宅建士の資格取得を迷っていたり、その先に安定した年収を確保できるのか不安だったりと気になる人もいるのではないでしょうか。
宅建士は年齢や地域、企業規模などによって平均年収は異なるようですが、高収入を目指せる資格のうちのひとつです。また、宅建士の資格取得は不動産業界でのキャリア形成に加えて、他業種へのキャリアチェンジにも有効です。
不動産業界で働く宅建士の年収を、企業規模別・男女別・年齢別・地域別に解説します。また、宅建士の資格取得が高収入につながる理由、資格取得を検討する上で押さえておきたいポイントも紹介します。宅建士の資格取得を目指している方は参考にしてください。
不動産業界で働く宅建士の平均年収について
不動産業界で働く宅建士の平均年収は、企業の規模や年齢、地域など、さまざまな要因で異なると言われています。次の4つの区分で平均年収を解説します。
- 企業規模別の平均年収
- 男女別の平均年収
- 年齢別の平均年収
- 地域別の平均年収
【企業規模別】の平均年収:約450〜600万円
厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査での、不動産業における企業規模別の平均年収は、大企業で約555万円、中規模の企業で約525万円、小規模の企業だと約450万円です。一般的に、企業の規模が小さくなると、平均年収も低くなる傾向があります。
しかし、中小企業でも役職などが上がると、年収も高くなると言われています。
参考:賃金構造基本統計調査 / 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類|政府統計の総合窓口
【男女別】の平均年収:約400〜600万円
厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査での、不動産業における男女別の平均年収は、男性が概ね580万円、女性が400万円程度です。
一方で、宅建士を取得していれば、男女問わず資格手当をもらえたり、採用時に優遇されたりします。宅建士を取得できれば、女性にとっても年収を高めるチャンスになるでしょう。
参考:賃金構造基本統計調査 / 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類|政府統計の総合窓口
【年齢別】の平均年収:約315〜625万円
厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査での、不動産業における年齢別の平均年収は、
次の通りです。
- 20~24歳:約315万円
- 25~29歳:約395万円
- 30~34歳:約470万円
- 35~39歳:約540万円
- 40~44歳:約575万円
- 45~49歳:約610万円
- 50~54歳:約625万円
- 55~59歳:約640万円
- 60~64歳:約445万円
- 65~69歳:約320万円
一方で、年齢だけでなく、個人の能力や成果などでも年収は大きく変わります。宅建士の資格を活かして、専門知識やスキルを伸ばしましょう。
参考:賃金構造基本統計調査 / 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類|政府統計の総合窓口
【地域別】の平均年収:約300〜600万円
宅建士の平均年収は、取り扱うエリアの不動産価格や取引件数などの影響を受けるため、都心部ほど高く、地方ほど低い傾向が出ています。
令和4年賃金構造基本統計調査で、平均年収が最も高いエリアは、東京都の約450万円、続く神奈川県ならびに大阪府で約400万円です。一方で、青森県ならびに宮崎県、さらには沖縄県はそれぞれ約300万円です。
不動産価格や取引件数以外にも、都心部ほど企業ごとの規模が大きくなり、逆に地方に行けば行くほど小規模になるので、平均年収の差に影響していると言われています。
関連記事:【2024年最新】宅建資格を取得した場合の年収は?
不動産業界で働く宅建士が高年収になる3つの理由
宅建士の取得が高年収につながる理由は主に3つです。
- 資格手当が支給されるから
- 営業で武器になるから
- 異なる業界でも需要があるから
それぞれについて解説します。
資格手当が支給されるから
宅建士は、不動産の取引に必要な資格であり、業界内で高い評価を受けています。権威のある資格であり、実用性もあるので、宅建士の資格を持っていると、資格手当として月額や年額で給与にプラスされる場合もあるようです。
資格手当の金額は、企業や地域などでも異なるようですが、平均的には月額1~2万円であり、年額10~20万円程度の年収向上につながると言われています。
営業で武器になるから
宅建士は不動産関係の専門知識を持っており、お客様に信頼されやすく、営業成績にも反映される可能性が高まります。重要事項の説明や契約書の作成など、不動産取引に欠かせない業務は、宅建士のみが取り扱える業務です。
また、宅建士は業界内だけでなく、金融機関や一般企業でも活躍できるので、幅広いお客様に対応できます。営業職の場合、歩合給やインセンティブなどの成果報酬も多いため、宅建士の資格が年収向上につながるでしょう。
