乗用車やトラックの健全な維持のためには、日頃の点検が欠かせません。
車両の点検には、車検の他に法定点検や日常点検があります。
どれも重要であることは間違いないのですが「どこまでが義務であり、罰則などがあるのか気になる」という人もいるのではないでしょうか。
法定点検の義務や罰則については、車両サイズや利用目的ごとに定められています。
「特に異常はなさそうだから」と点検を怠った場合、罰則の対象になる可能性もあるため、注意が必要です。
今回は、法定点検の義務や重要性、車検との違いを中心に詳しく解説していきます。
【この記事でわかること】 ・法定点検の義務や車検との違いについて ・法定点検の重要性 ・車両サイズや利用目的別で定められた法定点検の種類 ・法定点検の検査項目や注意点 |
法定点検に義務はあるの?
法定点検は、車両の故障や事故を未然に防ぐ上で欠かせない点検となります。
しかし、定められた期間で法定点検をしていないという人も少なくありません。
ここでは、法定点検の義務や罰則について詳しく解説していきます。
法定点検は義務化されているが罰則はなし
法定点検の実施義務に関しては、定期点検整備(道路運送車両法第48条)によって定められています。
これは全ての車両が対象となり、新車や中古車、使用頻度による例外はありません。
しかし「途中から全く法定点検を行っていない」という人も、中にはいるのではないでしょうか。
車検はほとんどの人が忘れずに受けるのに対し、義務化された法定点検を実施するのが少ない理由としては「罰則に関する規定」が関係しています。
車検切れの車を運転することは、道路運送車両法違反となり「30万円の罰金か6ヶ月以下の懲役」が科されます。
一方で、法定点検の場合は義務化されているものの、罰則がないため、点検していない人も少なくありません。
事業用車両の法定点検には罰則があるので注意が必要
法定点検には罰則がないと前述しましたが、事業用車両となるトラックやバス、タクシーは別のルールがあります。
事業用車両に関しては、多くの乗客が利用し走行距離も長距離となるため、法定点検の期間が短く設定されており、実施しない場合には罰則もあります。
事業用車両の法定点検を実施しなかった場合、道路運送車両法違反となり、30万円以下の罰金となるため注意しましょう。
ちなみに、事業用車両とはお金をもらって乗客や荷物を運ぶ車両となるため、営業車は乗用車扱いとなります。
法定点検と車検の違いについて
車両の点検には車検や法定点検、日常点検があります。
「車両点検が目的なのであれば、全て一緒にしたらいいのでは」と考える人もいるのではないでしょうか。
法定点検と車検が分けられている理由としては「検査の目的」に違いがあります。
車検は、定められた保安基準を満たした車両であるかのチェックが目的です。
一報、保安点検は、車両の部品劣化や異常のチェックを行い、事故や故障を未然に防ぐことが目的です。
この他では、前述したような罰則に関する違いもあります。
ちなみに、日常点検は普段の運転前に行う簡易的な点検のことで、ランプ類の点灯やタイヤの溝、エンジンの異音など15のチェック項目が定められています。
関連記事:車両の法定点検とは?車検との違いや義務内容についての疑問を解説!
