物流業界

物流業界のDX事例を業務種類別に紹介|導入の課題とは

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物流業界のDX事例を業務種類別に紹介|導入の課題とは

物流業界は、DX化の波によって大きな変革を迎えています。

自動化された倉庫管理システムからAIを活用した配送ルートの最適化、ドローンや自動運転車による配送など、DXは実際の業務を大幅に効率化し、コスト削減や顧客満足度の向上にも寄与しています。

本記事では、物流業界のDX事例、DXで解決できる物流業界の課題、海外の事例などについて解説します。

物流業界におけるDXとは

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物流業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して物流業務の根本的な変革を図ることです。

具体的には、IoTデバイス、AI、ビッグデータ分析などのテクノロジーを用いて、運送ルートの最適化、在庫管理の効率化、輸送状況のリアルタイム追跡などを実現します。これにより、配送の速度と精度を向上させると同時に、コスト削減やサービス品質の向上を目指します。

また、デジタル技術を駆使して、将来の需要予測や市場変動に柔軟に対応できる体制を構築することも、物流業界におけるDXの重要な要素です。

このように、物流業界におけるDXは、業務効率の向上だけでなく、競争力の強化と持続可能な成長のための鍵となる動きです。

DX化で解決したい物流業界の主な課題

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続いて、DX化で解決したい物流業界の主な課題を3つ解説します。

ドライバー不足

DX化で解決したい物流業界の主な課題の1つ目は、ドライバー不足です。

現代の物流業界は、配送需要が急速に増加しているため、この需要の増加に対して十分な数のドライバーを確保することが業界全体の大きな課題となっています。そして、DX化によるアプローチは、このドライバー不足の問題に対して革新的な解決策を提供することができます。

例えば、配送ルートの最適化によって、既存のドライバーの労働効率の最大化が可能になります。デジタルツールを用いて最短ルートを計算し、配送時間を短縮することで、一人当たりの配送量を増やせるのです。

また、自動運転技術の導入によって、将来的にはドライバー不足の抜本的解決も視野に入れられます。自動運転車は、ドライバーが不足している時間帯や地域での配送を補い、24時間体制での効率的な物流運営を実現する可能性を秘めています。

このように、DX化によって物流業界のドライバー不足という課題に対応し、運送の効率化とサービスの質の向上が期待されているのです。

EC需要の上昇による小口配送の増加

DX化で解決したい物流業界の主な課題の2つ目は、EC需要の上昇による小口配送の増加です。

近年、EC(電子商取引)の需要増加が著しく、これにより個々の消費者への直接配送、すなわち小口配送の需要が急速に増加しています。

そして、小口配送は多くの配送先へ小規模な荷物を届ける必要があるため、配送ルートの最適化や配送プロセスの効率化がより重要になっています。この一連の流れは、物流業界に新たな負担をもたらしているのです。

しかし、DX化を通じて、これらの課題への対応が可能になります。

例えば、先進的なデータ分析ツールを用いて、より効率的な配送ルートを計画できます。また、AI技術を活用した需要予測システムにより、事前に配送リソースを適切に配置することで、突発的な需要増加にも迅速に対応できるようになります。

さらに、自動化された倉庫管理システムやロボットによる荷物の取り扱いなど、物流プロセス全体のデジタル化によって、小口配送の効率を大幅に向上させることができます。

このようにDX化は、物流業界が直面するEC需要の上昇による小口配送の増加という課題に対し、効率性とコスト削減の両面から有効な解決策を提供する可能性を持ってるのです。

残業の上限規制

DX化で解決したい物流業界の主な課題の3つ目は、残業の上限規制です。

労働者に過剰な労働時間を強いることは、労働者の健康を考慮する必要性から、日本では厳しく制限されています。一方、物流業界では、特に繁忙期において業務量が増加し、これが従業員の残業時間増加が常態化する原因となっています。

