ビルや商業施設などの電気設備の保守や点検、修理ができる資格を持っているのが電気工事士ですが、ときに「電気工事士になるのはやめとけ」と言われることがあります。
そこでここでは、電気工事士はやめとけと言われる理由や労働環境の実態、メリット、将来性などについて解説します。
電気工事士の資格取得を目指している方や、電気工事士への転職を検討中の方は参考にしてください。
電気工事士の仕事はやめとけと言われる理由
なぜ電気工事士はやめとけと言われるのか、その理由について解説していきましょう。
見習い時代は年収が低い
国税庁が発表した令和2年分民間給与実態統計調査によると、電気工事士の平均年収は426万円でした。
この平均年収は決して低い金額ではありません。企業や経験年数にもよりますが、現場責任者になれば年収500万円以上稼いでいる人もたくさんいます。
しかし、電気工事士は見習い期間の年収は200万円台と低いです。一人前になるまでは低い年収のままであるため、やめとけと言われます。
基本的に肉体労働が多い
電気工事士の仕事は重いものを運ぶことが多く、肉体労働になります。また、外での作業が多く、夏は暑さ、冬は寒さの中で作業を行わないといけません。危険な高所での作業もあるため、常に緊張感が必要です。
肉体的にも精神的にも疲れる仕事のため、やめとけと言われます。
繁忙期は激務になりやすい
電気工事士の仕事にはエアコンの取替え工事があります。この工事は6~8月が1年の繁忙期です。朝から晩まで各家庭や企業を回ってエアコン取替えを行う作業が毎日繰り返されます。重いエアコンや室外機の運搬はきつく、またお客様の家での作業となるため、気も遣わなければいけません。
日々激務に追われるため、体を壊して辞めていく人も少なくありません。
休みが不定期になりやすい
繁忙期や工期が遅れている、部品の到着が遅延しているといった場合では休日でも出勤しなければいけなくなります。
特にエアコンの取替工事では繁忙期になると休んでいる場合ではなくなることもあり、休日が不安定になるのです。
職場によっては人間関係がストレスになる
電気工事士の中には職人肌の方がいます。職人肌の人ほど「仕事は見て覚えろ」という考えを持っており、仕事を親切に教えてくれない人が多いです。しっかり教えていないにも関わらずミスをすれば「なぜ間違えるのだ!」と怒られるといった理不尽なことが多々あります。
今ではきっちりと教えてくれる職場は増えてきていますが、会社によっては昔気質の職人ばかりというところもあり、その場合はストレスを感じやすいでしょう。
関連記事:電気工事士はやめたほうがいい?そうとも言えない5つの理由
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ブラックな企業の特徴
入社した企業がブラックだった、なんて聞いたことありませんか?ブラック企業には特徴があります。会社選びに失敗しないよう、把握しておきましょう。
頻繁に求人を出している
ブラック企業の特徴の1つに求人の頻度が多いことがあげられます。新しい人が入社してもすぐ辞める、職員の入れ替わりが激しい企業はブラックの可能性が高いです。
人間関係が悪い、休日が少ない、給料が低いなどさまざまな理由が考えられるので、頻繁に求人を出している企業はやめておくようにしましょう。
ベテランの社員が少ない
ベテランや中堅社員が少ないこともブラック企業の特徴です。
ベテラン、中堅社員がいない理由は主に2つの理由が考えられます。
①給料が安い
ベテラン社員になっても給料が安い可能性があります。
昇給制度がない、他の企業と比較して給料が安いといった理由で転職しているかもしれません。
また、ベテラン社員の姿を見て中堅社員も一緒にやめている可能性も十分に考えられます。
②体力が必要
ベテラン社員が少ない理由に体力面が考えられます。毎日残業がある、休日返上で働かないといけないなど激務が続くことで体力が持たなくなり、ベテラン社員がやめていっている可能性があります。
関連記事:電気施工管理はきつい?やめとけ?そうとも言えない4つの理由
やめとけと言われる電気工事士になるメリット
電気工事士の資格を取得するメリットは主に下記の4つです。
・転職で有利になりやすい
・資格手当がつく場合がある
・信用度が上がる
・独立しやすい
それぞれ詳しく解説していきましょう。
転職で有利になりやすい
電気工事士の資格を持っていると転職の際に有利になります。電気工事士は需要が高く、さまざまな企業から求人が出ています。
ただし、転職においては資格を持っているだけではなく、経験やスキルなども重要です。電気工事士と似た資格である電気工事施工管理技士や第三種電気主任技術者を持っていると転職の幅が広がるでしょう。
資格手当がつく場合がある
