「製造業の安全教育に関して詳しく知りたい」と思っている方も、多いのではないでしょうか。
法的要件が絡んできたり、安全衛生との違いがわからなかったりと従業員に対して安全教育をどのように進めていいか悩みますよね。
本記事では、製造業の安全教育と安全衛生との違いを解説し、安全教育のポイントについても紹介しています。
製造業の安全教育について理解したい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事のまとめ
- 安全教育は労働者が安全に作業をおこなうための教育
- 安全衛生は健康を守るための総合的な取り組み
- 製造業の安全には5Sが必要
製造業における安全教育と安全衛生の違い
安全教育は主に「安全に関する知識」に焦点を当てており、労働者が安全に作業をおこなうために教育をします。
一方、安全衛生は「職場環境の整備と健康の確保」に重点を置き、労働者が健康的な環境で働けるようにする取り組みです。
詳しくは、以下より解説していくので参考にしてみてください。
安全教育
製造業における安全教育とは、労働災害の防止を目的としており、労働者に安全に関する知識や技術を習得させるための教育です。
機械や設備の操作、原材料や製品の取り扱いなど、製造業ではさまざまな場面で危険が伴います。
そのため、労働者に安全に関する知識や技術を習得させ、労働災害の発生を防止させなければいけません。
このように安全教育は、製造業において労働災害の防止に欠かせない取り組みです。
製造業を運営する上で、安全教育は必須と言えるでしょう。
安全衛生
製造業における安全衛生とは、労働者の安全と健康を守るための総合的な取り組みです。
製造現場ではケガだけではなく、長時間労働や衛生面などによる過労死やうつ病対策も必要になります。
そのため、労働者の安全と健康を守るために、衛生管理についても取り組まなければいけません。
安全衛生に取り組む際は、以下の点を意識して取り組んでみてください。
|
安全衛生は製造業において労働者の安全と、健康を守るために欠かせない取り組みです。
安全教育と並行して、社内で実施してみてください。
関連記事:テールゲートリフターの特別教育の義務化はいつから?罰則は?
製造業に安全教育が必要な理由
製造業に安全教育が必要な理由は、労働災害の防止です。
製造業は物理的な作業や機械操作が多いため、他の業種に比べて労働災害のリスクが高くなります。
安全教育はこれらの危険を理解し、適切な手順や安全対策を学ぶことで、事故の発生を削減しています。
実際、製造業における労働災害の発生率は、全産業の中で一番高くなっています。
業種別 死傷者数 |
|||
業種 |
令和4年 |
令和3年 |
平成29年 |
全産業 |
132,355 |
130,586 |
120,460 |
製造業 |
26,694 |
26,424 |
26,674 |
建設業 |
14,539 |
14,926 |
15,129 |
陸上貨物運送事業 |
16,580 |
16,355 |
14,706 |
小売業 |
16,414 |
16,425 |
13,881 |
社会福祉施設 |
12,780 |
12,797 |
8,738 |
飲食店 |
5,304 |
4,745 |
4,721 |
製造業における労働災害の例としては、以下のようなものがあげられます。
|
これらの事故や健康被害は、労働者の生命や健康に大きな損害を与えるだけでなく、企業の経営にも大きな影響を与えかねません。
そのため、製造業における安全教育は、ただ単にルールを伝えるだけでなく、実際の作業における安全意識を高める必要があります。
企業側は労働災害を減らし、生産性を高めるためにも安全教育を継続的におこなう必要があるでしょう。
関連記事:【2024年最新】フォークリフト事故がよく起きる原因と事故防止対策5選
製造業に関する5つの安全教育
製造業に関する5つの安全教育は、以下のとおりです。
|
ひとつずつ解説します。
雇入れ時の教育
製造業における雇入れ時の安全教育とは、新しく入社した労働者が製造業の現場や機械に慣れていないことを踏まえて、おこなう安全教育です。
具体的な教育内容としては、以下のようなものがあげられます。
|
雇入れ時の安全教育は、労働災害の防止や安全意識の向上に効果的です。
この教育を実施することで、労働災害の発生を未然に防ぎ、新入社員が安心して働ける環境を整えられます。
作業内容変更時の教育
作業内容が変更されるときも、安全教育が必要です。
作業内容が変わると、取り扱う物が変更したり、操作手順が変わったりするので始めから覚える必要があります。
そのため、新たな作業に伴う危険性や安全上の留意点を理解し、安全に作業をおこなうための知識や技術を習得させる教育が必要です。