例えば、令和3年度の厚生労働省の調査によれば、トラック運転手の月平均残業時間は、全産業平均175時間を大きく上回る207時間(中小型トラックの場合、大型トラックは212時間)です。このことから、物流業界の労働時間を短縮することが容易ではないことがわかります。

しかし、DXによる業務の効率化は、この課題への解決策を提供します。例えば、配送ルートの最適化、自動化された倉庫管理システム、AIを活用した需要予測などは、作業負荷を減少させ、残業時間の削減に寄与します。

また、デジタルツールを用いて労働時間の管理と追跡を行うことで、残業時間の適切な管理と労働法規の順守が実現します。

このように、DX化による業務の自動化と効率化は、物流業界における残業の上限規制に対応するための鍵となり、従業員の健康と安全を確保しながら業務効率を向上させることができるのです。

出典:物流DX事例の紹介~基盤整備の1つの形として~|株式会社富士通総研

関連記事:2024年問題で物流業界は何が変わるのか?対策事例も紹介

物流業界におけるDX導入状況

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では、実際に現在の物流業界では、どの程度DXが導入されているのでしょうか。下記は、国土交通省が発表した、物流業務で実際に導入されているDXの実例です。

物流業界におけるDX導入状況

配送業務や倉庫業務など、既にさまざまなシーンにおいて、DXが進んでいることがわかります。次章以降では、具体的な事例について見ていきましょう。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~|国土交通省

物流業界のDX事例〜配送業務編

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まずは、物流業界の配送業務におけるDX事例を6つ紹介します。

クラウドサービスによる配車計画の自動化

クラウドサービスによる配車計画の自動化の事例として、株式会社スーパーレックスを紹介します。

導入以前は、配送店舗の増減に伴う固定ルートの変更に時間がかかり、配車計画作成の担当者の負担が大きいという課題を抱えていました。同時に、土地勘や経験がない配車計画の作成が難しく、業務の引継ぎが困難であったことも課題でした。

これらの課題を解決するために、ライナロジクス社の配車計画作成用クラウドサービス「LYNA 自動配車クラウド」を導入しました。このサービスの特徴は下記の通りです。

  • システムに搭載した独自開発のAIアルゴリズムにより、何十万通りの配車計画を瞬時にシミュレーションし、コスト・時間削減に最も優れた配送ルートを提案してくれる。
  • 経験の浅いスタッフでもAI技術がアシストするため、より正確な配車計画を作成することができる。カスタマイズ無しでも使えるが、現場の配送ノウハウを反映した配車計画にするため、自動配車システムの設定をチューニングすることも可能。
  • 企業ごとに異なる複雑な制約・条件を網羅しているため、配送に使用する車両の積載量、稼働時間等の基本情報を登録すれば、配車計画に不可欠な距離や時間、燃料代・人件費といった配車コスト等が最重要視して計算される。

このシステムを導入したことで、スーパーレックスの業務は下記のように改善されました。

  • 手配車決定作業が数時間で行えるようになった。
  • 積載率など細かい調整や計画の変更をしたい場合も操作はが容易になった。 
  • 情報だけインプットすれば土地勘が無くても配車が組めるため、配車業務の標準化により引継ぎがスムーズになった。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~|国土交通省

荷主とドライバーの配送マッチング

荷主とドライバーの配送マッチングの事例として、CBcloud株式会社を紹介します。

CBcloudは、運送業界の構造的課題の解決を目指し、荷主と配送ドライバーや運送会社を直接繋ぐ配送プラットフォーム「PickGo」等を運営しています。「PickGo」の特徴は下記の通りです。

  • 全国の荷主企業とドライバーや運送会社を直接繋ぐサービスであり、発注側の荷主と受注側それぞれに意思決定権がある。
  • 独自のドライバー評価制度「PickGoスコア」でサービスの質を担保することができる。
  • 荷主が管理画面上で配送依頼をかけると、全国のドライバーのスマートフォンアプリや運送会社の管理画面に一斉にプッシュ通知が届き、それを見て配送業務を受けたいと思ったドライバーや運送会社がエントリーすることができる。