電気工事士の資格を持っていると企業から資格手当が支給される場合があります。企業によって設定金額は異なり、また第一種と第二種でも異なります。
相場としては第一種で5,000~10,000円、第二種で3,000~5,000円です。電気工事士の資格を必須条件とする企業ほど手当の金額が高くなる傾向があります。
信用度が上がる
電気工事士の資格を持っていることで社会的信用度のアップにつながります。電気工事士は業務独占資格という、資格を持っている者でしか業務ができない資格に該当します。
つまり、電気工事士の資格を取得していることは、高度な専門的知識や技能を持っていると認められているため、社会的信頼性が高くなります。
一定の地位や安定した収入を得やすくなるというメリットもあります。
独立しやすい
電気工事士の資格を持つことで独立開業することができます。電気設備の点検や修理、工事の請負など電気工事に関する仕事を自営業で行うことができます。
自営業は自分の裁量で仕事量や給料を決められるため、リスクはありますが、やればやるだけ収入が高くなるメリットがあります。
電気工事士の資格を活かせる仕事
電気工事士の資格を活かせる仕事は主に以下の5つです。
・電気配線工事
・エアコンの取付け及び取外し
・ビルメンテナンス
・電気主任技術者
・サービスエンジニア
これらの具体的な仕事内容について解説していきましょう。
電気配線工事
電気配線工事とは、施設やビルの内外において、電気の供給や配線設備を設置し、電気を安全に供給するための工事を指します。
具体的には以下の作業を行います。
・配線の設計や立案
・電線・ケーブルの敷設
・配電盤やスイッチの取り付け
・電気器具の接続
屋外では気温や気候の影響を受けるため、体に不安のある人は屋内の配線工事を担当するようにしましょう。
エアコンの取付け及び取外し
電気工事士の資格を取得していると、家庭や企業のエアコンの取付け・取外し工事を行うことが可能です。
工事の流れは以下の通りです。
①エアコンの取付け位置の確認
②配管・配線工事
③ユニットの取付け
④点検・テスト
エアコン工事で危険な作業はありませんが、設置場所によっては安全対策や防音対策が必要です。
ただし、繁忙期である6~8月は残業が続いたり、休日が不安定になったりと体力的にきつい部分があります。
ビルメンテナンス
ビルメンテナンスはビルの維持管理を行う仕事です。具体的な仕事内容は以下の通りです。
・電気設備(照明やエアコン、エレベーターなど)の点検や保守
・電気設備の修理修繕
・電気設備の新設や改修工事
上記以外にボイラーや消防設備の点検・管理もあるのですが、これらは別の資格(ボイラー技士や消防設備士)が必要になるため、取得しておくようにしましょう。
電気主任技術者
電気主任技術者とは、一定の規模や種類の電気設備を管理するために必要な資格を言います。電気工事士との大きな違いは電気工事を行うことができない点です。
しかし、電気主任技術者を取得していることで電気設備の管理や保守に携わる仕事や建設業界や発電所などのエンジニアリング分野での転職に有利になります。
大規模な電気設備を管理する場合は電気主任技術者の配置が義務化されているため、電気工事士とあわせて取得しておくとキャリアアップにおいて大きな強みになるでしょう。
サービスエンジニア
サービスエンジニアは工場の機械や医療機器、セキュリティ機器などが故障した際に点検・修理を行う仕事です。
電気工事に関する知識だけでなく、製品に関する基礎知識から専門知識が必要になります。また、製品ごとに故障箇所は異なるため、原因を突き止める対応能力も必要です。
やめとけと言われる電気工事士の将来性
電気工事士に将来性があるか気になりますよね。
結論からいうと電気工事業界は将来性があります。
その理由は主に下記の3つです。
①電気は不可欠だから
ビルや工場、商業施設など大規模な電気設備の取付けや保守には電気工事士の専門知識や技術が必要です。電気工事士は常に需要があると言えます。
②エネルギー政策転換が進んでいる
現在地球環境保護から再生可能エネルギーの普及が進んでいます。太陽光発電や風力発電などの設備工事や保守に電気工事士が必要なため、今後も需要が高まっていくと考えられるでしょう。
③日本は災害が多い
日本は地震や台風などの災害が多く、被災後の復旧や復興工事には電気工事士が必要です。毎年日本各地で被害が出ているため、今後も需要が高いと予想できます。
電気工事士に向いている人と向いていない人
電気工事士に向いている人と向いていない人の特徴を紹介します。
電気工事士に向いている人
電気工事に関心がある
電気工事士は電気回路や配線などの技術的な部分に高度な知識が必要です。そのため、技術や知識に興味を持ち、積極的に学ぶ姿勢がある人が向いています。
手先が器用である
