第一種電気工事士の試験概要や難易度について、気になっている人もいるのではないでしょうか。
第一種電気工事士は、最大電力500kW未満のビルや商業施設などの電気設備工事を担当できる資格です。2023年度まで第一種電気工事士の資格試験は年1回の開催でしたが、2024年度からは年2回に変更されています。
また、第一種電気工事士の試験では勉強時間を十分に確保すれば、合格を狙えるでしょう。実際に、学科ならびに技能試験の合格率はそれぞれ60%前後で推移しています。
この記事では、第一種電気工事士の試験概要や合格率などを紹介します。これから第一種電気工事士の資格取得を検討しているのであれば、ぜひ参考にしてください。
第一種電気工事士の試験概要
第一種電気工事士は、最大電力500kW未満のビルや商業施設などの電気設備工事を担当できる資格です。参考ですが、第二種電気工事士の業務範囲は600V以下で受電する設備の電気工事に限定されています。
第一種電気工事士の試験は、学科と技能の2種類あります。学科と技能のいずれも合格しなければ、資格取得できません。
第一種電気工事士の試験概要について、次の5つの項目で解説します。
- 受験資格
- 受験申込の受付期間
- 試験地・受験手数料
- 学科試験と技能試験の内容
- 試験日・合格発表日
受験資格
第一種電気工事士の試験を受験するために、満たすべき要件は特段設けられていません。しかし、免状交付のためには、3年以上の実務経験が求められています。
受験申込の受付期間
第一種電気工事士を取得するには、試験に合格する必要があります。また、試験を受けるためには受験申込が必要です。
2024年度の受験申込にあたって、上期は2月9日(金)から3月8日(金)、下期は7月29日(月)から8月15日(木)と定められています。
ちなみに、2023年度までは年1回の試験開催でした。そのため、2023年度の受験申込の受付期間も1度のタイミングしかなく、6月19日(月)から7月6日(木)に限定されていました。
つまり、年1回の試験が年2回に増えたので、第一種電気工事士を目指しやすくなったと言えるでしょう。
試験地・受験手数料
第一種電気工事士の試験は、全国各地で開催されています。また、開催地は大きく分けて10地区です。
- 北海道地区
- 東北地区
- 関東地区
- 中部地区
- 北陸地区
- 関西地区
- 中国地区
- 四国地区
- 九州地区
- 沖縄地区
学科試験をCBT方式で受ける場合は、全都道府県で受験できます。CBT方式とは、「Computer Based Testing」の略で、PCを使用した試験方式です。
また、受験手数料は申込方法によって異なります。インターネットで実施した場合は10,900円ですが、郵送による書面申込の場合には11,300円準備しなければなりません。
学科試験と技能試験の内容
はじめに学科試験の内容は次のとおりです。
科目 | 内容 |
電気に関する基礎理論 | 電流・電圧・電力および電気抵抗導体および絶縁体交流電気の基礎概念電気回路の計算 |
配電理論および配線設計 | 配電方式電線路配線 |
電気応用 | 照明・電熱および電動機応用 |
電気機器・蓄電池・配線器具ならびに電気工事用の材料および工具ならびに受電設備 | 電気機器・蓄電池および配線器具の構造・性能および用途電気工事用の材料の材質および用途電気工事用の工具の用途受電設備の設計、維持および運用 |
電気工事の施工方法 | 配線工事の方法電気機器・蓄電池および配線器具の設置工 事の方法コードおよびキャブタイヤケーブルの取付方法接地工事の方法 |
自家用電気工作物等の検査方法 | 点検の方法導通試験の方法絶縁抵抗測定および絶縁耐力試験の方法接地抵抗測定の方法継電器試験の方法温度上昇試験の方法試験用器具の性能および使用方法 |
配線図 | 配線図の表示事項および表示方法 |
発電施設・送電施設および変電施設の基礎的な構造および特性 | 発電施設・送電施設および変電施設の種類・役割その他の基礎的な事項 |
自家用電気工作物等の保安に関する法令 | 電気工事士法、同法施行令及び同法施行規則電気事業法・同法施行令・同法施行規則・電気設備に関する技術基準を定める省令および電気 関係報告規則電気工事業の業務の適正化に関する法律・同法施行令および同法施行規則電気用品安全法・同法施行令・同法施行規則および電気用品の技術上の基準を定める省令 |
続いて、技能試験の内容は次のとおりです。
- 電線の接続
- 配線工事
- 電気機器および配線器具の設置
- 電気機器・蓄電池・配線器具ならびに電気工事用の材料および工具の使用方法
- コードおよびキャブタイヤケーブルの取付け
- 接地工事
- 電流・電圧・電力および電気抵抗の測定
- 自家用電気工作物等の検査
- 自家用電気工作物等の故障箇所の修理
技能試験では、事前に候補問題が公表されます。その中から1問出題されるので、欠陥なく配線しなければなりません。
第一種電気工事士の学科・技能試験では、広範囲にわたって学習する必要があるので、計画的に取り組みましょう。
第一種電気工事士の学科・技能試験では、広範囲にわたって学習する必要があるので、計画的に取り組みましょう。