実際に、この「PickGo」を導入した株式会社レンタルのニッケンでは、下記のような改善が見られました。

  • 従来は車両手配に時間がかかり同業他社に仕事を奪われることもあったが、PickGoですぐに配車できるため、仕事を逃さずに済むようになった。
  • 従来は車両手配の可否や到着予想時刻を即座に顧客に伝えられなかったが、PickGo導入により、電話確認せずに位置情報や到着予想時刻がわかるようになった。
  • スポット便のコストが高かったが、PickGo導入により、コストが1件あたり500~1,000円程度安くなった。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~|国土交通省

過疎地域でのドローン配送

過疎地域でのドローン配送の事例として、株式会社NEXT DELIVERYを紹介します。

株式会社NEXT DELIVERYが提供する、ドローン配送による新スマート物流「SkyHub」の実装実験が山梨県小菅村で行われ、オンデマンド配送サービス専門コンビニ「SkyHub Store」と地域が連携した買物・配送代行サービス「SkyHub Delivery」が定期的なサービスとして開始されました。

小菅村の住民は、買い物に村から片道約40分かけて市街地のスーパーへ行かなければならない、かつ過疎地域への配送は物流会社としても採算が取りづらく、消費者と事業者両方が頭を抱えている状況でした。

そこで、荷物を搭載時も未搭載時も、重心を一定に保つ技術「4D GRAVITY」を採用したドローンによる配送サービスである「新スマート物流SkyHub」を導入しました。

「新スマート物流SkyHub」では、小菅村への荷物を物流各社共同でまとめて運び、村内に新設の「ドローンデポ」に集約後、村内の8つの集落へ、陸路、ドローン配送、貨客混載などさまざまな方法を組み合わせて配送する仕組みです。

実際に、この「新スマート物流SkyHub」を導入した後、小菅村では下記のような改善が見られました。

  • 家まで荷物を配達してくれる点が買い物困難者にとって喜ばれた。
  • 物流の無人化・省力化に役立ち、道路渋滞など陸路の影響を受けることなく直線最短距離で配送でき、空の道という新たなインフラを圧倒的な低コストで早期に開設できた。
  • 「物流の効率化」と「地域住民の生活の質」の両方の向上を図る新たな物流の仕組みとなった。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~|国土交通省

GPS端末による車両の動態管理

GPS端末による車両の動態管理の事例として、株式会社Hacobuを紹介します。

同社は、運送委託先の運送会社から運行実績を直接入手しなければダイヤ検証ができない、という物流業界の課題に対して、運送会社に頼らず自社で簡単に運行実績が確認できるアプリケーション「MOVO Fleet(ムーボ・フリート)」を開発・提供しています。「MOVO Fleet」の特徴は下記の通りです。

  • GPS端末を車両に装着するだけで車両管理を効率化し、荷主と運送会社双方のコスト削減、生産性向上を支援する。
  • GPSトラッカー「ムーボ・スティック」や、GPS機能付き通信型ドライブレコーダー「ムーボ・アイ」により、①5秒に1回の位置情報取得による正確な現在位置の確認、②配送計画に対する実績・遅れをダッシュボード上で可視化、③着荷のGPS情報による自動判定、待機実績の可視化、④日報の自動生成(手動生成の選択も可能)、⑤過去の走行データの蓄積(配送効率改善のための配送ルート見直し等が可能)等、物流業界に特化した豊富な機能を低価格で提供している。

実際に、この「MOVO Fleet」を導入した豊田自動織機では、下記のような改善が見られました。

  • 毎月のダイヤ検証にかかる時間が12時間から6時間に半減した。
  • 「ある地点での作業時間が予定より早まっている」場合、作業時間のダイヤを短縮し、全体の運行終了時間を早め、残業時間を低減した。
  • 「ある地点への到着が遅れている」場合、非効率なルートでの輸送が判明し、運行距離低減のための見直しが可能になった。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~|国土交通省

