「製造業はなぜ、こんなにも人手不足になっているのだろうか......」求人をだしてもなかなか応募がこないと、悩んでいる採用担当者の方も多いのではないでしょうか。
売上をあげるチャンスなのに、肝心の製品が作れないのは困りますよね。本記事では、製造業が人手不足になっている理由と6つの解決策を紹介します。製造業の採用担当者の方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事のまとめ
・熟練工が定年退職していて人材不足になっている
・製造業が人手不足の解決をするにはマイナスイメージを払拭する
・デジタル人材の確保が大切になる
製造業はなぜ人手不足なのか?
製造業が人手不足な理由は、以下の6つです。
- 熟練工が定年退職しているから
- 専門スキルを持った人材の確保が難しいから
- 若者離れが加速しているから
- 少子高齢化が進行しているから
- 技術継承に失敗しているから
- 染み付いたマイナスイメージがあるから
詳しく解説します。
熟練工が定年退職しているから
製造業は94%以上の企業が人手不足となっており、深刻な問題となっています。
経済産業省の調査によると、2017年12月時点で製造業の94%※1)以上の企業が人手不足を感じており、そのうち32.1%※1)の企業は「人手不足がビジネスに影響を与えている」と回答しています。
これらの理由には、以下のような原因が考えられるでしょう。
・少子高齢化により労働人口が減少している ・熟練工が定年退職している ・3K「きつい・汚い・危険」のイメージが定着している |
上記のような理由から、製造業界では人材不足が深刻化しています。また、一部の企業では、外国人労働者やシニア人材の採用を積極的におこなっていますが、まだまだ足りない状況が続いているようです。
出典:※1)経済産業省「4.我が国製造業の主要課題①:「強い現場力注4の維持・向上」(人手不足、品質管理)
専門スキルを持った人材の確保が難しいから
製造業の中でもとくに足りないのは、技術がある技能人材です。経済産業省の資料からもわかるように、大企業が40.5%※2)、中小企業にいたっては59.8%※2)もの技能人材が足りないとされています。
また、近年は多くの製造業に関する企業がデジタル化を検討しています。しかし、デジタル化への移行には知識が必要であり、専門スキルを持った人材を確保しなければいけません。
そのため、企業側は技能人材の獲得にますます力を入れなければいけないでしょう。
若者離れが加速しているから
製造業では若者離れが加速しており、人手不足の原因となっています。若者が製造業から離れるのは、3K「きつい・汚い・危険」のイメージがついており、仕事への魅力を感じられないことも理由のひとつでしょう。
また、古い教育方法では、若者が仕事内容に不満を覚えて退職する原因になりかねません。そのため、企業側は若者に向けて製造業の魅力を伝える必要があります。
少子高齢化が進行しているから
製造業における人手不足の背景には、少子高齢化の進行が深く関係しています。少子高齢化のスピードは、2002年には4.7%でしたが、2018 年には8.9% と増加中です。
このように製造業の人手不足の問題は、少子高齢化の進行という大きな課題に直面しています。問題に対処するためにはデジタル化や若者へ製造業の魅力を伝えるなど、多様な動きが必要です。
技術継承に失敗しているから
製造業ではOJT(On-the-Job-Training)と呼ばれる、先輩の従業員から技術を直接教える方法で技術の継承がされてきました。しかし、近年ではうまく機能しなくなっています。考えられる理由は、以下の2つです。
・OJTで技術を教えられても現場でついていかず挫折してしまう ・デジタル技術の導入が始まり技術を教えきれていない |
上記のように若手の従業員はOJTで技術を教えられたあと、すぐに退職してしまうケースも多いようです。
また、製造業界では人手不足で仕事負担が増加したり、景気により賞与額が大きく左右されたりしているので、従業員の流れも多くなっています。
人材が定着するような環境作りや収入面など含めて、製造業界の課題は多くあるでしょう。
染み付いたマイナスイメージがあるから
製造業は3K「きつい・汚い・危険」などのマイナスイメージが強く、新卒や第二新卒などの若者から敬遠されがちです。このマイナスイメージが、製造業における人手不足の一因となっているでしょう。