法定点検の3つの重要性
法定点検は罰則がないことから、忙しさや費用面を理由に実施していない人も少なからずいます。
しかし、法定点検は義務化されているほど重要なものであり、適切に行う3つのメリットがあります。
・不具合や故障が起きた場合メーカー保証が受けられる
・整備不良の場合ドライバーの法的責任が軽くなる
・点検整備記録簿で査定評価が向上する
なぜこのようなメリットがあるのか、詳しく解説していきます。
不具合や故障が起きた場合メーカー保証が受けられる
車を購入した場合、メーカーや販売会社によって故障に関する保証がついています。
法定点検は、保証の適用条件として定められていることが多く、定期的に実施していれば、万が一車両が故障したとしても保証で直せます。
一方で、法定点検を受けていない場合、使用頻度や年式に関係なく、保証が切れる可能性があるため注意が必要です。
整備不良の場合ドライバーの法的責任が軽くなる
トラックなどを運転している途中で、整備不良を起こした場合、内容によっては法的措置が取られます。
この際に、日常点検や法定点検をしっかり行っていれば、行っていないケースに対して法的責任が軽くなります。
故障による事故の発生確率を下げることも可能です。
点検整備記録簿で査定評価が向上する
法定点検を正しく実施していれば「点検整備記録簿」に記録され、車両を売却する際の査定額が上がります。
いくらほど上がるかは車両状態にもよりますが、安全な車両と評価してもらいやすくなります。
ちなみに、日常点検も記憶には残らないものの、車の寿命を延ばし査定評価を上げることも可能です
法定点検には4種類ある
法定点検は、実施時期によって4つの種類があります。
・法定3ヶ月点検
・法定6ヶ月点検
・法定12ヶ月点検(法定1年点検)
・法定24ヶ月点検(法定2年点検)
各法定点検の対象車両や点検内容について、詳しく解説していきます。
法定3ヶ月点検
法定3ヶ月点検とは、走行距離や使用頻度の高いトラックやバスといった、事業用車両が対象となります。
点検項目に関しては47項目となり、けん引車両に関しても20項目で点検を行わなければなりません。
前述した通り、事業用車両は実施しなければ道路運送車両法違反となり、罰則の対象となります。
点検費用は車両の状態によりますが、小型トラックで1万円前後、中型トラックで15,000円前後、大型トラックで20,000円程です。
法定6ヶ月点検
法定6ヶ月点検は、利用頻度や走行距離が長くなりやすいレンタカー(乗用車)や、自家用の中小型トラックが対象の点検です。
22の項目が設けられており、費用に関しては7,000円~となります。
法定点検の期間は、乗用車よりも短く設定されていますが、罰則はありません。
法定12ヶ月点検(法定1年点検)
法定12ヶ月点検は、自家用の乗用車が対象の点検です。
26の点検項目があり、費用は10,000~20,000円が相場となります。
作業時間に関しては、車両の状態にもよりますが2~3時間が一般的です。
法定24ヶ月点検(法定2年点検)
法定24ヶ月点検は自家用の乗用車が対象です。
12ヶ月点検に、30の項目が追加され計56項目の点検を行います。
一定の距離を走行しているため、各箇所の摩耗や損傷のチェック項目が増えています。
費用は2~4万円ほどであり、車検と一緒に実施することも可能です。
法定点検の検査項目
法定点検には4つの種類があり、点検ごとにチェック項目の数や内容が異なります。
ここでは、自家用車が対象となる12ヶ月点検および、24ヶ月点検の具体的な検査項目を紹介していきます。
12ヶ月点検
12ヶ月点検の検査項目は7つに分類されています。
各箇所の点検項目は以下の通りです。
走行部分 | ・ホイールのナットやボルトのゆるみ ・タイヤの状態 |
動力部分 | ・クラッチ部分のペダルの遊びや床板都の隙間 ・ドライブシャフトやプロペラシャフトの連結部の緩み ・トランスミッションやトランスファーのオイル量やオイル漏れ |
ステアリング・かじ取り部分 | ・パワーステアリングの損傷やベルトの緩み |
電気装置部分 | ・点火装置の点火プラグの状態 ・点火掃除の点火時期 ・ディストリビュータのキャップの不具合 ・バッテリターミナル部の接続具合 |
ブレーキ部分(制動装置) | ・ペダルの遊びや床板との隙間 ・ブレーキの効き具合 ・ブレーキディスクやパッドの隙間 ・パッドの消耗 ・パイプやホースの漏れや破損、取り付け状態 ・各種シリンダの液漏れ ・ブレーキシューやブレーキドラムにおけるライニングとドラムの隙間 ・ライニングやシューの摺動部分の摩擦 ・サイドブレーキの引きしろ ・サイドブレーキの効き具合 |