点検記録の手入力をデジタル化

点検記録の手入力をデジタル化の事例として、山九株式会社を紹介します。

山九では、作業日報や請求書、点検記録など、業務に関わる多種多様な手書き紙帳票の手入力にかかる業務時間に課題を抱えていました。また、OCR(Optical Character Reader)自体は導入していたものの、手書きの読み取り精度に難があり、多様な帳票への対応は引続き人力頼みで、従業員から電子化の要望も出ていました。

これらの課題を解決するために、山九はAI inside株式会社のAI-OCR「DX Suite」を導入しました。「DX Suite」の特徴は下記の通りです。

  • 手書きの文字を高精度に読み取り、デジタルデータ化する。発行元によってフォーマットが異なる非定型帳票の読み取りにも対応。
  • データ化業務に必要な書類仕分けをAIで実現可能。

この「DX Suite」を導入したことで、山九では下記のような改善が見られました。

  • 点検記録、作業日報、請求書、出勤簿すべて合わせて、月間約400時間の業務時間の削減に成功し、業務の効率化が図られた。
  • 帳票は合計で月間約6,000枚発生するため、手入力の時間的な負荷だけでなく、精神的な負荷も減ったことで、業務の質も向上した。
  • 業務効率化で新たに生まれたリソースで、今まで手を回すことができなかった業務も着手可能となった。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~|国土交通省

マニュアルの電子化

マニュアルの電子化の事例として、株式会社インテンツを紹介します。

インテンツでは、業務マニュアルを紙媒体で作成し、配送スタッフへ配布していましたが、マニュアルの改訂とスタッフへの配布が追い付かずにマニュアルが陳腐化し、現場の作業が各自の判断になりがちという課題を抱えていました。

この課題を解決するために、インテンツは株式会社スタディストの電子マニュアルツール「Teachme Biz」を導入しました。「Teachme Biz」の特徴は下記の通りです。

  • マニュアルをステップ化でき、画像編集も簡単で、1つの動画から画像を切り出せる。
  • 利用時に困ったときには、マニュアルの見たい内容がすぐ見つけられる。
  • スマホで「一覧」から必要なマニュアルを選び、内容をチェックし、画面に映る手順に沿って作業することで一人でもスムーズに対応できる。

この「Teachme Biz」を導入したことで、インテンツでは下記のような改善が見られました。

  • 業務浸透の徹底や、離職率の改善、マニュアル作成・更新の効率化、人材育成・研修の効率化が図られた。例えば、トレーナー用マニュアルについては、それまではマニュアルがなかったため、教え方や順序に個人差があり、研修に80時間(10日間)を要していたが、マニュアル導入後の現在は、56時間(7日間)まで短縮されるなどの効果が出ている。
  • 数十か所を超える現場への紙のマニュアル配布がなくなり、紙類と印刷の手間の削減効果があった。
  • 迅速なマニュアルの更新と各人への配布が可能となったことで、各スタッフへ素早く統一的な作業指示ができるようになった。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~|国土交通省

物流業界のDX事例〜倉庫業務編〜

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続いて、物流業界の配送業務におけるDX事例を6つ紹介します。

バース予約・受付システムで待機時間を短縮

バース予約・受付システムで待機時間を短縮した事例として、福岡運輸株式会社を紹介します。

福岡運輸では、物流が集中した際に倉庫における積込みや荷下ろし待ちが発生し、待機時間の問題や近隣への迷惑行為となるため、限られたバース数での効率的な運用、倉庫内貨物の効率的な回転、乗務員待機時間に課題を抱えていました。

この課題を解決するために、福岡運輸は受付状況やバース状況を可視化できる「バース予約・受付システム」を自社で開発しました。福岡運輸の「バース予約・受付システム」の特徴は下記の通りです。

