建築士

建築士とは?仕事内容や資格の種類、主な就職・転職先を解説

更新日:

設計図を描く様子

建築士は、あらゆる建物の設計や建設工事の監理を行う役割を担っています。

一定の規模を超える建築物の設計は、建築士にしかできないため、建設業界に欠かせない存在です。

この記事を読んでいる人の中には、建設業界に就職・転職する上で、建築士を目指そうか検討中の人もいるのではないでしょうか。

今回は、建築士について仕事内容や資格の種類、主な就職先などを分かりやすく解説していきます。

【この記事で分かること】
・建築士の役割や資格の種類
・建築士の仕事内容
・建築士の就職、転職先について

建築士とは?

女性がデスクワークをしている様子

建築士とは、戸建てや病院、マンションといった、あらゆる建物の設計や工事監理を行う人のことです。

設計や工事監理は、建築士の独占業務であり、建設業界にとって欠かせない存在です。

設計業務では、建物の外観だけでなく、間取りや設備といった細かい箇所まで担当します。

建築士法の施工はいつ?

メモ帳と電卓が机の上にある状態

建築士法とは、建物の設計や工事監理を適正に行い、建築物の質を向上させるために立法されました。

建築士法が施行されたのは昭和25年7月1日であり、この際に建築士の資格が誕生しています。

その後は、建設業界の流れに沿った改正が都度行われながら今に至っており、昭和62年には、7月1日を「建築士の日」として制定しています。

建築士の3つの種類

男性がデスクワークをしている様子

建物には戸建てやマンション、商業施設といったさまざまな規模のものがあります。

それぞれの設計や、工事監理に必要となる知識は異なるため、建築士は従事できる建物ごとに3つの種類に分けられています。

・一級建築士
・二級建築士
・木造建築士

ここでは、上記3種類の建築士について、従事できる建物の規模などを解説していきます。

一級建築士

一級建築士とは、建築士の中で最も上位とされる資格です。

建物の種類や規模に制限がなく、病院や競技場などあらゆる建物の設計や工事監理に従事できます。

【一級建築士のみが設計できる建物の規模】
・鉄骨造や鉄筋コンクリート造で、延べ面積が300平方メートルを超える建物・建物の軒の高さが9メートル以上・全体の高さが13メートルを超える建物

二級建築士

二級建築士は、建築士を目指す人がはじめに取得する資格で、以下の通り携われる建物の規模に指定があります。

【二級建築士が設計できる建物の規模】
・鉄骨造や鉄筋コンクリート造で、延べ面積が30~300平方メートル以内の建物・建物の軒の高さが9メートル以上・全体の高さが13メートル以内の建物

一般的な戸建てが、上記範囲に該当します。

仕事内容に関しては、一級建築士と二級建築士で大きな違いはありません。

木造建築士

木造建築士とは、文字通り木造の建物を設計するための建築士資格です。

木造建築物で、延べ床面積が100〜300平方メートル以内の建物に限り設計や工事監理を行えます。

木造建築物のスペシャリストとして経験を積めば、神社・仏閣といった歴史的な木造建築に携われます。

参考:建築士とは/各種関連資格情報|一般社団法人 東京建築士会

関連記事:建築士になるには?資格の違いについても紹介

建築士の仕事領域

オフィスで会議をしている様子

建築士は資格の種類によって、構造や規模ごとに携われる範囲が定められています。

具体的な内容は以下の通りです。

建築士の従事基準

画像引用:建築士の仕事内容や種類とは?できることは?働き方について徹底解説!|日建学院

上の画像の【A】は建築士の資格を持っていない人でも建築できる規模となります。

【B】は一級・二級建築士および木造建築士が従事できる範囲です。

【C】は一級・二級建築士が従事できる範囲で、【D】は一級建築士だけしか従事できません。

大規模な都市開発を専門とするディベロッパーや、その工事を受注する大手ゼネコンで建築士として働くには一級建築士の資格が必須と言えるでしょう。

一方で、戸建てを専門としているハウスメーカーであれば、二級建築士の資格だけでも活躍できます。

一級建築士の上級資格

現場で打ち合わせする様子

ここまで建築士の種類や仕事領域について解説してきましたが、2008年に新たに創設された建築士の資格があります。

・構造設計一級建築士
・設備設計一級建築士

建築物への信用が大きく失われることとなった「2005年の耐震偽装問題」をきっかけに作られました。

どのような役割を担っているのか、各資格の詳細について解説していきます。

【2005年・耐震偽装問題】
一級建築士による構造計算書の偽装がそのまま承認されてしまい、十分な耐震構造を持たないマンションやホテルが建設されていたことが発覚した事件。全国的な問題となり、広範囲な調査を行った結果、全国のホテルやマンションの一部でも構造計算書の偽造が発覚した。

