睡眠は体を休めるために欠かせないものであり、睡眠不足の状態では仕事中のパフォーマンスが大きく下がってしまう恐れがあります。
トラック運転手の場合、ちょっとしたミスが命に関わる大きな事故に繋がるため、健康管理には特に注意が必要です。
今回はトラック運転手の睡眠事情や悩み、睡眠に関するルール、質を高める方法などについてわかりやすく解説していきます。
現役トラック運転手の方はもちろん、これからトラック運転手へ転職を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
トラック運転手は寝れないのかについて
早朝や深夜の時間帯でもトラックを見かけることは珍しくなく、トラック運転手という仕事を『拘束時間が長く、とにかく大変』と考えている人は多いでしょう。
『トラック運転手って朝から晩まで働いて、いつ寝てるんだろう』と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
また、今後トラック運送業界への転職を考えている場合には、不安に感じるかもしれません。
実際に居眠りが原因となった事故は全国で発生しています。
ここでは3つの項目について詳しく解説していきます。
・トラック運転手の睡眠時間の実態
・他の職業との比較
・大型トラックは休憩場所を確保しにくい
本当にトラック運転手は睡眠不足なのか、他の職業と比べてどうなのか見ていきましょう。
大型トラック運転手の場合は不規則になりがち
トラックは朝でも夜でも走行しているのを見かけますが、決して一日中働いているわけではありません。
全ての運送会社は、厚生労働省が定めた拘束時間を守る義務があるからです。
ここで言う拘束時間とは、運転時間だけではなく休憩時間も含まれたものです。
トラック運転手は、仕事内容や運転するトラックのサイズに関係なく、安全な運行ができるように適時休憩を取ることが定められています。
基本的にドライバーの拘束時間は、1日で13時間ほどであり、最大でも16時間までとなっています。
また、15時間を超える拘束は週に2回までと定められており、2日間の労働時間の平均を9時間以内にしなければいけません。
参考元:厚生労働省|トラック運転者の労働時間等の改善のための基準 応用編
【勤務例】
・月曜日に10時間勤務ー火曜日に9時間勤務ー水曜日に10時間勤務
→この場合、月曜と火曜日の平均が9.5時間、火曜日と水曜日の平均が9.5時間となるので違反となります。
・月曜日に9時間勤務ー火曜日に9時間勤務ー水曜日に10時間勤務
→この場合、月曜日と火曜日の平均が9時間、火曜日と水曜日の平均が9.5時間となるのですが、前後どちらかが9時間以内になっていれば違反にはなりません。
このルールを守るためには13時間勤務であった場合、9時間を運転時間とし残りの4時間を休憩時間にする必要があります。
『4時間も休憩できるなら楽なのでは?』と考えるかもしれませんが、トラック運転手の仕事は働く時間がバラバラであったり、荷主の都合で好きなタイミングで休めなかったりします。
この拘束時間に関するルールは、2人以上で勤務する場合に特例として拘束時間の延長も可能です。
中型・小型トラック運転手は安定して寝られる
トラック運転手と言っても、運転するトラックのサイズはもちろん、取り扱う荷物や配送距離もバラバラです。
各コンビニへ商品を配送するルート配送業務もあれば、個人宅への配達、遠方に向けての長距離配送もあります。
この作業内容によっても、トラック運転手の睡眠時間は異なります。
ルート配送や個人宅への配達など、近隣地域へ配達を行う地場配送の場合は日勤が多く、深夜勤務であっても仕事が終われば帰宅できます。
一方で長距離配送の場合は、時間をかけて配達先へ向かうため渋滞の影響を受けたり、荷主の指定した時間に合わせたりする必要があり、睡眠が不規則になりがちです。
そのため、長距離配送のトラック運転手になるほど睡眠をしっかりとれない傾向にあります。