  • 「バース予約」「受付システム」「バース自動割当」「乗務員連絡バース誘導」の4つの機能を搭載し、自由な組み合わせで使える。
  • システムの流れは、①携帯電話等からの予約・受付→②SMS・メールによる待機車両のバースへの呼び出し・誘導→③バース稼働状況等の作業進捗をリアルタイムで確認→④受付状況、バース稼働状況をリアルタイムで確認→①へ戻る。

このシステムの導入で、福岡運輸では下記のような改善が見られました。

  • システム導入で倉庫周辺での待機トラックや倉庫内貨物を可視化できるようになり、荷捌き、保管エリアでの貨物の整理や、バースの秩序だった運用が可能となった。
  • 車両と倉庫の効率的運用を実現し、車両の待機時間削減は渋滞緩和と環境保全に寄与した。
  • 2020年、九州運輸局交通政策関係表彰の環境保全部門で表彰された。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~|国土交通省

クラウド型在庫管理システムで生産性・在庫精度アップ

クラウド型在庫管理システムで生産性・在庫精度アップした事例として、Johnstone Supplyを紹介します。

Johnstone Supplyは、全米に約450の地域密着型の卸販売店を所有していますが、事業拡大に伴い増加した配送センター間で在庫点数等のデータに整合性がとれず、入力作業の増加や、それに伴う新規人員の増加を招いていました。

この課題を解決するために、Johnstone Supplyはクラウド型在庫管理システム「Infor WMS」を導入しました。「Infor WMS」の特徴は下記の通りです。

  • 単なる倉庫管理にとどまらず、労務管理や3Dによるビジュアル分析を備えており、在庫管理や、注文・調達、機器、従業員管理まで一貫した様々な情報を可視化できる。
  • その他、企業のグローバル化を想定し複数の言語(14種類の言語)、音声認識機能やカスタム機能を備えており、ユーザーにとって拡張性が高い。

このシステムの導入で、Johnstone Supplyでは下記のような改善が見られました。

  • 「Infor WMS」は操作が分かりやすいため、新入社員でも10日もあれば使いこなせるため、「Infor WMS」の導入により、スタッフの生産性が大幅に向上するとともに、在庫精度も99.9%にまで改善した。
  • 「Infor WMS」には倉庫管理に関わる多彩な機能が用意されているため、導入により、オペレーション全体の一貫性が確保できるようになった。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~|国土交通省

荷下ろしロボットで作業を自動化

荷下ろしロボットで作業を自動化した事例として、株式会社坂塲商店を紹介します。

坂塲商店では、毎日1万ケースの商品を、パレット上から仕分け機に繋がるコンベヤに投入する作業を、全て手作業で実施していましたが、高さのある積荷や重い商品もあり、労働環境の改善が必要でした。

この課題を解決するために、坂塲商店は株式会社Mujinの「MujinRobotデパレタイザー」を導入しました。「MujinRobotデパレタイザー」の特徴は下記の通りです。

  • 複数種類のケースが不規則に積まれていても、パレットをロボットの元へ搬送すれば、自動で荷下ろし作業を実行する。
  • 所定の位置に商品が積まれたパレットを配置する以外に特別なオペレーションは不要。
  • 商品の事前登録や、ロボットの動作ティーチングは不要で、導入・運用のオペレーションコストを大きく削減可能。
  • 世界最速レベルで高いデパレ処理能力(単載で最高1,000cs/h、混載で最高600cs/h)を備えており、独自アルゴリズムで様々なサイズ、色、柄の段ボール箱を高精度で検出できる。

このシステムの導入で、坂塲商店では下記のような改善が見られました。

  • ロボットの能力は当初想定していた数値をクリアした。
  • 同じ形状のケース単載の場合はもちろん、さまざまな形状のケース混載の場合も遜色なく動作した。
  • 複数種類の商品が積まれた混載パレットからでも自律的に荷下ろし作業を行い、1時間あたり平均400~450ケースを安定的に荷下ろしできている。
  • 商品情報の事前登録やロボットティーチングが不要なため、ロボットの導入・運用に付随するオペレーション負荷は小さい。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~|国土交通省