勤務年数がいくら長くても、作業内容が変更された場合、必ず安全教育は実施するようにしてください。
危険有害業務従事者への教育
危険有害業務従事者への教育とは、製造業においてとくに危険性の高い業務に従事する労働者を対象とした安全教育です。
危険有害業務には、以下のようなものがあげられます。
|
上記の業務に従事する労働者は、危険有害業務従事者としての特別教育が義務付けられています。
危険有害業務をする際は、必ず特別教育を受けさせるようにしてください。
安全衛生水準向上のための教育
安全衛生水準向上のための教育とは、製造業における安全衛生水準を向上させるために実施する教育です。
具体的な教育内容としては、以下のとおりです。
|
安全衛生水準向上のための教育は、製造業の職場環境をより安全かつ生産的にするために重要です。
企業は、従業員に対する継続的な安全教育を実施し、常に最新の安全基準を満たすことが求められるでしょう。
職長への教育
職長への教育は製造業において職長の役割や責任を理解させ、労働災害の防止に必要な知識や技術を習得させるための教育です。
具体的な教育内容としては、以下のようなものがあげられます。
|
職長は作業現場の安全と効率を監督する、重要な役割を担っています。
企業側としては、職長が安全管理に必要な知識と技能を身につけ、労働者に伝えられるように定期的な研修と支援を提供してみてください。
関連記事:工場勤務に役立つ国家資格10選|取得のメリットも解説
製造業で労働災害や事故が起きる原因
製造業の労働災害や事故が起きる原因は、大きく分けて「人為的な要因」と「物的要因」の2つがあります。
分類 |
原因の詳細 |
人為的な要因 |
・労働者の不注意やミス |
・労働者の安全意識の低さ |
|
・労働者の教育や訓練不足 |
|
物的要因 |
・設備や機械の不良 |
・作業環境の悪さ |
|
・作業手順の不備 |
製造業の労働災害や事故を防止するためには、人為的な要因と物的要因の両方の対策が必要です。
そのため企業側は、従業員に対して定期的な安全研修を提供し、機械や設備のメンテナンスに関しても定期的におこないましょう。
関連記事:カウンターフォークリフトやリーチフォークリフト事故を防ぐための危険予知訓練方法を紹介!
製造業:過去の事故に関する事例
製造業では、過去にさまざまな事故が発生しています。
今回は、厚生労働省「労働災害事例」に記載されているプレスの金型にはさまれ死亡した事例を紹介します。
業種 | ・金属プレス製品製造業 |
事業場規模 | ・5~15人 |
機械設備・有害物質の種類(起因物) | ・プレス機械 |
災害の種類(事故の型) | ・はさまれ、巻き込まれ |
被害者数 | ・死亡者数:1名 |
発生要因(物) | ・防護ができていなかった
・安全装置を確認していなかった |
発生要因(人) | ・無意識の行動 |
発生要因(管理) | ・危険に対する措置不足 |
発生状況 | ・動力プレス機械使用中の事故
・後面の安全装置が故障していた |
対策 | ・安全装置が有効使用できるか確認する
・特定自主検査の実施をする |
※参考:厚生労働省「労働災害事例」
製造業における事故を防止するためには、労働者一人ひとりの安全意識の向上も重要です。
企業側は定期的な安全研修をおこない、過去の事故から学んだ教訓を労働者に伝えて事故を未然に防ぎましょう。
関連記事:立ち仕事で足が痛いという方必見!足を楽にさせる方法や痛みの予防方法を紹介
製造業に必要な安全教育のポイント|7選
製造業に必要な安全教育のポイントの7つは、以下のとおりです。
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1.5Sを徹底させる
製造業において5S「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」を徹底することは、職場の安全性と業務効率改善には欠かせません。
5Sを実施することで、具体的には以下の効果が期待できるでしょう。
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製造業において5Sの原則を徹底することは、労働者の安全を確保し、作業効率を向上させるため極めて重要です。
5Sを日常の流れとして組み込み、従業員に対して定期的な講習も実施してみてください。
2.異常な状態が発生したときの対応策を教えておく
異常な状態が発生したときの対応策を教えておくことで、労働災害の防止につながります。
製造業の現場では、機械の故障や化学物質の漏れ、火災などの予期せぬ状況が発生する場合があります。
具体的な対応策の例としては、以下のとおりです。