大型トラックは休憩場所を確保しにくい
交通渋滞や荷主の時間指定により、トラック運転手は不規則な運行スケジュールになりがちです。
これに加えて、休憩しにくい原因となっているのが『休憩場所の確保が難しい点』です。
トラックのサイズは一般車両よりも大きいため、どこでも気軽に立ち寄れるというわけではありません。
特に大型トラックの場合は専用のスペースがないと駐車が難しく、いつでも好きなタイミングで車を停めて休憩できるわけではないのです。
また、サービスエリアやパーキングエリアを見つけたとしても既に満車であることが多く、簡単に休めないのも睡眠不足の原因となっています。
トラック運転手は寝れない?睡眠に関するルール
トラック運転手は、ちょっとしたミスが大事故に繋がる恐れがあるため、運転中は特に集中しておかなければなりません。
正常な運転を行うためには適度な休憩はもちろん、日頃の睡眠状態がとても重要です。
安全運行を行い未然に事故を防ぐため、会社側はドライバーの健康状態を把握しておく必要があります。
平成30年6月1日からは、トラック運転手に対して点呼時の『睡眠チェック』が義務付けされました。運行管理者はドライバーの健康状態を管理するために、下記のようなトラック運転手のライフサイクルを知っておく必要があります。
・特質:若年や中高年、朝方や夜型、低体温や高体温
・生活環境:育児あり、介護あり、一人暮らし
・運行環境:早朝運行、夜間運行、長距離運行など
睡眠不足は表情や声に出ると言われているため、点呼時の質疑応答の中で意識して確認を行います。
例えば睡眠不足が続いた場合、眉毛が八の字になったり目が赤くなる、口角にゆるみがあるなどの特徴があります。
また、眉毛が逆八の字型になっているような場合は、レム睡眠が不足している可能性があるのです。
声に関しては、かすれていたり喉に痛みがあったりするような場合『睡眠時無呼吸症候群』の可能性もあるので、注意して聞くようにしましょう。
点呼の際に顔や声が正常ではなく、睡眠不足の可能性を感じたり、運転手本人が悩んでいたりする場合には下記のような指導を行うのがおすすめです。
【早朝や日中の運転が多い場合】
睡眠状態:寝つきが遅く、早い時間帯に起きている
→3日連続して5時間以下の睡眠にならないようにする
睡眠状態:ある程度睡眠をとってはいるものの寝つきが遅い
→昼食は炭水化物を少なめにしてみたり、シャワーではなく湯船に浸かってみたりする。私生活で悩みがないかの確認をする
睡眠状態:睡眠はとれているものの、寝つきが遅い
→寝る時間を遅らせる。私生活で悩みがないかの確認
睡眠状態:寝るのが24時を超えて早い時間に起床、寝つきは早い
→入眠前の飲酒量を確認して、眠たくなる前に仮眠を取ったり寝る時間を早めたりする
睡眠状態:寝るのが24時を超えていて寝つきが遅い
→3日連続して5時間以下の睡眠にならないようにする。スマホなどを就寝前に使わないようにして寝る時刻を早める
【夜間の運転が多い場合】
睡眠状態:睡眠時間が4時間以下である
→就寝前の飲酒量の確認を行い眠気に注意する。寝つきが遅い場合には就寝前のスマホ操作をやめる
睡眠状態:睡眠時間が5時間ほどで寝つきが遅い
→就寝前のスマホ操作をやめて眠気に注意する。私生活での悩みがないかの確認をする
睡眠状態:睡眠時間が6時間ほどで寝つきが遅い
→シャワーではなく湯船に浸かるようにして就寝前にスマホ操作をやめる。昼食は炭水化物を少なめにする
参考元:公益社団法人 全日本トラック協会|安全運転・健康運転のためのトラックドライバー睡眠マニュアル
各運転手の体の特性や睡眠状態に応じた指導を適切に行うようにしましょう。
トラック運転手は寝れない?押さえておきたい睡眠の知識
睡眠は長くとれば良いというわけではなく、質が高いことが大切です。
ここでは『スタンフォード式 最高の睡眠』という本を参考に、質の高い睡眠を取るためのポイントをいくつか紹介していきます。