保管・ケースピッキング業務を自動化

保管・ケースピッキング業務を自動化した事例として、トランコム株式会社を紹介します。

トランコムでは、倉庫事業に関わる構造的な労働力不足により、長時間労働や重筋作業の改善が喫緊の課題となっていました。

この課題を解決するために、トランコムは「RGV(Rail Guided Vehicle)」を用いた自動倉庫と、「AGV(Automated Guided Vehicle)」を用いた搬送方式を導入しました。導入後、トランコムでは下記のような効果が見られました。

  • AGV・RGV・昇降機で構成される自動倉庫のため、RGVを活用した在庫保管エリアとして上部空間を有効活用できる。
  • 後付け・拡張等、各種ニーズに柔軟に対応が可能(柱回りなどのデッドスペースを活用することも可能)になる。
  • 災害による停電時も人手対応が可能な設計(1層目はAGVエリア、上層はキャットウォーク設置により、立ち入り可能)になっている。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~|国土交通省

月額制倉庫ロボットサービスで作業負担を軽減

月額制倉庫ロボットサービスで作業負担を軽減した事例として、三菱商事株式会社を紹介します。

三菱商事の「Roboware」は、設計・導入から運用・保守まで対応できる、月額制倉庫ロボットサービスです。「Roboware」の特徴は下記の通りです。

  • 幅広いユーザーが倉庫ロボットを活用できるよう、「Robot as a Service(RaaS)」という形で導入前の分析・戦略から導入後の運用保守まで提供する。
  • 商品を省スペースで高速自動仕分けする立体型仕分けロボット「Omni Sorter」、商品の入庫・保管・出庫を自動化することにより、ピッキング生産性を従来比2倍以上にする棚搬送型ロボット「Ranger GTP」、フォークリフトの有効活用を可能にするパレット搬送型ロボット「Ranger IL」、ピックすべき保管場所に自動で移動し、作業者に通知することでピッキングをリードする自律走行型ロボット「FlexComet」の4種類を提供している。

このシステムを導入した日本梱包運輸株式会社では、下記のような改善が見られました。

  • 導入したRanger GTP(ロボット)が荷物の入った棚を作業者のところまで運んでくるため、主に高齢の従業員が担当している倉庫作業(棚から出荷場まで大きな荷物を搬送する)の負荷を軽減できている。
  • 指定の棚にライトが当たったり、部品番号が表示されて出庫する数量を指示してくれるなど、深く考えずとも出庫を完了できる工夫が施されており、パートやアルバイト、海外実習生など誰でも簡単かつ正確に作業ができる。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~|国土交通省

ハンドリフト牽引型AGVで入出庫搬送の時間を短縮

ハンドリフト牽引型AGVで入出庫搬送の時間を短縮できた事例として、ダイキン工業株式会社西日本パーツセンターを紹介します。

ダイキン工業西日本パーツセンターでは、補修用部品の調達・管理・発送を行う物流倉庫の生産性向上を目指す中で、大きな作業ウエイトを占める入出庫搬送(最長往復約500m)の時間短縮や負担軽減に課題を抱えていました。

この課題を解決するために、ダイキン工業西日本パーツセンターは、「ハンドリフト牽引型の自動搬送装置(AGV)」を導入しました。「ハンドリフト牽引型の自動搬送装置(AGV)」の特徴は下記の通りです。

  • AGV(Automated Guided Vehicle)とは、目的地まで人に代わって荷物を搬送する装置であり、コンベアユニットやカゴ車搬送ユニットなどの機器を本体に搭載することで、さまざまな荷物を運べる。
  • 磁気テープに沿って走行するAGV(シャープ社製)は、磁気テープ上(もしくは下)に設置された制御カードの情報を読み取り、動作(停止/加速/充電など)を行う。タブレット端末で簡単に走行指示も可能。
  • バッテリーを外付けにカスタマイズし、2つを交互に装着・充電することで長時間の連続運用を可能にしている。