関連記事:電気工事士資格一種・二種の技能試験|実技試験の内容と難易度
試験日・合格発表日
第一種電気工事士の試験は2023年度まで年1回の開催でした。しかし、2024年度からは上期と下期の年2回開催に変更されています。
2024年度の上期と下期、ならびに学科と技能それぞれの試験日は次のとおりです。
上期試験 | 下期試験 | |
学科試験※CBT方式 | 4月1日(月)から5月9日(木)(39日間) | 9月2日(月)から9月19日(木)(18日間) |
学科試験※筆記方式 | ー | 10月6日(日) |
技能試験 | 7月6日(土) | 11月24日(日) |
CBT方式の場合、自分で受験日を決められる大きなメリットがあります。一方、技能試験には、CBT方式は導入されていません。
参考:第一種電気工事士試験 実施機会の拡大について|一般財団法人電気技術者試験センター
関連記事:電気工事士で難易度が高いのは一種か二種か?合格率を紹介
第一種電気工事士試験に関する注意点
第一種電気工事士試験に関する注意点は次の2つです。
- 試験申込時の注意点
- 学科試験や技能試験の注意点
それぞれの注意点について解説します。
試験申込時の注意点
第一種電気工事士試験の申込におけるポイントは、大きく分けて次の2つです。
- 申込期限内に対応する
- 期限内に支払まで完了する
まず、申込期限には注意が必要です。期限を過ぎてしまうと申込書類を受理してもらえないため、注意しましょう。さらに、申込書類の記入には正確性が求められます。特に、氏名や住所、連絡先などの基本情報に誤りがあると、受験票の発送に問題が生じる可能性があります。
また、受験料の支払にも注意が必要です。支払期限を確認し、期日までに完了させるようにしましょう。
学科試験や技能試験の注意点
学科や技能試験の際には、試験開始前に会場に到着しておきましょう。
実際に、到着時間が試験開始から学科の場合は30分後以降、技能の場合は5分を経過すると、受験できなくなります。
第一種電気工事士試験の合格率
令和5年度に実施された第一種電気工事士の合格率は次のとおりです。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
学科試験 | 33,035人 | 20,361人 | 61.6% |
技能試験 | 26,143人 | 15,834人 | 60.6% |
例年、学科ならびに技能の合格率は概ね60%前後で推移しています。
合格率を見てわかるように、第一種電気工事士は計画的に試験勉強を実施できると、比較的目指しやすい資格と言えるでしょう。
参考:令和5年度第一種電気工事士学科試験の結果について | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター
参考:令和5年度第一種電気工事士技能試験の結果について | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター
第一種電気工事士試験の勉強方法
第一種電気工事士合格に向けての勉強方法は学科と技能によって異なります。
学科と技能の勉強方法について解説します。
学科試験の勉強方法
学科試験の勉強方法は主に3つです。
- 参考書で勉強する
- 動画教材やYouTubeで勉強する
- 学校や通信講座で勉強する
それぞれの勉強方法について解説します。
参考書で勉強する
参考書を使った勉強方法は、自分のペースで学習できる点が最大のメリットです。参考書は体系的に情報が整理されており、必要な知識を順序立てて学べます。
また、問題集や過去問を使って実践的な練習もできるため、試験対策には効果的です。ただし、自己管理が求められるため、自律して計画的に勉強を進められる人に向いています。
動画教材やYouTubeで勉強する
動画教材やYouTubeを利用する方法は難しい概念や手順を実際に見て学べるので、理解が深まりやすいのが大きなメリットです。多くの動画教材は講師が丁寧に解説してくれるため、独学では分かりにくい部分もクリアになります。
また、YouTubeは無料コンテンツが中心のため、コストを抑えつつ効率的に学べるでしょう。
学校や通信講座で勉強する
学校や通信講座を利用する方法は、専門の講師から直接指導を受けられるため、理解度が高まります。また、定期的なクラスや講座があるので、勉強のリズムを保ちやすく、モチベーションの維持にもつながります。
さらに、質問や疑問点をその場で解決できるのも大きなメリットです。通信講座の場合、自宅で学習できるので、時間や場所に制約がないのも利点です。
技能試験の勉強方法
技能試験の勉強方法のポイントは主に3つです。
- 候補問題の複線図作成から対策する
- 候補問題を実際に施工する
- 欠陥の内容について理解しておく
それぞれのポイントについて解説します。
候補問題の複線図作成から対策する
技能試験の勉強を始める際、候補問題の複線図作成から対策を実施しましょう。複線図を作成すると、どのような配線が必要かを理解しやすくなります。
複線図は試験で出題される問題を解くための設計図のようなものです。そのため、作成すると頭の中で施工手順をシミュレーションできます。