睡眠不足を感じている方は、是非参考にしてみてください。
適切な睡眠時間は約8時間
睡眠は取れば取るほどいいわけではなく、寝すぎてしまうと頭が痛くなったりぼうっとしたりすることがあります。
日本人の平均睡眠時間は約6時間ほどと言われていますが、それでは睡眠量が足りないと言われています。
『スタンフォード式 最高の睡眠』では、これに関する実験が行われ個人差はあるものの、十分な睡眠時間は『8時間12分くらい』ということが分かりました。※注1
睡眠不足は飲酒運転と同じ状態
近年、飲酒運転による事故が問題となっており、より厳格な法改正や取り締まりが行われています。
その一方で、睡眠不足に関しては点呼時の義務化があるものの、運転に対する取り締まりはありません。
しかし、睡眠不足は体に大きな悪影響を及ぼし、18時間起きていると飲酒後のほろ酔い状態と同じくらいになると言われています。
また、26時間連続して起きていると酩酊状態と同じレベルになってしまいます。
入眠から90分が睡眠の質を上げる
入眠に入るとノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返すのですが、脳をしっかり休めるノンレム睡眠は特に重要と言えます。
このノンレム睡眠は、入眠してから90分の間が最も深いとされており、成長ホルモンが多く分泌されます。
参考元:なんかいいな、をプラスワン Green House 良質な睡眠のすすめ
この時間帯は『黄金の90分』とも呼ばれ、睡眠の中でも特に大切な時間です。
次の章ではこの90分を有意義に寝る方法について解説していきます。
深く眠るには準備が重要
最も深いノンレム睡眠が訪れるとされている”黄金の90分”ですが、十分に体と脳を休めるには寝る前の準備がとても大切と言えます。
深部体温を下げ、脳をリラックスモードに変えるには、下記のようなことを意識して行うといいでしょう。
・寝る前の2時間前にお風呂を出る
・同じ時間に寝て同じ時間に起きる習慣を作る
・うたた寝をしない
・眠くなるまでは寝室に行かない
・寝る前にスマホやパソコンは見ない
どうしても残業で帰宅が遅くなり、就寝の2時間前までにお風呂に入れない時にはシャワーで済ますのがおすすめです。※注1
トラック運転手はまとまった睡眠をとりにくいため、なるべくうたた寝をしないことが特に大切です。
快適に目覚めるには飲み物も影響する
睡眠に関する悩みの一つに『目覚めの悪さ』があります。
一度ですっきり目覚められれば、その後の時間に大きな余裕を持てます。
目覚めに関する噂として『睡眠時間は90分の倍数にすればいい』というものがありますが、これに関してはあまり気にする必要はないと言われています。
目が覚めると喉が渇いていることが多いのですが、冷たいものよりもホットコーヒーやみそ汁など、温かい飲み物がおすすめです。
『急いでいるし、食欲がないから』と朝食を抜く方もいますが、朝食は体温や代謝を上げて体にリズムを作る上でとても重要なので、なるべく食べるようにしましょう。※注1
関連記事:大型トラックの寝台を快適にするには?おすすめアイテム3選紹介
入眠から90分が睡眠の質を上げる
ここまで、質の良い睡眠を取る方法について解説してきました。
しかし、仕事や生活リズムなどによっては、全てを守るのが難しいという方もいるのではないでしょうか。
また、ある程度守ってはいても『うまく寝れていないかも…』と不安に感じてしまうかもしれません。
このような睡眠に関する悩みや不安は、あまり気にする必要はありません。
寝つきが悪いと感じている、不眠症であるといった方を集めてみた結果、みんな予想以上にしっかり眠っていることが分かっています。※注1
ほとんどの人がベッドに入って15分以内には眠っており、寝付くまでに~1時間かかっていても神経質になる必要はありません。
※注1)参考文献:西野精治(2017) 『スタンフォード式 最高の睡眠』 サンマーク出版