構造設計一級建築士

構造設計一級建築士は、一般的な建物よりも高度な構造設計が必要となる大規模な建築物の構造設計を行います。

また、1級建築士が構造設計を作成した際に、内容に問題がないかをチェックする役割も担っています。

資格を取得するには、一級建築士を取得後、構造設計の実務経験を5年以上積まなければなりません。

その上で、講習を受講し「法適合確認・構造設計」の試験に合格すれば取得できます。

設備設計一級建築士

設備設計一級建築士は、電気関係の設備やトイレの給排水といった建物内の設備に特化した建築士資格です。

構造設計と同じく、建物を安全かつ快適に使用する上で設備設計はとても重要なものです。

自身で設計業務を行うだけでなく、他の建築士が設計した設備設計のチェックなども行います。

一級建築士の資格を取得後、設備設計の業務に5年以上従事している人のみ取得できる資格です。

3日間の講義を受けた後に、修了考査が実施され、合格すれば設備設計一級建築士になります。

【資格別】建築士の登録者数

男性がクリップボードを持つ様子

建築士になるには、設計に関する知識やスキルを身に付ける必要があり、誰でも簡単になれるわけではありません。

そのため、建設業界では貴重な存在と言えます。

ここでは、どれくらいの建築士が国内で活躍しているのか、資格の種類ごとの登録者数について解説していきます。

一級建築士

日本建築士連合会が公表する、令和5年4月1日時点の一級建築士の登録者数は378,337名です。

登録者の年代では50代と60代が全体の約6割を占めており、次いで多いのは40代となります。

20代や30代は全体の約1割ほどと非常に少なく、若手の一級建築士はとても貴重な存在と言えるでしょう。

構造設計一級建築士

一級建築士の上位資格となる、構造設計一級建築士の登録者数は令和5年4月1日時点で10,450名です。

貴重な存在である一級建築士よりもかなり少ないのが現状です。

新設されて15年ほどの資格であるため、今後少しずつ登録者数が増えていくと予想されています。

設備設計一級建築士

設備設計一級建築士の登録者数は、令和5年4月1日時点で5,997名です。

建築士の資格の中で最も登録者数が少ないものの、登録者数は増加傾向にあります。

需要の高い資格であることから、試験の難易度が緩和されていくと予想されています。

二級建築士

はじめに取得する人が多い、二級建築士の登録者数は、令和4年4月1日時点で785,017人です。

一級建築士よりも難易度が低いことから、倍ほどの人が資格を取得しています。
ちなみに、二級建築士の試験合格率は学科試験で40%前後、設計製図試験で50%前後で、全体では20%前後で推移しています。

