防災設備は、地震や火災といった災害から、人の命を守るために欠かせない設備です。防火・防災管理者として、防災設備の種類や設置基準が気になるという人もいるでしょう。
今回は、防災設備の種類や設置基準を中心に解説していきます。設備のチェックなどに活かせる資格も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
防災設備とは災害発生時に人の命や財産を守るための設備
防災設備とは、地震や火災といった災害から、人の命を保護するための設備を指します。設備に関するルールは「消防法」や「建築基準法」で定められています。
従来は「防災設備=火災の際に使用する設備」と捉えられていましたが、近年は、台風・地震・洪水といった災害から、人命を守る設備を指すものとして使われるようになってきました。
防災設備一覧
防災設備は、災害時の役割によって、さまざまな種類が存在します。それぞれの設備がどのような役割を担っているのか、解説します。
警報設備
警報設備とは、何らかの異常を感知した際に、警報を鳴らして周りの人に伝えるための設備です。具体的には、以下のような設備があります。
- 自動火災報知器
- 漏電火災報知器
- ガス漏れ火災警報設備
- 消防機関へ通報するための火災報知設備
- 警鐘や拡声装置といった非常警報器具
- 非常ベル
建物内にいる人に、いち早く災害を伝えられるだけでなく、消防機関にも通報できます。
※設備による。
近年は、ホコリなどの変化を察知して、いち早く煙の発生を伝える「火災予兆検知システム」といった機器も開発されています。
消火設備
消火設備とは、火災を防いだり被害が拡大しないように炎を消し止めたりするための設備です。消防法で第1種〜第5種に分類されています。
第1種 | 屋外消火栓設備・屋内消火栓設備 |
第2種 | スプリンクラー設備 |
第3種 | 不活性ガス消火設備・水噴霧消火設備・粉末消火設備・ハロゲン化物消火設備・泡消火設備・水蒸気消火設備 |
第4種 | 大型消火器 |
第5種 | 小型消火器・水槽・乾燥砂・水バケツ |
消火設備を正しく使用することで、火災による被害を最小限に抑えられます。設置場所や使用方法について理解しておくようにしましょう。
避難設備
避難設備とは、火災などで階段やエレベーターが使用できない際に、使用する設備のことです。避難設備には、避難を誘導する設備も含まれます。
- 避難はしご
- 避難すべり台
- 緩降機
- 救助袋
- 非常用照明
- 誘導灯
災害の際、非常階段などが混みあう恐れがあり、高層階にいる場合は逃げ遅れる可能性があります。避難はしごなどの位置を事前に把握しておくようにしましょう。
防火設備
防火設備とは、火災発生時に煙や炎の拡散を防ぐ役割があり、高い耐火性能と遮炎性能が備わっている設備のことです。消防法ではなく、建築基準法や建築基準法施行令により定められています。
防火設備 | 外壁や防火区画の開口部に設置されており、20分以上の遮炎・耐火性能のある袖壁や網入りガラスなどがある。 |
特定防火設備 | 防火区画・防火壁・避難階段の出入口などに設置されており、1時間以上の遮炎・耐火性能のある防火戸や防火シャッターなどがある。 |
防火区画とは、煙や炎を一定の両利き内に封じ込めることを目的に、建築基準法施行令によって定められた区画です。
消防活動で必要な設備
消防活動用設備とは、火災が発生した際に住人ではなく消防隊が使用する設備のことです。通常の消化活動が困難と予想される、地下階・高層階などに設置されます。
- 排煙設備
- 連結送水管
- 連結散水設備
- 非常コンセント設備
- 無線通信補助設備
排煙設備を設置する目的は、消防法と建築基準法で異なります。消防法では、円滑・迅速な消火活動を目的としており、建築基準法では非難のための排煙が目的です。
防災設備の設置基準
防火設備の設置基準は消防法や建築基準法などで細かく規定されています。主な消火設備の設置場所や種類などは以下の通りです。
火災報知器 |
|
スプリンクラーシステム |
|
排煙設備 |