このシステムの導入で、ダイキン工業西日本パーツセンターでは下記のような改善が見られました。

  • 負担が大きかった中物部品の入出庫搬送の負荷が軽減した。最長往復約500mもある搬送作業が自動化され、行先指示も簡単で、現場からは喜びの声があがった。
  • 空調部品のため需要の季節変動が大きい点も課題だったが、AGVのレンタルが併用でき、繁閑差に応じて台数を増減させて運用できた。
  • AGV導入の結果、生産性が15%向上し、2名相当の省人化という効果が得られた。

出典:物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~|国土交通省

海外の物流業界のDX事例

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続いて、海外の物流業界のDX事例を3つ紹介します。

AIで配送ルートを最適化

AIで配送ルートを最適化した事例として、United Parcel Service of Americaを紹介します。

アメリカの配送企業「UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)」は、年々増加を続ける配送ニーズに対応し、配送の効率化を図るために「AIによるドライバーのルート最適化」を実施しています。

配送ルートの非効率性は物流業界の大きな課題でしたが、UPSでは、この問題に対処するために「ORION」という名のAIを用いたルート最適化システムを採用しています。

「ORION」は、複雑なアルゴリズムと地理情報システム(GIS)を組み合わせ、AIによる分析を通じて配送ルートを効率的に計画します。このシステムの導入により、UPSは毎年数億ドルのコスト削減を達成し、経済的利益を実現しています。

さらに、ルート最適化はコスト削減にとどまらず、環境への貢献ももたらしています。具体的には、ORIONの導入により二酸化炭素排出量が年間約10万トン削減されたとUPSは報告しています。

このように、AIによるルート最適化は、経済的な利益だけでなく、環境保護にも寄与する有効な手段として注目されているのです。

ドローンでピザ配送

ドローンでピザ配送を実現した事例として、ドミノピザを紹介します。

日本でも有名なアメリカの「ドミノピザ」は、ピザを積載したドローンが住宅地の上空を飛行し、顧客のもとへ直接ピザを届けるサービスを展開しています。この方法により、従来のピザ配達員が不要となり、店舗側は店舗での業務に集中でき、サービスの質の向上や効率的な調理プロセスを実現しています。

また、ドローンを用いた配達では、ピザを迅速に配送できることから、顧客にはより温かく、新鮮なピザを楽しんでもらえるようになりました。

このように、ドミノピザのドローンを活用した配達サービスは、食品配送の分野における新しい可能性を示しているのです。

商品管理・搬入の自動化

商品管理・搬入の自動化を実現した事例として、Swisslogを紹介します。

Swisslogは、アメリカに拠点を置く物流倉庫運営企業です。自社の飲料商品を扱う物流倉庫では、注文に応じた商品の正確な管理が難しく、これが非効率とコストの無駄を引き起こしていました。

Swisslogは、この問題に対処するため、ベルトコンベアやパレットなどの設備を含む全自動の物流倉庫へと変革を遂げました。この自動化により、商品の正確な数の管理や人手不足の問題を解決しました。

さらに、このシステムでは商品を自動的に識別し、発送先に応じてコンベアの目的地を自動で切り替えることができ、人の手を介さずに商品をトラックへ搬入することが可能になりました。これにより、物流倉庫のデジタル化が実現し、アメリカでは人の少ない倉庫が増えています。

また、倉庫のデジタル化により、機械やシステムのメンテナンス作業もオンラインで行えるようになり、効率性と管理の容易さが向上しました。このように、Swisslogの取り組みは、物流倉庫の効率化とデジタル化の良い例となっています。

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物流業界のDX事例についてのまとめ

今回は、物流業界のDX事例について解説しました。

これからDXを進めていこうと考えている物流業界の方は、本記事を参考にして、ぜひ物流のDXを進めていってください。

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