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これらの対応策は製造業に限らず、すべての業種で共通して必要です。
また、異常な状態が発生した際にはパニックに陥らず、冷静に判断することが大切になります。
3.決められた作業手順を守らせる
企業側は決められた作業手順を従業員にしっかりと教え、守らせる必要があります。
具体的には、以下の方法が考えられます。
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たとえば、化学物質を取り扱う際の安全手順には、適切な保護具の着用や化学物質の安全な保管方法が含まれます。
また、機械操作時には安全チェックリストに従い、機械の状態を確認し、正しい操作方法が求められるでしょう。
企業側は決められた作業手順を従業員にしっかりと教え、安全な職場環境の実現につなげてみてください。
4.正しい服装の習慣を身につけさせる
製造業では、さまざまな機械や設備の操作をします。
これらの作業には危険が伴い、正しい服装を身につけていないと、労働災害につながるおそれもあるでしょう。
たとえば、長袖や長ズボンなどの袖ボタンを止めていないと、機械に巻き込まれてケガをする可能性もあります。
企業側は正しい服装の重要性を従業員に理解させ、労働災害の防止と安全な職場環境の実現につなげてみてください。
5.災害防止の討論の場を作り注意喚起する
製造業に関する企業は災害に関して討論の場を作り、従業員同士で意見を交わす機会を設ける必要があります。
災害防止の討論の場を効果的におこなうためには、以下の点に注意が必要です。
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上記のような施策をおこない、労働災害の防止と安全な職場環境の実現につなげていきましょう。
6.指差呼称を身につけさせる
指差呼称を身につけていると作業中の危険を周囲に伝えられるため、事故の未然防止につながります。
指差呼称は作業手順を確認しながら指を指し、声に出して呼称することで注意力を高め、作業ミスを減らす方法です。
この方法は、日本の鉄道業界で広く採用されており、事故の防止に効果的であることが証明されています。
たとえば、機械操作時に「スタートよし」と声に出しながら、スタートボタンを指さすことで操作ミスを防ぎます。
また、危険区域に入る際に「周囲異常なし」と声に出しながら確認することで安全意識を高められるでしょう。
7.事故が起きる原因から安全教育を実施する
製造業の企業は事故が起きる原因を分析し、原因を踏まえた安全教育を実施することが大切です。
具体的には、以下の方法があげられます。
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事故の原因は、単一の要因で起きることは少なく、複数の要因が絡み合って起きることがほとんどです。
そのため、事故の原因を多角的に分析することが大切です。
製造業の安全教育に関するよくある質問
製造業の安全教育に関するよくある質問について、以下5つを解説します。
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工場の安全3原則とは何ですか?
工場における安全3原則とは、以下3つのことをさします。
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工場の安全4原則とは何ですか?
工場における安全4原則とは、以下4つのことをさします。
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工場の安全5原則とは何ですか?
工場における安全5原則とは、以下5つのことをさします。
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工場の安全の合言葉は何ですか?
工場の安全の合言葉として「ご安全に」という言葉は、製造業ではよく使われます。
そのほかにも「ゼロ災で行こうヨシ」や「安全第一」なども、安全に関する合言葉としてよく使用されています。
PPT資料とは何ですか?
PPT(ピーピーティー)とは、Microsoft社のプレゼンテーションソフトPowerPointで保存された形式ファイルに付く拡張子「.ppt」のことです。
製造業の安全教育に関するまとめ
製造業の安全教育は従業員を守るだけでなく、自社の経営にも直結する重要な施策のひとつです。
労働災害を起こさないためにも、従業員の安全教育は定期的に実施してみてください。
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