エンジン部分 | ・本体の排気状態 ・エレメント、エアクリーナーの状態 ・潤滑装置のオイル漏れ ・冷却装置のファンやベルトの損傷や緩み ・冷却装置の水漏れ |
エグゾースト・パイプ、マフラー | ・取付けの緩みや損傷 |
その他の部分 | 車載式の故障診断装置の診断の内容 |
24ヶ月点検
法定24ヶ月点検は9つに分類されています。
各箇所の点検項目は、先に紹介した12ヶ月点検の内容に、以下のチェック項目がプラスとなります。
走行部分 | ・後方ホイールベアリングのがた ・前方ホイールのベアリングのがた |
動力部分 | ・ドライブシャフトやプロペラシャフトの自在継手部のダストブーツの損傷や亀裂 ・デファレンシャルオイルの量や漏れ |
緩衝部分 | ・サスペンションの連結部や取付部のがたや緩み ・ショックアブソーバーの損傷や油漏れ |
ステアリング・かじ取り部分 | ・ギヤボックスの緩み ・アームやロッドの損傷や緩み、がた ・ボールジョイントのダストブーツの損傷や亀裂 ・ハンドルの操作具合 ・車輪のホイールアライメント ・ホイールシリンダやディスクキャリパ、マスタシリンダの損傷や摩耗 ・パワーステアリング部分のオイル量やオイル漏れ ・パワーステアリングの取り付け緩み ・ブレーキパッドやディスクの損傷や摩耗 ・ブレーキシューやドラムの損傷や摩耗 |
エンジン部分 | ・燃料の漏れ |
電気装置部分 | ・配線の接続緩みや損傷 |
ガスの発散防止装置部分 | ・燃料蒸発ガス排出を抑制する装置の配管損傷 ・燃料蒸発ガス排出を抑制する装置の詰まりや損傷 ・燃料蒸発ガス排出を抑制する装置のチャックバルブの機能 ・ブローバイ、ガスの還元装置のバルブの状態 ・ブローバイ、ガスの還元装置の配管損傷 ・一酸化炭素などの発生防止装置の触媒反応方式等排出ガス減少装置の損傷や緩み ・配管の損傷取付状態 ・二次元空気供給装置の機能 ・減速時排気ガス減少装置の機能 ・排気ガス再循環装置の機能 |
フレームやボディ | 損傷や緩み |
エグゾースト・マフラーとパイプ | マフラーの機能 |
法定点検で気をつけるべきこと3選
法定点検を適切に実施する上で、注意すべきことが3つあります。
・車両の点検期間が過ぎていないか確認する
・知識がない状態で法定点検をしない
・日常点検を怠らない
各注意点の詳細について解説していきます。
車両の点検期間が過ぎていないか確認する
法定点検は車両ごとに適切な点検時期が定められていますが、車検のように明確な期限は定められていません。
そのため、多少前後することは問題ありませんが、適切な期間より2ヶ月や3ヵ月離れた時期の点検は、本来の目的からズレてしまいます。
なるべく、点検時期の前後1ヶ月以内に実施するようにしましょう。
知識がない状態で法定点検をしない
法定点検は、自分で行っても問題ありません。
ただし、先ほど点検項目の詳細をお伝えした通り、あらゆる部分の装置を適切に点検しなければなりません。
装置の名称や役割を理解していない場合には、異常に気づけない可能性が高いため、業者に依頼することをおすすめします。
ちなみに、法定点検の依頼先には以下のような種類があります。
・ディーラーや国の認定を受けた整備工場 ・カーショップや車検業者 ・ガソリンスタンド |
ガソリンスタンドは、点検費用が安い一方で、車両の構造に詳しい整備士が在籍していないため、何か異常がある場合にはディーラーや整備工場がおすすめです。
日常点検を怠らない
車を長い間使用し続けていると、さまざまな箇所の劣化が早まり、急に故障する可能性が高くなります。
車検や法定点検をしているからと安心することなく、走行前には日常点検をしっかり行うようにしましょう。
特に、旅行や遠方への配達など、長距離運転を行う前には注意が必要です。
関連記事:法定点検の費用はいくらかかるの?費用相場と安くするコツを説明
まとめ
法定点検は、道路運送車両法で実施が義務付けられており、車両のサイズや利用目的により適切な点検の時期が設けられています。
乗用車の場合、法定点検の未実施に対する罰則はないものの、事業用車両の場合は30万円以下の罰金となる可能性があります。
年式や使用頻度にかかわらず、必ず定められた期間で点検を実施するようにしましょう。
また、普段から日常点検を癖付けることにより、些細な異常でも見つけられるようになり、故障や関連の事故を防止できます。
関連記事:法定点検しないとどうなる?法律違反や罰金に繋がらない?
関連記事:法定点検を受けないデメリットは?車検との違いまで説明
関連記事:軽貨物運送車両の車検の内容や費用、必要な時間を解説