製造業が人手不足を解消するためには、マイナスイメージを払拭し、若者が就職したくなるような業界作りも必要です。
人手不足である製造業の実態
製造業は深刻な人手不足に直面している一方で、新規採用が難航しており、人材確保が進まない状況にあります。
ここでは、人手不足である製造業の実態を根拠となるデータとともに解説します。
有効求人倍率は1.74倍(2023年12月)
厚生労働省の調査「一般職業紹介状況(令和5年12月分及び令和5年分)」によれば、製造業の有効求人倍率は約1.74倍となっています。
これは全業界平均の1.27倍を上回っており、製造業が特に人手不足に悩まされていることを示しています。
参考:一般職業紹介状況(令和5年12月分及び令和5年分)|厚生労働省
原材料費の高騰で採用を抑制する企業が増加
人材が不足している状況にもかかわらず、製造業における新規求人数は減少傾向にあります。
2023年3月以降、前年同月比で5%以上の減少が続いており、12月には前年同期比で10.5%減となりました。
この背景には、製造業のコストの大部分を占める原材料やエネルギーの価格高騰があります。
特に中小企業では、コストの増大が大きな負担となり、利益確保が難しい状況が続いています。こうした事情から、採用予算を確保できず、新規雇用を見送らざるを得ない企業が増えているのです。
製造業の人手不足による影響
製造業の人手不足による影響は、以下の3つが考えられます。
・従業員の成長を阻害 ・外注費の増加 ・黒字倒産の可能性 |
それぞれ見ていきましょう。
従業員の成長を阻害
製造業の人手不足は、従業員の成長を阻害する原因となっています。理由は、以下のとおりです。
・人手不足により従業員のトレーニングや教育に投資する余裕がない ・OJTをおこなう担当者の不足により新人が知識を得る場所がなくなっている |
上記のように製造業界は常に人手不足の状態が続いており、企業は従業員のトレーニングや教育に投資する余裕がなくなっています。
このようにベテラン従業員は、目の前の仕事に追われてしまい、若手社員の教育に時間を割けません。
今はベテラン従業員で仕事がうまく循環していても、将来的に若手社員が育っていなければ、同じように業務の進行はできないでしょう。
外注費の増加
人手不足により多くの製造業を営む企業では、自社で業務を完結するのが難しい状況です。そのため、外注の会社に業務を委託しなければ製品が作れない状況ができています。
しかし、外注に依頼する場合、自社で業務を巻き取るより予算は高くなる傾向があります。また、専門性の高い業務の外注依頼では費用も高くなるでしょう。
製造業における人手不足の問題は、単純に労働力の不足だけではなく、財務面でも影響をおよぼしています。
外注費の増加は自社の収益に直結するため、ムダのない工数削減と若手の人材育成は必要不可欠になるでしょう。
黒字倒産の可能性
製造業の人手不足は、企業の収益悪化や倒産につながる可能性があります。黒字倒産になる理由としては、以下の3つが考えられます。
・人手不足により生産能力の最大化が難しくなり、収益性の高い仕事が受注できない ・人手不足を補うために外注を増やすことで予算が圧迫される ・受注した製品が人手不足により遅れ、損害金が発生してしまう |
上記のように製造業の人手不足は、従業員が足りないという問題を超えて、企業の存続に影響を与えかねません。そのため、企業側は生産効率の改善を図ると共に、人材の確保・育成に取り組む必要があります。
製造業が人手不足の解決のためにできる6つの策
製造業が人手不足の解決のためにできる6つの策は、以下のとおりです。
・ニーズに合った戦略的な人材獲得 ・マイナスイメージの払拭 ・DX化による人材育成の効率化 ・デジタル人材の確保 ・人件費を臨機応変に調整できる仕組み作り ・外国人財の積極的登用 |
詳しく解説します。
1.ニーズに合った戦略的な人材獲得
製造業が人手不足を解消するためには、自社のニーズに合った人材を戦略的に獲得することです。ニーズに合った人材を戦略的に獲得するためには、以下の点を意識してみましょう。
・自社の事業内容や将来の事業計画を明確にして、必要な人材を把握する ・多様な場所で人材採用を検討し、従業員の福利厚生を整える ・人材育成の体制を整え、従業員のスキルアップを支援する |
上記のように自社はもちろんのこと、入社してくる従業員に対しても労働環境を整える必要があります。
