霊柩車は葬儀などで使用され形によって宮型霊柩車や洋型霊柩車、バス型霊柩車などに分かれます。
それぞれで運転するために必要な免許には、どのようなものがあるのでしょうか。
また霊柩事業を行う場合には、いくつかの条件を満たしたり申請を行わなければなりません。
今回は霊柩車の種類や必要な免許、霊柩事業に関する知識や霊柩車ドライバーの収入や仕事内容など詳しく解説していきます。
霊柩車ドライバーや、霊柩事業を始めようとしている方は是非参考にしてみてください。
要免許の霊柩車とは
霊柩車とは亡くなった方を運ぶための車で、昔は人力で棺を運んでおり棺を装飾していた輿が自動車へと変わっていったと言われています。
少し前までは通夜や葬儀を自宅で行うことが多く、そこから火葬場に向かう際に霊柩車が利用されていました。
ですが最近ではセレモニーホールなどで葬儀が行われることが多く、火葬場が近くにあるためあまり街中で霊柩車を見かけることは少なくなってきています。
定義としてはお金をもらいご遺体を搬送する車両となり、構造については自動車の用途等の区分にて具体的な解説があります。
一般貨物自動車運送事業の許可を行けた者が遺体を運ぶために使用する車であり、遺体を収容するための担架専用の場所は長さ1.8m以上、幅0.5m以上、高さ0.5m以上であること。
担架は確実に固定できる装置がなければならず、安全性についてはその重量を100kgとして確認を行う。
霊柩車の種類
霊柩車と言っても全て同じではなく、3つの種類に分類されます。
【洋型霊柩車】
欧米などを中心に使用されている霊柩車で、外車のキャデラックやリンカーンや国産高級車のセンチュリーやクラウンなどを改造して作られています。
外見は高級レザー張りとなっており、室内は高級モケットなどがクロス張りで棺を納める部分には装飾が施されています。
昭和天皇が使用したことから一般的になり始めました。
【宮型霊柩車】
屋根がついており豪華な彫り物などが装飾されたもので、棺を運ぶ輿がイメージされたものとなっています。
日本独自の霊柩車であり、少し前までは最も多く使用されていたのですが、最近では葬礼に関する考え方が変わってきており年々減少してきています。
【バス型霊柩車】
マイクロバスが改造されている霊柩車で、一緒に親族など多くの人を搭乗させられることが特徴です。
火葬場の駐車場が少ない場合などに使用され、家族葬などでもよく使用されるタイプの霊柩車です。
霊柩車に使用できる車
霊柩車に使用できる車は、上記で説明した洋型やバス型、宮型のどのタイプでも問題ありません。
アルファードやベルファイア、ノアなど様々な車種がされており、光岡自動車ではアルファードがベースとなった「フュージョン」という霊柩車などが販売されています。
洋型霊柩車は新車で~1,000万円ほどとなっており、中古車であれば~300万円ほどとなります。
霊柩車と寝台車の違い
霊柩車と似たようなものに寝台車がありますが、貨物自動車運送事業法では区分がなく一緒の扱いとなります。
霊柩車は葬儀などで良く使用され、構造としては棺を乗せやすくしてあります。
寝台車は、ご遺体保管所から葬儀場など葬儀とは別の場所で使用されることが多く、構造としてはストレッチャーが乗せやすいつくりになっています。
寝台車はご遺体だけを運ぶものではないため、怪我人などを運ぶこともあるようです。
霊柩車の架装とは
寝台車などに使用されるストレッチャーのことを言い、中古などで売ってあるストレッチャーとストレッチャーレールを購入して取り付ける方法と業者に依頼する方法があります。
寝台車には検査があり、様々な条件があるため把握していない場合は業者に任せるか、運輸支局の検査担当に相談した上で改造を行うようにしましょう。