トラック運転手寝れない?仮眠の取り方
睡眠の質を上げる方法について解説してきましたが、トラック運転手は数日かけて配達を行い、まとまった睡眠を取れないこともあります。
また、運転中は常に集中しておく必要があり、荷物の積み下ろしで体力を消費するため、疲労により急に眠気が襲ってくることも珍しくありません。
そのような場合におすすめするのが『仮眠』です。
ここでは仮眠の方法について解説していきます。
大型トラックにおける仮眠方法
大型トラックは車両自体が大きく、仮眠スペースが設けられています。
トラックにもよりますが、仮眠スペースは横幅65㎝、縦幅220㎝ほどです。
横になって仮眠できるのですが、より質を高めるためには毛布や枕などの寝具セットを用意しておくといいでしょう。
日中に働いているのであれば、遮光カーテンやアイマスクがあると、より寝やすくなります。
2tトラックにおける仮眠方法
2tトラックなどは仮眠スペースがなく、大型トラックのように横になって寝れません。
仮眠をする場合には、ハンドルに伏せる、助手席側を頭にして寝る、運転席のドアに寄り掛かる方法があります。
仮眠時に役立つアイテムとしては遮光カーテンやアイマスク、毛布などがあります。
運転席と助手席をまたいで寝るような場合には、間にある凹凸を埋めるマットを持参するのもいいでしょう。
仮眠時におすすめのアイテムや注意点について、更に詳しく知りたい方は下記ページをご覧ください。
関連記事:トラックで快適に仮眠する方法を解説!【ドライバー必見】
関連記事:トラックでの仮眠が違法にならない全国のおすすめ仮眠場所を紹介!
トラック運転手は寝れないについてのよくある質問
最後にトラック運転手の睡眠について、よくある質問を紹介していきます。
現役トラック運転手の方はもちろん、これから転職を予定している方も参考にしてみてください。
トラック運転手はどこで寝ていますか?
トラック運転手は車内で仮眠を取ることがほとんどです。
大型トラックであれば、運転席の後部や頭上に仮眠スペースがあり、そこで寝ています。
2tトラックのように仮眠スペースがない場合は、そのまま運転席で寝ています。
また、運行する場所にもよりますが、道の駅やサービスエリア、パーキングエリアが途中にあれば仮眠専用の施設が利用可能です。
あまりに寝れないと病気の可能性が高まりますか?
不規則な生活になりやすいトラック運転手ですが『睡眠不足が続くと体に悪いのでは』と心配になるのではないでしょうか。
結論から言うと、睡眠不足は脳血管疾患や心筋梗塞、生活習慣病のリスクを高めてしまい、肥満の原因にもなります。
また、睡眠不足が続くと脳が正常に機能しないことから、気分が落ち込み意欲が低下してしまい、精神疾患に影響を与える可能性もあります。
しかし、睡眠不足だからすぐに病気になるというわけではなく、本記事でお伝えした内容をもとに適切な睡眠を取れば上手に付き合うことが可能です。
各生活スタイルに合わせた睡眠を上手にとるようにしましょう。
関連記事:ドライバーの労働時間は働き方改革でどう変わった?ルールを解説
トラック運転手は眠れないに関するまとめ
今回はトラック運転手の睡眠について解説してきました。
トラック運転手は、他の職業に比べ拘束時間が長く、まとまった睡眠をとれないことも珍しくありません。
ちょっとしたミスが大事故に繋がるため、運送業界では点呼時の睡眠チェックが義務付けられています。
仕事で十分なパフォーマンスを発揮するためには良質な睡眠を取ることが大切なのですが、敏感になりすぎるのもよくありません。
仕事の流れや疲労度合いに応じて、仮眠を取ることも対策の一つと言えます。
仮眠に役立つアイテムを活用し、上手に睡眠と向き合うことで、トラック運転手として活躍し続けられるでしょう。
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