候補問題を実際に施工する
複線図を作成したら、次に候補問題を施工しましょう。施工を行うと、実際の作業の流れや時間配分、細かい技術的なポイントを実感できます。
特に、施工手順や工具の使い方に慣れるのは非常に大切です。施工中には、複線図での計画通りに進めるかを確認し、問題点があれば改善方法を考えましょう。
欠陥の内容について理解しておく
最後に、施工中に発生する可能性のある欠陥について理解するのも大切です。欠陥の原因とその対策を知っておくと、試験中に問題が発生しても迅速に対応できます。
たとえば、配線の接続不良や工具の使用ミスなど、よくある欠陥について事前に学習し、それらを防ぐための対策を立てておきましょう。
第一種電気工事士試験の勉強時間の目安
第一種電気工事士は第二種に比べて難易度の高い資格ですが、試験対策をすれば合格できる可能性は十分にあります。
一般的に、第一種電気工事士の資格取得のためには、300時間程度の学習時間が必要と言われています。
第一種電気工事士の年収
令和5年賃金構造基本統計調査を踏まえたデータによると、電気工事士の平均年収は550.9万円です。また、第一種電気工事士は第二種と比較して広範囲の電気工事を担当できる資格のため、年収も高くなりやすいと言われています。
参考:電気工事士 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
関連記事:電気工事士の年収を年代別・資格別・学歴別・経験年数別に解説
第一種と第二種電気工事士の違い
第一種電気工事士は、最大電力500kW未満のビルや商業施設などの電気設備工事を担当できる資格です。一方で、第二種電気工事士の業務範囲は600V以下で受電する設備の電気工事に限定されています。
また、資格取得について、第一種の場合には試験合格以外に実務経験が求められていますが、第二種にはありません。
関連記事:電気主任技術者と電気工事士の違いは業務内容|役割・年収・資格の比較
第一種電気工事士資格を取得するメリット
第一種電気工事士を取得するメリットは主に3つです。
- 携われる工事の規模に制限がなくなる
- 知識やスキルの証明になり昇格や昇給しやすくなる
- キャリアアップを目的とした転職で有利になる
それぞれのメリットについて解説します。
携われる工事の規模に制限がなくなる
第一種電気工事士の資格があれば、携われる工事の規模が広くなります。
第二種電気工事士では取り扱える電圧や工事内容に制限がありますが、第一種電気工事士は大規模な工事や高電圧の電気工事にも従事可能です。
知識やスキルの証明になり昇格や昇給しやすくなる
第一種電気工事士の資格は高度な知識やスキルの証明となり、昇格や昇給の際に有利になります。第一種電気工事士は第二種と比較して難易度の高い資格です。
そのため、職場での信頼度が増し、責任のあるポジションに就く機会が増えるとともに、収入面でもプラスの影響を受けやすくなるでしょう。
キャリアアップを目的とした転職で有利になる
第一種電気工事士の資格があれば、キャリアアップを目的とした転職活動でも大きなアドバンテージとなります。電気工事業界では資格の有無が重要視されるため、第一種電気工事士の資格保有により市場価値を高められるでしょう。
第一種電気工事士に関するよくある質問
第一種電気工事士に関するよくある質問は次のとおりです。
- 第一種電気工事士を取得できるのはすごい?
- 第一種電気工事士の難易度はどれくらい?
それぞれの質問について解説します。
第一種電気工事士を取得できるのはすごい?
第一種電気工事士の資格を取得していると、業界内での市場価値が高まると言われています。
第一種電気工事士は、主に大規模な電気工事を担当でき、責任のある仕事を任せられるケースが一般的です。
たとえば、大型ビルや工場の電気設備の設計・施工・保守など、専門的な業務などです。
第一種電気工事士の難易度はどれくらい?
第一種電気工事士は、第二種と比較して難易度の高い資格です。試験内容は、電気に関する深い理論知識だけでなく、技能試験も含まれており、総合的な能力が求められます。
しかし、平均300時間程度の勉強時間を確保できれば、十分に合格を狙えるでしょう。実際に、学科ならびに技能の合格率は60%前後で推移しています。
第一種電気工事士を取得してキャリアアップを目指そう
この記事では、第一種電気工事士の試験概要を中心に解説してきました。
第一種電気工事士は、最大電力500kW未満のビルや商業施設などの電気設備工事を担当できる資格です。
2024年度から試験が年2回の開催となっています。
加えて、第一種電気工事士の試験を受験するために必要な条件はなく、業界未経験者でも挑戦可能です。ただし、免状交付のためには、3年以上の実務経験が求められています。
第一種電気工事士の資格があれば、昇格・昇給がしやすくなったり転職で有利になったりすると言われています。
これから第一種電気工事士の資格取得を検討しているのであれば、挑戦してみてはいかがでしょうか。
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