関連記事
・寝台車と葬儀の関係は?霊柩車との違いなどをわかりやすく解説
霊柩事業に必要な許可と免許
霊柩事業は誰にでもできるというわけではなく、必要な免許や許可があります。具体的な決まりについて見ていきましょう。
霊柩車に必要な許可
霊柩車は貨物自動車運送事業法で管轄されており、霊柩事業を行うためには一般貨物自動車運送事業の許可が必要となります。
寝台車においても緑ナンバーを取得するなら同じです。
一般貨物とありますが、人は亡くなるとモノに扱いが変わるので一般貨物運送事業となるのです。
そのため運賃をもらわない場合においても、白ナンバーではなく緑ナンバーでなくてはいけません。
緑ナンバーの車は普通のトラックと同様に以下のような点検などが義務付けられています。
・日報
・運転者台帳の作成
・点呼記録簿
・初任運転者適性診断の受信
・事業報告書、事業実績報告書の提出
必要な免許以外にもこのような許可と点検が必要となります。
一般貨物自動車運送事業との違い
霊柩車は一般貨物自動車運送事業となりますが、普通のトラック運送とは業務が違うため、いくつかの違いがあります。
・1営業所で4台以内であれば、運行管理者資格者証を持っている運行管理は不要
・緑ナンバー免許の許可申請が1台からでも可能
・営業区域は原則、都道府県内となる
・標準霊きゅう運送約款を利用する
・車体に限定と表示する
この他で営業所などに関する要件は同じで、免許以外でも上記のような決まりも把握しておく必要があります。
霊柩車を運転するために必要な免許
旅客を乗せて車両を運転する場合に必要なのが第二種免許ですが、霊柩車の場合、ご遺体は人ではなくモノとして区分されるので第一種運転免許でのみで運転することができます。
霊柩車の中にはバス型があり、ご遺体と一緒に親族などを一緒に乗せて運転することがあります。
この場合に関しても、料金を取らなければ基本的に第二種免許は必要ないようです。
利用料金形態になどで不安な場合は管轄している運輸局に確認してみるようにしましょう。
トラック運送業から霊柩事業を始めるには
霊柩事業は一般貨物自動車運事業に含まれているため、普通トラックなどで普段運送業を行うトラック業者が、霊柩事業を勝手にできるかというとそうではありません。
霊柩事業へ変更する場合は以下のような作業が必要となります。
・霊柩自動車による運送は霊柩運送事業に限る旨の許可条件変更
・営業区域制限の許可条件変更
・事業用自動車の種別追加
このような作業が必要となり、期間としては約1ヶ月以上は掛かります。
ちなみに、霊柩事業においては都道府県内での営業区域制限がありますが、県外でも営業所を作ることは可能です。
運輸支局への申請と「営業区域に関する許可条件の変更願い」の申請が必要となります。
自分で行うこともできますが、手間がかかるため運送業専門の行政書士などに頼む方がおすすめとなります。
霊柩事業の緑ナンバー免許について
緑ナンバー免許の取得例
緑ナンバー免許を取得する目的はいくつかあり、以下のような取得例があります。
・貸し切りバス事業をしており、葬儀関係の送迎や霊柩車の導入を考えている
・葬儀業界で働いており、キャリアアップとして独立を考えている
・葬儀専門の会社で、霊柩車の外注依頼を内製化して費用の節約をしたい
緑ナンバー免許の取得は、詳しくない限りとても大変であるため、運送業専門の行政書士に依頼するのがおすすめです。
緑ナンバー免許取得の流れ
緑ナンバー免許を取得するには営業所所在地管轄の運輸支局輸送担当への申請が必要です。
免許取得に必要な期間は3ヶ月前後ですが、込具合などによりそれ以上に掛かることもあります。
具体的な流れとしては、許可申請を行った後に以降の奇数月に法令試験を受けます。