異なる業界でも需要があるから
宅建士の資格は業界内に限らず、さまざまな業界で求められています。たとえば、金融機関では、不動産担保の貸付けや不動産投資のアドバイスなどに役立つようです。
一般企業の場合は、財務部などの資産運用担当者として、宅建士のスキルが活かせます。また、宅建士は独立開業も可能であり、自分の事務所を持って不動産取引も可能です。
宅建士の資格を持っていれば、キャリアチェンジや起業など、自分の働き方を選べる可能性が広がるでしょう。
関連記事:不動産鑑定士の年収は高い?年齢別・経験年数別に紹介
関連記事:不動産業界で働く人の年収はいくら?歩合の仕組みも解説
不動産業界で働く宅建士は女性にも人気な理由
高年収の宅建士は、女性にも人気です。女性宅建士から人気を集めている理由は、主に2つです。
- 女性の宅建士の平均年収は400万円以上
- 女性の宅建士は増加中
それぞれについて解説します。
女性の宅建士の平均年収は400万円以上と高い
女性の宅建士の年収は、約280万円~540万円の幅に収まるケースが多く、平均年収400万円以上は十分に狙える範囲です。
宅建士は、不動産の仲介や管理などの専門的な仕事をする資格であり、資格手当やインセンティブなどによって収入を増やすことができます。また、宅建士の仕事は、接客や事務など、女性が得意とする分野が多いため、魅力的な職業と言えるでしょう。
女性の宅建士になる人が増えている
宅建士に占める女性の比率は、資格登録者数、証交付者数および就業者数は、いずれも増加しています。
2022年度末時点で、女性の宅建士の割合は25.7%であり、直近の約30年の間で8%程度上昇しています。さらに、近年の試験では、合格者全体のうち30%~40%前後が女性です。
30年以上にわたって、一貫して女性宅建士は増加し続けており、今後も女性の割合が高まっていく可能性は高いでしょう。女性の宅建士が活躍できる理由としては、女性ならではの気遣いや細やかさ、事務職に向いている女性が多いなどが挙げられます。
参考:2 宅地建物取引士の概要|一般財団法人 不動産適正取引推進機構
関連記事:不動産営業に向いている人の特徴は?転職時のポイントも紹介
関連記事:【2024年最新】年収が高い不動産会社の平均年収ランキング
不動産業界で働く宅建士で年収1,000万円目指す3つのケース
宅建士が、不動産業界で勤務して年収1,000万円を目指すには、主に3つの方法が一般的です。
- 固定給+歩合給のケース
- フルコミッションのケース
- 独立開業のケース
それぞれについて解説します。
固定給+歩合給のケース
固定給+歩合給のケースは、不動産会社に勤めて、基本給に加えて成果に応じた歩合給を得る方法です。固定給+歩合給のケースで1,000万円の年収を目指す場合、歩合給割合が高いほど収入の上限は高くなりますが、不動産市場の景気や個人の実績に左右されるリスクもあります。
固定給+歩合給のケースでの歩合給の割合は、インセンティブを高めている企業で、一般的に給料全体の10%~20%程度だと言われています。
フルコミッションのケース
フルコミッションのケースは、不動産会社に勤めて、基本給がなく、全て歩合給で収入を得るケースです。固定給+歩合給のケースよりも収入の上限は高くなりますが、同時に収入の不安定さも高くなります。
独立開業のケース
独立開業のケースは、不動産会社に勤めずに、自分で不動産事業を始めるケースです。独立開業の場合、収入の上限はなく、自分の力量によっては年収1,000万円以上を稼ぐことも可能です。
しかし、独立開業には、多くの資金や人脈、経験が不可欠であり、成功するまでに時間と努力がかかると言われています。
関連記事:不動産の営業事務ってどうなの?仕事内容や年収を解説
宅建士が不動産業界で年収をアップさせる3つの方法
宅建士が不動産業界で年収をアップさせる方法は主に3つです。
- インセンティブを稼ぐ
- 経験を積む
- 昇進する
それぞれについて解説します。
インセンティブを稼ぐ
不動産業界は、基本給に加えて、取引件数や取引金額に応じたインセンティブが支給されることが多いです。インセンティブの割合や上限は会社によって異なりますが、成果を上げれば上げるほど収入が高くなります。
インセンティブを稼ぐためには、不動産に関する知識や営業スキルを高め、お客様のニーズに応える提案ができるように努力しましょう。
経験を積む
不動産業界では、経験が重要だと言われています。場数を多く踏むと、スキルや信頼が向上し、収入にも反映される可能性が高まります。
経験があると、お客様からのリピートや紹介が増えたり、高額な不動産の取引ができるようになったりするでしょう。
また、経験を積むと、将来的に独立などのキャリアアップを目指せる可能性も出てきます。
昇進する
不動産業界に限らず、役職が付いたり、上がったりすると、昇給する場合が一般的です。不動産業界では、宅建士の資格を持っていると、昇進の可能性が高まると言われています。また、企業によっては、昇進要件に宅建士の取得を盛り込んでいるケースもあるようです。
宅建士の資格を持っていると、管理職や部長、役員などのポジションに就ける可能性も生まれ、収入も高くなるでしょう。