電気工事士は配線や接続作業などで細かい作業が求められます。配線を間違えると火災や感電などの事故に繋がるため、正確な作業ができる器用な人が向いています。
几帳面である
電気工事には細かい作業が多く、図面通りに正確に仕上げることが求められます。
また、非常に高圧の電気を扱うため、少しのミスが大きな事故に繋がる恐れがあるため、慎重な作業が必要です。
丁寧な作業ができ、安全意識の高い几帳面な人が向いています。
向上心がある
電気工事士は現場によって求められるスキルが異なります。そのたびに対応していかなければいけないため、常に学ぼうとする姿勢が大切です。
電気設備や技術は常に進化しているため、一緒に自分も進化しようと努力できる人が向いています。
体力に自信がある
電気工事士は屋内外問わず、長時間の立ち仕事になります。屋外の場合は夏の暑さや冬の寒さなどの気候の変化に対応しないといけません。
また、重量物を運ぶことも多いため、体力が必要な仕事です。
体育会系の環境に抵抗がない
電気工事士の世界は上下関係が厳しく、体育会系社会に似ています。学生時代や社会で経験している人は抵抗がありませんが、初めての方はパワハラのように感じるかもしれません。
また、見習い時は年収も低く、仕事も簡単なことしかさせてもらえないので、我慢強さも求められます。
早く仕事を覚えて一流の職人になりたい、独立したいなど目標を持つことも重要です。
電気工事士に向いていない人
細かい作業が苦手
電気工事士は配線図を理解し、正確に電線を繋いでいかなければいけません。配線間違いをしたり、銅線を傷つけたまま接続したりすると事故につながります。
細かいことを気にしないような大雑把な性格の人は向いていないでしょう。
下積み期間が苦痛
電気工事士として一人前に認められるまでには少なくとも2~3年必要とされています。
それまでは技術や知識を勉強する期間のため、給料も少なく、担当できる業務も限られます。
早く電気工事をしたい、大規模な工事に携わりたいという人は耐えられないかもしれません。
転職して電気工事士になる方法
電気工事士の経験がない方でも転職できる方法を解説していきましょう。
未経験でも転職は可能
電気工事士の将来性でも紹介した通り、電気工事士は今後も高い需要が予想されるため、未経験の方でも転職が可能です。
知識や技術は入社後に学ぶことで磨かれます。高い向上心と意欲があれば未経験でも問題ないでしょう。
転職サイトを活用する
転職サイトには電気工事士に関する求人がたくさん紹介されています。その中には未経験歓迎というところもたくさんあります。これから電気工事士として働きたい方は転職サイトを活用しましょう。
関連記事:電気工事士はお金持ち?平均年収や収入アップの方法を紹介
「電気工事士はやめとけ」に関してよくある質問
電気工事士に関するよくある質問をまとめました。
資格は一種と二種のどちらがオススメ?
結論から言えば一種の方がおすすめです。
一種は上位資格であるため、難易度は高くなりますが、その分携われる工事の幅も広がり、年収も高くなります。一種の方がやりがいを感じやすいので、ぜひ一種の取得を目指しましょう。
一種を取得するには3年間の実務経験が必要です。仕事をしながら資格取得に向けた勉強をコツコツ行ってくださいね。
電気工事士の離職率は?
経済産業省が発表した「電気保安人材の中長期的な確保に向けた課題と対応の方向性について」という資料によると、電気工事士の離職率は約40%です。
離職する理由は休日日数が少ない、職場環境が悪いなどがあります。
今後電気工事士が不足していくと、さらに離職率が上がるかもしれません。
参考:経済産業省「電気保安人材の中長期的な確保に向けた課題と対応の方向性について」
一人前の電気工事士になるのに何年かかる?
一人前の基準は人によるため一概には言えませんが、一般的には3~5年と言われています。
一人前になるためには現場経験を何度もこなすこと、知識を蓄えることが必要になります。さらに作業指示や人員配置を的確に行える能力も必要です。
女性でも電気工事士になれる?
結論から言えば可能です。電気工事士として働いている女性は増えており、最近では「現場女子」や「電工女子」という言葉が登場しています。
まだまだ女性比率は少ないですが、今後認知が広がるとともに女性の増加が期待できるでしょう。
「電気工事士はやめとけ」についてのまとめ
電気工事士がやめとけと言われる主な理由に、「肉体労働でキツイ」と「繁忙期の激務が大変」であることがあります。
しかし、電気工事士は業務独占資格に分類される国家資格であるため、今後も需要はなくならないでしょう。
電気工事士は安定した仕事と給料があり、将来性の高い仕事と言えるので、決して悪い職種ではありません。
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