|
このように設備ごとに細かくルールが規定されています。設置基準などで分からないことがある場合は、地域を管轄する消防本部や建築事務所、防災設備業者などに相談してみましょう。
防災設備は定期点検が義務付けられている
防災設備は、災害発生時に人の命を守る重要な設備であり、消防法や建築基準法により定期的なチェックとその結果報告が義務付けられています。
チェック方法や期間は、設備ごとに細かく定められており、有資格者でなければ実施できません。具体的には消防設備士や消防設備点検資格者があり、チェック後には所定の機関に報告します。
防災設備の定期チェックは、外注するのが一般的であり、オフィスビルなどであれば~1,000㎡で3万円前後が相場です。
防災設備や消防設備の仕事で活かせる資格
前述した通り、防災設備の定期的なチェックは有資格者でなければ行えません。ここでは、防災設備や消火設備関連の仕事で活かせる2つの資格について解説します。
消防設備点検資格者
消防設備点検資格者とは、消防用設備の点検のみ行える資格です。資格を取得するには、所定の講習を受講する必要があります。
誰でも受講できるわけではなく「消防設備士」や「電気工事士」など所定の資格を保有している必要があります。詳細に関しては「日本消防設備安全センター」の講習案内ページで確認してみましょう。
消防設備士
消防設備士とは、消防設備の点検や整備をするための国家資格で、甲種と乙種に分かれています。
乙種の作業対象が消防設備の点検や整備ができるのに対し、甲種を取得すると設置や交換もできます。乙種と甲種は、取り扱える消防設備によってさらに細かく分類されています。
資格を取得するには、試験に合格する必要があり、乙種に関しては特別な受験資格はなく、誰でも挑戦可能です。
甲種に関しては、所定の実務経験を満たす必要があり、誰でもすぐに取得できるわけではありません。
関連記事:消防設備士・甲種4類の試験概要|受験資格や過去問について
関連記事:消防設備士・乙6類の試験概要|勉強時間や合格率について
関連記事:消防設備士の乙種・甲種の難易度は?勉強時間や受験資格について
防災設備に関するよくある質問
最後は、防災設備に関する2つのよくある質問に答えていきます。
- 防災設備と消火設備の違いは?
- 防災設備工事とは?
防災設備を取り扱ううえで役立つ内容ですので、参考にしてみてください。
消火設備と防災設備の違いは?
消火設備とは、火災から人命や財産を守る役割を担う設備のことです。防災設備に関しては、火災だけでなく地震や洪水なども含まれます。
ただし、消火設備だからといって火災のみに特化しているわけではありません。対象となる災害が若干異なりますが、双方の設備に大きな違いはありません。
防災設備工事とは?
防災設備工事とは、避難誘導設備や警報設備といった設備を設置するための工事です。建築基準法や消防法に基づいて行われるため、誰でも勝手に設置できるわけではありません。
近くの専門業者を調べたうえで工事を依頼しましょう。依頼後は、現地調査が行われた後に配置や仕様に関する設計を行い、施工する流れです。
設備によって定期的な点検も必要であるため、具体的な実施期間についても確認しておきましょう。
防災設備とは何か理解したうえで転職を検討しよう
防災設備とは、災害発生時に人の命や財産を守るための設備で、警報設備・消火設備・避難設備といった種類があります。
設置基準は、建築基準法・消防法で定められており、設置後には定期的なチェックとチェック結果の報告が義務付けられています。
防災設備の点検は、誰でもできるわけではなく「消防設備点検資格者」や「消防設備士」の有資格者でなければなりません。
今回紹介した防火設備に関するルールを理解したうえで、適切な災害対策を行いましょう。
電気主任技術者のお仕事をお探しの方へ
建職キャリアは、建設業界に特化した転職支援サービスです。
- 希望条件に合う求人のご紹介
- 履歴書など書類作成のサポート
- 企業との条件交渉/面接日程の調整
無料でご利用いただけますので、ぜひご活用ください。
求人を検索する(無料)