参考:試験結果 1.過去5年間の二級建築士試験結果データ|公益財団法人 建築技術教育普及センター

木造建築士

木造建築士の登録者数は、令和4年4月1日時点で18,580人です。

木造建築物に特化していることから、二級建築士よりも人数は少なめです。

木造建築士の合格率は、学科試験が50%前後、製図試験が65%前後で、全体では30%前後で推移しています。

建築士の業務内容3選

男性が仁王立ちする様子

建築士の主な業務内容は3つあります。

・設計
・工事監理
・設計・工事監理以外

各業務でどのようなことを行っているのか、具体的に解説していきます。

設計

建築士は、建物に関するさまざまな設計を行います。

【設計を行う主な項目】
・設備
・構造
・外観
・内装
・工事方法
・材料

まずは依頼者の建物に関する要望のヒアリングを行い、構想をまとめていきます。

必要に応じて模型を作るなどして、完成イメージを明確にした上で工事予算をもとに、工事方法や材料を決めるのも建築士の仕事です。

その後は、各項目の設計図や仕様書を作り上げていきます。

設計図や仕様書をした後は、法規面で問題がないかのチェックが行われ、問題がなければ建築の許可がおります。

工事監理

設計が終わると、依頼者から建設会社へ建設工事の依頼が行われます。

実際に工事を始める際は、設計士と建設会社でも設計図に関する話し合いが行われます。

建設工事中に、仕様書や設計図通りに作業が進められているかチェックするのも建築士の仕事の1つです。

設計・工事監理以外

建築士の主な業務は、設計や工事監理ですが、他にも以下のような業務をこなします。

・建設工事における道路の使用許可や建設許可の申請業務
・契約書の監修
・建築物の調査鑑定

建設工事に関する知識を身に付け、建設コンサルタント業務を行う人もいます。

関連記事:建築士はどんな仕事?建築士の仕事内容と1日のスケジュールを紹介

建築士の就職・転職先8選

作業員が打合せする様子

建築士は、建物設計のスペシャリストとして、さまざまな業種での活躍が可能です。

主な就職・転職先は以下の通りです。

・1.建設会社
・2.ハウスメーカー
・3.不動産会社
・4.公務員
・5.住宅設備機器メーカー
・6.コンサルティングファーム
・7.販売会社
・8.設計事務所

建築士としてどのような仕事をこなすのか、上記業種ごとに解説していきます。

1.建設会社

建設会社は、建築計画や工事などを請け負うため、主な仕事内容には「営業・設計・施工管理・研究開発」などがあります。

建設会社の規模にもよりますが、業務ごとに部署が分かれているため、上記全ての仕事のうち、1つに特化するのが一般的です。
マンションや商業施設といった、大規模な建物を中心に扱うゼネコンなどに就職する場合は、一級建築士が必須と言えるでしょう。