また、製造業における根本的な人手不足を解決するためには、優秀かつ定着率の高い人材獲得が必要不可欠と言えるでしょう。
2.マイナスイメージの払拭
製造業は3K「きつい・汚い・危険」のマイナスイメージが定着しており、払拭するのが難しい状況です。そのため、マイナスイメージを払拭するためにも、企業側は以下のような取り組みが必要でしょう。
・工場内の環境を改善し、3Kのイメージを払拭させる ・職場環境や給与などの待遇を改善し、働きやすい環境を整える ・製造業の魅力を積極的にPRする |
これらの取り組みを積極的に進め、求人への応募数が増加するような施策をしてみてください。
3.DX化による人材育成の効率化
DX(デジタルトランスフォーメーション)化をうまく取り入れることで人材育成を効率化し、製造業の人手不足の問題を解決できます。
DXを導入することで、従来は工場内でおこなわれていた研修の一部を自宅やオフィスで受講できます。また、DX化によって従来のOJTに割いていた時間を削減でき、効率化できるでしょう。
このように製造業における人手不足の解決策として、DXを活用した人材育成の効率化は必要です。
4.デジタル人材の確保
製造業の人手不足を解消するためには、デジタル人材の確保が重要です。具体的には、以下の取り組みを実施すると良いでしょう。
・デジタルスキルを持つ人材を積極的に採用し、待遇を充実させて定着率を上げる ・既存社員のデジタルスキルを向上させ、研修を充実させる ・テレワークやフレックスタイム制などを導入する |
製造業界における人手不足の問題解決には、デジタル人材の確保が必要不可欠です。これにより、業務の効率化や新たなイノベーションを実現し、社内の活性化にもつながります。
とはいえ、デジタル人材を確保するには、求人掲載費や研修費、雇用後の人件費など多くの予算が必要です。そのため、事業計画をしっかり立てた上で、デジタル人材の確保を検討してみてください。
5.人件費を臨機応変に調整できる仕組み作り
製造業が人手不足を解消するためには、人件費を臨機応変に調整しなければいけません。
とはいえ、従業員への給料や賞与額を下げてしまうと従業員は定着しないので注意が必要です。たとえば、以下のような仕組みを取り入れてみてください。
目的 | 解決策 | 具体例 |
・生産量の変化に合わせた人件費の調整をする | ・勤務時間の調整をする | ・平日8時間や土曜、日曜休みのシフト制を作る |
・優秀な人材の確保と定着をさせる | ・給与や待遇の差別化をする | ・スキルに応じた昇給の仕組みを作る |
・年間を通じた人件費のバランスを保つ | ・多様な雇用形態の活用をする | ・派遣社員や業務委託などを検討する |
上記のように人件費を臨機応変に調整できる仕組みを導入することで、人手不足の解消とムダな人件費の削減につなげられます。自社に合う方法をぜひ、試してみてください。
6.外国人財の積極的な登用
製造業が人手不足を解消するためには、外国人財の積極的な登用が欠かせません。
厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ本文(令和4年10月末現在)」の調査によると、製造業に従事している外国人の人数は48万人程になります。
上記グラフを確認してわかるように、製造業は外国人労働者に支えられている部分も大きいでしょう。
ただし、外国人労働者の受け入れには、言語や文化の違いなどの課題があり注意が必要です。そのため、受け入れ前にはしっかりと準備しておいてください。
出典:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ本文(令和4年10月末現在)」
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製造業の人手不足についてのまとめ
製造業の人手不足は、少子高齢化や技術継承の失敗、デジタル化の遅れなど複数の原因が関与しています。
また、解決策としてデジタル技術の導入や外国人労働者の活用など、複数の案がありますが、まだまだ不安材料も多いようです。
製造業の人手不足に直面している経営者や採用担当者の方は、本記事を参考にして人材不足への対策をしてみてください。
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