不動産業界の宅建士を取得するメリット
宅建士を取得するメリットは年収アップ以外にも、次の2つがあります。
- 就活や転職に有利
- 一生使える
それぞれについて解説します。
就活や転職に有利
宅建士は独占業務を行えるため、不動産会社にとって必要不可欠な人材です。宅建士を取得している場合、業界未経験でも就職や転職で有利になるでしょう。また、入社後は資格手当や役職手当などをもらえる可能性もあります。
さらに、宅建士は不動産業界だけでなく、金融や建設などの関連業界でも求められる資格です。不動産業界から他業界へキャリアチェンジを目指す際にも有効でしょう。
一生使える
宅建士の資格は更新の必要がなく、効力が一生涯続きます。しかし、宅建士として登録すると発行される宅地建物取引士証の有効期限は、5年間です。有効期限が切れないように、講習を受けて更新しなければなりません。更新タイミングには、宅建協会などから連絡があるので見落とさないようにしましょう。
関連記事:宅建士の資格手当はいくらになる?資格取得する3つのメリット
不動産業界の宅建士を取得する前に知るべき3つのポイント
宅建士を取得する上で押さえておきたいポイントは3つです。
- 合格率は15%
- 勉強時間は1日1時間
- 再就職にも有利な資格
合格に近づくよう、それぞれについて解説します。
合格率は15%
宅建士試験は毎年10月の第3日曜日に実施されており、約20万人が受験しています。一方で、合格率は15%前後と非常に低いです。
宅建士試験は、権利関係、宅建業法、法令上の制限、税法・その他の4つの分野から出題されます。各分野の出題数や難易度には偏りがあり、特に、宅建業法は出題範囲が狭いにもかかわらず、一番多く出題されます。さらに、宅建業法の正答率が合格に大きく関係すると言われています。
宅建士試験に合格するために、十分な勉強時間を確保しましょう。
勉強時間は1日1時間
宅建士試験に合格するためには、平均で300~400時間の勉強が必要だと言われています。
試験までの期間によって異なりますが、1年前に宅建士の資格取得を目指すと決めたのであれば、1日1時間程度の継続した学習が望ましいです。
1日のうち1時間以上の勉強時間を確保できるのであれば、短期間での合格も目指せるでしょう。
再就職にも有利な資格
宅建士の資格は、更新の必要がなく一生有効です。また、不動産業界だけでなく、金融や建設などの関連業界でも求められる資格です。宅建士でないとできない業務もあり、不動産会社にとって必要不可欠な人材です。
したがって、宅建士は就職や転職だけでなく、再就職の場面でも優遇される傾向にあります。
不動産業界の宅建士を取得するまでの流れ
宅建士の資格を取得するまでの流れは大きく分けて4つのステップです。
- 試験に合格する
- 実務講習を受ける
- 宅建士の登録をする
- 資格証を受け取る
それぞれについて解説します。
試験に合格する
まずは、資格取得に向けて勉強して、受験申込を忘れずに行いましょう。そして、当日の試験に合格します。
宅建士の試験は、毎年10月の第3日曜日に実施されます。受験資格はありませんが、試験は難易度が高く、合格率は15~18%程度です。試験は50問の四肢択一式の筆記試験で、合格点は35点前後です。近年のボーダーラインは、36点が続いています。
実務講習を受ける
試験に合格した後、宅地建物取引業の実務経験が2年未満の場合は、登録実務講習を受ける必要があります。講習は、国の認定を受けた予備校や学校法人などが実施しており、受講料は約20,000円です。
宅建士の登録をする
実務講習を修了すれば、試験を受けた都道府県の知事に対して、宅地建物取引士資格登録の申請をします。登録には、合格証書や実務講習修了証書などの書類が必要です。登録費用は37,000円です。
資格証を受け取る
登録が完了したら、宅地建物取引士証の交付を受けます。宅地建物取引士証は、宅建士として独占業務を行うために必要であり、交付料は4,500円です。
交付申請をする前に、試験に合格してから1年以上経ってしまった場合は、法定講習を修了しなければなりません。法定講習には、12,000円の受講料がかかります。
不動産業界で働く宅建士の年収についてのまとめ
今回は不動産業界で働く宅建士の年収を、企業規模別・男女別・年齢別・地域別に解説しました。また、宅建士の取得が年収アップにつながる理由、資格を取得する上で押さえておきたいポイントも紹介しました。
宅建士の年収は企業の規模や男女、年齢、地域によって異なります。一般的に、取引件数や取引金額が年収に反映されていると言われています。
宅建士は需要のある資格であり、女性の宅建士の数も右肩上がりです。また、宅建士の資格は、キャリアアップやキャリアチェンジの際にも有効です。
難易度の高い資格ではありますが、コツコツ勉強すれば、合格できる可能性は十分にあるでしょう。ぜひ、宅建士の資格取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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