合格すれば許可がおりるのですが、不合格の場合は再受験となり、更に不合格となった場合は一度申請が取り下げとなります。
合格後は許可証の交付式が行われ講習会を受講します。
この際に必要となる登録免許税は12万円です。
運輸開始前の確認届けを提出した後に事業用自動車等連絡書が発行され、車検証の書き換えやナンバー取り換えを行います。
その後運輸開始届け出と、運賃料金設定届けを提出する流れとなります。
営業所の設置ですが、基本的に仕事が可能な設備が整っていれば許可がおりますが、市街化調整区域で設置することは難しいので注意が必要です。
車庫に関しては、月極の場合では狭く許可がおりない可能性があるので、前後に50cmずつ余裕があるか確認しておきましょう。
運転資金に関しては、事務所や車庫の賃料1年分や運転資金半年分、保険関係1年分の合計額以上の残高証明書が必要となります。
これらを自分で行ったり法令試験を受けるのは、初めての場合とても大変なので運送業専門の行政書士などに相談するのがおすすめです。
ちなみに専門の行政書士に依頼する場合は、事業用で約350,000円~です。
白ナンバーから緑ナンバーへの変更について
白ナンバーの車を緑ナンバー免許に名義変更する場合、まずは構造変更検査に合格してから名義変更を行います。
構造変更の手続きは、運輸支局に車検証や改造部分の車検対応証明書等の書類を揃えて提出します。
書類審査に合格したあとは車を車検場に持ち込んで検査が実施されます。
保安基準に適合していれば公認車検車として認められ、車検は2年ごととなり自賠責保険は霊柩車の枠となります。
移転登録に必要な書類は以下の通りです。
《旧所有者に必要な書類》
・委任状
・印鑑証明(原本で発行から3ヶ月以内)
・譲渡証明書
《新所有者に必要な書類》
・委任状
・印鑑証明(原本で発行から3ヶ月以内)
・増車連絡書(発行から1ヶ月以内)
・自賠責保険証
・重量税納付書
・手数料納付書
運輸支局で手続きが行われ約2~3時間で変更が可能で、緑ナンバーへ付け替えて封印が完了したら緑ナンバー免許へ変更完了となります。
霊柩車の免許に関連してよくある質問
霊柩事業に運行管理者は必要ですか?
運行管理者とは、従業員の休憩や施設の保守管理などに加え、健康状態や安全に運行するために様々なことを把握し統括するのが仕事となります。
霊柩車の場合、1営業所で4台以内であれば運行管理者免許を持っている人がいなくても運行が可能です。
5台以上となる場合は運行管理者免許が必要となります。
霊柩事業に必要な霊柩車の台数は決まっていますか?
霊柩車は営業所ごとではなく、自治体ごとで台数が決まっており、先に他の営業所で霊柩車が登録されていたら登録できないといった話があります。
このルールに関しては現在確認されておらず、先にその自治体で複数台登録されているから許可できないといったことはありません。
どうしても気になる場合は、申請予定の自治体に確認してみたり、専門の行政書士に相談してみるといいでしょう。
軽自動車を霊柩車にすることは可能?
霊柩車事業で軽自動車を事業用として使用することは可能です。
旅客運送などの場合、他のバスなどと同様に許可申請が必要で手間がかかりますが、霊柩事業の場合は貨物軽自動車運送事業経営届出をすればすぐに霊柩車の事業用ナンバーが付きます。
事業用ナンバーをもらうための要件としては、霊柩車の構造検査に受かる車両であることと、営業所と車庫の用意です。
軽自動車の霊柩用標準約款はないため、自分で作成する必要があります。
資料の作成は、運送業専門行政書士によるホームページ等で掲載してあるので参考にしてみましょう。
関連記事:
・霊柩車・寝台車の運転手ってどんな仕事?給与や服装・必要資格などを徹底解説!
