要望や課題をヒアリングしたうえで、最適な自社の商品を提案し、販売するのが仕事です。
ただ自社製品の機能などを説明するだけでなく、他の会社の導入事例なども踏まえながら、課題の解決策を具体的に提案します。
導入が決定すると、使用する社員に対して研修指導を実施するまでが、セールスエンジニアの仕事です。
ちなみに求人を見ていると「カスタマーエンジニア」や「サポートエンジニア」といった名前も見かけますが、仕事内容はサービスエンジニアとほぼ同じです。
関連記事:フィールドエンジニアとサービスエンジニアの違いは?
サービスエンジニアがきついと言われる理由
あらゆる機械の保守や修理を行うサービスエンジニアは、各メーカーに欠かせない重要な存在です。
しかしながら、ネット上で仕事について調べると「底辺の仕事」「やめとけ」といったネガティブな情報も見受けられます。
このような情報がネット上で出回っている理由は複数あります。
・肉体労働のイメージが強い
・客先にあわせるため休憩が取りにくい
・「営業・開発」に比べ評価されにくい
・「コストセンター」と呼ばれ昇給しにくい
このような情報が本当なのか、現役サービスエンジニアの声も踏まえながら解説します。
肉体労働のイメージが強い
サービスエンジニアは、故障などの連絡を受けて顧客の元へ向かい、機械の症状に応じて分解しながら部品を交換します。
扱う機械によっては、重い部品やメンテナンス機器を持ち運ばなければならず、作業着が油などで汚れることも日常茶飯事です。
全国を行き来するため、長距離の移動で体力を消費しやすく、体力的に辛いといった現役エンジニアの声も少なくありません。
客先にあわせるため休憩が取りにくい
扱う機器にもよりますが、基本的に機械メーカーでは故障や異常に24時間365日、いつでも対応しています。
シフト制で出勤日や労働時間を調整しているものの、常に仕事用のスマートフォンを持ち歩いているという人も少なくありません。
故障の内容によっては、休日や仕事外の時間でも連絡が入ることもあり、計画的に休みにくい仕事と言えるでしょう。
他の機械が稼働中に作業ができないため、深夜や早朝に出向かなければならないケースもあります。
一方で「無事に修理できた時には直接感謝の声をかけてもらえる」といった声もありました。
「営業・開発」に比べ評価されにくい
サービスエンジニアは、メーカーにとって欠かせない存在である一方で、社内で評価されにくいと言えます。
世にない新製品を生みだす開発職や、自社製品を売り込む営業職と異なり、成果が数字として表わしにくいことが関係しています。
現役で働いている人の声には「営業の言いなり」「メーカーの尻ぬぐい」に感じる時があるといった声もありました。
一方で「メーカー勤務でボーナスなどはしっかり反映されるから満足している」といった声もあります。
「コストセンター」と呼ばれ昇給しにくい
機械の故障は、顧客にとってネガティブな出来事であり、機械に問題がある可能性もゼロではないため、メーカー側も堂々と対応しにくい状況です。
修理が必要な場合は、費用をなるべく抑えたいと考えるのが当たり前であり、十分な利益を確保できるほど修理代を高くするわけにはいきません。
エンジニアの移動費や工賃、宿泊費などを踏まえるとほぼ赤字と言っても過言ではないほどです。
そのため、メーカーによっては負債を抱える部署としての扱いを受けやすく、営業や開発と違って昇給もしづらい傾向です。
この他には「社外で機械がなおるまで作業するので、残業の概念がなくなっている」といった声もありました。
一方で「それなりの収入だし売上などのノルマもないので気楽でいい」といった声もあります。
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サービスエンジニアの求人例
サービスエンジニアとして働くには、メンテナンス技術やコミュニケーション能力などが必須であるものの、未経験者を歓迎している求人も少なくありません。
・求人事例①精密測定機器のメンテナンス
・求人事例②各種分析機器の設置作業および修理対応
・求人事例③医療機器の保守・修理業務全般
ここでは、実際にあるサービスエンジニアの求人を3つ紹介していきます。
求人事例①精密測定機器のメンテナンス
1つ目は、精密測定機器を扱うメーカーの求人です。
主な仕事内容 | 1年毎に機械のメンテナンスを実施。機械を分解してから洗浄を行いグリスなどを塗布して再組み立てする。 |
応募条件 | 未経験者歓迎、英語力不問 |
雇用形態 | 正社員 |
給料 | 21万6,400円~23万7,300円(賞与年2回) |
勤務時間 | フレックスタイム制 |
休日 | 完全週休2日制(土日)・年間休日126日 |