2.ハウスメーカー

ハウスメーカーでは、戸建てに関する仕事を行います。

具体的には「技術開発・企画・設計・販売」といった仕事があり、お客様の要望に応えながら住宅の建築に携わります。

BtoCの会社が大半であるため、お客様に合わせての土日出勤が当たり前で、平日の休みが多いことが特徴です。

大規模な施設は扱わないため、二級建築士や木造建築士でも活躍できます。

3.不動産会社

既に完成した建物を扱うことの多い不動産会社でも、建築士は活躍できます。

主な仕事内容には、以下のような内容があります。

・専門的な視点からのコンサルティング
・プロジェクト全体の統括やアドバイス

不動産取引の中には、投資案件のものもあり、建築士として施工会社や設計事務所の選定についてアドバイスを行います。

宅建士といった資格を取得すれば、より幅広く活躍することも可能です。

4.公務員

公務員には、建築職の仕事もあり、主な就職先として市役所などの都市開発部門があります。

自分たちで建物を建てるわけではないため、予算や建設工事の工程に関する施工管理が主な業務となります。

都市開発や公共施設の安全管理など、街づくりを通じて住民へ貢献できることが魅力と言えるでしょう。

公務員であるため、年収1,000万円を超えることは難しい一方で、収入が安定しているという魅力があります。

5.住宅設備機器メーカー

住宅設備機器メーカーでも、建築士としての知識を活かせます。

建物に関する音環境や熱環境に関する知識が活かしやすく、お客様の要望に沿った設備の開発や改良を行います。

6.コンサルティングファーム

飲食店といった、お店の開発を行う会社をクライアントに持つ会社であれば、構造や設計に関するコンサルタントとして活躍できます。

顧客が抱える悩みや要望のヒアリングを行い、関連する需要をリサーチした上で、具体的に提案していきます。

さまざまな視点からの提案が必要であるため、個人ではなく他の専門家とチームを組んで働くことが一般的です。

7.販売会社

飲食店といった施設において、インテリアを担当するような販売会社でも、建築士の知識を活かせます。

構造などの知識よりも、デザイン力を活かしたい人におすすめです。

8.設計事務所

建築士の主な就業先と言えるのが、住宅や商業施設といった建物の設計を専門に行う、設計事務所です。

比較的大きな施設の設計を行う上で、業務が細分化された組織系事務所と、特殊なデザインや意匠設計を専門とするアトリエ系事務所があります。

設計事務所で経験を積み、最終的に独立することも可能です。

建築士に関する資格試験の連絡先一覧

勉強をしている様子

建築士は、建設業界を中心に需要が高く、人気資格であることから、国家資格に似せた称号や講習会が存在します。

建築士資格と直接関係するような内容をうたい、申し込みした人と開催者間でトラブルに発展するような事例も発生しています。

このような偽の団体による悪質な勧誘に遭わないためには、資格試験に関する公式な機関とその連絡先を知っておくことが大切です。

・建築士法関連資格試験
・建設業法に基づく資格試験
・建築関連資格試験

ここでは、上記3つの試験に関する正しい機関の連絡先を紹介していきます。

建築士法関連資格試験

建築士法関連資格試験には、一級建築士・二級建築士・木造建築士があります。

各資格の試験実施機関と、連絡先は以下の通りです。

資格種目試験実施期間電話番号
一級建築士(公財)建築技術教育普及センター050-3033-3821
二級建築士
木造建築士
(公財)建築技術教育普及センター050-3033-3822

建設業法に基づく資格試験

建設業法に基づく資格試験には、建設工事に関する各種施工管理技士があります。

各資格の試験実施機関と、連絡先は以下の通りです。

資格種目試験実施期間電話番号
一級・二級建設機械施工技士(一社)日本建設機械施工協会03-3433-1575
一級・二級土木施工管理技士
一級・二級管工事施工管理技士
一級・二級造園施工管理技士
(一財)全国建設研修センター042-321-1634
一級・二級建築施工管理技士
一級・二級電気工事施工管理技士
建設業経理事務士
(一財)建設業振興基金03-5473-4581

建築関連資格試験

建築関連の資格試験には、建築設備士や宅地建物取引士などの資格があります。

各資格の試験実施機関と、連絡先は以下の通りです。

資格種目試験実施期間電話番号
浄化槽管理士
浄化槽設備士
(公財)日本環境整備教育センター03-3635-4881
監理技術者資格者証(一財)建設業技術者センター03-3297-1691
空気調和・衛生工学会設備士(公社)空気調和・衛生工学会03-3363-8261
足場の組立て等作業主任者等建設業労働災害防止協会03-3551-0488
建築設備士
インテリアプランナー
(公財)建築技術教育普及センター03-6261-3310
宅地建物取引士(一財)不動産適正取引推進機構03-3435-8111

建築士に関するよくある質問

男性が腕を組んでいる様子

最後は建築士に関する、3つのよくある質問に答えていきます。

・建築士として楽しいことは何ですか?
・建築士として辛いことは何ですか?
・建築士は何を相手にするのでしょうか?

建築士を目指すべきかどうか判断する上で、参考になる内容ですので、ぜひ参考にしてみてください。

建築士として楽しいことは何ですか?

建築士として働く上で楽しいことには、以下のような声がありました。

・街づくりに貢献して人々を笑顔にできる
・自分の手掛けた建物が長年形として残る
・高収入を目指せる

責任が大きく、決して楽しいことばかりではないものの、他の仕事では味わえない楽しみがある職種と言えます。

建築士として辛いことは何ですか?

建築士として働く上で辛いと感じることには、以下のような声がありました。

・納期に余裕がない場合は残業が多い
・日々勉強が必要
・人の命に関わることなので責任が思い

建物の設計は、完成後に利用する人々の命に関わるため、些細なミスも許されません。

設計が終わった後に行う工事監理も同様であり、工事中に設計の問題が見つかることもあるため、最後まで気が抜けません。

建築士は誰を相手にするのでしょうか?

建築士は、建物の設計を行う上で、依頼主と話し合いを行います。

設計が終わった後の工事監理では、施工会社の現場監督や職人、営業担当者と工事工程について話し合いがあります。

従事する会社によっては、行政の担当者とやり取りすることもあり、多くの人と一緒に仕事を進めていく仕事と言えるでしょう。

まとめ

建築士

建築士とは、建物の設計や工事監理を行う役割を担っています。

携われる建物の規模によって一級・二級建築士、木造建築士といった種類があり、2008年には構造設計建築士や設備設計建築士が新設されました。

建物の設計に関するスペシャリストとして、建設会社や不動産会社など幅広い業種での活躍が可能です。

将来性の高い資格でもあるため、興味がある方は資格取得の検討をしてみてください。

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