霊柩車運転手について
霊柩車の運転手は普通免許を持っていれば、基本的に就職することが可能です。
ご遺体は法的に貨物の扱いとなるのですが、当然ながら貨物のような扱いは絶対に行ってはならず、普通のトラック運転手と仕事内容や注意すべきことは全く違います。
急発進や急停止は厳禁であり、火葬場では時間が決まっているためその通りに到着しなければなりません。
ご遺体だけではなく、ご遺族も同乗したりするため葬儀の流れなども質問されることがあり、そのような時にきちんと説明できる葬儀関連の知識も必要です。
また、会話の中では『絶好の天気』『気持ちが良い』などの言葉は禁句となっているほか『追う』『また』『重ねて』などの言葉も使わないようにするのがマナーとなります。
勤務時間はばらつきがなく、休みに関しても友引の日などは葬儀がないことからスケジュールが立てやすくなります。
霊柩車運転手の仕事内容
霊柩車ドライバーの仕事内容は、自宅や葬儀場などから火葬場へご遺体を運ぶことです。
大切なご遺体を乗せるため、勤務開始時には車両の点検や棺の固定器具などの以上がないかを細かく点検していきます。
棺の積み下ろしでは、傾けたりぶつけたりしないよう細心の注意が必要であり、運転中も急ハンドルや急ブレーキなどがないように注意します。
火葬場に到着すると棺を降ろし業務終了となり、1日に数回この作業を行います。
寝台車の場合は葬儀ではなく、警察署や病院などの施設から自宅などにご遺体を搬送するのが仕事となります。
基本的に作業内容は霊柩車と同じなのですが、運搬する時間はその時によって違うため深夜勤務なども発生します。
どちらのドライバーも車両の汚れなどはもちろん、車内、自分の服装など清潔感を保つことが大切で、ご遺族への気配りや対応をきちんとこなさなければなりません。
霊柩車運転手の収入
霊柩車ドライバーの収入は約20~25万円ほどとなり、年収では300~400万円くらいになります。
仕事に必要な免許や資格は、自動車免許のみなので資格手当等がつくことは基本的になく、基本給と残業手当がメインとなります。
賞与に関しては会社によって支給される場合とない場合があるのですが、支給される会社では約2~3ヶ月分ほどとなります。
霊柩車運転手に必要な普通免許の取得方法
霊柩車を運転するのに必須となる免許が普通自動車免許です。
自動車教習所で取得することが可能で、運転に必要な技術や知識、交通ルールなどの交通法規を学んでいきます。
普通免許と言ってもMT(マニュアル)とAT(オートマ)免許がありMTは手動でギアチェンジを行い、ATは機械が自動で行ってくれます。
受講する学科は26時間となり、技能講習はAT免許で31時間、MT免許で34時間となります
普通自動車免許の取得にかかる費用は、AT免許とMT免許で変わりAT免許で約29万円、MT免許で約30万円ほどです。
合宿免許であれば20万円前後で取得することも可能です。
普通自動車免許の取得に掛かる時間は、合宿免許であれば約2週間となり、通学しながらであれば約1ヶ月~3ヶ月ほどで取得が可能です。
霊柩車を運転する場合はATでもMTでも問題ありませんが、MTであればどちらも運転できるためおすすめです。
関連記事:霊柩車の運用に必要なナンバーや取得方法などについて解説!
要免許の霊柩車についてのまとめ
今回は霊柩事業や霊柩車に必要な運転免許などについて詳しく解説してきました。
霊柩車とは葬儀場などから火葬場にご遺体を搬送するための車両で、葬儀以外で使用される寝台車もあります。
霊柩車には洋型霊柩車や宮型霊柩車、バス型霊柩車があり、どれも基本的に普通自動車免許で運転することができます。
霊柩事業を始める場合、一般貨物自動車運送事業の許可が必要となり、緑ナンバーを取得する必要があります。
一般的なトラック運送事業と違うため、緑ナンバー免許の申請は1台からでも取得が可能であり、4台以内であれば運行管理者は不要などのルールがあります。
緑ナンバー免許を取得するには運輸支局輸送担当への申請を行い、法令試験などに合格することで交付されます。
専門的な申請や作業が多いため、専門の行政書士に依頼する方法がおすすめです。
霊柩事業の始め方は様々で、白ナンバーから緑ナンバーに変える場合や、トラック運送業から霊柩事業へ変更する場合によって申請方法やその内容が違います。
霊柩車の運転手として働く場合は、普通免許を取得していれば問題ありませんが、安全な運転とご遺族に対する丁寧な対応が求められます。
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