福利厚生 | 各種出張手当あり、退職金制度あり、飲料やカップ麺支給 |
作業のほとんどがメンテナンスであり、未経験者でも社内教育やOJT制度が用意されているため安心です。
収入はそこまで高くないものの、年間休日の多さが魅力の求人です。
求人事例②各種分析機器の設置作業および修理対応
2つ目は、電子関連分野や自動車用品分野で使用されている各種分析機器のサービスエンジニア求人です。
主な仕事内容 | 分析機器の搬入や設置作業。顧客に対する操作説明や書類作成。定期的なメンテナンス作業や修理作業 |
応募条件 | 短期大学卒業者以上・理系学部出身であること |
雇用形態 | 正社員 |
給料 | 24万6,500円~(賞与年2回) |
勤務時間 | 8:45~17:30分 |
休日 | 完全週休2日制・年間休日125日 |
福利厚生 | 記載なし |
2つ目の求人は、学歴に指定はあるもののサービスエンジニアとしての経験や知識に指定はありません。
出張エリアは国内だけでなく、中国・台湾・韓国などもありますが日系企業ばかりであるため、語学力は必要ないとのことでした。
求人事例③医療機器の保守・修理業務全般
3つ目の求人は、画像診断装置の保守や修理をメインで行っている企業の求人です。
主な仕事内容 | 医療機器の設置や保守、修理業務、保守契約の締結促進 |
応募条件 | 医療機器のサービスエンジニア必須、普通自動車免許 |
雇用形態 | 正社員 |
給料 | 年収600~900万円 |
勤務時間 | 9:00~18:00 |
休日 | 完全週休2日制(土日)・年間休日123日 |
福利厚生 | 各種保険完備、退職金制度あり |
3つ目の求人は、経験者のみ応募可能な求人ということもあり、想定年収は600~900万円と高水準です。
その他で特別な応募条件はなく、サービスエンジニアとして経験を積めば、このような求人にも応募できるようになります。
サービスエンジニアとは?に関してよくある質問
最後はサービスエンジニアに関する、3つのよくある質問に答えていきます。
・サービスエンジニアの大変なことは何ですか?
・サービスエンジニアの離職率は?
・サービスエンジニアの年収はいくらですか?
サービスエンジニアを目指すかどうかを決めるうえで役立つ内容ですので、参考にしてみてください。
サービスエンジニアの大変なことは何ですか?
サービスエンジニアの仕事で、大変に感じる主な内容は以下の通りです。
- 早朝や深夜に対応しなければならないことがある
- 常に学び続けなければならない
- 1人で対応するためプレッシャーが大きい
- 出張が多くて家族とすごせる時間が少ない
各メーカーで働くサービスエンジニアの声を集めたものであるため、全ての項目が必ず当てはまるわけではありません。
残業が少なく年間休日の多い求人もあれば、出張範囲の狭い求人もありますので、ある程度要望に沿った働き方もできます。
サービスエンジニアの離職率は?
サービスエンジニアの離職率に関する公的なデータはないものの、他の職種と比べても離職率はそこまで高くないと推測されます。
求人の中には、離職率4%以下と記載している求人が見受けられました。
決して楽な仕事ではないものの、仕事が安定しており経験を積めばある程度の年収を見込めることが、離職率の低い要因と考えられます。
サービスエンジニアの年収はいくらですか?
令和4年度・賃金構造基本統計調査における、産業用ロボットの保守・メンテナンス職の平均年収は515万2,000円です。
同年度における全産業の平均年収は461万円であることから、高水準と言えるでしょう。
実際にあるサービスエンジニアの求人では、想定年収を400〜600万円としているものが多い印象でした。
出典:職業情報提供サイトjobtag|産業用ロボットの保守・メンテナンス|厚生労働省
関連記事:サービスエンジニアの年収はなぜ高い?年収アップに役立つ資格も
サービスエンジニアとは?についてのまとめ
サービスエンジニアとは、自社で販売している機械の保守やメンテナンスを行う仕事です。
医療機器や産業用ロボット、家電といったあらゆる機械メーカーに欠かせない存在です。
就職するうえで必須となる資格はないものの、機械に関するメンテナンス技術やコミュニケーション能力などが必要です。
出張が多く深夜や早朝に対応しなければならないことから、底辺の仕事といった情報もありますが、収入が高く将来性もある職種です。
また、求人が多く休日や収入など、要望に応じた働き方をある程度選べます。
未経験者を歓迎している求人も多いため、興味がある方は転職も検討してみてはいかがでしょうか。
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